増枠でクロマグロは安くなるのか?

クロマグロ

メディア取材では、「漁獲枠が増えれば、クロマグロは安くなるのか」と必ず聞かれる。

漁獲枠の増加は、供給を増やす方向に働くため、価格を押し下げる要因ではある。ただし、今回の増枠によって、店頭価格が目に見えて大きく下がるとは考えにくい。

理由は単純である。これまでも漁獲枠は段階的に拡大してきたが、そのたびにクロマグロの価格が大幅に下落したわけではないからだ。

過去の漁獲枠の変遷

国際合意上の日本の基本的な漁獲上限は、次のように推移してきた。

年・期間 小型魚(30kg未満) 大型魚(30kg以上) 主な内容
2015~2021年 4,007トン 4,882トン 小型魚は基準年平均の半分、大型魚は基準年平均以下に制限
2022~2024年 4,007トン 5,614トン 大型魚を15%増枠
2025~2026年 4,407トン 8,421トン 小型魚を10%、大型魚を50%増枠
2027~2028年 4,143トン 10,526トン 小型魚6%減、大型魚25%増
国別配分は未決定

2025年には、大型魚で今回の増枠を上回る50%の増枠が行われた。それでも、クロマグロが消費者に明確に安くなったという印象はない。今回の増枠はそれより小さい。供給増による価格低下の効果はあり得るとしても、劇的な値下がりを期待できる規模ではないだろう。

流通量は増えても、価格は下がっていない

東京都中央卸売市場の月報には、豊洲市場など東京の中央卸売市場に入荷した国産生クロマグロの数量と価格が、2002年から記録されている。東京都中央卸売市場の月報を集計すると、流通量は長期的に増えている一方、平均単価は明確な下落傾向を示していない。

数量(トン) 平均単価(円/kg) 金額(億円)
2002 1,490 3,219 48.0
2005 2,718 2,855 77.6
2010 3,011 3,038 91.5
2015 3,970 3,347 132.9
2020 5,968 3,016 180.0
2021 7,196 2,976 214.2
2022 6,728 3,633 244.4
2023 5,857 4,125 241.6
2024 6,803 3,879 263.9
2025 8,157 3,504 285.8
2026年※ 4,562 3,693 168.5

※2026年は年途中までの集計値。

2002年から2025年にかけて、市場への流通量は約5.5倍に増えた。しかし平均単価は、おおむね1kg当たり3,000~4,000円の範囲で推移している。数量が増えれば価格が下がるという単純な関係は、このデータからは確認できない。

水産物一般と比較して、クロマグロは割安になったのか?

水産物の中では、値上げ幅が少ないのかどうかを見てみよう。過去10年の魚介類の消費者物価指数と市場価格を2020年が100になるように基準化して図示した。大まかなトレンドは似ているけれど、クロマグロの方が伸び幅は少ない。生産量が増加した効果は、劇的ではないが、あるようにも見える。まあ、その程度ということです。

魚介類消費者物価指数とマグロの市場価格のトレンド

消費者物価指数
https://www.stat.go.jp/data/cpi/1.html

クロマグロ価格を左右する要因

クロマグロの価格は、日本の漁獲枠だけで決まるものではない。

漁獲枠の増加は、国内供給を増やし、価格を下げる方向に働く。一方で、養殖クロマグロの飼料費、人件費、燃料費などが上がれば、価格は上がりやすくなる。さらに、日本市場には地中海やメキシコなどから大西洋クロマグロや養殖クロマグロも入ってくるため、海外の漁獲枠、養殖生産量、為替相場も価格に影響する。

今回の増枠は、消費者にとって無意味ではない。供給を増やし、価格上昇を抑える効果は期待できる。しかし、それだけでクロマグロが大幅に安くなると見るのは現実的ではない。

先生の一言

メディアに踊らされて、目先の価格に一喜一憂するのは、もうやめよう。
それよりも、クロマグロ資源が回復して、これからも安心して食べ続けられる状態になったことが重要です。

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