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勝川俊雄公式サイト

クロマグロの幼魚が空前の不漁です


クロマグロの幼魚(ヨコワ)が全然捕れません。親が減っているから、子供が減るのも当たり前なのですが、かなり危機的な状況です。

太平洋クロマグロ加入量モニタリング速報(2014年9月末)
太平洋南(※1)及び九州西(※2)において設定した曳縄モニタリング船の、7~8月(南西諸島海域で生まれたものと推定)における漁獲状況をもとに分
析。
• 太平洋南における2014年のCPUE(漁獲努力量当たり漁獲量)は、2013年の40%、2012年の71%。
• 九州西における2014年CPUEは、 2013年の20%、2012年の35%。
• 2011~2012年の加入量水準は歴史的な平均値より低く、2012年は過去61年で下位8位の低加入と評価されている。太平洋南と九州西における曳縄モニタリング船の2014年のCPUEは、2012年よりも低い。

http://www.jfa.maff.go.jp/j/press/sigen/pdf/140930-03.pdf

ヨコワの単位努力量あたり漁獲量はこんな感じで減少中。大不漁と言われた2012年を下回る公算が高くなっています。

キャプチャ

水産庁は、クロマグロの未成魚の漁獲量を半減して、この先10年で、産卵魚の資源量を現在の倍の水準に増やす計画を立てています。来シーズンから、ヨコワに4007トンという自主規制枠を設定するそうです。ヨコワが不漁だった2012年は規制がなかったにもかかわらず、未成魚の漁獲量は3800トンでした。ということで、今年はがんばってヨコワを獲っても、自主規制枠に届かない可能性が高いです。

来シーズンからの規制は、「クロマグロ幼魚の漁獲半減」と、メディアには大々的に取り上げられました。半減という言葉が一人歩きをしていますが、実は「クロマグロが今の倍近くいた2002-2004年の漁獲量からの半減」なので、これまで通りに獲っても達成可能な目標なのです。しかも、親魚については、2002-2004年水準の漁獲量を据え置きですから、実質的には漁獲率の倍増を許すことになっています。

クロマグロ資源が直線的に減少しているなかで、これまで通りに漁獲ができる形式的な規制を導入して、資源がV字回復をするという見通しは、いくらなんでも甘すぎるのではないでしょうか。

あまり意味の無いウナギの池入れ上限


平成26年9月16日(火曜日)から17日(水曜日)まで、東京都内において、「ウナギの国際的資源保護・管理に係る第7回非公式協議」が開催され、日本、中国、韓国及びチャイニーズ・タイペイの4者間で、ウナギ資源の管理の枠組み設立及び養鰻生産量の制限等を内容とした共同声明を発出しました。

日本、中国、韓国及びチャイニーズ・タイペイの4者間で、以下を内容とする共同声明を発出することで一致しました。
(1)各国・地域はニホンウナギの池入れ量を直近の数量から20%削減し、異種ウナギについては近年(直近3カ年)の水準より増やさないための全ての可能な措置をとる。
(2)各国・地域は保存管理措置の効果的な実施を確保するため、各1つの養鰻管理団体を設立する。それぞれの養鰻管理団体が集まり、国際的な養鰻管理組織を設立する。
(3)各国・地域は、法的拘束力のある枠組みの設立の可能性について検討する。

http://www.jfa.maff.go.jp/j/press/sigen/140917.html

この規制の実効性について質問されることが多いので、私見をまとめます。

まず、これまで何の規制も無かったところに、生産量の上限を設けることが出来たのは一歩前進と言えます。漁獲を規制するための制度が無い漁業は、ブレーキが無い車と同じですから。日本のみならず、中国、台湾、韓国も含めた枠組みで合意を出来たのも大きいです。

漁獲量では無く,池入れ量で制限をするというのも良いと思います。シラスウナギは密漁が多くて、漁獲の段階での規制は現時点では難しいです。漁獲の部分を締め付けても、正直者が馬鹿を見て、ゲリラ的な密漁が増える可能性があります。養殖のいけすは移動できないし、生産量を確認することも出来ます。ウナギの生産量を規制するには、池入れ量の制限がもっとも効果的でしょう。今後は、シラスウナギ漁のライセンス制や、漁業者と養殖業者の取引の透明化など、過大は山積みです。

池入れ上限を設けるのは良いことなのですが、合意した水準には問題があります。当初は「過去4年の平均から3割削減(13.6㌧)」という話だったのですが、合意した数値は「直近の数量から20%削減(21.6㌧)」と大幅に増えていました。過去五年の池入れ実績の数値をまとめると次のようになります。去年は10年に一度の当たり年だったので、そこから漁獲量を微減しても、実際には漁獲量を削減する効果は期待できません。

キャプチャ

2010 2011 2012 2013 2014
池入れ量(㌧) 19.9 22 15.9 12.6 27

21.6㌧というのは「達成できたらラッキー」というような水準です。数量規制を導入したとしても、当たり年である2014年以外はほとんど削減効果が無いことがわかります。平年は今まで通りにシラスウナギを採り続けて、大当たりの年にはわずかに獲り残すということでは、資源の回復は見込めません。しかも、「法的拘束力のある枠組みの設立の可能性について検討する」とあるように、この合意には現状では法的拘束力がありません。

