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勝川俊雄公式サイト

こうすれば中国漁船が来なくなる! そのために日本がやるべきこととは?

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中国漁業の膨張について、Financial Timeにおもしろい記事がありました。

Chinese fishermen caught up in Asian geopolitical conflict

Local fish stock collapse pushes fleet further away from domestic waters

https://www.ft.com/content/364a5172-5ec5-11e6-bb77-a121aa8abd95

中国沿岸の水産資源が減少した結果として、より遠くの海域まで中国漁船が進出し、それが各地で紛争を引き起こしているという内容です。日本のメディアは「中国の野郎が俺たちの魚を獲りやがって」という被害者の視点しかないのですが、FTの場合は中国の漁師にも取材して、中国漁業の現状がわかるようになっています。

ここに書かれている中国漁業の実態は、興味深いですね。

  1. 魚が減ったので、遠くの漁場に行かざるを得ない
  2. 漁業の生産性は低く、燃油の公的補助金をやめれば漁船は半分になる
  3. 漁業者は自分の代で最後

日本の現状とかぶる部分が多いのですが、2に中国の膨張を押さえ込むヒントがあります。乱獲に結びつく漁業補助金を禁止してしまえば、中国漁船は稼働できず、縮小されるのです!

すでに、世界はその方向に議論を進めています。

漁業補助金:乱獲助長の補助金禁止へ13カ国連合 – 毎日新聞 http://mainichi.jp/articles/20160916/ddn/008/020/025000c

米通商代表部(USTR)は14日、魚介類の乱獲を助長するような漁業補助金の世界的な禁止を目指し、米国主導で13カ国が連合を結成したと発表した。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に盛り込まれた補助金規制の規定を土台に、世界貿易機関(WTO)加盟の有志国で具体策を議論する。日本は参加を見送った

記事の元となった、米国政府の発表はこちら

持続性を無視した補助金による漁業拡大を食い止めるために、米国、アルゼンチン、オーストラリア、カナダ、チリ、コロンビア、ニュージーランド、ノルウェー、パプアニューギニア、ペルー、シンガポールなど多くの水産資源保有国が立ち上がったのです!

しかし、日本は参加をしませんでした。

中国の隣に位置して、大きな被害を被るであろう日本が、世界の沿岸漁業国の中国包囲網の足並みを乱しているのは残念です。日本が参加を見送ったのは、乱獲助長の補助金を禁止されると、自国の漁業者に行っている、燃油の補填やら、大型巻き網船の造船補助やらが出来なくなる恐れがあるからでしょう。その代償として、日本近海の水産資源を中国にプレゼントすることにならなければ良いのですが。

私は、それほど遠くない将来、中国は乱獲に繋がる補助金の禁止に賛同すると考えています。大きすぎる漁獲能力を国費で維持しておくのは、中国の国益に合致しないからです。この分野でも、国益では無く、庁益で動く日本だけが獲り残されることになりそうです。

ワシントン条約の象牙規制

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ワシントン条約の締約国会議が南アフリカで開かれています。マグロやウナギについては大きな動きはありません。大平洋クロマグロやニホンウナギの資源は相変わらず壊滅的ですが、東アジアのローカルな資源なので国際的な関心が薄いのです。

今回の締約国会議のハイライトは象牙で、主役は日本です。象牙のニュースがNHKなどのメディアで大きく報道されているので目にされた方も多いと思います。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161003/k10010715241000.html

大まかな流れはこんな感じです。

1)象牙の国際取引の全面停止が提案された
2)日本が強硬に反対したために、「密猟、または違法取引につながる市場」のみの取引停止が採択される

日本政府の代表は、厳格に管理されている日本市場は閉鎖の対象外だと国内メディアに説明していますが、これは希望的推測であり、国際的な合意がえられたものではありません。

日本の象牙市場がどのような仕組みなのか。こちらのはんこ屋さんは、「日本はちゃんとやっていて、密猟された象牙は中国に行く」と主張しています。日本政府も厳格に管理しているといっているし、ちゃんとやっているのだろうと普通の人は思うでしょう。

