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福島県の漁業の復興 その2 由比港漁協のプール制度


前のエントリで、福島の漁業復興の課題を説明した。その課題をクリアするためのヒントが、由比港漁協にある。

サクラエビ漁業の歴史

まずは、由比港漁協の主力漁業である桜エビ漁の歴史から解説しよう。サクラエビは、昼間は水深200-300mに分布しているが、夜中に水深20-30mまで浮上する。明治27年に、そのことを二人の漁師が偶然発見したことにより、サクラエビ漁業が始まった。当初のサクラエビ漁業は、極寒の夜間に操業するため、厳しい労働環境だったようである。漁船の動力化、大型化、昭和30年代から、ネットローラー(網揚げの機械化)や魚群探知機の普及など、様々な技術革新によって、漁獲効率は大幅に上昇した。その結果が、豊漁貧乏であった。

プール制の導入

昭和42年、43年と大漁であったが、エビの価格が大暴落してしまった。そこで、漁業者は、水揚げをプールしたうえで、売上金を均等配分することにした。均等配分は腕の良い(沢山獲れる)漁師の反対で頓挫するのが普通なのだが、由比の場合は、水揚げ量の多かった漁師がリーダーシップをとって話をまとめた。

昭和40年代は、高度経済成長に伴って、沿岸域の開発が急ピッチで進められた時期でもある。静岡県でも、火力発電所建設や田子の浦ヘドロ公害など、様々な問題が生じていた。漁業者が団結をして、沿岸の環境を守るための抗議活動を行ったことがきっかけとなり、漁民の間の連携が高まった。そして、昭和52年には地域の全船が参加する総プール制が確立した。

現在のプール制のシステム

静岡県サクラエビ漁業組合の下部組織である出漁対策委員会が、出漁するかどうかを決める。司令船の役割を果たす一隻をもうけて、無線で指示を出し一斉に操業を開始する。各船は水揚げ漁を司令船に報告し、出漁対策委員会が定めたその日の総水揚げ量に達した次点で、操業は終了となる。そして、その日の水揚げ金額を、船主・乗組員総数で均等に割った金額を各人の取り分としている。

プール制のメリット

プール制のメリットをまとめると次の図のようになる。

キャプチャ

① 早捕り競争の抑制

プール制の導入によって、早捕り競争が抑制されたことによって、出漁日数が減り、操業コストが削減され、労働条件が改善された。また、限りある資源を大切にしようという意識が高まった。漁協の青年部が自ら産卵調査を行って、産卵親エビの維持に努めている。資源の持続性が保たれているので、結果として漁獲量が安定し、漁業経営にも好影響を及ぼしている。

② 量から質への転換

自然の生産力には限りがあるので、持続的に漁を行えば、漁獲量は自ずと限られてしまう。漁獲量が増やせない状況で、売り上げを伸ばすには、単価を上げるしかない。由比港漁協では組合員が一丸となって、魚の単価を上げるための努力をしている。夜間に水揚げした桜エビは、朝の競りまで市場に保管することになる。由比港漁協の競り場は、温度管理ができる最新の設備となっている。エビの水揚げが多かった船に、水揚げが少なかった船が氷を漁場で渡して、鮮度の維持に努めている。水産物の価値を高めるためのマーケティングの努力も惜しまない。漁協で料理教室を主宰したり、浜のかき揚げ屋を運営したりして、地域ブランドの確立に努めている。

③ コミュニティーの連帯

プール制度のもとで、グループ操業をするために、漁師の連帯感が非常に強い。競争漁業では、漁業者は有限の資源を奪い合うライバルになるのだが、平等配分のプール制のもとでは同じ資源を共有する仲間になるのだ。漁業者が集まって話し合いをする機会が多いからだろう。この浜の若い漁師が多くて、仲が良い。プール制度を導入した先人に感謝をしつつ、地域の漁業をより良くするために、様々な取り組みを行っている。

福島の漁業はどこを目指すべきか

福島県では、今後も放射能検査の関係で水揚げ量を制限せざるを得ない。限られた漁獲量で、一人でも多くの漁業者を生活させるには次の2点が重要になる。

① 漁業全体の生産金額を大きくする(すなわち単価を上げる)
② 売り上げを平等に配分する

これらの条件をすでに満たしているのが、今回視察をした由比港漁協のサクラエビプール制度なのだ。

福島県に限らず、日本のほとんどの漁業は、早い者勝ちの自由競争だ。競争漁業では、魚を獲りすぎて資源を枯渇させてしまいがちである。環境要因などの影響で一時的に魚が増えたとしても、皆でまとめて水揚げをするから値崩れになり、豊漁貧乏になってしまう。どっちに転んでも漁業経営は厳しくなる。単価の安さを量でカバーしようとすると、鮮度管理などがおろそかになり、魚価がますます下がるという悪循環。日本の漁師の大部分は、「魚価が安い」とこぼすが、場当たり的に獲れるだけ獲っていて、魚価が上がるはず無いのである。

資源が回復し、漁獲量が制限される福島の漁業は、「量から質への転換」をするための条件が整っている。由比のプール制度を手本に、福島の漁業の現状にあった制度を当事者の手で築いて欲しい。それが福島の漁業の創造的な復興につながるはずだ。

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