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勝川俊雄公式サイト

ウホッ いい川!

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移動日に時間の余裕があったので、
釧路の川を案内してもらいました。
ガイドは、サケのフィールドワークで世界をリードするDr.Kentaro Moritaです。

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この川では放流をしていないので、全て天然らしいです。
いやぁ、凄かった。
魚の生命力に圧倒されマスタ。

こういう自然を次世代に残したいものです。

7/31の提言に関するコメント(その3)

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(提言3)水産業の構造改革のため、水産予算の大胆かつ弾力的な組替えを断行せよ。

(1)予算執行上の優先順位が低い漁港整備などの公共事業予算から、漁業への新規参入の推進と漁船漁業の構造改革予算に大胆かつ弾力的に振り向ける。

(2)これまでバラバラで整備されてきた魚礁、漁場、漁港岸壁、荷さばき場の上屋などの海域と陸域の一体的整備を断行すべきである。公共、非公共、かつ事業主体としての都道府県と市町村などの垣根をとる。

 上記(1)と(2)については、例えば特区制度も活用する。

(3)環境、資源、水産政策などに関する情報を積極的に国民に提供し、国民の理解と認識を高めるとともに、調理技術や水産物の持続性と品質に関する知識の普及などにより、魚食についての食育を促進させるための予算を重点的に確保する。

(1)
現在の予算配分が合理的だとは思わないが、予算配分の内容について議論をするよりも、
行政の役割を明確化するのが先だと思う。
そもそも「国民は水産行政に何を期待するのか」、「そのために幾ら支払うのか」を明確にすべきである。
逆に言うと、「役所は税金を幾らつかって、何を成し遂げるのか」を明確にする必要がある。
その上で、目標達成率を高めるように、予算の最適化をすべきである。

日本にとっての水産業の位置づけは、終戦直後と今とでは全く異なっている。
にもかかわらず、行政の役割について、ほとんど議論がされていない。
「自給率が低い」と騒いで税金をばらまく世論をつくる。
しかし、乱獲を放置しているから、漁業生産は落ちる一方である。
すると「クジラが食べてるから」とか「消費者の魚離れ」とか、外部要因のせいにする。
こういうことが繰り返して、産業規模に不相応な税金が投入され続けてきた。
あげくの果てが、自給率の低迷である。
現在の自給率を維持するために、いったい幾らの税金が投入されているのか。
また、その税金はどのようにつかわれて、どのような結果が得られたのか。
まずは、現在の税金の費用対効果を見直すことから始めるべきだろう。

俺が思うに、今必要な施策は、生物の生産力の範囲まで漁獲圧を下げることである。
つまり、今の疲弊した生物生産力の範囲で食っていける数まで、なんとかして漁業者を減らさないといけない。
確かに、魚は居ないし漁業者も減る中で、漁港整備などの公共事業ばかりしても漁業のためにならない。
その一方で、「漁業への新規参入の推進」、「漁船漁業の構造改革予算」に税金をつかう必要性がわからない。

参入よりもむしろ適正な規模まで漁業を縮小するのが先である。
非常に利益率が高い、新しいビジネスチャンスがあるなら、自己資金で始めるべきだろう。
漁船の老朽化も問題だろうが、 自力で設備の更新ができないような漁業を税金で存続させる意義がわからない。
採算のとれない漁業経営体を税金で支えても、利益は出ないし、資源を傷つけるだけであろう。

(2)
行政の様々なセクションが意思疎通を図るのも重要だが、その前段階に問題ありだろう。
例えば八戸の漁港にしても、漁業者の声が無視されていることが本質的な問題だろう。
地元のニーズを把握した上で、行政のセクション間の連携を強化してほしい。
「民が何を求めているか」を把握できていないのが

(3)
情報公開はとても大切。でも、情報公開への意識は低い。
どうやら、情報公開をプロモーションを混同しているようである。
イメージアップのために、都合が良い情報のみを公開するのがプロモーション。
情報公開とは、都合が良い情報も、都合が悪い情報も、きちんと開示することである。
外郭団体ではない、ひも付きではない、独立機関が必要だろうね。

(提言4)生産から最終消費までの一貫した協働的・相互補完的な流通構造(トータルサプライチェーン)を構築せよ。


(1)
わが国水産業は生産・加工・流通・販売・消費の各段階での制度や仕組みがほぼ無関係に構築されており、それぞれの部門が、自らの制度と機能にのみ配慮する部分最適をめざし、水産業の全体が、それぞれ相互補完し、かつ相乗効果を高める全体最適になっていない。このままでは、世界の大きな流れに立ち遅れるだけでなく、食料安全保障と魚食をまもる使命を果たし得なくなる。

(2)
また、世界の水産業は、水産物需要の増大への対応の一環として、「美味しい」、「安全・安心」に加え、「環境・資源の持続性との調和」がとれている水産物を価値あるものと位置付けようとしている。流通の改革に当たっては、このような水産物の新たな価値の創出を考慮しなければならない。

(3)
特に、この場合において、
水産物トータルサプライチェーンを透明性・信頼性あるものとして構築するため、客観的・科学的な指標に基づく、関係者共通ルールとしての「水産物基礎情報」を導入し、これに依拠した情報の共有・公開を推進する。

