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漁業管理

検討会という茶番


先日、水産庁の資源管理あり方検討会が開かれた。この手の検討会が開かれるのは実に6年ぶりである。6年前の検討会は、資源管理反対派を集めて、資源管理をしない言い訳を並べただけだった。今回も、俺以外はこれまでと同じメンバー。水産庁OBが大勢をしめる委員たちは、「日本の漁業管理はすばらしい」と自画自賛しているだけ。今年の3月から6月まで、密度が低い会議をたった6回しただけで、国の漁業政策の方針を決めようというのだから、乱暴な話である。

水産庁にとって、この手の会議は、財務省と政治家に予算をねだるための儀式である。議論の内容ではなく、会議をやったという既成事実が重要なのだ。会議の着地点(とりまとめ)は、あらかじめ決められている出来レースだ。その証拠に、俺以外の委員は、「日本の漁業は現状でうまくいっている」と言い張って、個別漁獲枠方式(IQ方式)の問題点を並べて反対していたのだけど、会議のとりまとめは「IQを試験的に導入して、実証試験をします」という結論になる。残念ながら、検討会の内容には、大した意味がないのである。

6年前と今とで、「はじめに結論ありきの出来レース」という部分は変わらないのだが、出来レースの着地点が大きく変わった。6年前は「公的機関は資源管理をやりません」という結論の出来レースだったのだけど、今回は「とりあえずIQを試験的にやります」という結論の出来レースだった。出来レースの出口が変わったのは、水産行政を取り巻く情勢が変わったからである。6年前は「資源管理はやらないけど、業界団体に配るから予算をちょうだい」という主張が通った。でも、今は、「資源管理やるから予算をちょうだい」と言わなければ通らなくなったのだ。世論の変化が、じわじわと効いてきている。

では、水産庁もついに資源管理をやる気になったのかというと、どうもそうではない感じ。検討会で何かが決まったからと言って、物事が前に進むとは限らない。下手をすれば、逆方向に走ることだって十分にあり得る。だから、何を言っているかではなく、実際に現場で何をやっているかを見極める必要があるのだ。

検討会で、大臣許可の巻き網漁業を対象にマサバ太平洋系群にIQを試験導入することになった。それ自体は良いことだと思うのだけど、漏れ聞いてくる話を総合するととてもやる気があるようには見えない。大型の巻き網船は5隻ぐらいで船団を組んで操業する。以前は太平洋にに100を超える船団が集まったのだが、たこの足食いのような乱獲レースでつぶし合いをした結果、現在は20程度の船団しか残っていない。今回のIQの実証試験では、規模が小さな2~3船団のみに個別の漁獲枠を導入する計画らしい。個別漁獲枠の目的は、早獲り競争の抑制することによって、魚の質を向上させて、操業コストを削減することである。ごく一部の漁船にだけ形式的な漁獲枠をいれても、早獲り競争は抑制できないのだから、IQの効果が期待できないのは自明だろう。「IQの実証試験をやったけれど、効果がないからやめます」というために実証試験をしているようなものである。実証試験といいつつも、その実態は「資源管理をやらないためのアリバイ作り」なのだ。仕事をしないことにかけては、実に有能な組織である。

福島県の漁業の復興 その2 由比港漁協のプール制度


前のエントリで、福島の漁業復興の課題を説明した。その課題をクリアするためのヒントが、由比港漁協にある。

サクラエビ漁業の歴史

まずは、由比港漁協の主力漁業である桜エビ漁の歴史から解説しよう。サクラエビは、昼間は水深200-300mに分布しているが、夜中に水深20-30mまで浮上する。明治27年に、そのことを二人の漁師が偶然発見したことにより、サクラエビ漁業が始まった。当初のサクラエビ漁業は、極寒の夜間に操業するため、厳しい労働環境だったようである。漁船の動力化、大型化、昭和30年代から、ネットローラー(網揚げの機械化)や魚群探知機の普及など、様々な技術革新によって、漁獲効率は大幅に上昇した。その結果が、豊漁貧乏であった。

プール制の導入

昭和42年、43年と大漁であったが、エビの価格が大暴落してしまった。そこで、漁業者は、水揚げをプールしたうえで、売上金を均等配分することにした。均等配分は腕の良い(沢山獲れる)漁師の反対で頓挫するのが普通なのだが、由比の場合は、水揚げ量の多かった漁師がリーダーシップをとって話をまとめた。