ニホンウナギの絶滅危惧種指定で、ワシントン条約の俎上に載る可能性が高まってきたので、慌てて体裁を整えているようですが、内容が伴っていません。がんばっても獲りきれない漁獲枠を設定して、資源管理をやっているふりをするのは、日本のお家芸です。実効性の無い規制しか合意できないのであれば、ワシントン条約で厳しく規制をしてもらった方が、ウナギ資源の未来のためには良いかもしれませんね。

WCPFCで合意をしたクロマグロの規制について


先ほど終了したWCPFC北小委員会に関する情報を整理しました。

クロマグロ資源の概要

漁獲が無かった時代の4%という危機的な低水準→回復措置を獲る必要がある。

科学委員の資源評価レポートの概要

http://isc.ac.affrc.go.jp/pdf/Stock_assessment/PBF_2014_Exec_Summary_4-28-2014_gtd.pdf

その和訳  http://katukawa.com/?p=5746

 

漁業の概要

未成魚・成魚ともに日本が漁獲の大半をしめる。次いで、メキシコと韓国の未成魚の漁獲が多い。乱獲行為が継続し、資源は乱獲状態に陥っている。

乱獲行為 → 非持続的な漁獲圧をかけている → 漁獲圧削減が必要
乱獲状態 → 非持続的な漁獲で、資源がすでに減少している → 資源回復が必要

クロマグロ漁業の3つの問題点 
① 卵を産む前に95%以上の個体をとってしまう
② 産卵場で待ち伏せして、卵を産みに来た親を一網打尽
③ 非持続的な漁業を規制するルールが存在しない
参考リンク→   http://katukawa.com/?p=5753

今回の会議の意義

クロマグロ資源を回復させるには、未成魚への高い漁獲圧を削減が不可欠である。日本が提案した未成魚の漁獲量半減措置が今回の会議で合意されたので、加盟国である日本と韓国は、未成魚の漁獲量に上限が設けられることになった。クロマグロの資源回復に向けて、一歩前進。日本代表は、難しい交渉を良くまとめたと思う。

韓国の漁獲量は多くないのだけれど、韓国が例外措置と言うことになると、「何で韓国が獲っているのに、日本は我慢しないといけないんだ」と日本の漁師から不満の声が上がり、国内の規制がやりづらくなるのは目に見えていた。国内の規制を潤滑に進める上で、韓国も含めた合意が出来たのは大きい。

残る未成魚の主要漁業国はメキシコのみである。メキシコの漁獲規制については10月に開催されるIATTCで決定する。未成魚の規制に難色を示しているメキシコにプレッシャーをかける上でも、今回、西太平洋での未成魚漁獲量削減の合意ができたことは大きい。

今後の課題

これまでと比べれば、クロマグロの規制は前進したが、今回の措置のみでは資源は回復しないだろう。今回合意した措置は、実はそれほど大幅な漁獲量の削減にはならないし、国内の漁獲規制の制度設計と、産卵場の保護という大きな問題が残っているからだ。

漁獲量半減でも、漁獲圧はそれほど下がらない
漁獲率を2002-2004の半分に削減すれば資源量は回復する」というシミュレーション結果が得られているが、今回の決定は「漁獲量を2002-2004の半分に削減する」という内容。資源量はすでに2002-2004年の水準の半分に減っているので、漁獲量を当時の水準から半減したところで、漁獲率としては2002-2004年レベルと大差が無いのである。この漁獲枠だと資源の回復に結びつかず、近い将来に、漁獲枠を更に削減することになるだろう。

漁獲量を制限するための日本国内の体制が整っていない
水産庁は、漁区を6つのブロックに区切って、ブロックごとに、早い者勝ちで未成魚を奪い合わせる計画である。競争のための無駄な燃油が浪費されるうえに、漁期の前半しか魚が供給されない可能性もある。早獲り競争を抑制するには、漁獲枠を更に細かく分けて配分していく必要があるだろう。

産卵場の保護
産卵親魚の減少が問題視されているにも関わらず、大型まき網船による産卵場での集中漁獲が継続している。産卵場での漁獲規制は、未成魚と比べて、きわめて緩い。2002-2004年の漁獲量が1000㌧弱であったにも関わらず、業界団体が2000㌧という過剰な枠を自主規制で運用している。がんばって未成魚を獲り控えても、産卵場に集まったところを一網打尽にしていたら、何の意味もない。産卵場の漁獲規制が急務である。

日本が提案しているクロマグロの漁獲規制について解説


クロマグロの漁獲は、次の3つの問題点があることを先の記事で書いた。

① 卵を産む前に95%以上の個体をとってしまう
② 産卵場で待ち伏せして、卵を産みに来た親を一網打尽
③ 非持続的な漁業を規制するルールが存在しない

9月1日から4日まで、福岡でクロマグロの資源管理について議論をするための国際会議が開かれている(現在、その会議を傍聴しながら、ブログを書いている)。ここで日本代表が提案したクロマグロの規制について検討してみよう。

日本の提案はここにある。
http://www.wcpfc.int/node/19348

日本提案の概要

Management measures
2. CCMs shall take measures necessary to ensure that:
(1) Total fishing effort by their vessel fishing for Pacific bluefin tuna in the area north of the 20 degrees north shall stay below the 2002-2004 annual average levels.
(2) All catches of Pacific bluefin tuna less than 30kg shall be reduced to 50% of the 2002-2004 annual average levels. Any overage of the catch limit shall be deducted from the catch limit for the following year.