(4)
現在は、水産物に関して統一的で規格化された情報がない。水産物基礎情報(注:「提言の補足説明」を参照)は、天然魚、養殖魚及び輸入魚(調整品や加工原料も含む。)ついて、①持続性、②品質(衛生)の情報を内容とする最小限の水産物を評価するための情報である。

(5)
これらの情報が、生産・加工・流通(消費地市場を経由しない市場外流通などの多様な流通形態を含む)・販売・消費の各段階でIT(情報技術)活用などにより、相互に共有されるとともに、広く国民にも提供される制度・仕組みを構築する。

(6)
今後、国民の資源の持続性、食の安全・安心への関心に応えていくには、多様な流通経路に対応するため、産地における漁業者および輸入業者の生産段階からの情報提供の義務化を法制度の整備(注:「提言の補足説明」を参照)により行う。

(7)
 このことにより、水産物流通の合理化・効率化、消費者の水産物の正しい選択などに貢献する。また、市場の透明性が高まるとともに、一部の水産物(例えば、ノリなど)の取引の透明性向上にも貢献する。さらには、日本だけでなく世界の市場において日本産水産物の評価を担保することにもつながる。

(8)
また、水産政策、経営、流通システム、養殖技術(例えば、種苗、飼料、防疫など)、資源評価などに関して、集中的に研究開発予算を投入する。

(9)
提言の確実な実行のため、水産業改革プロジェクトチームおよび監視委員会(オーバーサイト・コミッティー)を設置せよ。

(1)に関しては、全面的に賛成。
生産・加工・流通・販売・消費の各段階は、無関係というよりは敵対関係にある。
取引先の利益を削ることで、自らの利益を確保しようとする。
消費者が値段以外の判断基準を持たないので、小売りには強い価格圧力がかかる。
流通が魚を買いたたき、加工は安価な輸入品へと切り替える。
その結果、漁業の採算が悪化し、帳尻あわせのために獲りまくってしまう。
魚が獲れなくなれば、加工も流通も輸入にたよるしかにない。ここで買い負ければ、共倒れだ。
他人の利益を減らすことで自らの利益を確保しようと言う考えでは、産業が傾いてしまうのだ。
そのためには、資源→漁業→消費を全体としてとらえた上で、
漁業全体の利益を増やすためのビジョンを持たなくてはならない。

(2)に関しても、賛成。
日本の漁業は、非持続的な乱獲を放置している。だから、収益が悪化しているのである。
持続的に獲ってこそ、値段も上がるし、消費者も安心して食べられる。
すでに先進国では「環境・資源の持続性との調和」が高い価値として認識されている。
一方で、日本人は、値段と供給の安定にしか関心がないようである。
ヨーロッパウナギにしても、マグロにしても、値上がりの心配ばかりで、
自分たちが被持続的に食べ尽くしたことに対する道義的な責任は感じないようである。
「環境・資源の持続性との調和」について、情報をもっと流す必要があるだろう。

(3)トータルサプライチェーンって、いまいち良くわからない。
日本語で簡単に表現すると、どういう意味なのだろう?
俺は流通に関する知識が少ないから、この部分は???です。

(4-7)その魚がどこでどうやって捕られたのか。その魚は持続的に漁獲されているのか。
そういう情報を消費者が得ることは重要である。
回転寿司で「関サバ」が安く食べられる現状では、業者のモラルには期待できない。
きちんとした企画で「水産物基礎情報」を行政が準備するのはとても大切。
現在、消費者が価格しか気にしていないのは、それ以外の情報が無いからだ。
きちんと情報を提示すれば、それを基準に選択を変える消費者も出てくるだろう。

(8)養殖技術(例えば、種苗、飼料、防疫など)に関しては、すでに研究開発予算が過剰だと思う。
水産政策に関しては、予算をつけても内容が伴うかは疑問。
むしろ、漁業に関係する様々な立場の人に発言の場を準備した方がよい。
そのためのたたき台として、高木委員の提言が機能してくれた良いのですが・・・
自称「漁業者の味方」の研究者が反論を準備しているらしいので、楽しみにしています。
メンツ的に、内容にはあまり期待できないかな。

(9)に関しても、基本的に賛成ですが、役所がつくった委員ではつっこみ能力に限界がありそう。
水研センターだって、独法化したけれど、発言の自由は減る一方みたいだし。

ネット上に公開された文書を追っていくだけで、政策に関してはいろいろわかります。
専門的な知識を持った個人が、地道につっこみを入れ続けていくことが重要でしょう。
ということで、自分としては、今後もつっこみを入れ続けようと思います。

7/31の提言に関するコメント(その2)

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(提言2) 水産業の再生・自立のための構造改革をスピード感をもって直ちに実行せよ。

 このため、

1.漁業協同組合員の資格要件とされる従業員数や漁船規模などを見直し、漁業協同組合などへの投資や技術移転を容易にし、地域社会の活性化を図るべきである。

地域内の水産加工業、卸売業、仲買人、小売業、外食産業などや、地域に投資、技術移転する大手水産会社等を、組合員とする資格を与える。
また、漁業協同組合などの経営内容を広く情報開示する仕組みを構築すべきである。