昭和40年代は、高度経済成長に伴って、沿岸域の開発が急ピッチで進められた時期でもある。静岡県でも、火力発電所建設や田子の浦ヘドロ公害など、様々な問題が生じていた。漁業者が団結をして、沿岸の環境を守るための抗議活動を行ったことがきっかけとなり、漁民の間の連携が高まった。そして、昭和52年には地域の全船が参加する総プール制が確立した。

現在のプール制のシステム

静岡県サクラエビ漁業組合の下部組織である出漁対策委員会が、出漁するかどうかを決める。司令船の役割を果たす一隻をもうけて、無線で指示を出し一斉に操業を開始する。各船は水揚げ漁を司令船に報告し、出漁対策委員会が定めたその日の総水揚げ量に達した次点で、操業は終了となる。そして、その日の水揚げ金額を、船主・乗組員総数で均等に割った金額を各人の取り分としている。

プール制のメリット

プール制のメリットをまとめると次の図のようになる。

キャプチャ

① 早捕り競争の抑制

プール制の導入によって、早捕り競争が抑制されたことによって、出漁日数が減り、操業コストが削減され、労働条件が改善された。また、限りある資源を大切にしようという意識が高まった。漁協の青年部が自ら産卵調査を行って、産卵親エビの維持に努めている。資源の持続性が保たれているので、結果として漁獲量が安定し、漁業経営にも好影響を及ぼしている。

② 量から質への転換

自然の生産力には限りがあるので、持続的に漁を行えば、漁獲量は自ずと限られてしまう。漁獲量が増やせない状況で、売り上げを伸ばすには、単価を上げるしかない。由比港漁協では組合員が一丸となって、魚の単価を上げるための努力をしている。夜間に水揚げした桜エビは、朝の競りまで市場に保管することになる。由比港漁協の競り場は、温度管理ができる最新の設備となっている。エビの水揚げが多かった船に、水揚げが少なかった船が氷を漁場で渡して、鮮度の維持に努めている。水産物の価値を高めるためのマーケティングの努力も惜しまない。漁協で料理教室を主宰したり、浜のかき揚げ屋を運営したりして、地域ブランドの確立に努めている。

③ コミュニティーの連帯

プール制度のもとで、グループ操業をするために、漁師の連帯感が非常に強い。競争漁業では、漁業者は有限の資源を奪い合うライバルになるのだが、平等配分のプール制のもとでは同じ資源を共有する仲間になるのだ。漁業者が集まって話し合いをする機会が多いからだろう。この浜の若い漁師が多くて、仲が良い。プール制度を導入した先人に感謝をしつつ、地域の漁業をより良くするために、様々な取り組みを行っている。

福島の漁業はどこを目指すべきか

福島県では、今後も放射能検査の関係で水揚げ量を制限せざるを得ない。限られた漁獲量で、一人でも多くの漁業者を生活させるには次の2点が重要になる。

① 漁業全体の生産金額を大きくする(すなわち単価を上げる)
② 売り上げを平等に配分する

これらの条件をすでに満たしているのが、今回視察をした由比港漁協のサクラエビプール制度なのだ。

福島県に限らず、日本のほとんどの漁業は、早い者勝ちの自由競争だ。競争漁業では、魚を獲りすぎて資源を枯渇させてしまいがちである。環境要因などの影響で一時的に魚が増えたとしても、皆でまとめて水揚げをするから値崩れになり、豊漁貧乏になってしまう。どっちに転んでも漁業経営は厳しくなる。単価の安さを量でカバーしようとすると、鮮度管理などがおろそかになり、魚価がますます下がるという悪循環。日本の漁師の大部分は、「魚価が安い」とこぼすが、場当たり的に獲れるだけ獲っていて、魚価が上がるはず無いのである。

資源が回復し、漁獲量が制限される福島の漁業は、「量から質への転換」をするための条件が整っている。由比のプール制度を手本に、福島の漁業の現状にあった制度を当事者の手で築いて欲しい。それが福島の漁業の創造的な復興につながるはずだ。