3. CCMs shall endeavor to take measures not to increase catches of Pacific bluefin tuna over 30kg from the 2002-2004 annual average levels.

6. The CCMs shall cooperate to establish Catch Documentation Scheme (CDS) to be applied to Pacific bluefin tuna as a matter of priority.

 

管理措置
2. 各国は以下を実現するために必要な措置を執る

(1) 20度以北でクロマグロを漁獲する船の漁獲努力量を2002-2004年の平均値から下げること。

(2) 30kg未満の太平洋クロマグロの漁獲量を2002-2004年の平均レベルの半分に減らすこと。漁獲枠を超えた漁獲は、翌年の漁獲枠から削減をする。

3. 各国は、30kgを超える太平洋クロマグロの漁獲が2002-2004年の平均レベルから増えないように努力をする。

6. 各国は協力して、漁獲報告システム(CDS)を優先事項として確立する。

日本提案の内容について解説

日本提案の骨子は以下の通り。

2002-2004年を基準年として、
1)基準年よりも漁獲努力量を増やさないようにする
2)30kg未満のクロマグロ(未成魚)の漁獲を基準年の半分に減らす
3)30kg以上の成魚については、基準年の水準を超えないようにする

1)については、努力量が定義されていないので何とも言えない。船の数だとか、出漁日数の規制は、資源の枯渇を食い止める上で、それほど大きな意味が無い。低水準の資源を産卵場で獲っている場合などは、少ない出漁日数でも、魚を取り切れてしまうからだ。現在の漁獲テクノロジーを駆使すれば、低水準の資源でも効率的に創業することが出来るので、資源を確実に守るには、漁獲量に適切な上限を設定する必要がある。努力量の定義が、漁獲死亡率であるなら、漁獲量に上限が設けられることになるので意味がある。

2)未成魚の漁獲圧削減は、クロマグロ資源の回復のために、必要不可欠だ。漁獲の中心は0-2歳の未成魚であり、ここを削らなければ大幅な資源回復があり得ないことは明白だろう。未成魚の漁獲圧を削減しない限り、3歳以上を禁漁にしたとしても、資源の回復は望めない。下の図は、クロマグロの漁獲の年齢組成なのだが、この図の青、赤、緑(未成魚)をそのままにして、紫より上(成魚)を削減しても、大きな効果は期待できない。

キャプチャ

3)成魚の漁獲規制が未成魚よりも緩くする意味がよくわからない。産卵親魚量の減少が問題になっているのだから、未成魚と同様に成魚の漁獲も削減すべきだと思う。とくに産卵場での操業は、少なくなった親魚に致命的なダメージを与える危険性がある。産卵場は日本にしかないのだから、日本のイニシアチブで産卵場の漁獲規制を行うべきである。

総評

クロマグロ漁業の一番の問題は、未成魚への高い漁獲圧である。未成魚の漁獲の大幅な削減を、日本が率先をして提案しているというのは、高く評価できる。日本はこれまで自国の漁獲を減らしたくないから、規制に反対することが多かったのだが、今回は資源の持続的な利用に向けて主体的な役割を果たしている。クロマグロの成魚の漁獲はほとんどが日本のEEZ内で行われているので、未成魚の漁獲圧を下げて、成魚中心の漁獲に切り替えることができれば、日本漁業に大きな利益が期待できる。また、日本政府は、漁獲報告制度(Catch Documentation Scheme)やデータ収集についても、提案している。これらは、不正漁獲を削減し、資源管理措置を実行するために必要な措置と言える。

CDSの説明

日本以外で、クロマグロのみ成魚を漁獲しているのは、韓国とメキシコの2国のみ。他の国には、反対をする理由があまりない。ということで、 韓国・メキシコが合意をするかどうかが、カギになるだろう。今回の会議は西太平洋なので、韓国が含まれる。おそらく今日の午後に、喧々がくがくの議論をすることになるだろう。そして、メキシコについては、10月に予定されているIATTCの臨時総会で議論をすることになる。メキシコは、「漁獲へのインパクトが大きい西太平洋から明確な漁獲削減案を示すべきである」という立場をとっているので、WCPFCでの合意が出来なかった場合は、未成魚の削減に同意しない可能性がある。逆にWCPFCで未成魚の削減の合意が出来た場合に、メキシコも厳しい立場に追い込まれるだろう。

国際交渉は相手があることだから、合意が得られるかどうかは不透明である。もし、韓国やメキシコの合意が得られなかった場合にはどうなるだろうか。俺は、国際的な合意が得られなかったとしても、日本は単独で未成魚の削減をおこなうべきだと思う。韓国、メキシコの漁獲量は日本よりも少ないし、北米に回遊するクロマグロは資源の一部であることを考慮すると、日本単独の漁獲削減でも、大きな効果が期待できるのだ。日本が国内の漁獲規制をしたうえで、引き続き韓国とメキシコに圧力をかけていくべきだ。