漁協の閉鎖性が生産力を下げる一因になっているという認識のようだが、正直、漁協のことはよく知らないので、何とも言えない。
いろいろと問題を抱えている部分も多そうだし、経営内容を公開するのは、漁業者のためにもなるだろう。

2.併せて、漁業のみならず、養殖業や定置網漁業への参入障壁を基本的に撤廃し、参入をオープン化すべきである。意欲と能力がある個人または法人が、透明性のあるルールのもとで、漁業協同組合と同等の条件で養殖業および定置網漁業などを営めるようにすべきである。

漁業法(昭和24年法律)および水産業協同組合法(昭和23年法律)など漁業関係諸制度を抜本的に改革し、透明性のあるルールのもとで、例えば特区制度の活用も含め、生産段階における新規参入による漁業権および漁場の適切な利用を促進して、沿岸漁業を広く流通、加工、販売関係者および漁業への投資に意欲のある者に開かれたものとすべきである。

「参入をオープン化する」というのは非常にリスキーである。はっきり言って、止めた方がよいと思う。
すでに過剰な漁獲圧がかかるなかで、利益を出せるのは「より乱獲力のある経営体」である。
参入の自由化を進めれば、乱獲によって短期的利益をだし、資源が枯渇すれば余所に移るような
「 焼き畑漁業」を促進することになるだろう。

参入の自由化よりも、漁業をするための資格が必要だと思う。
自由参入で新たな経営体を増やすよりも、 乱獲をしなければ利益を出せない経営体を減らすことが先決だろう。
まずは、資源に優しい漁業で 利益を出せる経営体のみ残すことだ。
参入のハードルを下げるのは、経営体の淘汰が進んでからでよい。

3.休漁と減船による漁獲努力量の削減、漁船の近代化と継続的な新船建造、雇用対策の支援などを総合的に包括した中長期的な戦略政策を樹立すべきである。

漁船漁業については、漁船の減少、老朽化が進み、生産力の低下が著しい。一方で、資源の悪化・枯渇状態の中で過剰な漁獲が続いている。
そのため、単なる新船の建造は漁獲能力の増大につながりかねないため、漁業の再生・自立のための構造改革は、(1)休漁、(2)減船、(3)操業の継続(漁船の近代化及び小型化)と大きく分け、これらをパッケージとして推進し、例えば特区制度の活用も含め、科学的根拠に基づき3~5か年計画を樹立して、資源の回復と経営の改善を図る。

併せて、個別漁業者ごとに漁獲する数量の上限を定め、不必要な漁業活動を排除し、資源の乱獲を防止して、市場ニーズにあった水産物を供給するため、個別漁獲割当(IQ)制度または譲渡可能個別漁獲割当(ITQ)制度を導入する。

また、資源量が膨大な魚種、例えばサンマ(300~800万トン)などについては、その効率的かつ持続的な利用を図り、水産加工業、養殖業の振興と水産物貿易の発展に寄与させる。

 養殖業を、水産物の付加価値を高め、国民ニーズに応える産業として位置づける。

資源が枯渇しているのは、自然の生産力にくらべて、人間の漁獲力が高いためである。
このミスマッチをたださない限り、どこまでも資源は減少する。
船を更新するだけの利益が出ていない漁業を対象に、税金で新たに船を造る必要はないだろう。

「多く獲るための技術」と「高く売るための技術」は違うのだが、
日本の漁業関係者は、「多く獲るための技術」ばかりを導入したがる。
ミニ船団化は、依り少人数で今までと同じ量を獲るための技術である。
これは、より多く獲るための技術であり、今よりも資源が低水準になっても今のペースでとり続けるための技術である。
乱獲競争で有利かもしれないが、資源の減少に拍車をかける危険性がある。

例えば、ノルウェーもサバを巻き網で漁獲するが、、
魚体を傷つけないようにポンプで水揚げをした後、鮮度を保つために船上で急速冷凍をする。
日本の巻き網は「より早く、より多く獲る」ことに特化して、単価を上げるための工夫がない。
単価を上げるよりもむしろ、量を増やすことで利益を出そうとする。
結果として、資源のダメージの割に利益はでない。

では日本にノルウェーの漁船をもってくればよいかというと、そういう問題でもない。
日本では、値段が上がる前に獲りきられてしまうので、せっかくのポンプも船上冷凍設備も宝の持ち腐れであろう。
資源管理によって、適切な大きさの魚が安定供給できてはじめて、高く売るための技術が必要になる。
残念ながら、日本の漁業はその段階まで到達していないのだ。

今の日本漁業には、船を造るよりも、船を減らす方が大切なのだ。
(1)どう見ても採算がとれない経営体→減船
(2)多く獲れるけれど、利益率が低い漁業→資源が低水準なら休漁
(3)漁獲効率は低くとも、単価が高い漁業→操業の継続

