魚種別 Archive
大学の研究者が果たすべき役割
「なんで、この人はこんなに必死なの?」と思っている人も多いだろう。
そこで、俺が考える大学の研究者の役割と、必死な理由を説明しよう。
どういう立場でABCに関わっているかというと、
ABCを決める際に科学的なアドバイスをして欲しいと言うことで、
水研センターから依頼をされて、事前検討会とブロック会議に参加している。
会議に参加をしても、交通費しか出ない。
弁当代も、懇親会のお金も自腹の完全にボランティアのお手伝い。
資源評価票には俺の名前は出ないし、評価票に対して何かの責任を問われることはない。
漁業者、行政、水研センターなど、ブロック会議の参加者は、
資源や漁業と何らかの関わりを持っている。
彼らは、自らの組織を代表して参加しているわけで、
組織の利益の代弁者としての発言を要求される。
みんな、重たいものを背負って会議に来ているのだ。
「減っているのはわかるけど、生活もある」
「減っているのはわかるけど、正直に書くと怒られる」
とか、いろいろあるのだろう。
自分の発言は、組織にも多かれ少なかれ影響を与えてしまう以上、
自分が理想を通そうとすると自分一人の問題ではすまない。
それに対して、俺は何も背負っていない。
スケトウダラが豊漁になっても何の利益もないし、
逆にスケトウダラ漁業が崩壊しても何の不利益もない。
ぶっちゃけ、スケトウダラ資源がどうなろうと、俺の生活には全く影響がないのだ。
漁業の利権システムとは無関係であるが故に、発言の自由がある。
みんなが言いづらいことを、俺が言わなければ、いったい誰が言うのか。
発言の自由が保証されているということは、発言をする責任もある。
何も背負っていないが故に、妥協は許されない。
自分が日本漁業の未来を守る最後の砦だという気概と責任感を持って、
相手が誰であろうと、言うべきことは言わないといけない。
それが資源研究者としての最低限の責任なのだ。
水産業という利権システムの内側では、発言の自由は制限されてしまう。
この困難な時代にあって、大学の研究者の果たすべき役割は大きい。
同業者には、是非、ブログを書くところから初めてもらいたいものだ。
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来年はもう少し勉強してきてください
水産庁には、業界とのしがらみがあり、
資源評価票に、これは書いて欲しくないとか、最低限これだけの漁獲枠は欲しいとか、
いろんな注文が来ているのだとは思う。
ただ、評価票に影響力を持ちたければ、もう少し勉強をしてから来て欲しい。
議論の場に最低限必要な知識が無い人間をいくら送り込んでも無駄なのだ。
例えば、班長はスケトウ日本海北部に関して、
「海洋環境が悪いんだから、この資源は獲らなくても減っていくに決まっている。
日本の出生率が2を下回っているのと同じような状況なんだから、
親を守れといっても漁業者は納得しない」という発言をした。
とても「スケトウダラ回復計画」を推進している部署の偉い人の発言とは思えない。
人間の出生率に近い考え方は、水産分野にもあり、それはSPRと呼ばれている。
出生率云々という発言から、班長はSPRの存在を知らないことがわかる。
SPRとは、漁獲開始サイズまで成長した個体が生涯に産む産卵量の期待値で、
漁獲がない場合のSPRを100%として相対値で示すのが一般的だ。
スケトウダラの場合は「資源を維持するために必要なSPRは60%」と明記してある。
漁獲がない場合の60%の産卵量で資源水準を維持できるということは、
漁獲がなければ資源量は1世代に1.7倍(=100/60)に増えるわけで、
獲らなくても減るような状況ではない。
SPRのことを知っていれば、これぐらいのことは瞬時にわかる。
重要魚種の評価票の多くは、SPR解析を基本に書かれている。
評価票に目を通しているなら、SPRを知らないと言うことはあり得ない。
SPRを知らないと言うことは、評価票に目を通していないのだろう。
資源評価票は何年も議論を重ねてきて、現在のスタイルに落ち着いている。
基本的な内容すら理解できていない人間が怒鳴り込んできて、
「つべこべ言わずに俺たちの言うとおりに書き換えろ」といっても、通るわけが無い。
それが通るほど、ABCを決める舞台は腐ってはいない。
評価票の質を落とさずに、管理課の意向にも配慮した書き方はあると思う。
そのためには、評価票の内容を理解している人を派遣してほしい。
その上で、きちんと議論をしながら、落としどころを探っていければ良いですね(^^
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北海道ブロック会議の顛末