資源回復計画が予想通り破たんして、青森県のイカナゴが禁漁となった


青森県でイカナゴが禁漁となった。この背景について、考えてみよう。

毎日新聞: イカナゴ:全面禁漁へ 春の味覚、乱獲で激減 陸奥湾6漁協、特定魚では初 /青森
陸奥湾でとれる春の味覚「イカナゴ(コウナゴ)」が乱獲などで激減していることを受け、県と湾内6漁協は今春から、全面禁漁することで合意した。当面、禁漁期間は定めないまま資源量の回復を待つ。
昨年の湾内の資源量は1000万匹以下とみられ、県は3億匹まで回復させることを目指す。

 湾内でのイカナゴの漁獲量は73年の約1万1745トンをピークに減少が続き、昨年は約1トンまで落ち込んだ。漁獲金額も77年の約11億円から昨年は約40万円に減っている。海水温の低下でイカナゴが育ちにくくなったことや乱獲が原因とみられる。
http://mainichi.jp/area/aomori/news/20130214ddlk02040018000c.html

東奥日報: 陸奥湾イカナゴ、今春全面禁漁
禁漁措置について、脇野沢村漁協の千舩五郎参事は「ここ数年、ほとんど漁獲されず、ここまで落ち込めば禁漁はやむを得ない」、三厩漁協の廣津長一参事は「イカナゴの稚魚を餌にする他の魚種の漁獲にも影響するためイカナゴの資源回復は重要」と話した。
http://www.toonippo.co.jp/news_too/nto2013/20130213110002.asp?fsn=eb33f76037153e93cde084f7e7644d6f 

「青森県のイカナゴが減少をしたので、資源回復のために禁漁します」 ということなんだけど、以下の2点に注意してほしい。
1) 親魚量が適正水準の1/30まで減少している
2) 漁獲がほぼ成り立たない水準(県全体の生産金額が40万円) まで落ち込んでいる
ようするに、漁業が成り立たなくなって、禁漁してもしなくても、変わらないぐらい魚が減ってから、ようやく禁漁にしたのである。ノーブレーキで壁に激突してから、ブレーキを踏んでいるようなものです。これをもって、美談とするのは大間違い。むしろ、「なんでここまで減らしたのか」を考えて、再発防止をしないといけない。

イカナゴ資源の減少は、かなり前から問題になっていた。2007年から、 「青森県イカナゴ資源回復計画」が行われていた。行政と漁業者が、資源回復に努めていた(はずの)資源がここまで、減ってしまったのである。

青森県がウスメバルとイカナゴの「資源回復計画」を作成
青森県は日本海、陸奥湾、津軽海峡海域のウスメバルに関する「青森県ウスメバル資源回復計画」、陸奥湾湾口周辺海域、白糠・泊地区周辺海域のイカナゴに関する「青森県イカナゴ資源回復計画」を作成し、2007年3月28日付けでこの2つの計画を公表した。
「資源回復計画」は悪化傾向にある日本周辺水域の水産資源の回復を漁業関係者や行政が一体となって取組むために策定されるもので、複数県にまたがり分布する資源については国が、分布が一都道府県内にとどまる場合は都道府県が計画を作成することになっている
http://www.eic.or.jp/news/?act=view&serial=15742

資源回復計画の概要はここにある。(水産庁は頻繁にURLを変えるので、リンクが切れていた場合は、”青森県” “イカナゴ” “資源回復計画”で検索してください。)

http://www.jfa.maff.go.jp/j/suisin/s_keikaku/pdf/aomori_ikanago.pdf

できれば内容に目を通してほしいのだけど、資源回復計画が策定された当時の状況を見てみよう。

長期的な漁獲量のトレンドは、下図のようになる。1980年代から、1990年代中ごろまでの不漁は、マイワシが増加した影響だろう。1990年代中ごろに、マイワシがいなくなって、イカナゴに努力量がシフトして、すぐにイカナゴの漁獲量が減少を始める。1997年から2006年までに漁獲量は5%程度まで減少をしている。6年前には、すでに、何らかの資源回復措置が必要という共通認識が、行政にも漁業者にもあったのだ。

 

資源回復計画の目的は、産卵量の確保であった。イカナゴの産卵数と新規加入個体数には次のような関係がある。産卵数が5兆粒を下回ると、翌年の加入資源尾数(卵の生き残り)が減少するという傾向が見て取れる。この資源を持続的に有効利用するには、良好な加入が期待できる5兆粒以上の親を残しておくことが望ましいのである。この産卵量を維持するのに必要な親の量は3.5億尾となる。この分析自体は、非常に良いと思う。問題は、そのための措置が取られなかったことである