キャプチャ

 

日本政府提案は、方向性としては正しいので、全面的に応援したいと思う。現状では、成魚の漁獲規制の不足しており、問題点②は解決できない。また、国内で未成魚削減のための方策などには様々な問題がある。未成魚の漁獲削減を進めながら、産卵場の漁獲規制と、国内の規制のあり方については、引き続き議論をしていく必要があるだろう。

クロマグロは減っていないと主張してきた研究者たち


6年ぐらい前から、日本海の一本釣り漁師たちが「クロマグロの群れが激減している」と危機感を抱いていた。漁業者からのSOSをキャッチした俺は、現場を回って、クロマグロ資源の危機的な状況についての情報を集めて、警鐘を鳴らしてきた。

2009年に撮影した一本釣り漁業者のインタビュー → https://www.youtube.com/watch?v=HCzqRpRDTJk&list=UU5QxUOmfdtctWClAK4DWsYA
2010年に書いたブログです⇒ http://katukawa.com/?p=3762

その当時、水産総合研究センター(日本の研究機関)は、「資源量は中位」で、2002-2004の漁獲圧を続ければ問題なしと主張していた。漁業の現場の危機感は、国の研究者によって、否定されてきたのだ。楽観的な資源評価は、産卵場でのまき網操業が無規制に拡大していく口実として利用された。

学術雑誌 nature でも、2010年に太平洋クロマグロの論争が取り上げられた。

http://www.nature.com/news/2010/100519/full/465280b.html

こちらが、WCPFCおよび日本政府の見解

Pacific bluefin (Thunnus orientalis) populations had been thought to be stable, with enough young fish maturing each year to replace those caught. In July 2009, a working group of the International Scientific Committee for Tuna and Tuna-like Species in the North Pacific Ocean (ISC) concluded that recruitment of juveniles to the population “does not appear to have been adversely affected by the relatively high rate of exploitation”. But the working group admitted that a lack of data meant recruitment since 2005 is highly uncertain.

太平洋クロマグロ資源は、十分な新規加入があり、安定して推移していると考えられてきた。2009年7月のWCPFCの科学委員会は、「比較的高い漁獲圧によって、悪影響がでているようには見えない」と結論づけた。しかし、ワーキングループは2005年以降の新規加入のデータの不確実性が大きいことを認めた。

それに対して、俺はこのように主張していた

And the belief that the stock is stable is based on a false assumption that fishing practices have not changed, says Toshio Katsukawa, a fisheries expert at Mie University in Tsu City, Japan. From speaking to fishermen, Katsukawa is most concerned that, in the past few years, boats have begun targeting the tuna’s spawning grounds.  This tactic increases catches, simultaneously making the stock seem bigger but damaging the fish’s breeding capacity.

「資源が安定しているという思い込みは、漁業の操業形態が変わっていないという誤った仮定に基づく」と、日本の津市の三重大学の漁業の専門家の勝川俊雄は語った。漁業者との情報交換によって、勝川は過去数年の間に漁船がマグロの産卵場で操業を開始したことを懸念していた。操業形態が変わることによって、漁獲量が増大し、資源量の過大推定をまねくとともに、資源の再生産能力が損なわれてしまう。

このどちらが正しかったかは、歴史が証明することになる。当時と今の資源評価をみると、水研センターは産卵親魚についてかなり楽観的な評価をしていたことがわかる。

http://kokushi.job.affrc.go.jp/H22/H22_04S.html

2010年当時の楽観的な資源評価(産卵親魚量)を下図に示した。最近の資源水準は歴史的に見ればそれほど低くないし、資源は安定的に推移しているように見える。
キャプチャ

最新の資源評価はこんな感じ。1990年代中頃から、資源が直線的に減少している。過去にさかのぼって結果が変わっているのだ。
キャプチャ

natureのニュースでは、「2011年4月までに、漁船ごとに漁獲枠を設定する、大型のまき網漁業の規制、畜養のための稚魚の漁獲を認証性にして報告義務をつける」という水産庁の方針が紹介されている。

Responding to concerns about the health of the stock, Japan’s Fisheries Agency last week outlined new measures to monitor and manage the tuna populations. These specify limits on the weight of fish that each boat can catch, restrictions for the large boats using encircling nets that account for most tuna fishing, along with new requirements for other boats to report their catches. And fish farmers, who collect an increasing but unknown number of juveniles and raise them in pens, will be required to register and report their activities. The agency plans to implement the restrictions by April 2011.

それに対する俺のコメントは「きちんと実行すれば効果があるけど、ぐずぐずして手遅れになることが心配」

Katsukawa says that the new measures, “if done effectively”, could have a major impact. But he fears they will be implemented too slowly to head off an irrecoverable drop.