採算がとれない経営体を減らすための手段としてITQを導入すべきである。

資源状態が良好なサンマの効率的な利用をはかるのは重要だ。
しかし、サンマは短命で、加入が不安定な、非常に先がが読みづらい資源である。
資源状態が悪化した場合にも対応できるような投資をしないといけない。
マイワシの場合は、高水準期に努力量を増やしすぎた結果、資源量が低水準になっても漁獲にブレーキがかからない。
投資が不良債権化しないように、短期的な減価償却を見込むべきだろう

養殖業に関しては、現在でも投資の価値が無い事業が数多く進行している。
ここの事業の支出と収入のバランスを精査した上で、残す事業と辞める事業を明確にすること。

豊進丸事件のまとめ&続報

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ある水産関係者さんの解説で、背景がよくわかりました。
http://kaiseki.ori.u-tokyo.ac.jp/~katukawa/blog/2007/08/post_176.htmlのコメント欄を読んでください。
自分でも文書に目を通してみました。その中で、一番まとまっているのはこの文書かな。
http://www.itlos.org/news/press_release/2007/press_release_112_en.pdf

裁判の内容の要約
(日)乗組員を速やかに解放しなさい→(露)最初から拘束してないけど、なにか?
(日)違法操業の保釈金が不当に高い→(判決)1億2千万円から四千八百万円に減額

7月中旬に、船長も船員も拘束されているわけではないことが判明。
拘束されていない事実がわかった後は、日本もそのことは全く言及しなくなります。
裁判の争点は、「日本の違法操業に対してロシアが提示した保釈金が妥当かどうか」です。
要するに、日本漁業者が違法操業をした罰金を値切るための裁判ということですね。
裁判所の文書を見ると、「人道」ではなく、銭の話ばかりです。

気になる違法操業の実態
20トンのベニザケを漁獲し、船上加工していた。
漁獲記録にはシロザケと記載した。
ベニザケの上にシロザケを載せて、隠していた。

魚種の虚偽報告による典型的な違法操業(IUU)ですな。
完全にクロでしょう。この点に関して日本側も争う気はないようです。

この船はベニザケの漁獲枠を101.8トンもっていた。
漁場に着いて一週間で捕まったので、この時点では漁獲枠を上回っていないのです。
ただ、シロザケの漁獲枠をベニザケで埋める気満々で、
最初から計画的に虚偽の記載をしていたと考えられるのが妥当。
「漁獲報告書の虚偽に対する妥当な保釈金はいくらなのか?」が裁判の争点です。
で、裁判所の判決は4600万円ということです。

虚偽の記載はしたけれども、漁獲枠をはみ出してないということで、
情状酌量をされてこの金額です。
漁期終盤に、実際に漁獲枠を超過してから捕まったら、もっと高くなりそう。
外国のEEZで違法操業をすると高くつきますね

国際裁判所はこういう判決なんだが、
コレとはべつにロシアの国内法でも裁かれるみたいですね。
ロシアの証言では、保釈金とは無関係に、
船員は帰国できるはずなんだけど、どういうことだろう?
引きつづき、ウォッチを続けたい。

http://www.kitanippon.co.jp/contents/knpnews/20070814/6550.html

特集「マイワシ資源の変動と利用」

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7月の水産学会誌の巻末に、特集「マイワシ資源の変動と利用」が掲載されました。
この特集は大変な難産で、企画の段階から苦労しました。
苦労した甲斐があって、良いものができました。
執筆者の皆様に、暑く御礼を申し上げます。
まだ、読んでいない方は、是非、目を通してください。

「長期的な環境変動の影響で、マイワシ獲らなくても減る」というのが通説であり、
俺も最初はその通説を鵜呑みにしていた。
データは公開されていなかったので、しょうがないんだけど。
最近になって、資源評価票が公開されるようになって、データをみてビックリ。
獲らなくてもへるどころか、生産力はかなり高いじゃないか。

マイワシは主に海洋環境との関係から、研究が進められてきた。
日本で最も研究が進んでいる資源かもしれない。
しかし、マイワシの研究において、漁業の影響は無視されてきた。
「マイワシの資源量が減っているのは、環境要因が原因である」という前提にたって、
減少を海洋環境で説明しようとしているのだ。

日本近海のマイワシは、海洋環境と漁業という2つの要因の影響を強く受けている。
2つの要因を組み合わせないと変動の全体像は見えてこないはずだ。
年間の漁獲率が50%近いのに、漁業の影響を無視して、動態を説明できるはずがない。
環境と漁業の両面からマイワシの変動を理解する必要があるだろう。
そのための最初の一歩として、この特集を企画したのです。

「第Ⅰ部.マイワシの資源動態」では、研究者にレビューを書いてもらった。

Ⅰ-1.マイワシ資源の増加過程
         黒田一紀(元東海区水研)
Ⅰ-2.マイワシ資源減少過程の2つの局面
         渡邊良朗(東大海洋研)
Ⅰ-3.気候変動からマイワシ資源変動に至る
生物過程  髙須賀明典(水研セ中央水研)
Ⅰ-4.マイワシ資源への漁獲の影響
         勝川俊雄(東大海洋研)