本当にそうなのか。海外のNGOが調べたレポートがこちらです(オリジナル)(日本語訳)。

「日本の制度 は抜け穴によって病んでおり、また規制力の 弱い法律によって効果をそがれてしまってい る。その結果、最も基本的なレベルにおいて さえ、意味のある規制は存在しないに等しい」と強く批判されています。詳しくは本文を読んでいただきたいのですが、日本の象牙取引業者に、本来は売買できないはずの象牙の販売を申し出たところ、8割の業者が不正な手段で購入を教唆したというショッキングな内容です。

このレポートは海外の主要メディアは大きく取り上げました。日本の象牙認証システムがザルであるという認識は海外では広まっています。ナショナルジオグラフィックでも、次のように報じています。

日本で違法な象牙取引が横行、覆面調査でも確認
業者からはウソを書くよう持ちかけられ、規制制度は穴だらけ
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/121400363/

日本の象牙の認証は「1990年よりも前に入手した」と自己申告すれば簡単に登録できてしまうザルのようなシステムなのです。書類の上での整合性はとれるかもしれませんが、違法な象牙を排除する実効性は期待できません。さらに、残念なことに環境省と経産省の指定機関「自然環境研究センター」の担当者が、違法な象牙取引を促進しているという批判もあります。

http://www.sankei.com/premium/news/160925/prm1609250031-n1.html

国内での象牙の新規登録がここに来て急増しています。これらは全て1990年以前に日本に輸入されたことになっているのですが、それを証明する発行書が自己申告なので、実態はわかりません。

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http://eia-global.org/images/uploads/EIA_Japan_Illegal_Ivory_Trade__Japanese.pdfより引用

大量の密猟象牙が現在進行形で日本に入ってきているのかどうかは疑問です。国内の象牙需要は斜陽状態で、すでに20億円程度。価格は中国の方が上なので、わざわざ日本を経由するメリットは無いでしょう。中国で象牙の価格が上がったことから、規制前に国内に入った象牙が中国に流れていると考えるのが自然です。

だからといって、日本市場の継続に対して国際的な理解が得られるでしょうか。日本の認証システムは性善説で運営されており、グレーの象牙も認証できてしまう状態だという指摘は説得力を持ちます。日本の象牙が「厳格に管理されている」とは言えないし、適正な認証を得ていない象牙が中国に流れている可能性がありますので、「違法取引につながる市場」と言えると思います。

今回のワシントン条約で象徴的なのは、中国の転身です。これまで中国は自国が取引をする規制には強硬に反対してきました。日本と中国がツートップで、国際的な規制に反対してきたのです。しかし、今回は中国は規制に対して前向きな姿勢を示しています。昨年の9月に行われた米中首脳会談で、象牙の国内取引の停止で合意をしています。象牙のみならず、野生生物の不正取引撲滅に連携して行く方針が示されています。

中国が国内の象牙取引禁止を発表

習近平中国国家主席とバラク・オバマ米大統領は今日、今なお続く密猟危機からゾウを保護するために両国が迅速に行動するという歴史的な発表を行いました。「習主席は今日、ゾウを救うための闘いに大勝利をもたらしました」と国際動物福祉基金(IFAW)の代表、アゼディーン・ダウンズは言います。

締約国会議でも、これまでヒールだった中国が一転して、優等生になっているようです。以下は三浦英之さん(朝日新聞アフリカ特派員)のツイートです。

https://twitter.com/miura_hideyuki

密猟象牙の最大の市場は中国であり、現在進行形の密猟への日本の関与はあまり無いと思います。にもかかわらず、日本が悪い意味での存在感を発揮して、「目先の金が最優先で、絶滅危惧種の保全に後ろ向き」という評価を得てしまうのは、とても残念なことです。

中国の転身がもたらした世界的な流れに、日本も乗るように、米国は働きかけていました。

日本も象牙国内取引禁止を…米代表
http://mainichi.jp/articles/20160926/k00/00e/030/165000c

アッシュ氏は「日本がのけ者にならないでほしい」と話し、決議案に賛成するよう求めた。
象牙取引を巡っては、オバマ米大統領と中国の習近平国家主席が昨年9月の首脳会談で、国内取引の禁止に取り組むことで合意した。アッシュ氏は「中国側は今年中に取引禁止に向けたスケジュールを示すと約束した」と明らかにし「日本も共に立ち上がるべきだ」と付け加えた。