2014年現在、漁船ごとの漁獲枠は設定されておらず、大型まき網漁業の規制はきわめて不十分な状態だ。残念ながら、こちらも予想通り。

2010年の段階で、規制を導入して、段階的に漁獲圧を下げていれば、資源は回復に向かっただろう。一昨年まで、水研センターの担当者は「クロマグロは豊富で、現在の漁獲圧に問題は無い」と言い続けてきた。その結果として資源の枯渇を招き、漁獲量の半減というきわめて社会的にも影響が大きな手段を執らざるを得なくなった。漁業の現場の声を無視した楽観的な資源評価によって、国益が大きく損なわれたのである。楽観的な資源評価は、クロマグロに限った話では無い。ウナギの場合も、シラスウナギが捕れなくなって鰻屋がばたばたと閉店しているにも関わらず、一昨年まで「特に減っていない」という立場であったし、カツオも近海の漁獲量が直線的に減っているにも関わらず、「資源は豊富で、現在の漁獲に問題はない」という立場をとっている。

クロマグロ漁業の3つの問題点


現在、国内外で関心が高まっている太平洋クロマグロの現状について整理してみよう。

このエントリで用いる図はすべて、WCPFCのISCレポートからの引用である。

http://isc.ac.affrc.go.jp/pdf/2014_Intercessional/Annex4_Pacific%20Bluefin%20Assmt%20Report%202014-%20June1-Final-Posting.pdf

日本が主人公

太平洋クロマグロは、長距離の回遊をする高度回遊性魚類の代表である。しかし、その産卵場および主な生息域は日本のEEZにあり、漁獲および消費の大半は日本人によるものである。「ほぼ日本の水産資源」といってもよいだろう。

日本の次に漁獲が多いのはメキシコ。東太平洋に餌を求めて回遊した10~20kgぐらいの未成魚を捕まえて、餌を与えて太らせて、日本に出荷している。それ以外の国、韓国、台湾、米国の漁獲は誤差のようなレベルである。下のグラフを見て、「韓国のせいでマグロが減っている」と主張するのは難しいことが一目瞭然だろう。

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問題点 その1 未成魚への高い漁獲圧

下の図は漁獲されたクロマグロの年齢組成である。0歳、1歳、2歳でほぼすべての個体を漁獲していることがわかる。クロマグロは3歳で2割の個体が成熟し、5歳でほぼすべての個体が成熟すると考えられている。つまり、卵を産む前の未成魚の段階で獲りきっているのである。

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問題点 その2 産卵場での集中漁獲

未成魚に高い漁獲圧をかけ続けた結果として、大型の産卵群が減少している。6-8月の産卵期になると、日本海と沖縄沖にある産卵場に集まってくる。普段は広範囲に分布しているクロマグロもこの時期だけは一カ所に集まるのである。2004年までは、産卵場での巻き網操業は行われていなかったので、未成魚の漁獲を逃れた大型のマグロが日本海に存在し、資源の再生産を支えていた。しかし、2004年から、日本海の産卵場に集まってくる産卵群をまき網で一網打尽にするようになった。

下の図はまき網による大型魚の漁獲である。2003年までは、まき網は太平洋で餌を食べている群れを漁獲していて、産卵場がある日本海ではほとんどマグロを捕っていなかった。50Kg以上のマグロを釣ることができる沿岸漁業者はごく少数であり、日本海のマグロは、ある程度の大きさになってしまえば、その後は生き残り卵を産むことが出来たのだ。

2004年から、まき網が産卵期に集まるマグロを集中漁獲するようになった。それ以降、太平洋での大型マグロの漁獲は激減し、日本海での水揚げも直線的に減少している。長年蓄えられてきた産卵親魚をあっという間に切り崩してしまったのだ。

キャプチャ

すべての親魚が集まる産卵場での操業は、資源に致命的な打撃を与えかねない。たとえば、カナダのニューファンドランドのタラ資源が崩壊したのも産卵期に集まった群れを漁獲していたからである。産卵場で魚が捕れなくなったら、その資源はいよいよ終わりということだ。

 

問題点 その3 規制の欠如

幼魚と産卵親魚を獲りまくれば、資源が崩壊するのは、誰にだってわかる当たり前の話だろう。問題はこうした問題の多い漁獲が、何の規制もされずに野放しにされてきたことである。

沿岸の釣りや定置網は、クロマグロを捕るための許可は不要で、誰でも獲りたいだけ獲れた。大型まき網船は、許可魚種に「その他」という項目があり、国が規制していない好きな魚種を、好きなだけ漁獲をすることができる。一番規制をしないといけない漁法が、一番規制がゆるくなっている。小型のまき網は、「その他」の抜け道がないので、クロマグロを捕ることができない。

沿岸の釣り漁業、定置網、沖合の大型まき網は、クロマグロを獲れるだけ獲れたのである。釣り漁業の漁獲量はたかがしれているのだが、最も効率的な漁法である大型まき網漁船が何も規制されないというのは、普通に考えてあり得ない話である。水産庁は常々、「日本では漁業者が自主的な取り組みで資源管理をしているので、国が規制をする必要がない」と言っているのだが、県をまたいで回遊する魚種については、漁業者がまとまって話し合う場すら無いのだから、自主管理など出来るはずが無い。

太平洋クロマグロ資源の持続的な利用のためには、日本が幼魚の漁獲と産卵場の漁獲という二つの国内問題にしっかりと取り組んだ上で、国際的な規制を進めていくことが必要である。

太平洋クロマグロはどれぐらい減っているのか?