漁海況研究のパイオニアの黒田一紀さんに、70年代のマイワシ増加期の状況をまとめていただいた。
次に、詳細なフィールドワークで、89-91のマイワシの減少要因をつきとめた渡邊先生に当時の状況をまとめていただいた。
それから、新進気鋭の若手研究者の高須賀君に、海洋環境とマイワシの変動に関する研究を新しいところまでフォローしてもらう。
そして、俺がマイワシの資源への漁獲の影響をまとめる。

第1部を読めば、マイワシの歴史と研究の現状が俯瞰できてしまう。
実に隙のない構成だ。

「第Ⅱ部.マイワシ漁業の展望」では、
今後のマイワシ漁業および資源管理はどうあるべきかを関係者に書いてもらった。
行政、研究者、漁業団体、加工業者など、幅広い人選を心がけた。
みんなが好き勝手なことを言っていて、全くまとまっていないのが良くわかる。
かみ合わない部分も含めて、意見の多様性を楽しんでください。

今年は平和になりそうだ

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管理課のTAC班の人事が大幅に変更されていた。
実に素早い対応である。
今回の担当者とはコミュニケーションがとれそうな感触を得た。
去年のブロック会議のような事はないだろうと、ほっと一安心です。

研究者と行政の関係もかなり改善されると思う。
行政は科学的なアセスメントを施策に反映するように努め、
我々は施策を科学的にサポートする。
そういう行政と研究者の本来あるべき関係に近づいて行けたら良いですね。

 

今日は、内部検討会です

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今日は、スケトウダラの内部検討会です。
内容は非公開なので詳しくは書けません。
今年のブロック会議は、もめないで済むと良いのですね。
去年同様、声の大きさで勝負するなら負ける気はしませんが・・・

そういえば、今のブログに移行したのが、
ちょうど去年の内部検討会の頃だったわけですが、
密度が濃い一年でした。
情報発信と社会貢献の方面でがんばった反面、
研究活動が少しおろそかになってしまったのが反省点。
そろそろ引き籠もって、論文を書こうと思ったら、マイワシの期中改訂だし。
参った。

豊進丸拿捕 ロシアに乗組員解放命令

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先月、ロシアに拿捕された日本漁業者の返還を求める裁判を日本政府が提起しました。
http://kaiseki.ori.u-tokyo.ac.jp/~katukawa/blog/2007/07/post_162.htmlのコメントを参照)
判決が出たみたいなので、経緯をまとめてみました。


6月3日
「漁業規則違反で拿捕」 ロシア・メディア報じる
http://202.239.162.254/national/update/0603/TKY200706030079.html
http://www.kitanippon.co.jp/contents/knpnews/20070604/5155.html

申告はシロザケとし、実際にはより高価なベニザケを船倉に隠していたことなどによる漁業規則違反が容疑。同当局によると、ロシアのEEZ内で同船を検査したところ、ベニザケの違法な漁獲量は約14トンに上った。これを含め、半加工品の形で船内に保管していた違法な漁獲量は全体で約20トンに上るという。

7月5日
国際裁判所に提訴へ 豊進丸拿捕で政府、乗組員の解放要求
http://www.kitanippon.co.jp/contents/knpnews/20070706/5792.html

国連海洋法条約は拿捕された船舶・乗組員は「保証金が支払われた場合、速やかに釈放される」と規定。しかし、ロシア側は具体的な保証金額も示さないまま、操業違反事件として取り調べる方針。外務省幹部は「国際法のルールを守らない対応だ。裁判に勝つ自信はある」と強調する。

http://www.jfa.maff.go.jp/release/19/070602.pdf
http://www.itlos.org/start2_en.html

8月6日
豊進丸拿捕 ロシアに乗組員解放命令
http://www.chunichi.co.jp/hokuriku/article/news/CK2007080702039242.html

ロシア側の要求の四割減に当たる保証金一千万ルーブル(約四千八百万円)を船主が支払うことで日本側の求めに応じるようロシア側に命じる判決を下した。保証金の支払い後、乗組員らは解放される見通し。ロシア側が提示した保証金額の合理性が争われた裁判は、金額が大幅に圧縮されたことで実質的に日本の勝訴となった。

 同裁判に併せ、昨年十一月に拿捕された北海道の漁船「第53富丸」についても、日本は船体の返還を求めて提訴していたが、同裁判所は六日、すでにロシア側の没収手続きが完了しているとして訴えを退けた。

池田水産は、日本側の訴えが基本的に受け入れられたと評価。「ロシア側は手続きの引き延ばしをせず、速やかに解放してほしい」と話した。一方で、一千万ルーブルの保証金の支払い命令には「漁獲量の帳面を付け間違えただけで、密漁したわけではない」と反発。「密漁船でなくても、拿捕すれば保証金を取れる“お墨付き”をロシア側がもらったようなものだ」と憤った。


ある水産関係者さんの読み通り、「乗組員の早期釈放」は勝ち取りました。
保釈金は、池田水産が払うようです。
違法操業の保釈金が5千万というのは、日本側は想定の範囲だったのでしょうか?
第53富丸は船体が戻ってこないわけだし、「実質的に日本の勝訴」とは、ほど遠いように思うのですが。

