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勝川俊雄公式サイト

持続的な漁業・魚食運動は、どうやら次の段階に突入したっぽい


昨日は、リディラバの安部君の話を聞きに行った。本気で世の中を変えようという人間は面白いし、とても刺激になった。

彼の話の中で、特に印象に残ったのは、「パフォーマンスの高い組織のコミュニケーションは、トップダウンからボトムアップに移行する」という話。

1)最初の段階
最初は、誰か一人がリーダーになって、組織を引っ張る必要がある。明確なリーダーがいて、フォロアーがリーダーをサポートする仕組みで、いわゆるワンマン企業のようなイメージ。こういう組織は規模が小さいうちは高いパフォーマンスを示すのだけど、組織の規模が大きくなると、リーダーのマンパワーがボトルネックになりがちだ。また、何かの事情でリーダーが不在になると、組織構造が維持できない。

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2)ネクストステップ

そこから成長できる組織は、フォロアー同士のネットワークが出来ていく。これによって、リーダーが不在でもある程度は組織の構造が維持できるようになる。

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3)最終ステップ

最終的には、いくつもの核ができて、リーダーの存在が見えなくなる。意志決定の負荷が分散していくというわけだ。

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こういう構造になると、いくらでも規模を拡張できる。こんな感じで。

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この話は、全然本筋じゃなかったんだけど、俺的には凄く腑に落ちたんだよね。自分がやってきたことが、順調に広がって、次のステップに移ったんだな、と。

10年ぐらい前に、持続的な漁業・魚食を目指す運動を始めたときは、文字通りたった一人。俺自身が動かないと何も起こらない状況からのスタートだった。その後も、俺を含む少人数のグループの活動であって、「俺の知らないところで、何かが起こる」というのは、あり得なかった。最近は、仲間が増えて、その仲間がそれぞれの得意分野で、独自な活動を始めている。その結果、同時多発的にいろいろなことが起こるようになった。俺自身がワクワクしながら、次に何が起こるのかを見守っている感じ。

4月15日のクローズアップ現代


視聴者の反応は、好評だったようです。

番組の内容がNHKのウェブサイトに公開されております。番組の一部が動画でご覧いただけます。

とても良く出来た動画だと思いますので、ぜひ、ご覧ください。

http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_3641.html

BSジャパン「日経プラス10」に出演します


本日、夜10時から放送のBSジャパン「日経プラス10」に出演します。

食卓から魚が消える!?日本の「魚食」はどうなる

~ホッケ・アジ・クロマグロが深刻な不漁に…日本の海で何が起きているのか/繰り返される“乱獲”水産業界が陥った現実/漁業を知り尽くしたプロが語る「賢く食べて魚を増やす」方法とは/日本の漁獲規制は“抜け穴”だらけだった!?水産資源再生への道はあるのか~

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https://twitter.com/nikkeiplus…/…/595473094782767105/photo/1

本日、NHKクローズアップ現代に出演します


食卓の魚高騰! 海の資源をどう守る

出演者勝川 俊雄 さん
(東京海洋大学 産学・地域連携推進機構 准教授)

漁獲量の減少によって、アジやホッケなど食卓の魚の高騰がつづいている。原因とされるのは、海水温上昇など海の異変と乱獲。追い詰められた漁業者は、収入を確保するため小型魚や幼魚まで捕る「負のスパイラル」に陥っている。漁業復活には、資源を守ることが急務だ。今年、国は絶滅危惧種に指定されたクロマグロの幼魚の漁獲量を半減する規制を導入した。すでに多くの魚に漁獲規制を導入し、資源回復に成功している欧米諸国の成功例を参考にしたのだ。国内では、さらに踏み込んだ制度の導入も一部で始まり、新潟の甘エビなどで効果が見え始めている。規制に実効性を持たせ、消費者に、安定しておいしい魚を供給し続けるにはどうすればいいのか。漁業再生の方策を探る。