今回は一般向けでは無く、メディアや勉強をしたい人向けに、少しだけ専門的な話を書きます。

クロマグロの資源状態について

太平洋クロマグロの資源状態については、1年半前のブログに書いたとおり。日本では3.6倍に増えるとか大本営発表をしていたが、実際には枯渇した資源に非持続的な高い漁獲圧をかけ続けている。

西太平洋のマグロの管理をしている国際機関WCPFCの科学委員(ISC)のウェブサイトはここにある。

http://isc.ac.affrc.go.jp/reports/stock_assessments.html

最新のレポートはこちら。
http://isc.ac.affrc.go.jp/pdf/Stock_assessment/Pacific%20Bluefin%20Assmt%20Report%202014-%20June1-Final-Posting.pdf

ドメインを見ればわかるように、日本の独立行政法人水産総合研究センターで管理されているのだ。日本国内で社会的な関心が高い水産資源の評価を、日本がホストする科学委員がやっているのだから、資源評価の日本語訳ぐらい準備しても良さそうなものなのだが、水研センターはサービス精神に欠けますね :evil:

ということで、エグゼクティブ・サマリーだけでも個人的に和訳をしてみました。次回以降に、これをもとに水産庁が現在進めている太平洋クロマグロの管理措置について論じたいと思います。

科学委員の要旨

1.資源の概要

太平洋クロマグロは、太平洋全体で単一の系群を形成しており、国際機関WCPFC(西太平洋)とIATTC(東太平洋)によって管理されている。産卵場は北西太平洋にしかない。それぞれの年級群の一部は太平洋を横断して回遊し、北東太平洋で幼魚期の数年を過ごすものもいる。

2.漁獲の歴史

太平洋クロマグロの漁獲記録はあまり整備されていないが、日本沿岸では1804年、米国では20世紀初頭まで遡ることが出来る。漁獲量の推定によると、1929から1940年は漁獲が多く、そのピークは1935年の47635トンであった。その後、第二次世界大戦のために漁獲量が減少する。戦後、日本の漁獲活動が北太平洋全域に広がったために、1949年にクロマグロの漁獲が急増した。1952年までに、多くの漁業国で一貫した漁獲量報告システムが確立された。より信頼できる漁獲統計によって、1952年から2012年までの漁獲量は、年によって大きく変動することがわかった。この時期の漁獲のピークは1956年の40383トンで、最低は1990年の8653トンであった。クロマグロは様々な漁具によって漁獲されているが、現在の漁獲の大部分は巻き網漁業によるものである。1952年以降の漁獲は、未成魚中心であったが、1990年代から、0歳の漁獲が大幅に増加している。

3.データと資源評価

ストックシンセシス(SS)と呼ばれる年齢構成モデルによって、資源動態が推定されている。1952-2013年の漁獲量、年齢組成、単位努力量あたり漁獲量のデータにあうように、WCPFCの国際科学委員(ISC)のクロマグロワーキンググループ(PBFWG)が作業を行った。耳石から年齢を推定した成長曲線や、標識放流やその他の経験的な手法によって得られた自然死亡係数などの生活史パラメータが含まれる。

国と漁具によって階層化された全14漁業が資源評価モデルには含まれている。利用可能な漁獲・年齢組成データを利用して漁獲のプロセスを表現した。日本の遠洋延縄、近海延縄、台湾の延縄 および 日本のトロールのデータを用いて、相対的な資源量を評価した。尤度に基づく統計フレームワークで、モデルを入力データに適合した。最尤法によって、得られたモデルパラメータからモデルを構築し、パラメータの変動も考慮して、資源量の推定と将来予測をおこなった。

PBFWGは、CPUEデータ、入力データの重み付け、年齢別の漁具選択性を推定する手法に不確実性があることを認識している。それぞれ異なるCPUEデータと漁具選択性をもちいた4種類のモデルを走らせることで、これらの不確実性が動態モデルに与える影響を評価した。

このあたりは、モデルの細かい話なので中略

4.資源状態と保全のアドバイス

資源状態

最新の資源評価では、2012年の産卵親魚量は、26324トンで、2010年の推定値25476トンよりもほんの少し多かった。

新規加入量(卵から生き残って、新たに漁獲対象になった個体数)の推定値は、モデルの設定を変えても、ほぼ同じような水準だった。2012年の新規加入は比較的低水準(61年で下から8番目)であり、過去5年の新規加入は歴史的な平均水準を下回っていた。2009-2011年の漁獲死亡係数の推定値は、0-6歳については、それぞれ19%,4%,12%,31%,60%,51%,21%増加したが、7歳以上については35%減少した。

WCPFCおよびITTACでは、太平洋クロマグロについては、資源管理のための目標や指標は決定していない。現在の漁獲圧は、Floss以外の一般的に用いられているすべての管理指標よりも大きくなっている。2012年の産卵親魚量は、漁獲がなかった時代の6%以下であった。一般的な管理指標と比較すると、乱獲が現在進行中であり、資源が乱獲状態にあるといえる。

実例として、Kobeプロットの図を示した。(AはSSBMedとFMED、BはSSB20%とSPR20%に基づく)太平洋クロマグロに対しては、管理指標の合意がないのだが、これらのKobeプロットは、資源状態に対する別の視点を提供し、今後の議論に役立つだろう。