しかし、池田水産のコメントはあんまりですね。
シロザケとベニザケは相場が全然違うんだから、間違えるはずがない。
そもそも北洋サケ・マス漁は、「違反しなければ採算に合わない漁業」らしいですが・・・
http://www.asahi-net.or.jp/~DU7K-MCZK/japan/200008.htm

「採算を合わせるためなら違法もやむなし」というのが、日本の一般的な漁業者の感覚だろう。
大中まきなんて、サバの漁獲量が6万トンもTACを超過しても、
水産庁からサバ類を目的とする操業の自主的な停止を求められるだけで、
実質的には、何のお咎めもなしでした。
これで、ルールを守れという方が無茶でしょう。
日本は、IUUに優しい国ですね (^o^

日本の海上保安庁が韓国漁船を拿捕した場合、保釈金はいくらになるんだろう?
相場を知っている人がいたら、教えてください。

「サバ時代到来明るく、中央水産研究所報告」を検証する

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サバ時代到来明るく、中央水産研究所報告
http://www.news-kushiro.jp/news/20070807/200708073.html

サバ時代到来ですか。マジですか。釧路新聞は凄いなぁ。

この記事の元になったのは、
平成19年度第1回太平洋イワシ・アジ・サバ等長期漁海況予報と思われます。
http://nrifs.fra.affrc.go.jp/yohou/2007_1/5.pdfhttp://nrifs.fra.affrc.go.jp/yohou/2007_1/5.pdf

では、中を見てみましょう。

 1. 資源状態
(1)マサバ
資源量は1990 年以降依然として低い水準にあるが、加入量水準の高い2004 年級群の発生により資源量は増加傾向にある。

2003 年級群(4 歳魚)以上の残存資源量は少ない。

2004 年級群(3 歳魚)現在の残存資源尾数は2.6億尾と、3 歳魚としては近年にない高い水準である。

2005 年級群(2 歳魚)加入量水準の低い2001、2003 年級群並みの水準と判断される。

2006 年級群(1 歳魚)2005 年級群をさらに下回る水準と評価されている。

2007 年級群(0 歳魚)は、黒潮-親潮移行域中層トロール幼魚調査(中央水研・北水研)による加入量指数が12.1 と、2004、2005 年並みの高い値であった。東北水研による北西太平洋中層トロール資源調査(サンマ漁期前調査)から推定される推定資源尾数は105 億尾(暫定値)と、2004 年級群(64 億尾)を上回った。茨城県の船曳網、千葉県の定置網など沿岸域でも昨年、一昨年よりマサバ0 歳魚の分布が多くみられているほか、釧路水試による流し網調査においても分布が確認されている。これらのことから2007 年級群は2005、2006 年級群より加入量水準は高いと考えられる。しかし発生後間もない現時点での調査結果に基づく評価は極めて不確実である。

以上のことから本予測期間は2004 年級群(3 歳魚)が主体となる。これに2005 年級群(2 歳魚)、2006年級群(1 歳魚)が混じるが少ない。期後半に2007 年級群(0 歳魚)が漁獲され、漁獲の主体になる可能性もあるが、0 歳魚の加入量の見積もりは非常に不確実である。マサバ全体としては、多かった前年を下回ると考えられる。

(4)資源管理
マサバの親魚量は2004 年級群の高い加入により増加傾向にある。2007 年産卵期は2004 年級群が3 歳魚として活発に産卵した。産卵量は2007 年1~6 月でサバ類で312 兆粒、マサバのみでも251 兆粒と大きく増加、1982 年以来15 年ぶりに200 兆粒を超えた。しかし2005、2006 年級群の加入量水準は低く、親魚量は今後減少すると考えられる。続く2007 年級群は、現段階では不確実であるが、比較的豊度の高い年級であると期待され、2007 年級群を保護することにより親魚量の減少を一時的なものにとどめ、更なる増加につなげることができると期待される。現在マサバ太平洋系群の親魚量の回復を目指した資源回復計画が実行されている。親魚量の増加傾向を維持しマサバ資源の回復を図るため、若齢魚の保護を継続することが肝要である。

以上をまとめてみると、こんな感じ。

  •  主力の3歳は、約2.6億尾と推定されている。
  • 0歳は、今の段階ではまだ何とも言えないが、3歳の1.5倍ぐらいいるようである。
  • 1歳、2歳、4歳以上は殆ど居ない。
  • 0歳の獲れ方次第だけど、漁獲量は前年を下回るんじゃないの?
  • 07年級群を産卵まで残さないと、更なる増加には繋がらないだろう

原文を読むと「マサバ時代到来!!」というトーンでは無いことがわかる。

3歳の近年にない高い水準(2.6億尾)というのは、具体的にどの程度かというと、こんな感じ。
image07080801.png
90年代に入って、資源量が低迷してからであれば例外的に多いのだが、
70年代、80年代と比べると依然として低い水準である。

さらに、3歳の上も下も居ないことに注意が必要だ。
年齢組成を見るとこんな感じになる。
image07080802.png
3歳はかろうじて見えているが、のこりは0歳しかいない。
0歳は、70年代の高水準期には適わないものの、歴史的に見ても高い水準である。
だからといって安心することは出来ない。
この予測値と同程度の加入があった96年級群は、未成熟のうちにほぼ獲り尽くされてしまった。
つまり、現在の漁獲能力であれば、獲り尽くせる水準なのである。