http://www.nhk.or.jp/gendai/yotei/#3641

異動のご挨拶


4月1日づけで、東京海洋大学に異動しました。産学・地域連携推進機構というところで、地域と大学をつなぐ仕事をします。品川にオフィスがあるので、遊びに来てください。

これまでは、教育・研究が主要業務で、その合間に地域を回っていましたが、今後は地域を回るのが主要業務になります。東京海洋大学は、釜石、気仙沼に拠点が有り、月に何度かは訪問することになります。往復にいろいろな場所をまわろうとおもいます。東北には頻繁にお邪魔することになると思います。震災から4年が経過しました。5年を復興の一区切りとすると、今年度は最後の1年です。今まで以上に現場を回って、地域の漁業を未来につなげるお手伝いが出来ると思います。

クロマグロやニホンウナギの絶滅危惧種指定などがあり、水産資源の持続性が社会問題になりつつあります。東京に拠点を移したことで、今まで以上にメディア対応が出来ると思います。水産資源に関する勉強会も開きたいですね。

よろしくお願いします :-)

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大平洋クロマグロについて、みんなに知っておいてほしいこと


2014年11月17日に、国際自然保護連合がレッドリストを改訂して、新たに太平洋クロマグロ、アメリカウナギ、カラスフグ を絶滅危惧種として指定しました。レッドリストは関係諸国に保全の必要性を示すのが目的であり、掲載されたからといって、ただちに強制的な規制がかかるわけではありません。関係諸国が連携して、保全措置を執ることが強くもとめられています。IUCNのプレスリリースでは、アジアの食品需要がこれらの魚種の減少を引き起こしたと指摘しています。これらの魚種の大半を消費する日本には、世界から厳しい目が向けられています。

1950年代には、4万トンあったクロマグロの漁獲量は、現在は1万5千トンまで落ち込んでいます。国別に見ると、最も漁獲が多いのが日本で、その次にメキシコです。台湾、韓国、アメリカ合衆国も漁獲をしているのですが、その量は比較的少ないです。日本が「韓国のせいでクロマグロが減った」と主張しても、他国の理解は得られないでしょう。クロマグロは、太平洋を横断して長距離回遊することが知られていますが、その主な生息域と産卵場は日本周辺海域です。クロマグロの回復のカギを握っているのは、われわれ日本人なのです。

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クロマグロの国別漁獲量(トン) (http://kokushi.job.affrc.go.jp/H25/H25_04.pdfより作図)

クロマグロ漁業には、未成魚への高い漁獲圧、産卵場での集中漁獲、規制の欠如という、解決すべき3つの問題が存在します(参考記事)。このまま何もしなければ、ワシントン条約でクロマグロの国際取引が規制をされるのは時間の問題です。尻に火がついた関係漁業国は、大慌てで、クロマグロの漁獲規制の準備をしています。今月サモアで開催された国際会議(WCPFC)で、日本を含む各国は、2002-2004年を基準に未成魚の漁獲量を半減させることで合意しました。
これまで漁獲規制が無かった太平洋クロマグロに対して、各国が漁獲量の上限を設定したという点では、意義がある会合でした。では、この規制でクロマグロは回復するのでしょうか。

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クロマグロ未成魚の漁獲量(2008-2012は水産庁調べ、2013,2014は筆者が市場統計から推定)

この図は日本のクロマグロ未成魚の漁獲量を示したものです。水産庁は2012年までのデータしか公開していないので、2013年と2014年は、私が産地の水揚げ情報から推定したものです。赤い点線が今回合意した漁獲上限の4007トンを示しています。ここ数年は漁獲量がこの上限に達していません。未成魚の漁獲量半減というと、とても厳しい措置のように聞こえますが、実際はそうではありません。今よりもずっと多くの未成魚が獲れていた10年以上前の漁獲量を基準に半減しているので、これまで通り、未成魚を獲り続けることができるのです。商品の元値をつり上げ、大幅に割り引いて販売しているように見せかける「二重価格」と同じ仕組みです。実はウナギでも同じことをやっています(参考記事)。ウナギの場合は、2014年が10年に一度の当たり年で、ここ数年のなかでは漁獲が多かったのです。そこで、2014年の漁獲量を基準に3割削減しました。漁獲が例外的に多かった年を基準にすることで、漁獲量を減らしているように見せかけているのです。