米国の申し出に乗っかって、日米中で象牙取引禁止宣言でもやっていれば、日本の株もぐっと上がったことでしょう。

本来は日本が環境を錦の御旗にして、中国の膨張を食い止めないといけないところが、逆に中国にリードされて国際社会で日本が孤立するという最悪の展開になってしまいました。今後の日中関係を考える上でも大きな転機になりそうです。

(転載禁止)

日本が漁獲上限を設定したから、サバが回復したのか?

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NHKのニュースのニュースでサバ漁業について取り上げられていました。

http://www3.nhk.or.jp/news/business_tokushu/2016_0831.html?utm_int=detail_contents_tokushu-business_008

サバやサンマについては、「日本はちゃんと規制をしているのに、中国が悪い」という一方的な報道が多いのですが、NHKは日本の過去の失敗についても触れています。

太平洋のサバをめぐっては、中国漁船の行動だけを批判するのはフェアではありません。実は日本も過去に手痛い失敗をしています。 1970年代まで、太平洋の「マサバ」の資源量は、推計で300万トンから500万トンに上っていました。しかし、日本の漁業者が取りすぎたことが原因となって資源量が減少し、2001年には一時、15万トンまで落ち込みました。枯渇寸前の危機的状況だったと言っていいかと思います。
日本は反省し、サバの漁獲量に上限を設けるなどの独自の資源保護に取り組みました。こうした行動が成果を生み、2014年には資源量は150万トン程度まで回復したと見られています。

前半部分はその通りなのですが、日本が規制してサバを回復させたという指摘には違和感があります。資源回復に貢献したとされるサバの漁獲量の上限(漁獲枠)と実際の漁獲量の関係はこちら

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単位は千トンです。ほとんどの年で4割近い漁獲枠が消化されずに余っています。つまり、頑張って獲っても、獲り切れないような過剰な漁獲枠が恒常的に設定されているのです。道路の法定速度が、車の最高速度を超えているような状態であり、漁獲にブレーキをかける効果は期待できません。「形式的に漁獲枠を設定して、場当たり的に獲っていたら、運良くサバが増えてきた」というのが実態だと思います。サバが増えた(といっても低水準から少し回復しただけですが)理由は、ここ10年ぐらいの卵の生き残りが良かったことと、東日本大震災によって、一時的に漁獲圧が弱まったからでしょう。

ちなみに、海外だと、漁獲枠(Allocation Pounds)と漁獲量(Total Catch Pounds)はほぼ等しくなります(例えば米国のアラスカのカニの漁獲枠の消化はこんな感じ)

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日本のクロマグロ規制見送り提案が見送られたようです

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クロマグロの国際会議が終わったようですね。早くも記事がでてきたので、内容について解説します。

クロマグロ漁獲規制見送り 日本案など通らず
クロマグロの資源管理を議論する国際会議「中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)」の小委員会が2日、閉幕した。日本側の提案した漁獲規制措置に対して米国などが反発、採用は見送られ、来年以降に継続して検討する見通しになった。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDJ02H0J_S6A900C1EAF000/?dg=1

まずは、米国が提案している長期目標について解説します。

米国は2030年までに13万トンまで回復させるという長期目標を定めて、みんなで努力しようと提案をしています。これはごく普通の漁獲規制の考え方ですね。これに猛反発しているのが日本です。

日本は、長期的な目標水準を設定せずに、魚が減ったら、その分だけ管理目標を下げて、魚を獲り続けてきました。長期目標を設定しないことで、管理していると言いつつ、場当たり的に魚をとり続けているのです。クロマグロの会議では、長期目標の設定について、5年ぐらい前から議論をしているのだけど、いつも日本が大反対をして、未だに管理目標が設定できていない。今年も、日本の主張が通って、これからもクロマグロの漁獲規制は、長期的視野を持たず、その場しのぎをしていくことになりそうです。