また、「発生後間もない現時点での調査結果に基づく評価は極めて不確実である」との記述もある
では、実際にどの程度のズレがあるかを見てみよう。
マサバ太平洋系群の資源評価票(平成18年版)の25ページに次の2つの表がある。

  • 補足表4-1.太平洋における浮魚類の資源量調査の概要
  • 補足表4-2.各調査による資源量指標値

このなかの4番(東北水研 6~7月)の調査が0歳魚の推定に用いられたのだろう。
(ただ、2004年が101億尾となっているので、平成19漁海況予報の64億尾という記述とはずれるので、要確認)
補足表4-2に実際の値があるので、その後の情報から推定された加入量と比較してみよう。

image07080803.png
トレンドとしては良く追えているけれど、絶対量はあまりあてにならないことがわかる。
全体的に過大推定の傾向がある。
この東北水研の調査は、おそらく「サンマの資源量を調べるついでに獲れたサバの数も数えてみました」というものだろう。
その年のマサバの分布域がサンマとかぶるかどうかに大きく影響されてしまう。
そういう意味で、精度はあまり期待できない。参考程度につかうべき値だ。

ただ、いろんな場所で0歳のサバが捕れているのは事実であり、この年級群がそれなりに居ることは間違いない。
だからといって、「サバ時代到来明るく」と言えるような状況ではない。
04、07と卓越年級群が発生したことで、最低水準からは脱しつつあるが、
04年生まれはもってあと1~2年。その間に07年生まれをつぶしてしまえば、そこでアウトだ。

三陸沖で、「サバが獲れて獲れて困っちゃう」とか良いながら、ガンガン獲っているようだが、
そういう獲り方をしても値段は付かないし、資源の回復の芽を摘むだけである。

この漁海況予報のなかで、最も気になる記述はこれ。

※付記
東北海区サバ長期漁況予報の太平洋イワシ・アジ・サバ等長期漁海況予報への統合のお知らせ
これまで三陸沖でのサバ類を対象とした漁業に対応するため、毎年10 月始めに東北海区サバ長期漁況予報を出して参りましたが、近年ではサバ資源の分布回遊範囲の縮小と対象魚群の若齢化によって漁期が早まり、10 月には三陸沖漁場が終盤となる状況になっています。
そのため、東北海区のサバの漁況予報は、現在、太平洋全体のサバ類の漁況予報として中央水研で出される太平洋イワシ・アジ・サバ等長期漁海況予報の7 月の予報に統合することが適切であることから、今後は当該予報に東北海区におけるサバ類の漁況予報を統合することとして整理し、予報精度を維持・向上して参ります。従いまして本年10 月から東北海区サバ長期漁況予報は出されなくなりますのでご承知ください。

日本サバが美味しくなるのは、秋から冬。特に三陸沖の脂ののったサバは最高だ。
現在は、美味しくなるまえに、漁業が終わってしまうというお寒い現状なのだ。
本当にもったいない話である。
美味しい日本のサバが食卓に並ばない理由はここにある。

7/31の提言に関するコメント(その1)

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提言1

科学的根拠の尊重による環境と資源の保護および持続的利用を徹底し、かつ国家戦略の中心に位置づけ、これに基づく水産の内政・外交を展開せよ。

水産資源は世界的な争奪戦の渦中にある。魚食を支えるわが国水産業の利益を国家的レベルで確保するため、中長期的視点をもって、外交を含めた大局的な国家戦略を構築すべきである。わが国の水産業は、日本の200海里水域内外で展開されており、200海里内の水産資源については、国民共有の財産として、科学的根拠を尊重した海洋環境の保護と資源の持続的利用の原則を徹底し、漁業関係者のみでなく、水産資源に関連する全ての産業と国民全体の利益を実現できるようにする。水産資源の保護が持続的な水産業の維持発展に不可欠であることは言を待たない。さらに、近年の世界的な環境保護・生態系保護の意識の高まりは、それらの動きに逆行する形で、漁獲・生産された水産物を、市場から締め出そうとする動きにまで発展している。このような中で、ABC(生物学的許容漁獲量)を超過してTAC(総漁獲可能量)を設定するような、資源破壊的な水産政策を続けていけば、世界の流れからみて、最悪の場合、輸出輸入の両面で大きな打撃を受ける懸念がある。環境・資源の保護と持続的利用を中核的な理念とする水産政策に直ちに転換しなければならない。

 特に、この場合においては、
1.海洋環境の保護と水産資源の有効利用のため、水産資源を無主物(誰のものでもない)としての扱いではなく、日本国民共有の財産と明確に位置づけるべきである。

水産資源は、漁業者も含む全ての国民共有の財産である。日本国民から付託を受けて、日本政府は水産資源の管理責任を負う。政府は、漁業者に漁獲の権利を与える。一方、漁業者は、この権利を行使するに当たり水産資源は国民共有の財産であるとの認識に立ち、自らと加工、流通、販売および消費者のために、国民共有の財産である水産資源を漁獲する権利を適切に行使する。