 

回復計画を作った時点で、「2006 年の親魚数は1.1 億尾であり、漁獲努力量を維持した場合、10 年後の親魚数が0.3 億尾に減少する」ということはわかっていた。資源量は適正水準を下回っているうえに、漁獲圧は非持続的な水準であった。明らかな乱獲状態である。本来は、漁獲圧を下げて、親魚量を回復させなければならなかったのは明白である。

県水産総合研究センターの資源解析のシミュレーションでは、イカナゴ資源を回復するためには少なくとも現在の漁獲努力量から3 割削減する必要があると予測された。しかしながら、このような大幅な削減措置を行った場合、漁業者には多大な負担を強いることとなり、漁業経営を極度に圧迫するおそれがあるため、漁期の短縮や操業統数の制限により漁獲努力量を削減し、産卵親魚を保護することにより、イカナゴ資源の減少傾向に歯止めをかけ、過去3 ヵ年(2004 年~2006 年)の平均漁獲量600 トンを維持することを目標とする。

漁獲圧を削減するときに、普通の先進国では、漁獲枠を削減する。というのも、現在の漁船の性能をもってすれば、少数の漁船で、減少した資源を短期的に獲りきることが可能だからである。漁期の短縮や操業統数の制限は、実質的な効果があまりないというのは、我々の世界の常識である。

こういった実効性の低い緩い措置が日本では主流である。その理由は、実効性が低い措置は、漁業者からの反発もすくないからである。日本では、補償金と引き換えに、こういった緩い措置を導入して、「資源管理をしていることにする」のが一般的だ。

で、どうなったかというと、こうなったわけだ。

一直線に減少し2012年の漁獲量は1トンで、生産金額は40万円。さすがにここまで減ると、市場でも扱いづらい。ということで、実質、漁業は崩壊したといってもよいだろう。「600トンの漁獲量を、400トンまで減らすのは、漁業経営を極度に圧迫する」からといって、10年もしないうちに漁業自体を消滅させてしまったのだ。

資源回復計画は、実効性のない取り組みをして、やっているふりをしているだけ。「資源管理」ではなく、「資源管理ごっこ」だから、効果はない。そんなことは、やる前から、わかりきっていたことだけどね。

資源回復計画はなぜ失敗するのか?(2007年に書いたブログの記事です)
http://katukawa.com/?p=383

日本は、漁業者が困るからと言って、乱獲を放置して、漁業を衰退させている。資源の持続性に対して責任を負うべき行政の無作為が、産業の衰退を招いてきたのである。

海外の資源管理はどうなっているかというのは、こちらを参考にしてほしい。

ノルウェー式の資源管理は日本の水産資源復活に直結するか?
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/2518?page=3

アイスランドのシシャモ漁業は、取り残すべき親の量(赤線)を維持できるように漁獲枠が決まっている。

アイスランドのシシャモは、2008年の漁獲シーズンに、資源量が少ないので禁漁という情報が流れました。しかしこの時も、禁漁になることに対して漁業者が大騒ぎするわけではなく、資源量が少ないので「回復を待たねばならない」という意識が強かったのが印象的でした。日本であれば「魚はいる!獲らせろ!」と大騒ぎになるケースであったことでしょう。

アイスランドの場合は、ちゃんと赤の線が維持できるように漁獲枠の削減をしたから、すぐに資源が回復した。アイスランドは、網を引けば魚がいくらでも獲れる時期に禁漁をしている。ノルウェーもシシャモが減ったらすぐに禁漁だし、ニュージーランドに至っては、漁業者が「資源回復のために漁獲枠を減らせ」と主張して、政府に漁獲枠を削減されせている。魚が獲れなくなってから禁漁をする日本とは根本的に違うのである。

読者の皆さんにも考えてほしい。漁業者がかわいそうだからと言って魚がいなくなるまで規制をしなかった日本と、資源の持続性を守るために魚がいるうちにきちんと規制をしたアイスランドと、どちらの漁業者が本当にかわいそうだろうか。ちなみに、アイスランドの漁業者は、儲かって、儲かって仕方がないようですよ

