「保護区設置」で水産資源を再生

「保護区設置」で水産資源を再生
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20070413/122749/?P=1
日経も最近は、漁業ネタが多いな。
マグロの養殖ネタに続き、今度は保護区ネタが出てきた。

漁業は、水揚げ以外にも様々なダメージを与えている。
網ズレによる死亡や海底の物理的破壊などなど。
生態系の保全には、Marine Protected Area(大規模海洋保護区)によって、
漁業の影響を受けない場所を設けるしかないという意見もある。

保護区の難しいところは、効果が読めないところだ。
漁業禁止の保護区によって、生態系自体の健全度が上がるのは間違いないし、
それは歓迎すべきことなんだろうけど、具体的な効果がわからない。
一方、漁場をなくすというのは、そこで生活をする漁業者には死活問題。
ということで、「大規模海洋保護区は、有効なんだろうなぁ」と思いつつも、
なかなか実施されていないのが現状なのだ。
そういう中で、かなり思い切った取り組みをしているのがニュージーランド。
中でも有名なゴートランド保護区の仕掛け人がDr. Bill Ballantineだ。
http://www.marine-reserves.org.nz/pages/papers.html
かなりエコ依りで、原理主義的な印象も受けるが、
世界的にも影響力がある人なので、彼の意見は知っておいて損はない。
ちょっと古いけど、このあたりのレビューが読みやすい。
http://www.marine-reserves.org.nz/papers/fisheri.pdf
特定の種の保護よりもむしろ生態系の保全が重要であり、
そのために海の20~50%を禁漁区にすべきだという意見の持ち主。
ダニエルポーリーも似たようなことを言っていたが、そっちは20%だったかな。
フロリダの研究チームの報告書も20%ぐらい必要と言っている。
Plan Development Team 1990 The potential of marine fishery reserves for reef fish management in the U.S. Southern Atlantic. NOAA Technical Memorandum NMFS-SEFC-261, 40 pp.
保護区推進論者は、最低でも20%は必要という線で意見が一致している。
また、Hilbornは保護区だけでは不十分で、従来の漁獲量の規制と組み合わせないと
充分な効果が無いと主張していたりもする。
と、まあ、いろいろと話題性のあるテーマなんだが、何せ保護区の事例が少ないんだよね。
そんな中で、ニュージーランドの世界的にも例がない大規模保護区の事例は、超重要。
今後も要チェックですね。

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高木委員 その5

資源管理の成功例としてノルウェーの事例を紹介したわけだが、
細かい数字よりも大きな方向性について考えて欲しい。
資源の持続性を守れば、長期的に骨太で儲かる漁業に繋がる。
その具体例としてノルウェーを挙げたわけで、
別に、ノルウェーの猿まねをしろというつもりはないし、
ノルウェーの資源管理は完璧だと言うつもりもない。

現に、ノルウェーの資源管理も多くの問題点や課題を抱えている。
ニシンの場合は、増加期と重なったという幸運もあるが、
一方で、過去の高水準までは戻っていない魚種も多い。
また、ロシアとの共有資源が多いという不確定要素もある。
現在のノルウェーの資源管理システムが、今後も機能し続ける保証は無い。
ノルウェーのように、研究者のアドバイスが重視される環境でも、資源管理は難しい。

未来は不確実だが、確実に言えることもある。
もしも、資源管理をしていなかったら、
ノルウェー漁業はとうの昔に破滅していたはずだ。
今日、ノルウェーの漁業が存在し、
高い収益を上げていることそれ自体が資源管理の成果なのだ。

「ノルウェーの資源管理は完璧か?」と問われれば、明らかにNOだ。
「ノルウェーは資源管理をして良かったか?」と問われれば、明らかにYESだ。

次回は感動の最終回です。
ハンケチの準備をお忘れ無く。

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不如帰

新規開拓と言うことで、蛤の出汁が特徴のラーメンを食べてきたよ。

幡ヶ谷の商店街の付近にあるのだが、
とても目立たない店で、最近まで存在を知らなかった。
夕方6時に開店で、待ちが二人。後から人がきて、席が埋まるが外に行列は無し。
場所や時間を考えると、かなりの人気と言えるだろう。

味玉、ノリ増量を頼む。

スープが独特。蛤の出汁が良く出ている。
隠し味とかいうレベルじゃなくて、蛤が前面に出ている。
ここまでしっかりと味と香りを出すためには、かなりの蛤が必要だろう。
値段はちょっと高目でも納得できる。というか、採算が心配だ。
無化調系のあっさりスープは、蛤の出汁がきいてかなり旨い。