次に日本が主張した「緊急漁業規制のルール」について解説します。

日本は、新しく産まれてきた0歳魚の加入が「13年までの最低水準だった約450万匹を3年連続で下回った場合に緊急措置が発動する」と提案したそうです。下の図は過去60年間の加入尾数の推定値で450万尾を赤の点線で示しました。「3年連続で赤線を下回るような低加入にならない限り、そのまま獲り続けよう」という提案ですね。

キャプチャ

「前代未聞の低水準の加入が続いても、2年間はそのまま獲り続けようという」という日本の提案は、どう見ても漁獲規制を先延ばしにするための措置なのです。本来なら、子供が産まれてこなくなったら、今いる親を大切にして卵を産ませないといけないので、早めにブレーキをかける必要があります。日本は、加入が低水準になっても、しばらくは獲り続けられるように予防線を張ろうとしたのですが、他国の反対によって提案は否決されたようです。

追記:NHKはこんな感じ

国際会議のあと、アメリカの代表団のバリー・トム氏は「日本の緊急制限措置の提案はクロマグロを守るのに十分なものではなく、資源の枯渇を予防できない。措置の発動条件はもっと有効なものであるべきで日本側にはもっと厳しい内容で提案してもらいたい」と話していました。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160902/k10010666031000.html

クロマグロの資源状態は極めて悪いので、加入の失敗が確認できたら、出来るだけ早く漁獲にブレーキをかけるのが望ましいです。

FAOも日本漁業の一人負けを予測→成長する世界の漁業、一人負けの日本漁業

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日本国内だけを見ていると、漁業には未来はないように見えますが、海外をみると別の光景が見えてきます。世界的に見ると、漁業は成長産業であり、日本のように漁業が衰退している国の方が例外です。ノルウェー、米国など、先進国でも漁業が成長している国が多数あります。世界の漁業がどうなっているかを概観してみましょう。

世界の漁業の現状についてまとめたものとしては、FAO(国際連合食糧農業機関)が二年に一回発行しているSOFIA(世界漁業白書)があります。

FAOの統計によると、世界の漁業生産は下図のように右肩上がりで増えています。1990年以降、天然魚(オレンジは)ほぼ横ばいで推移しているのですが、養殖魚(緑)の堅調な増加によって、全体として増えているのです。

キャプチャSOFIA 2016 TABLE1より引用

食用の水産物の生産量は2009年から2014年の間に、1億2380万トンから、1億4630万トンへと約二割増えました。水産物生産の増加割合は、人口の増加を上回っているので、一人あたりの水産物供給量は、この期間に年間18.1kgから年間20.1kgへと増加しています。では、水産物が余っているかというとそうではありません。先進国から、途上国まで、水産物の需要が増えており、世界の貿易市場での水産物の需給関係は極めてタイトで、価格は上昇しています。

下の図が水産物の貿易価格(米ドル/トン)を示したものです。2015年までが実測データで、それ以降は予測になります。食用水産物の単価(緑の点線)は、2001年に底値になった後上昇して、その後の13年の間に、約50%上昇しています。生産量が増えて、しかも価格が1.5倍に増加しているのだから、漁業全体の経済規模は拡大しているのは明らかです。

 キャプチャSOFIA 2016 より引用

2016年のSOFIAでは、2025年までの漁業生産の将来予測をしています。それによると、世界全体では養殖を中心に17.4%の漁業生産の増加となるそうです。先進国は伸びしろが小さく、1.0%の増加にとどまっています。ほとんどの国で生産量(重量)に大きな変化は無いのですが、例外は日本とノルウェーです。養殖の成長によってノルウェーが二桁の増加を達成する一方で、日本のみが-13.7%と大幅な減少となっています。開発余剰のある途上国は、先進国よりも漁業生産の伸びしろが大きいために、20.8%の増加が見込まれています。ブラジル、中国、インドなどが大幅に漁獲量を増やしています。日本で現在進行している漁業の衰退は、世界的に見て極めてユニークな現象なのです。