歴史的に見て、西太平洋の沿岸漁業が最も大きなインパクトをもっていた。しかし、1990年代初頭から、西太平洋の巻き網のインパクトが増加し、これらの努力量がたのすべての漁業グループを凌駕している。東太平洋のインパクトは、1980年代中頃まで大きかったが、その後、大幅に減少している。西太平洋の延縄はすべての時期を通して、限定的なインパクトしか与えていない。漁業の影響は、漁獲される個体数と大きさの両者によって決定される。たとえば、多数の小型の稚魚を漁獲することは、大型の成熟個体を漁獲するよりも、未来の産卵個体群に対する影響が大きいこともあり得る。

管理アドバイス

現在(2012年)のバイオマスは歴史的な最低水準付近で有り、Floss以外のすべての管理指標よりも高い漁獲圧がかかっている(訳者注:Flossは資源が消滅に向かう漁獲圧なので、これを超えなければよいというものではない)。将来予測をみても、現在採用されているWCPFC CMM(2013-09)およびITTAC(C-13-02)の管理措置を今後も続けた場合、現在の低水準の加入が続く限り産卵親魚は回復しないと考えられる。

NC9で要求された将来予測では、低水準の加入が続いた場合には、もっとも厳しい管理シナリオ6のみで産卵親魚が増加した。シナリオ6の結果から、さらに大幅な漁獲死亡率とすべての未成魚の年齢帯における漁獲量の削減によって、産卵親魚が歴史的最低レベルを下回るリスクを削減できることが示された。

もし、最近の低水準な加入が今後も続く場合、産卵親魚が歴史的最低水準を下回るリスクが増加する。このリスクはさらに厳しい管理措置を執ることで減少できる。

NC9が要求した将来予測では、長期的な平均的な加入まで回復しない限り、産卵親魚増加は現在のWCPFCおよびITTACの保全管理手段では望めない。

産卵調査の結果に応じて、資源評価での未成魚の定義が変更された場合には、予測結果も変わる可能性がある。SSBが低水準であり、将来の新規加入が不確実で、資源バイオマスに対する加入が重要性であることを考慮すると、加入のトレンドをタイムリーに把握するためのモニタリングを強化すべきである。

検討会という茶番


先日、水産庁の資源管理あり方検討会が開かれた。この手の検討会が開かれるのは実に6年ぶりである。6年前の検討会は、資源管理反対派を集めて、資源管理をしない言い訳を並べただけだった。今回も、俺以外はこれまでと同じメンバー。水産庁OBが大勢をしめる委員たちは、「日本の漁業管理はすばらしい」と自画自賛しているだけ。今年の3月から6月まで、密度が低い会議をたった6回しただけで、国の漁業政策の方針を決めようというのだから、乱暴な話である。

水産庁にとって、この手の会議は、財務省と政治家に予算をねだるための儀式である。議論の内容ではなく、会議をやったという既成事実が重要なのだ。会議の着地点(とりまとめ)は、あらかじめ決められている出来レースだ。その証拠に、俺以外の委員は、「日本の漁業は現状でうまくいっている」と言い張って、個別漁獲枠方式(IQ方式)の問題点を並べて反対していたのだけど、会議のとりまとめは「IQを試験的に導入して、実証試験をします」という結論になる。残念ながら、検討会の内容には、大した意味がないのである。

6年前と今とで、「はじめに結論ありきの出来レース」という部分は変わらないのだが、出来レースの着地点が大きく変わった。6年前は「公的機関は資源管理をやりません」という結論の出来レースだったのだけど、今回は「とりあえずIQを試験的にやります」という結論の出来レースだった。出来レースの出口が変わったのは、水産行政を取り巻く情勢が変わったからである。6年前は「資源管理はやらないけど、業界団体に配るから予算をちょうだい」という主張が通った。でも、今は、「資源管理やるから予算をちょうだい」と言わなければ通らなくなったのだ。世論の変化が、じわじわと効いてきている。

では、水産庁もついに資源管理をやる気になったのかというと、どうもそうではない感じ。検討会で何かが決まったからと言って、物事が前に進むとは限らない。下手をすれば、逆方向に走ることだって十分にあり得る。だから、何を言っているかではなく、実際に現場で何をやっているかを見極める必要があるのだ。

検討会で、大臣許可の巻き網漁業を対象にマサバ太平洋系群にIQを試験導入することになった。それ自体は良いことだと思うのだけど、漏れ聞いてくる話を総合するととてもやる気があるようには見えない。大型の巻き網船は5隻ぐらいで船団を組んで操業する。以前は太平洋にに100を超える船団が集まったのだが、たこの足食いのような乱獲レースでつぶし合いをした結果、現在は20程度の船団しか残っていない。今回のIQの実証試験では、規模が小さな2~3船団のみに個別の漁獲枠を導入する計画らしい。個別漁獲枠の目的は、早獲り競争の抑制することによって、魚の質を向上させて、操業コストを削減することである。ごく一部の漁船にだけ形式的な漁獲枠をいれても、早獲り競争は抑制できないのだから、IQの効果が期待できないのは自明だろう。「IQの実証試験をやったけれど、効果がないからやめます」というために実証試験をしているようなものである。実証試験といいつつも、その実態は「資源管理をやらないためのアリバイ作り」なのだ。仕事をしないことにかけては、実に有能な組織である。

シーフードスマートTV ウナギ編・第1回


今、なにかと話題のウナギについて、情報を整理する必要があると考えて、築地の生田さん(Seafood Smart)と一緒にインタビュー取材を行いました。

なんと、8回連続で、1~4回目がウナギの専門家で、IUCNの専門委員のメンバーでもある海部健三さん(中央大学)、5~8回目が「うなぎ 地球環境を語る魚」の著者である井田徹治さん(共同通信)です。

とても濃厚な内容なのですが、まずは一回目を公開です!!