なぜ入口管理は機能しないのか? その1


読者のI. Sakaguchiさんから、次のようなコメントをいただいた。

国内漁業の管理の問題がより重要になると考えております。ただし、国内資源の場合は条約を作って規制する云々の話にはなりませんので、基本的には学習や政 策拡散が重要となります。こういったプロセスを分析するのが研究課題となり、ITQの世界的広まりに興味を持っています。国内ではefforts controlとITQの間で政策的議論が繰り広げられているようですが、フェロー諸島の漁業管理(鱈など)は前者の譲渡可能版のように見えます。漁獲能 力の増強をコントロールできればこれも有力な選択肢にも見えます。機会がありましたら、こういったシステムの可能性についてのお考えもウエブなどでお聞か せいただければ幸いです。

これは重要な問題だと思うので、少しまとめてみよう。

議論の前提として、用語の整理をしておこう。漁獲圧を規制する方法としては、入口規制と出口規制の2つのアプローチがある。

1)入口規制
出漁する船の数、出漁時間、曳網回数などに上限を設けるアプローチで。出漁時間など漁獲努力量を制御するエフォートコントロールと漁具や漁法の規制をテクニカル・コントロールが含まれる。

2)出口規制
港に水揚げされる漁獲物の量を規制するアプローチ。全体の漁獲枠を早い者勝ちで奪い合うオリンピック方式と、漁獲枠を予め個々の経営体に配分する個別漁獲枠方式がある。

沿岸国による一般的な漁業管理は、以下のような順序で進化した。

1)ライセンス制度

2)テクニカルコントロール

3)漁獲枠(オリンピック)

4)個別漁獲枠

こういう順序になるのは、理由がある。1)から4)の順に、導入のハードルが高くなるのだ。どの国も、入れやすい制度から順次導入していったが、効果が無かったので、徐々に管理のハードルを上げていき、結果として個別漁獲枠に到達したのである。

ここで、注意しておくべきことは、それぞれの方法はAlternativeではなく、併用される点である。ほとんどの漁業は、ライセンス制度を導入した上で、テクニカルコントロールも行い、漁獲枠を設定した上で個別配分している。国内の有識者は「入口規制と出口規制のどちらが優れているか」というような議論を延々としているのだが、そういう議論をすること自体が無知の証である。

「入口規制のみでは、水産資源の持続的利用は無理」というのが、世界の漁業国の結論である。水産庁は、かたくなに出口規制を拒んでいるのだが、日本の漁業がなすすべもなく衰退していることからも、入口管理では不十分なことは明らかであろう。

(つづく)

マグロの国際規制に関する予習資料


マグロの輸出規制は、1992年からの歴史的経緯を追っていくと、「ああ、ついにきちゃったね」ということになるんだけど、国内ではそういう歴史を追えるような情報がない。マグロ保全問題について知りたければ、とりあえず読んでおくべき本をまとめておこう。


マグロは絶滅危惧種か (ベルソーブックス)

まずは、遠洋水研の魚住さんの本。この本に目を通すと、大体の状況と、日本の業界サイドの言い分がわかる。ただ、この本が出てから状況はだいぶ動いていることには注意が必要。


飽食の海―世界からSUSHIが消える日

逆の視点から理解するには、この本がおすすめ。日本ではさっぱりだったけど、原著『 The end of the line』は、欧米で大ヒットし、世論に大きな影響力を与えた。賛成する、しないは、べつとして、こういう本が受け入れられて、世の中を動かしつつあると いう現実は知っておくべきだろう。

飽食の海の212ページから、IUCNマグロ問題に関する記述がある。

日本は、会合の場でこそ抗議しなかったが、国に帰るや否や、猛攻を開始した。”漁業”は世界的な産業だから、それに悪影響を及ぼすようなことなど認められないのだった

最初のセッションで日本が立ち上がり、マグロについて抗議した。総じて参加国には悪い態度が目立ちったが、いくつかの漁業国は「極端に欺瞞的だった」ことを覚えている、と博士は言う。

と、日本に手厳しいです。日本人は、消費者としての責任を問われている。


IUCNの日本代表の松田裕之さん(横浜国立大学教授)は、本書を「一貫性を欠く非理論的主張」と一刀両断。こちらも必読です。

漁業と魚食を批判する欧米世論 : チャールズ・クローバー「飽食の海」を読んで
日本水産学会誌 72(5)  pp.995-998 2006
http://ci.nii.ac.jp/Detail/detail.do?LOCALID=ART0007920925&lang=ja


それから、俺もちょっと書いているんだが、こんな本もあります。IUCNの基準や計算方法など、詳しいことも書いてあります。残念ながら、非売品。

ワシントン条約附属書掲載基準と水産資源の持続可能な利用
http://risk.kan.ynu.ac.jp/matsuda/2004/CITESbook.html

まだ、余部があるので、欲しい人にはあげます。ただし、三重大まで取りに来れる人限定(笑
三重まで来るのが面倒な人は、発行元の自然保護協会に問い合わせてみると良いでしょう。

利益が出る漁業とは?