SOFIA 2016 TABLE22より筆者作成
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日本一人負けの予測をしているのはFAOだけではありません。2013年に世界銀行が、「2030年までの漁業と養殖業の見通し」というレポートを公開しました。こちらの2030年までの世界の天然魚・養殖魚の生産・消費・貿易を予測でも同じような結果が得られています。詳しくはこちら→http://katukawa.com/?p=5396

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Fish to 2030 : prospects for fisheries and aquacultureより引用

当ブログでは、「世界では漁業は成長産業。日本の一人負け」と言い続けてきました。客観的に見るとそう言わざるを得ないのです。では「日本の漁業に未来は無いか」というと、そうではありません。日本の漁業が衰退しているのは、漁業のやり方が悪いのです。もちろん、今の延長線上には明るい未来は無いのですが、漁業のやり方を変えることで未来を変えていくことは可能です。最も成功している漁業国の一つであるノルウェーの政策を参考に、日本漁業の問題点を一つずつ潰していけば、日本の漁業が成長する余地はまだまだあります。次世代を産む親魚をちゃんと残した上で、量では無く価値を伸ばす漁業に転換すれば、日本の漁業は生産的な産業に生まれ変わるでしょう。

今年のサンマ漁は厳しくなりそうです

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去年はサンマの不漁が大きな話題になりましたが、今期のサンマ漁はどうなるのでしょうか。7/29に水産研究・教育機構が「平成28年度 サンマ長期漁海況予報」を公開したので、その内容について解説します。どうやら、今年もサンマはあまり期待できない感じです。

平成28年度 サンマ長期漁海況予報

日本人は、サンマは日本の魚と思っているかもしれませんが、実はそうではありません。サンマは太平洋の真ん中の公海に住んでいて、卵を産むために南下します。産卵海遊をしているサンマの一部が、日本沿岸を通りかかり、それを我々は漁獲しているのです。ということで、日本でサンマが獲れるかどうかは、以下の二点が重要になります。

① 太平洋の西方面にどのくらいのサンマがやってくるか
日本近海にサンマの漁場が形成されるか

① 太平洋の西方面にどのくらいのサンマがやってくるか

水産研究・教育機構は、毎年、調査船を出して、日本方面に向かってくるサンマの量を調査しています。この調査結果をみると、西太平洋方面に向かっているサンマの資源量が推定できるのです。2016年の来遊量は、200万トンを下回り、2003年以降最低水準となりました(゚◇゚)ガーン


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水産研究・教育機構 平成28年度 サンマ長期漁海況予報より引用

日本に近い方から、一区、二区、三区とエリアを分けて資源量を推定しています。一区のサンマから日本漁場に来遊するのですが、この一区のサンマの密度が2010年以降低水準で推移しています。今年も、八月から九月上旬の漁期初期のサンマの漁獲はあまり期待できない感じです。二区は去年と同じぐらい。3区は去年よりもやや少ないという結果になっています。不漁だった去年と似たような来遊パターンですが、量としてはやや下回ることになりそうです。

 日本近海にサンマの漁場が形成されるか

日本近海までやってきたサンマの群れがどのルートを通るかが重要です。日本のすぐそばに密度の高い漁場を形成してくれれば、サンマは豊漁になります。逆に、日本のEEZの中に入ってこなかったり、密度が分散した場合には、まとまった漁獲は期待できません。

サンマは冷たい海水を好んで泳ぐので、表面水温が15℃前後のところに漁場が形成されます。北から来る冷たい親潮が日本沿岸を通ると、日本のそばにサンマの好漁場ができて、豊漁が期待できます。残念ながら、今年は、親潮の勢力が弱く北の方に押しやられていて、釧路周辺の水温は高めに維持されています。現在のパターンが続くと、8月末からスタートする大型船の操業は、漁場が遠い上に密度も分散することから、低調な水揚げになりそうです。その後は、親潮の南下に伴い、9月 中旬頃には一時的に漁況が上向くものの、その後の魚群の来遊は断続的であり、時期による来遊量の変動が大きく漁況は安定しないと、水産研究教育機構は予測しています。
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気象庁 海面水温・海流1か月予報より引用

