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TAC

戦いを振り返る

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TACとABCの乖離を批判し続けて、ずいぶんと経った。漁獲枠(TAC)が持続的な水準(ABC)を超えているというのは、資源管理の原理原則からして、あり得ない。日本では、TACをABCより下げましょうという、当たり前のことを主張するのも大変なのだ。その当たり前なことを公的に主張し続けた研究者は俺ぐらいだろう。結果として、いろんなところで矢面に立つことになった。また、小松さんは、その当たり前のことを主張した唯一の行政官だったのだが、結局は水産庁を出ることになった。

ABCを超過するTACを巡る戦いの歴史を少し振り返ってみた。

2004年
北海道ブロック外部委員になる
2005年
11月 シンポジウムで、TACとABCの乖離を非難し、巻き網漁業者から恫喝される
2006年
3月 マイワシの乱獲を停止するように、研究者提言を出そうとするも断念
6月 月刊海洋にマイワシの乱獲に関する批判記事を書く
8月 釧路キャッスルホテルの戦い(怒鳴り合いの末、勝利)
2007年
1月 朝日新聞でマイワシのTACの記事が出る (一般紙初の乱獲批判)
2月 高木委員会の緊急提言が公表される
4月 マサバ太平洋系群の大臣許可の漁獲がTACを6万トン超過
5月 高木委員に呼ばれて話をする
6月 毎日新聞「ノルウェーのニシン」「魚の乱獲防止に税金投入を」
6月 小サバの輸出を批判する
7月 みなと新聞に集中連載し、業界に一石投じる (業界紙初の乱獲批判
7月 クローズアップ現代で、マサバの乱獲を取り上げる (地上波初の乱獲批判
7月 水産学会誌「マイワシ資源の変動と利用」にて、問題提起(学術誌初の乱獲批判)
7月 高木委員の本提言がでる
8月 小サバ輸出を非難する新聞報道(共同通信)
10月 ノルウェーに行き、漁業改革の必要性を確信
12月 小松さんが水産庁を離脱
12月 規制改革会議2次答申
12月 業界紙にて、マサバの乱獲を厳しく非難
2008年
3月 水産庁の見直し検討会に先駆けて、みなと新聞紙上で、TAC制度の問題点を整理してあげる
3月 水産庁→漁業情報センター→トロール→北巻きの岩崎氏(自称 民間の学識経験者)が、かみついてきたので軽くあしらう
4月 TAC見直し検討会が始まる
4月 水産庁きっての資源管理通である佐藤力成氏が、TAC真理教を発表し、一部で話題になる
4月 北海道新聞がABCとTACの乖離を指摘する
6月 フジテレビ とくダネにて、日本の漁業政策の問題点を指摘
7月 三重大に異動
7月 豪州・NZに行く
7月 ABCが複数化される
8月 低水準のスケトウダラの現状維持シナリオをABCに入れるかどうかで揉めるが、回復計画のからみもあり譲歩
9月 偉い先生がABCは無視して良いと勘違いをしていたので、誤りを指摘する
10月 ABCの批判を繰り返す懇談会に業を煮やし、自粛気味だった批判を再開
11月 朝日新聞で個別漁獲枠制度の必要性を訴える
12月 東大にてシンポジウムが開かれる。水産庁OBが動員をかけて、ヤジを飛ばしてきたので、怒鳴り返す(本郷の戦い)
2009年
1月 現地の関係者と連絡をとり、水産庁のNZレポートの誤りを指摘してあげる
3月 マイワシのTACがABCと等しくなる
4月 マサバのTACがABCと等しくなる
20XX年
x月 日本でも個別漁獲枠制度が導入され、漁業が新しい産業に生まれ変わる

それにしても、ずいぶんと、大勢の人間と戦ってきたもんだ。実際は、これだけじゃないんだけどね。歴史を振り返ればわかるように、主戦場は、マイワシとマサバ。この二つの資源のTACがABCまで、下がったというのは誠にめでたいことでございます。ABCは無視して構わないと主張してきた人間は涙目だろう。多勢に無勢ではあったが、結局は、筋が通った方が勝ったわけだ。世の中、まだまだ捨てたもんじゃないね。今日まで、戦ってこれたのも、陰から応援してくれる皆様のおかげであります。いつも、いろいろな情報を提供していただきありがとうございます。あと、流れ弾が当たってしまった人は、ごめん。

ABCを超えるTACが社会問題に発展したことから、水産庁も、がんばってABCまでTACを下げたのだろう。組織防衛の観点から、妥当な判断だと思う。水面下でかなり調整をしたはずだが、その努力は長い目で見て、必ず報われる。

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from 18 Mar. 2009

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