クロマグロは10年間に約半分に減少したので、未成魚は『漁獲量半減』ですが、これまで通り漁獲を続けることが出来ます。成魚については、10年前の漁獲量据え置きですから、獲りきれないような漁獲枠になります0。産卵場での集中漁獲は、今後も継続される見通しです。今回合意した規制では漁獲にブレーキがかからないので、価格への影響は軽微ですが、逆に言うと、資源の回復はあまり期待できません。

日本では、漁獲規制は消費者に不利益をもたらすと考える人が多いですが、実はそうではありません。消費の中心である1歳のマグロを、5年後に大きくしてから産卵期以外の時期に漁獲するとどうなるでしょうか。自然死亡で個体数は四分の一に減ります。しかし、体の大きさが3.4キロから91.5キロへと、約30倍に増えるので、漁獲量は7倍に増えます。また、一キロあたりの単価も、500円から、5000円に、10倍に増えるので、生産金額は70倍になります。さらに、6歳で漁獲をすれば、すでに何回も卵を産んでいるので、資源の回復にもつながります。適切な漁獲規制を行うことで、漁業が儲かるようになり、消費者も今よりも多くのマグロを持続的に食べられるのです。

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大西洋には、大西洋クロマグロという別の種のマグロが生息しています。大西洋クロマグロも乱獲で激減したことから、2010年にワシントン条約での貿易規制が検討されました。それを転機として、EU主導で厳しい漁獲規制を導入した結果、資源が順調に回復しています。EUは今回の大平洋クロマグロの規制について、「会議には進歩が見られず、クロマグロ資源再建については、実現への熱意が不足していた」と非難しています。大西洋クロマグロの場合、EUは直近年から漁獲量を4割削減しました。また、30kg未満のクロマグロは漁獲禁止ですから、太平洋の「なんちゃって規制」とは雲泥の差です。水産庁は、「漁業者の生活を守るために急激な規制は避けるべきだ」ともっともらしいことを言いますが、厳しい漁獲規制で資源を回復させたEUと、見かけだけの規制で資源を減少させ続ける日本のどちらが、長い目で漁業者の生活を守れるかは自明です。

日本人は、海外から水産資源の持続性について指摘されると、「われわれの食文化を否定するな」と感情的に反発しがちです。しかし、食文化だからという理由で、非持続的な消費を続けていたら、遅かれ早かれ資源が枯渇して、文化自体が成り立たたなくなってしまいます。子の代、孫の代へとマグロ食文化を伝えていくためにも、絶滅危惧種指定の意味を真摯に受け止めて、漁業者も消費者も一時的な我慢をすることが求められています。

WCPFCの合意について


これまで漁獲規制が無かった太平洋クロマグロに対して、各国が漁獲量の上限を設定したという点では、意義がある会合でした。未成魚の漁獲量の半減というと、とても厳しい措置のように聞こえますが、実際はそうではありません。今よりもずっと多くのクロマグロが獲れていた10年以上前の漁獲量を基準に半減するので、日本の漁獲量は、過去3年の平均と比べて、たった6%削減されるに過ぎません。これまでと同じように漁獲を続けることが出来るので、価格への影響は軽微ですが、逆に言うと、資源の回復はそれほど期待できないでしょう。

日経新聞 クロマグロの未成魚、漁獲量半減で合意 太平洋西側

最近の水揚げ量は上限に届いていないことから、流通量や価格への影響は限られそうだ。

漁獲量を半減したのに、「最近の水揚げ量は上限に達しない」って、おかしいと思いませんか?