今年のサンマの漁期前予想のまとめ

(1)来遊量:昨年をやや下回る。

(2)魚体:漁期を通じて1歳魚の割合が高い。漁期全体における漁獲物の1歳魚の割合は、昨年

(85%)並み。(1歳魚の体長は、6月~7月の漁期前調査時におおむね27cm以上、8月以

降の漁期中は28cm以上)

(3)漁期・漁場:大型船出漁直後(8月下旬)の漁獲量は少なく、漁場は択捉島沖以北の広い海域に分散する。9月中旬になると漁況は上向くものの、その後も旬別漁獲量の変動は大きく、漁場は親潮第2分枝沿いの沖合に形成される。三陸海域への南下時期は平年よりやや遅れ、漁場形成は10月中旬となる。

コメント

日本に近づいてくるにつれて、さらに精度の高い続報がでてくるものと思われますが、現時点では去年よりも好転する要因が見当たらない感じですね。サンマの資源については、現時点ではそれほど大きな問題はないと俺的には考えています。2015年には、220万トンのサンマが来遊したのに対して、日本台湾ロシアなどの漁獲量は35万トン程度です。漁獲率は16%程度となっており、太平洋クロマグロと比べたら、漁獲の影響は無いようなものです。しかも、日本方面に来るサンマは資源の一部に過ぎません。

ただ、今後も今のままで良いわけではありません。漁獲は生涯のほとんどを公海で過ごすサンマは、どの国でも好きなだけ捕ることが出来ます。このまま漁獲圧が強まれば、資源が支えられなくなるのは時間の問題です。資源に余裕があるうちに、国際的な資源管理の枠組みをつくる必要があります。

やっぱり意味が無かったウナギの池入れ規制

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二年前に書いた「あまり意味の無いウナギの池入れ上限」のアップデートです。

日本が国として行っている規制は、シラスウナギの池入れ量の上限です。去年に引き続き、今年も枠を大幅に下回りました。実質的に取り放題、入れ放題となっており、規制の効果は皆無です。

キャプチャ

シラスウナギの池入れ上限は、例外的に多くのシラスウナギが来遊した2014年の池入れ量から2割の削減した21.7トンです。過去5年(2010-2014)の平均が19.5トンであることを考えると、減少傾向にあるシラスウナギの漁獲に歯止めをかける効果は期待できないことがわかります。

水産庁は、がんばっても到達しない池入れ上限を形式的に設定して、業界の短期的利益を守りつつ、規制に取り組んでいるポーズをしています。資源管理では無く、「資源管理ごっこ」です。これではウナギ資源もウナギ食文化も守ることが出来ません。

追記

この前、対馬に行ってきたんだけど、地元の人に聞いたら、子供の頃は川にウナギがウジャウジャいて、獲りたい放題だったらしい。いまでも、ウナギがいることはいるけど、数にしたら百分の一ぐらいじゃないかって。その川は、河川工事等をしていなくて、河川環境は今も昔もほぼ同じ。ということは、シラスウナギの来遊量が30年ぐらいのうちに、大幅に減ってしまったと考えるのが合理的ですね。

ウナギはいろんな場所で結構身近にいたらしいが、定量的なデータがない。国の漁獲統計も全然当てにならないし、困ったものです。

参考→密漁ウナギに出会う確率は50%

データ

2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
池入れ量(㌧) 19.9 22 15.9 12.6 27.1 18.3 18.4
池入れ上限 21.7 21.7

データソース

去年までの動向

http://www.jfa.maff.go.jp/j/saibai/pdf/ikeire.pdf

今年の実績

http://www.jfa.maff.go.jp/j/saibai/pdf/nihonunagi03.pdf

NHK総合 NEW WEBに出演します。

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本日23:30から、NHKのニュース番組(総合テレビ)に出演します。

夕方、NHKからサンマの情報提供をして欲しいと言われて、電話で色々話していたら、スタジオに来て欲しいということになり、急遽行くことになりました。東京在住は、楽でいいね。