今回の会議では、これは書かねばなるまいという事件があった。
「今回の会議は公開だから、ブログに書けますよ」とか、
「このことは、是非、ブログに書いてください」とか、
「あの件は、どういう風に書くの?」とか、
会議が終わる前から、複数の方から外堀を埋めて後押しをしてをいただきました。
もともと、書くつもりだったけど、もはや書かないことは許されない情勢。
バッチリ書きます。
今回の会議の争点は、スケトウダラ日本海北部系群。
この資源は、北海道の日本海側の最重要資源。
この資源を守れるかどうかが北海道漁業の生命線となる。
このあたりに書いたような流れで、目標資源量を大幅に低くすることになった。
目標資源量が前年と同じならABCはほぼ半減になるのに、
目標資源量をさげた結果として、ABCはほぼ横ばいになっている。
目標変更に関する記述が評価票案にほとんど無かったので、
これは由々しき事態だと思ったので、パワーポイントファイルをつくって、
次のような話をした。
実現不可能になった目標を捨てて、
新しく下方修正した目標を設定すること自体は理解できる。
しかし、目標を下方修正するにあたって踏むべき手順が無視されている。
資源の減少にあわせて目標資源量をズルズル下げていけるなら、
資源の減少に歯止めをかけることはできない。
うやむやに目標の下方修正ができるなら、ABCは努力目標ですら無くなる。目標の下方修正に必要な手順
- 目標が非現実的になる
- 失敗を認める
- 原因の究明
- 再発防止
- 次の目標を設定する
このうち2から4が抜け落ちている。
必要な記述
① 去年と今年の目標の変更を明らかにすること
② 目標の下方修正の原因を検証すること
1)目標の妥当性の検証
目標がそもそも非現実的だったのか
目標は現実的だったが管理に失敗したのか2)管理の失敗の原因の分析
ABCが過剰 → 科学者の責任 or 科学の限界
TACがABCを超過 → TACを決めた人の責任
漁獲量がTACを超過 → 漁業者の責任③ 再発防止について
特定された失敗原因をもとに再発防止策を練る。ABCの役割
ABCには2つの役割がある。
一つは、乱獲を食い止めるブレーキとしての機能
現在のTAC(漁獲量)はABCを遙かに超えている状況であり、
残念ながら、ブレーキとしては機能していない。もう一つは、リスクを周知するクラクションとしての機能
「資源が減っているぞ」とか、「このままではまずいぞ」という情報を発することで、
リスクを伝達するのがABCの最低限の役割である。
目標をさりげなく下方修正することが許されるなら、
クラクション機能すら失ってしまう。ABCがその意義を失うかどうかの瀬戸際なので、
目標を下方修正する経緯について詳しく書かないといけない。
担当者にとって厳しい要求であることは理解しているが、
この部分を曲げてしまえば、もはやABCは完全に形骸化してしまう。
以上が、俺の話の内容。
それに対して、北大の松石さんから
「管理目標の変更は、実現不可能になったからではなく、
前から予定されていたことだ」というコメントがあった。
それに対して、俺はこう返答した。
「予定されていたなら、それはそれで良い。
ただ、目標を変更したことは明記すべきだし、
目標を変更した経緯についても書く必要がある。
資源が減少しているのに、ABC殆ど変わらない。
(目標を下方修正していなければ、ABCはその半分ぐらい)
目標が変更されたことを知らない人には、資源の現状が伝わらない」
その後も細かい議論が続いて、
最終的には、担当者が手直ししたものを翌日提示することになった。
我々が酒を飲んでいる間に、担当者は徹夜をして、
俺の要求を盛り込んだ新バージョンをつくり、翌日の午前中に修正点を説明してくれた。
「これは書けませんでした」という部分もいくつかあったけれど、
全体としては、頑張って書いてもらえたと思う。
読んだ人に目標が下方修正されたことがダイレクトに伝わるような内容になった。
ABCの最低限の役割は守れたことで、ほっと一息入れようとしたその瞬間、
水産庁のTAC班長が立ち上がって、
「俺はこんなやり方は承認しない。
とにかく新しく書き足した部分を全部削れ。
ワードファイルを今すぐ開いて逐一チェックさせろ」と大声を張り上げた。
理由もなにも言わずに、「とにかく削れ、こんなものは認めない」と連呼する。
あげくの果てに、「こんな会議は意味がない」とまで言い出して、場内騒然。
俺は頭に来て、
「俺が書き足すように言った部分を全部削れとのことだけど、
なぜ、こういうものを書く必要があるかは、昨日ちゃんと説明をしました。