水産業の苦境を打開するのに必要なのは、補助金では無く、資源管理


産経ビジネスに漁業の復興関連の記事があった。この記事から、日本の水産業が元気が無い理由が透けて見えるような気がしたので、整理してみようと思う。まずは記事に目を通して欲しい。

三陸の水産業者、苦境打開へ 世界に活路もアピール不足

三陸地方の水産業者が、海外展開に活路を見いだしている。東日本大震災から3年が過ぎても続く苦境を打開しようと、国や自治体も支援に乗り出した。だが、宮城県気仙沼市が5月に実施した欧州視察事業からは、国を挙げてのPR力不足や、衛生基準などを満たすハードルの高さが見えてきた

Sankei Biz 2014.6.21 07:10

「PR力不足」、「衛生基準の不備」、「人手不足」という問題があるのは確かなんだけど、「これらの他国では当たり前のようにできていることが、なぜ日本ではできないか」という根本的な問題を考えないといけない。これらの構造的な問題は、被災地だけのものでもないし、被災後に新たに発生したものでもない。そもそも漁獲規制が緩い日本では、価値が出る前に魚を獲り尽くしてしまうので、水産業では利益が出ない。だから、マーケティングや衛生管理などに投資ができないのである。乱獲された魚を高く買う先進国はないので、PR力や衛生基準の前に、持続性に取り組まなければならない。相手に買ってもらえる生産体制を作るのが先なのだ。

また、PR活動をやるなら、業界の自己負担が大原則だ。ノルウェーの場合は、ノルウェー水産物審議会がマーケティングをしている。日本でも、ノルウェー大使館と連携と獲りながら、活動をしている。その原資はすべて業界負担である。

前述の法律に基づき、ノルウェーの全ての水産物輸出業者は、NSC に登録し、賦課金を拠出することが義務付けられている。
NSC の財源は、各水産物の輸出ごとに徴収される賦課金である。賦課金は魚種に関係なく輸出額に対して一律 0.75%に設定されている。

http://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/e_enkatu/pdf/h23_taisei_5norwey.pdf

業界が身銭をきっているから、NSCの活動は具体的な成果を常に問われている。組織防衛のために、必死になって、プロモーションをしている。日本の場合は、「初めに補助金ありき」である。他人の財布感覚で、タレントを呼んで、自己満足的なイベントをしておわり。広告代理店が儲けるだけで、後には何も残らない。

まとめるとこんなかんじ

○ これまでの水産物ブランド化事業→補助金で話題作り→効果が無い

○ ブランドを育てるために必要な要素
①差別化できる水産物の安定供給 → 資源管理・持続性認証
②適切なマーケティング → 受益者負担・専門組織

日本の水産物ブランド化の取り組み(補助金事業)はことごとく失敗してきた。ブランドを育てるために必要な要素が欠けているからである。水産物ブランド化の前提としては、差別化できる水産物を安定供給できる体制を整えないといけない。そのためにやるべきことは資源管理と持続性認証(水産エコラベル)である。水産エコラベルは、単価が高い欧米に魚を売る上でもはや必須と言える。①の条件と整えた上で、②適切なマーケティングを行う必要がある。そのための必要条件は、受益者負担とそのための専門組織をつくることだ。

人手不足の原因は、日本の水産業は利益が出ないから、安い賃金しか出せないことである。震災前から、日本の水産加工業は中国人研修生という安い労働力に依存していた。それでも利益が出ずに衰退の一途を辿っていた。ノルウェーは、人手不足で、賃金が高くても人があつまらないから、仕方なく設備投資をして省人化を進めている。日本とノルウェーでは、おかれた状況が違うのである。ノルウェーの近代的な加工設備を補助金で導入したところで、減価償却すら難しいだろう。今の日本がノルウェーから見習うべき点は、近代的な設備ではなく、そういう投資を可能にする前提としての資源管理なのだ。

地域の雇用という観点からは、日本に必要な施策は省人化では無く、水産業の黒字化であることは自明だろう。たとえば、こちらの動画(2:55~)はニュージーランドの離島の水産加工場である。ニュージーランド政府の厳しい漁獲規制のおかげで、水産業が利益を上げているために、機械化を進めなくても十分な賃金が支払われている。

これまでも、「あれが無い」、「これが無い」といって、補助金に依存してきた日本の水産業は衰退の一途を辿っている。海外に目を向ければ、資源管理をしっかりしている漁業国は軒並み利益を伸ばしている。水産業の苦境を打開するのに必要なのは、補助金では無く、資源管理なのである。

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