島耕作が漁業問題に参戦!


当サイトが、長年宣伝してきた個別漁獲枠制度に強い味方が現れました。

モーニングに連載中の「会長 島耕作」で水産資源管理のことを取り上げていただきました。俺の著書「漁業という日本の問題」をベースに、個別漁獲枠制度について、かなり詳しくかいてあります。とても良い内容なので、皆さんもぜひ読んでください。

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国民的な漫画に取り上げてもらえれば、これまで漁業に関心が無かった多くの層に、漁業の現場で何が起こっているかを知ってもらうことが出来ます。実に有りがたい話です。

新シリーズは、「大臣 島耕作」が抵抗勢力と闘いながら、漁業改革を進める展開を期待しています。

クロマグロの国際合意の総括


10月末に、米国で「全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC)第87回会合(再開会合)」が開催されて、2015年及び2016年の商業漁業の年間漁獲上限について合意が得られました。

日本語プレスリリース
http://www.jfa.maff.go.jp/j/press/kokusai/141030.html
英文の採択文書
http://www.iattc.org/Meetings/Meetings2014/OCT/PDFs/Proposals/IATTC-87-PROP-I-3A-MEX-JPN-USA-Conservation-of-bluefin-FINAL.pdf

東太平洋全体で、3300㌧。メキシコ以外の国(ようするに米国)の上限は300㌧になりました。また、未成魚の漁獲を漁獲量全体の50%に抑えるという努力目標が設定されました。

漁獲枠をグラフで表したのが次の図です。最近3年の平均からほぼ半減という、かなり厳しい内容です。親マグロが激減している現状を考えると、未成魚を50%に抑える努力目標は、「努力したけどダメだった」となる可能性が高いです。

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 太平洋クロマグロの全体の合意内容

西太平洋の漁獲枠は9月のWCPFC北小委員会で合意していたいので、今回のIATTCの合意によって、太平洋全域で、クロマグロの2015~2016年の漁獲上限が決定したことになります。

02-04 10-12 合意事項 最近年との比
日本 12897 9452 8890 0.94
韓国 655 1096 328 0.30
台湾 1709 313 1709 5.47
メキシコ 4619 5715 3000 0.52
米国 404 467 300 0.64
総計 20285 17043 14227 0.83

最近年から比較すると,国によって削減比がまちまちであることがわかります。削減比が小さい勝ち組は日本と台湾。日本が政治力を使って、自国に都合が良い提案を押し通した結果、漁夫の利を得たのが台湾です。台湾は10年前にマグロを多く捕っていたのですが、現在は漁獲が激減しています。規制が無いときよりも漁獲が増えるとは思えないので、枠があったとしても300㌧程度に収まると思います。

削減比が大きい負け組は韓国とメキシコ。日本の市場を使った圧力に抵抗しきれなかった模様です。そして、米国に関しては事情がちょっと違って、クロマグロに関しては、漁業よりも遊漁が重要な産業となっています。遊漁に関しても記述はあるのですが、具体的な内容に乏しいために、現状と大きく変わらないと思われます。

これで、クロマグロは回復するの?

「自国の漁獲を減らさずに、他国の漁獲を減らす」という交渉結果は、日本の狙い通りといえるでしょう。シェアが多い日本の漁獲量が温存されたために、資源全体の漁獲圧としてはあまり削減されていないことに注意が必要です。2010-2012の平均と比べると、17%の削減に過ぎません。2002-2004年と比べると、漁獲量は3割削減ですが、資源量は当時の半分に減っています。現在合意した漁獲枠では、クロマグロ資源の回復には結びつかないでしょう。