急がしてレスが遅れてしまいましたが、行政、流通、漁業者のお三方が、興味深い書き込みをされていたので、私見を述べたいと思います。

県職員さん
「多く獲る」ことに対する競争意識をなくし,資源を「少なく獲って」いかに「利益」を増やすか,合わせて資源を「いかに増やすか」の部分で競争してもらうよう頑張らねば。

さかなやオヤジさん
これを推進するにはハッキリ言って「高く買う」以外方法はありませんね。
確かに現状でも、その魚の扱いなどである程度差別化が出来ることもありますが、
うまく行っても1割2割高どまり。
扱いの悪い(または普通と言いますか)魚との差が2倍くらいになれば、漁業者も気づくはずです。
本来、ブランド化というものはそういうところから派生してもらいたいんですが、
皆さんご指摘の「組合」という集合体の中で意見すれば全てがブランドと言うことになる。
良い扱いをした魚を高く買い取り販売していく、と言うのが私の理想です。
少しずつですが、実現に近づいています。

県職員さん
漁業経営は簡単に言うと 
利益=漁獲量×単価-経費
ですので
漁業者が「利益」を増やすためにはいろいろ考えられる方法があると思います。
まず「経費を削減する」,
そして「高い魚を獲る(高級魚を獲るという意味ではなく,小型魚を獲らず大きくなってから獲る)」「ブランド化(ブランド化しなくてもきっちりとした取り扱いをする事なども含まれる)などによる差別化を図る」「6次産業化に取り組む(漁獲した魚で加工品を自ら作成し販売する)」
「漁獲量」を増やすために「資源量を増やす」

勝川先生がおっしゃっている事ですよね。

沿岸漁業の一漁師 さん
>品質と供給が安定させれば

うちの地元はそのための経費やコストがもったいないという状況ですね

>3)魚価を上げること(安売りをしないこと)
『安売り=良心的』、『価格転嫁・真っ当な対価報酬の要求=守銭奴』という概念が染み付いちゃっていますからね・・・・・・・・・。

県職員さんのご指摘の通り、漁業利益=漁獲量×単価-経費であります。漁業先進国の漁業者は、漁獲量を控えめ・安定に保ち、単価を上げる戦略をとっています。一方、日本の漁業者は、ブランド化で単価の上昇を期待しつつ、漁獲量を増やして、経費を減らす戦略をとっています(まあ、戦略なんてレベルではありませんが)。漁業先進国が収益を着実に伸ばしているのに対して、日本は壊滅的にじり貧です。なぜこのような差が生じるかというと、漁で勝負する漁業というのは、EEZ時代以降は、ビジネスモデルとして破綻しているからです。

現在の人間の漁獲能力は、魚の生産力を大きく上回っている。この状況で、皆が多く獲ろうとすれば、必然的に資源が減少する。資源が減少すると、価値が高い大型魚から姿を消し、単価の低い小型魚しか獲れなくなる。短期的な漁獲量を増やすと、長期的な漁獲量と魚の質が減少するのです。さらに、漁業者が早獲り競争をしていると経費が増えます。先ほどの漁業利益の式に当てはめてみれば、漁獲量が減って、単価が下がり、経費が増えるのだから、儲かるはずがないのです。

日本の漁業者は、獲れるときに、獲れるだけ、獲ります。これを皆がやると、必然的に漁獲が漁期はじめに集中することになる。これが更なる単価の下落を招くのです。鮮魚市場の大きさは限られていますから、水揚げが集中すると、単価はてきめんに下がります。特に、産地市場では、トラックの大きさを超過して水揚げをして、ゴミになることも、少なくないわけです。