総合的なレベルは高いのだが、蛤スープ以外に特徴が無い。
全体的に食材のグレードを下げた地雷源(蛤風味)という印象。
意外性や感動は無かったが、堅実な作りで、かなりのハイレベルにまとまっている。
ローテーションには入らないが、今後も気が向いたら食べに行くだろう。

hototogisu.jpg

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水産庁、イワシなどの漁獲可能量見直し

Good Job!
今後も、この方向で頑張ってください。

http://news.tbs.co.jp/20070409/newseye/tbs_newseye3535980.html

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高木委員 その4

今回取り上げるサワラ回復計画については、一言いっておきたい。

資源回復計画第一号のサワラに関して、何とでも成功させようという水産庁の執念が感じられた。
水産庁も、県も、漁業者も、全ての関係者は出来る限りのことをやったと思う。
現状の枠組みで出来ることは全てやったと言っても過言ではない。
しかし、漁獲圧のコントロールには失敗して増加の芽を摘んでしまった。
サワラは自然増加の傾向にあり、回復の条件が整っていたにもかかわらず、だ。
水産庁の実力を計る試金石になると思い、密かに注目してきたのだが、
正直、ここまで漁業をコントロールできないとは思っていなかった。
俺もがっかりしたが、関係者はさぞかしがっかりしたことだろう。

計画としては、失敗に終わったけれど、
サワラ回復計画に関わった人たちは、ベストを尽くしたと思う。
けして、努力が足りなかったわけではない。
ただ結果は結果として、真摯に受け止めないといけないだろう。

関係者は現在の枠組みの中でベストを尽くした。
時の運も味方につけた。
しかし、資源管理は失敗した。
この結果が意味するのは、「現在の枠組みでは資源管理は不可能だ」ということだ。

今、2002年のサワラのように条件が整った資源は無いだろう。
また、サワラ以上に関係者の努力を集中させるのは不可能だろう。
現状では資源管理は無理だという結論せざるをえない。
繰り返すが、この失敗は、管理課、県職員、漁業者など管理に関わった人間の責任ではない。
資源管理とは、そもそも一部の関係者の自主的な努力で出来るものではない。
資源を守るための強制力が働かない限り、過剰漁獲は防止できないのだ。
過剰漁獲に強制的にブレーキをかけられるような法整備をした上で、
社会的コストを払って、資源管理を進める必要がある。

俺が問題視しているのは、サワラ回復計画が失敗したことではない。
失敗をうやむやにして、同じ失敗を繰り返そうとしていることが問題なのだ。
すでに自主管理が軌道に乗っているイカナゴを持ちだしたことからわかるように、
現状では資源回復は無理だということを、当事者は理解しているはずだ。
勝ち馬に便乗し、過去の失敗をうやむやにすればそれでよいのか?

「現状では資源管理は不可能である」というメッセージを
社会に伝えるのが、サワラ回復計画に携わったものの義務だと思う。
当事者が義務から逃げるつもりなら、代わりに私めが義務を果たしてみせましょうぞ。

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高木委員 その3

高木委員では、俺の前にABCの話があったから、
このあたりの話はかなり省略したんだよね。
TAC制度の大枠が理解できてないと、わかりづらいかも・・・

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高木委員 その2

第二弾つくりますた。
シリーズものなので、まずは、昨日の第一弾を見てください。

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高木委員 その1

高木委員で話した内容をネットで公開しようと試行錯誤しています。
30分ぐらいあるんだけど、編集に時間がかかりそうなので、
とりあえず、イントロの部分から公開することにした。
今回はさわりですが、徐々に盛り上がっていきますのでご期待あれ。
編集する時間が出来たら、続きもアップします。

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高木委員会で話してきたよ

このブログに載っているようなネタをまとめて、
「資源管理をちゃんとしないと日本漁業に未来はないよ」という話をしてきた。
内容を絞って、シンプルな発表にしたので、言いたいことは伝わったと思う。
良い話だったと言ってくれる人が複数いて手応えはあった。
意見としては、賛成が7割、「言いたいことはわかるけど現実には難しい」が3割かな。
討論も盛り上がったし、まずまずの出来だったのではないでしょうか。
自分が話した内容については、後日、アップしたいと思います。

いろんな立場の人がいるので、まとまりづらい点もあるけれど、
日本の漁業を良くしたいという気持ちは伝わってきた。
とても面白い委員会だと思ったよ。

日本の漁業が良くなりますように。
なむなむ。

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高木委員から呼び出しゲット

噂の高木委員に呼ばれて、資源管理について話をすることになった。
勝川俊雄 meets 高木委員
何かが起こりそうな予感がします。

水産庁の委員会の議事録を読めばわかるように、
普通の委員会は良識的な話をする偉い人を集める。
俺のような底辺のつっこみ大好きっ子を呼ぶなんて、あり得ないことだ。
紅白にDJ OZMAどころの話じゃない。
それだけ本気なのだろう。

俺のサイトを読めば、俺がどんなことを言うかは想像つくだろうし、
それでも読んでくれるというのは光栄なことなので、
できる限りの準備をして望もうと思う。

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