今回の交渉を見ていて疑問に思うのは、「日本は本当にクロマグロ資源を回復させるつもりがあるのか?」ということ。長期的な回復目標を設定せずに、数字を巡る駆け引きをした結果、声が大きい日本に都合がよいシナリオに落ち着きました。「日本の提案はクロマグロに関する自国の権益確保が狙いだ」とメキシコ代表団が指摘しましたが、その通りだと思います。政治力を使って、自国のシェアを増やしたところで、肝心の資源が崩壊してしまったら、元も子もありません。産卵場での巻き網操業の規制は無きに等しい状態が、今後も維持されるのが気がかりです。太平洋クロマグロがこのまま減少して行った場合に、最大の漁業国でありながら、自国の漁獲量を削減しなかった日本の責任が問われることになります。

数字をおっていけば、それほど意味がある漁獲量削減にならないのは明らかなのですが、「日本が率先して厳しい措置をとっているのに、資源保護意識の低い韓国やメキシコが駄々をこねている」といった論調のメディア報道が目立ちました。レクされた内容をそのまま拡散するのでは無く、交渉内容や結果を検証した上で、記事を書いて欲しいものです。

クロマグロの国際交渉を分析:日本のジャイアン外交が韓国とメキシコを力でねじ伏せた


日本国内では、「日本が率先して厳しい漁獲削減を提案したのに、資源保護に後ろ向きな韓国とメキシコが反対をしている」という内容の報道が目立つのですが、実態は全然違います。日本が自国のみにきわめて都合が良い提案をごり押して、韓国とメキシコが泣き寝入りをさせられたのです。また、日本の提案の方が、メキシコの提案よりも厳しい内容とはいえまえせん。そのあたりのことを、実際に数字で検証してみましょう。

日本の提案
2002-2004年の平均の漁獲から、未成魚は50%削減、成魚は据え置き

メキシコの提案
2010-2012年の平均の漁獲から、成魚も未成魚も一律25%削減

各国のクロマグロの漁獲実績はここにあるので、それをもとにそれぞれ提案の数値を計算してみると下の表のようになる。

未成魚 成魚 合計
02-04実績 13221.3 7911.3 21132.7
日本提案 6610.7 7911.3 14522.0
10-12実績 11849.7 5217.7 17067.3
メキシコ提案 8887.3 3913.3 12800.5

日本の提案が14522㌧に対して、メキシコの提案だと12800㌧になる。

日本の半減提案よりも、メキシコの25%削減提案の方が厳しい内容だったのだ

なんで、こんなおかしなことになるかというと、基準年が違うのと、メキシコの提案は成魚を含むのがポイントです。

次に国別の漁獲量の削減幅を見てみよう。漁獲量が多いのは日本。次にメキシコと韓国。米国と台湾も漁獲をしているが量は微々たるものなので、主要な三国について見ていこう。

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ここ十年で、日本は漁獲を減らし、韓国とメキシコが漁獲量を増やしている。昔を基準に持ってくることは、日本にとって好都合なのだ。最近の漁獲量(赤)と日本提案(緑)を比較したときに、日本はほぼ横ばいだが、韓国とメキシコは激減している。日本提案は、ここ10年で、未成魚の漁獲量が増えた国に厳しい内容なのだ。

2010-2012年の平均漁獲量を1とした場合の、日本提案とメキシコ提案の漁獲量を示したのが次の図である。

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日本提案だと日本の漁獲量削減はたったの6%。それに対して、韓国は7割削減、メキシコは5割削減という不平等な内容になっている。つまり、日本提案は「俺たちは今までどおり獲るけど、メキシコと韓国に漁獲を削減させて、クロマグロを回復させよう」という内容だったわけ。韓国とメキシコがこれに反発をするのは、当然だろう。メキシコは「みんなで一律に減らそう」と主張したわけで、日本のように自国のみに都合が良い提案をしたわけではありません。自国の漁獲量を6%しか減らさない日本が、25%の削減を提案したメキシコを「資源回復に後ろ向き」と非難するのはおかしいと思います。IATTCでは4割削減で合意したので、最終的な漁獲削減は、日本6%、韓国70%、メキシコ40%となりました。