チャンネル
[総合]
2015年10月16日(金) 午後11:30~午前0:00(30分)
ジャンル
ニュース/報道>定時・総合
ニュース/報道>天気
ニュース/報道>解説
番組内容
サンマがとれない!食卓を直撃する不漁の原因は…海水温?エサ不足?とりすぎ?専門家と掘り下げる▽新たに200余を確認…与謝蕪村の知られざる句▽ナビは水無田気流さん
出演者ほか
【ナビゲーター】詩人…水無田気流,【キャスター】鎌倉千秋,【ニュースリーダー】小見誠広,【気象キャスター】斉田季実治

WCPFC北小委員会が終わったようです

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太平洋クロマグロの資源管理に関する国際会議(WCPFC 北小委員会)が9/1-3まで開催されました。クロマグロの資源評価は、2年に一回行われます。最新の資源評価は2014年で、次回は2016年です。今年は谷間の年に当たるので、普段であればしゃんしゃんでした。しかし、クロマグロの新規加入が劇的に低下していることから、議論が紛糾しました。

下の図はクロマグロの新規加入量の指標です。急激に減少していて、2015年はさらに悪くなりそうです。(水産庁と巻き網業界以外の)関係者の間で、資源の存続に対する危機感が広がっています。米国は親魚を含む規制を再検討して、長期的な回復計画を提案しました。メキシコは、国際合意を待たずに漁獲枠を自主的に削減すると宣言しています。壱岐や対馬の一本釣り漁業者は産卵期産卵場での漁獲を自主的に禁漁しました。

キャプチャ

日本は、クロマグロの新規加入が減少した時に適用される緊急ルールを提案しました。すでに新規加入が激減しているにも関わらず、「緊急時のルールを2016年に議論しましょう」と提案しているのだから、危機感が欠如しています。すでに火が燃え広がっているのに、火事になったらどうするかを悠長に相談しているようなものです。しかも、この緊急ルールはそもそも2年前に決めておくべきだったのです。

こちらに2013年の決定事項があります。

http://www.wcpfc.int/system/files/CMM%202013-09%20CMM%20for%20Pacific%20Bluefin%20Tuna.pdf

2ページ目に次のような記述があります。

  1. CCMs, in particular those catching juvenile Pacific bluefin tuna, shall take measures to monitor and obtain prompt results of recruitment of juveniles each year. An emergency rule shall be developed in 2014 which stipulates specific rules all CCMs shall comply with when a drastic drop of recruitment is detected.

    新規加入が劇的に減少したことがわかったときに、全ての加盟国が従うべき緊急ルールを2014年に開発する。

今回の会議で議論をした緊急ルールは、2014年に決めることになっていたのです。議長が議事から外したために、実際には議論をされませんでした。2013年の時点では新規加入はそれほど悪くないと考えられており、将来のリスクに備えようということでした。この時点で緊急ルールを決めていれば、今年は緊急ルールが発動して、資源の減少にブレーキがかかったかもしれません。議論を先送りしている間に、緊急時が現実のものになってしまったのです。2016年に緊急ルールが合意できたとしても、実際に緊急ルールが適用されるのは2017年以降でしょう。後手後手の対応によって、どこまでも水産資源が減っていくという、日本漁業ではおなじみの光景が繰り返されています。

俺が疑問に思うのは次の二点ですね。

  • なぜ2014年に緊急ルールを議論をしなかったのか。(北小委員会議長の宮原氏が答えるべき質問です。)
  • 水産庁は現在の新規加入の激減は緊急時ではないという認識なのか?

水産庁の国会答弁を徹底検証(その2)親が減った原因は?

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今日は親魚が減った原因について検証します。水産庁は次のように答弁しました。

○政府参考人(本川一善君)

太平洋クロマグロの未成魚の発生につきましては、親魚の資源量にかかわらず、環境要因に左右されるところが非常に大きいと認識しております。
先ほど申し上げましたように、北太平洋まぐろ類国際科学委員会、ISCという科学者の方々の集まりの場では太平洋クロマグロの親魚資源が減少していることについては、漁獲のほとんどがゼロ歳から二歳までの未成魚が大半を占めております、近年、この漁獲が増大したこと、それから一方で、未成魚の発生が少ない年が頻発をし、その結果、親魚まで生き残る魚が少なかったことが主な原因であるというふうに科学委員会が分析をしております。