このブログのコメント欄を読んで、「国有化は違うかな」と考えるようになった。
国連海洋法条約では、水産物は人類全体の財産と位置づけている。
その上で、最適利用のための管理義務と同時に排他的利用権を沿岸国に与えている。
排他的な利用権を行使する以上、日本は国として水産資源を科学的・持続的に管理する義務がある。
無主物的な扱いをしていること自体が、契約不履行であり、
日本国民から付託にかかわらず、管理の責任はあるのだ。
国有財産であれば、国の都合で獲り尽くすという判断も可能であるが、
人類全体の財産であればそうはいかない。では、管理の費用はどうするのという話になる。
本来なら、人類共有財産を排他的に利用させてもらっている漁業者が払うのが筋だろう。
現在は国の税金でまかなっている以上、国益についての義務も負うはずだ。
「国民は漁業をどこまでサポートし、それに対してどのような対価を得るのか」を明確にすべきだろう

2.科学的根拠の尊重による資源の持続的利用の原則を徹底し、この原則を、わが国の水産行政の最も重要な柱とせよ。

科学的根拠を軽視して設定された結果、年続いているTAC(総漁獲可能量)とABC(生物学的許容漁獲量)の乖離を直ちになくす。また、個別漁獲割当の設定、取締り・罰則の強化、および不正に漁獲された水産物の保持・販売の禁止などの出口管理の強化を行う。これにより悪化したわが国周辺水域の資源回復を目指す。この科学的根拠を尊重する持続的利用の原則の確立によって、わが国の水産資源の悪化および水産業の衰退に歯止めをかけることが可能になる。

「Tacをabcまで下げる」という方針になれば、現在の体制では不十分だ。
日本の資源研究は実に脆弱であり、資源研究者の質・量ともに不十分である。
資源学の専門家は、水研センターにも殆ど居ない。
生態学など、他分野の専門家が、いろいろ勉強をして、資源評価をしているのが現状なのだ。
また、もともと少ない調査も削られる一方で、データの質・量ともに厳しい。
まずは、資源評価の体制をテコ入れするところかは始めなくてはならない。

科学的なアセスメントが軽視されているのは研究者にも責任はある。
「漁業で利益を出すためには、資源管理が必要である。
資源管理こそ、漁業が生き残れるかどうかの死活問題である。」
というような認識を広めていかないとダメだろう。
研究者がイニシアチブをとって、「資源管理で儲かる漁業」というビジョンを提供する必要がある。
しかし、研究の世界も縦割りで、狭い水産学の世界でも資源と経済で交流がほとんど無い。
われわれ研究者が、まず、縦割りの壁を破らないといけない。

さらに、難しい問題として、日本人のリスク感覚の無さがある。
資源量の推定値には不確実性がある。
不確実性とどうつきあうかが問われているのである。
漁業者は、「科学者の予測はあてにならないから、好きなだけ獲って良い」と主張するが、
これは、霧で前が見えないからといって、車のスピードを上げるようなものだ
不確実であれば、安全のために控えめに獲るべきなのだ。
現在の資源評価の精度の限界を認めた上で、
その精度の情報でリスクを回避するための予防措置について検討すべきだろう。

また、安定的な輸入の確保、日本漁船の外国水域への入域の確保、輸出の振興の全てにおいて、科学的根拠に基づく資源の持続的利用の原則を柱とする水産外交を展開する。
このことにより、科学的根拠に基づく持続的利用の原則を尊重する水産立国としての日本の国際信用が得られる。外交面および水産物の輸出振興にも大いに貢献する基本原則であり、日本および日本製品に対する評価が高まる。
わが国は、捕鯨交渉などでは科学的根拠と持続的利用の原則を主張しているが、国内資源の管理では科学的根拠を軽視している。こうした二重基準(ダブルスタンダード)を排除することが、わが国の資源の回復・復活および水産外交の進展につながる。

この部分は、今後の日本漁業の方向性を決めるかもしれない重要な部分。
世界の漁業は、「責任ある漁業」から、「責任を問われる漁業」へと着実に進んでいる。
この流れに対応していかなければ、ますます世界から取り残される。
日本は、世界第2位の経済国であり、世界一位の水産物輸入国でもある。
日本が世界の漁業に対して負うべき責任は重い。
できるだけ早く方向転換をしないと大変なことになるだろう。

漁業者は「日本の消費者が魚を適正価格で買わない」という。
だったら輸出すれればよいと思うのだが、日本の水産物の評価は低い。
日本の水産物は、先進国からは相手にされず、途上国に買いたたかれているのである。
その理由は、品質管理のまずさ、しっかりとした規格がないこと、等の理由もあるが、
それ以外にも漁業の持続性の問題もある。
例えば、マクドナルドはMSC認証のものしかつかわない。
企業イメージをアップすることで、売り上げに繋がるからである。
なんでも獲り尽くす日本漁業は世界的にイメージが悪い。
透明性の高い管理制度を導入し、環境への配慮を世界にアピールすべきだろう。

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from 18 Mar. 2009

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