あなただって、その場にいて、聴いてたでしょ。
そのときに一言もいわないで、後になって理由も言わずに全部削れというのは無いだろ。
俺は、新しく書き加えた部分が必要な理由を述べたわけだから、
削れっていうなら、削るべき理由を言うのが筋だろう。
この会議に意味がないわけではなくて、あなたがないがしろにしているだ。」
と言い返した。
場内は、静まりかえる。
班長は、下をむいてぶつぶつなんか言ってたけど、
俺には何の反論も返ってこなかった。
結局、俺の意見に沿って修正されたバージョンがそのまま採択された。
こうして、ABCの最低限の機能は守られたのでした。
ブロック会議は公開みたいだから、是非、皆さんも足を運んでください。
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情報公開の重要性
今日は、青山でスケトウダラの内部検討会。
子供を保育園に預けてから、自転車で行くことにした。
代々木公園を突っ切るルートでいった。
空は曇りで空気は涼しくて、とても快適。
で、肝心の会議なのだけど、内容については書かないで欲しいとのこと。
俺がここに会議の内容に関連することを書くと、中の人が大変になるらしい。
関係者に余計な労力をかけたくないので、ぐっとがまんで、会議については書きません。
その代わり、情報公開の重要性について書くことにする。
現在のTAC制度が機能していない最大の要因はABCとTACの乖離だろう。
研究者が計算をした生物学的許容漁獲量(ABC)に対して、漁業者の合意が得られない。
結果としてABCを遙かに上回る漁獲枠が設定されて、資源は減り続けている。
漁業者にとってABCは、漁業を知らない研究者達が机上の空論ではじき出した数字にすぎない。
漁業者が、ABCに合意をしないのは心情として理解できる。
俺が漁業者だったら、絶対に合意をしない。
漁業者の合意形成を得るためには完成した資源評価票をポンと出すのではなく、
評価票がどのようにして作成されたかを公開していくことが重要だろう。
国内ではベストに近いメンツで、議論を重ねて、ABCを決定しているわけだ。
もちろん、会議でオフレコなネタもでるけど、それはほんの一部に過ぎない。
何でも隠し込んで、反論するための情報を与えなければ、つっこみは入らないかもしれない。
その代償として、ABCに対する理解は得られず、意味不明な数字として無視されることになる。
ABCを決めるプロセスを公開すれば、漁業者から反対意見も出るだろうが、
当を得た意見を取り入れることで、ABCの質を高めつつ、合意形成へと進んでいけるはずだ。
現在のように、ABCが決まるプロセスに箝口令をしいている限り、まともな反論は出てこない。
資源評価担当者が漁業者から罵詈雑言を浴びせられるだけで、ABCは無視され続けるだろう。
当事者に情報を提供してが議論に参加できるようにしないと、
理解も合意も得られるはずがない。
ABCに関して、もっと積極的に情報公開をするべきだろう。
どのタイミングで、どこまで情報公開をするかに関する議論が必要だと思う。
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明日は、スケトウダラの事前検討会だ
紆余迂曲はあったものの、スケトウダラを持続的に有効利用するために
出来る限りのことをしようと思う。
スケトウダラの各系群の評価票原案がかなり早く回ってきたので、それぞれ目を通した。
平松さんも松石さんも、すでにコメントをメールで送付済み。
ということで、明日は皆さん、準備万端で、密度が濃い会議になりそうだ。
俺もいろいろと思うところはあるのだが、
内容についてここで書くとまずいのかな。明日、聞いてみよう。
子供を保育園に送ってから行くと、時間的にぎりぎりなのが気がかりだ。
今年は合意形成のプロセスを改善したいところだ。
事前検討会では、ABCの数字でもめるのではなく、
資源評価の内容で濃い議論が出来るようにしたいものだ。
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スケトウダラの資料がきた
ようやく夏本番という感じですね。
内部検討会まで1週間あるので、内容を確認する時間が十分あります。
去年までは当日配布されて、説明をされて終わりみたいなところがあったのだけど、
このタイミングでもらえれば、有意義な議論が出来そうだ。
それはそうと、内部検討会の内容って秘密なのかい?
今度、だれかに聞いておこう。
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from 18 Mar. 2009