このように、ISC、科学委員会は日本海の産卵場での漁獲が親魚資源の減少につながったということは言っておりませんで、ウェッジに記載のあるような、〇四年から始まった日本海の産卵場での漁獲の影響により成魚の資源量や漁獲量が減少してきたという指摘は、事実とは異なるんではないかと考えているところでございます。

親が減った理由は、① 未成魚の発生が少なかったことと、②未成魚の漁獲圧が上昇した結果であり、③日本海産卵場の漁獲の影響では無い、という主張です。③については、この前の記事で検証をしたので、今日は①と②について検証します。

まず、最近の未成魚の漁獲圧がどれぐらい上がったかを見てみましょう。北太平洋まぐろ類国際科学委員会ISCの最新のレポートのデータをつかって、2002-2004年の漁獲率と2009-2011年の漁獲率を比較したのが次の図です。

キャプチャ

値が1を上回ると最近の漁獲率が上がっていることになります。0-2歳の漁獲率はほとんど増えていないし、高齢魚の漁獲率はむしろ減少していることがわかります。漁獲率が大きく上がっているのは、日本海の産卵場巻網が漁獲している3-5歳のみです。「近年、未成魚への漁獲圧が増大したから親魚が減った」という水産庁の主張は、根底からおかしいのです。

北太平洋まぐろ類国際科学委員会ISCの最新の資源評価をもとに、未成魚(0-2歳)、日本海産卵群(3-5歳)、高齢魚(6歳以上)の資源量(トン)を図示しました。

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未成魚(0-2歳)と日本海産卵群(3-5歳)は、徐々に減少しているのに対して、高齢魚(6歳以上)が激減しています。もし水産庁の主張が正しいとすると、まず未成魚(0-2歳)が激減し、数年遅れ日本海産卵群(3-5歳)が激減し、さらに数年遅れて高齢魚(6歳以上)が減少していくはずなのですが、そうはなっていません。このデータを素直に解釈すると、「3-5歳まではマグロはいたけど、そこで獲っちゃったから、6歳以上の親魚が減っているんだな」となります。

日本海産卵場でクロマグロ産卵群を漁獲している山陰旋網組合は、Wedge(9月号)の取材に対して、「あまりクロマグロが減少しているといった感覚はない。去年も今年も自主規制の上限に達したので漁獲を止めたが、規制が無ければ、もっと獲れていた」と答えています。実際に漁をしている人達が「マグロは減っていない」というのだから、日本海の産卵場まではマグロは生き残っているのでしょう。

各地の定置網の水揚げを見ていても、3-4歳ぐらいまでは、それなりに漁獲されていますが、そこから上のサイズのマグロがほぼ消滅しています。先日、岩手県の定置網漁業者と話をしたのですが、昔は200kg以上のクロマグロが沢山獲れたそうです。最近は、10kg~30kgぐらいの未成魚は時折まとまって獲れるけど、そこから上のサイズは全く獲れないということです。

次に高齢魚を見てみましょう。日本海産卵場を卒業した6歳以上の魚は太平洋の沖縄産卵場に向かい、沿岸延縄漁業によって漁獲をされます。 ISCのこちらのレポートに太平洋の延縄漁業の漁獲データが整理されています。

http://isc.ac.affrc.go.jp/pdf/PBF/ISC12_PBF_1/ISC12-1PBFWG08_ichinokawa.pdf

こちらの図は、大型の親の産卵場である太平洋の延縄の漁獲量です。針1000辺り何本のクロマグロが漁獲されたかが図示されています。×印は漁をしたけれど、クロマグロが捕れなかった場所です。日本海産卵場の操業が2004年に本格化してから、クロマグロの魚群が急激に減っていることがはっきりと読み取れます。

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これを数値化したのが、下のグラフです。2005年から親魚が激減しています。

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30kg(3歳)以下のマグロはそれなりに捕れている。でも、80kg(5歳)以上のマグロは激減している。ということは、「3歳から5歳の間に、誰かが獲っちゃった」と考えるのが妥当です。このサイズのクロマグロを大量漁獲しているのが日本海産卵場の旋網なのです。

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from 18 Mar. 2009

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