普通に考えれば、日本よりもメキシコの提案の方が妥当です。「産卵親魚が漁獲がない時代の4%まで減ってしまって大変だ」と騒いでいるのだから、未成魚のみならず成魚も保護するのが当然。また、漁獲量の削減を議論するにも、10年以上前の水準ではなくて、最近年を基準にするのがごく普通の考え方だ。なぜ、メキシコと韓国が日本にだけ都合がよい提案を飲んだかというと、水産庁が商社に圧力をかけて、韓国とメキシコのマグロを輸入させないと脅したからである。民間の環境NGOが圧力をかけるのはまだしも、政府機関が法令によらずに貿易規制をするのはWTOなどに違反すると思うのですが、どうなんでしょう?

日本人は、「日本は交渉が下手なお人好しで、いつも損をしている被害者」という意識があるのですが、とてもそうは見えません。日本のやっていることは、ジャイアンそのものです。

さて、自国のジャイアン外交を日本のメディアはどのように伝えたかというと…

日本は資源保護の観点からより大きな削減を主張していたが、メキシコの反対で後退した。
すでに中西部の太平洋海域では今秋の「中西部太平洋まぐろ類委員会」の小委員会で日本提案に基づいて漁獲半減で合意している。同じ太平洋で基準が異なれば資源管理の実効性がなくなる可能性がある
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS30H2F_Q4A031C1EE8000/

日本は「重さ三十キロ未満の未成魚の漁獲量を一五年以降に50%減らす」などとメキシコ案より厳しい内容を提案しているが、メキシコは「日本の主なクロマグロ漁場である中西部海域の漁獲量削減が不十分」と主張。「日本の提案はクロマグロに関する自国の権益確保が狙いだ」と反発している。
日本は七月に開かれたIATTC会合でも「未成魚50%削減」を提案したが、メキシコなどの反対で合意に至らなかった
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2014102702000127.html

http://www.at-s.com/news/detail/1174136000.html

絶滅まっしぐらの状況を変えるには、本委員会の争点である、2015年以降の未成魚(30kg未満)の漁獲量半減(2002-2004年比)がとても重要です。しかし、メキシコが反対の意を示しているため、採択されないかもしれないのです。
もし、メキシコが合意しなかった場合、せっかく西側で未成魚漁獲量を半分に減らしても、東側で獲り放題だったら意味がありません
http://www.greenpeace.org/japan/ja/news/blog/staff/blog/51113/

「せっかく日本が素晴らしい提案をしたのに、資源保護に後ろ向きなメキシコが反対して、話がまとまらない」という論調です。メキシコが反対したのは、日本提案があまりにも不平等だったからだと思うのですが、そのことをちゃんと伝えたのは共同通信の井田さんぐらいでした。日本政府が、きわめて不平等な提案を突きつけていることには触れずに、反対する国を悪者扱いするのはいかがなものでしょうか。メディアのみならず、グリンピースまで水産庁の主張を右から左に伝えて、メキシコを非難。グリンピースブログの「合意が得られない場合には、輸入禁止などの強制的な措置をとらざるを得ません」って、まるで水産庁の中の人の発言ですね。

ジャイアン外交が悪いとは言いませんが、そのことを正しく国民に伝えるべきだと思います。

日本にとっては大勝利とも言える交渉結果なのですが、問題はあるのでしょうか。相手が納得していない状態で力で押し切った場合に、実効性の面で問題が生じるというのは往々にして起こりうることです。たとえば、捕鯨モラトリアムの後に日本がとった行動などがまさにその典型です。合意した内容が守られず、クロマグロ資源の回復に失敗した場合には、誰も得をしないことになります。また、日本の産卵場での漁獲規制がないのも問題です。いくら未成魚を守っても、産卵場に集まったマグロを一網打尽にしていたら、資源は回復しません。韓国、メキシコの漁獲に上限を設定するという意味では成功ですが、クロマグロ資源が回復するかどうかは、現段階ではわかりません。

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