09062301

売り上げは、単価×漁獲量ですから、次のようになります。

09062302

価格を維持しながら、ほどほどに獲った方が利益が出るわけです。魚がきたら、皆で獲りまくり、値崩れをさせながら、あっという間に獲り尽くすというのは、最低・最悪の獲り方です。市場が必要とする漁をコンスタントに供給した方がよほど利益がでるのです。例えば、上のモデルで魚が80尾いたとします。1日で水揚げすれば、80×20円=1600円の売り上げにしかなりません。40尾ずつ、2日に分けて獲ると売り上げは3倍になります。

40尾×60円×2日=4800円

10尾ずつ8日に分けると、売り上げは更に増えます。

10尾×90円×8日=7200円

持続的に漁獲できる量は限られているのだから、それをできるだけコンスタントに、市場に供給できるように努力をすべきです。ほとんどの漁業で、獲りすぎる日を無くして、漁期を長くするだけで、価格は上がります。日本の漁業者は、「今日捕れる魚を明日に残さないのが漁業者だ」とか、「親の敵と魚は見たら獲れ」といった考えが骨の髄までしみこんでいますが、こういう考えで海に出ているうちは、どうしようもないですね。

よく言われることですが、マイワシの豊漁で倉を建てた人はいません。みんながドカドカ水揚げしているときには単価がつかないからです。80年代のマイワシのように、資源が豊富であれば、多く獲るのもやむを得ないかもしれませんが、低水準のサバを、1000トンも2000トンも、まとめて水揚げするのは、全く愚かな行為です。その愚かな行為を税金で支えているのだから、日本の漁業は衰退して当然でしょう。

つづく

またノルウェー漁業が記録更新です


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また、ノルウェーが記録を更新したようだ。ノルウェー漁業は、強いね。NZもそうだが、資源管理をしている漁業は、自国の通貨が弱くても強くても、安定した利益を出すことが出来る。一方、資源管理をしていない日本の漁業は、円が強ければ輸入魚に淘汰され、円が弱ければ途上国に小型魚を投げ売りして自滅。
うまくいっている漁業国の後追いすらせずに、公的資金で燃油補填をしてもらって当然みたいな態度は、正直、どうかと思います。

Hoki Story その2


まずは、Hokiの生態について、簡単に説明しよう。俺の手元には、NZのホキレポートがある。280ページで、凄い分量だ。漁獲の情報、漁獲の体長・年齢組成、CPUE、トロール調査、ぎょたん調査と、内容もてんこ盛り。ネットにもそれに近い情報があるので、関心があるひとは目を通してほしい。
http://fpcs.fish.govt.nz/science/documents/%5C2008%20FARs%5C08_62_FAR.pdf

この資料は基データに近い情報も多く含まれており、一般人には理解できない部分もあるだろうが、かなりしっかりとした評価をしているのは理解できるとおもう。

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Hoki Story その1


まずはNZの漁業の大まかな動向を抑えておこう。NZでは、漁業は輸出産業である。輸出金額の推移を見れば、国内の漁業生産を把握できる。

輸出金額は、2000年の1400m$から、2007年の1200m$に減少をしたが、その減少はHokiの減少と一致する。NZの輸出金額は、Hokiをのぞけばほぼ横ばい。2000年には、Hokiがダントツで1位であったのが、2007年には3位まで落ち込んでいる。Hokiは、NZの漁業生産金額に影響を与えるような重要な資源なのだ。

img09040820
http://www.fish.govt.nz/en-nz/SOF/ExportEarning.htm?DataDomain=SpeciesGroup&DataCount=10&ChartStyle=Line&text=short

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水産庁のNZレポートを徹底検証する その9


NZでは、資源が悪化しているものが多い

水産庁は、NZでは資源が悪化しているものが多いと指摘しているが、これは事実に反している。NZの資源評価の結果は下の表のようになる。NZでは、資源がMSY水準よりも上かどうかで、資源状態を判断している。いくつかのカテゴリーがあるのだが、MSY以上とMSY未満で、ざっくり分けてみよう。

状態 Condition 数(176)
不明 Unknown 98
OK Yes1 21
ほとんど利用されず Yes2 7
たぶんOK Probably 16
OKだとおもう Possibly 14
たぶんNO Probablynot 4
NO No 16

資源評価が行われている資源に関しては、MSY水準以上が58系群に対して、MSY水準未満が20系群という結果であった。資源評価している系群の 75%はMSY水準以上が維持できている。75%という数字は、世界的に見ても立派なものだ。「資源評価が行われている主要魚種についても資源が悪化しているものが多い」という水産庁レポートは事実誤認である。

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