Home

勝川俊雄公式サイト

おいしいサバ鮨を食べたい

[`evernote` not found]

連日、サバのことばかり考えていたら、サバを無性に食べたくなったので、今日の昼ご飯はこれ。

saba21.jpg

ノルウェー産でした。

saba22.jpg

ノルウェーのサバは、サバ鮨にするには脂っこすぎる。
最初の2きれはおいしく感じたが、終盤、少しつらかったです。
サバと酢飯の間にショウガや大葉を入れて、すっきりとした食感にしようという工夫は見られたのだが、
どうにもこうにもサバの脂が多すぎる。
やっぱり、ノルウェーのサバは塩焼きが合うと思う。
サバ鮨に関しては、日本のしまったサバの方が絶対に合うと思うのだが、
一定の品質のものを安定供給できるからノルウェー産になってしまうのだろうか?

ノルウェー産のサバ鮨は1000円だったが、隣にあった関サバのサバ鮨は2000円でした。
国産もない訳じゃないんだけど、高すぎて手が出ないですな。

ノルウェーに日本のサバ市場を奪われた理由

[`evernote` not found]

日本のサバ市場は、完全にノルウェーに奪われたのだが、これには理由がある。

ノルウェーは、石油などの豊富な資源を持っているけれど、
エネルギー資源が無くなるのは時間の問題である。
そこで、国を挙げて、持続的な産業を育てようと考えた。
その一つの柱が漁業だった。
先日、このプロジェクトに関わった人から話を聞く機会があったのだが、とても勉強になった。
プロジェクトの根底には、合理的かつ、大局的な戦略があるのだ。

限りある生物資源を持続的に有効利用するためには、
一番高く売れる場所に、一番高く売れるものを計画的に出荷すべきである。
ノルウェーは、(当時は)世界で最も魚を高く買う日本人をターゲットに、
欧州ではあまり消費されていなかったサバを輸出することにした。
ノルウェーのサバ漁業は、最初から日本のサバ市場に最適化されているのだ。
サバの漁獲が日本人が好んで食べるサイズに集中しているのは、そういう訳。
日本市場での価値を高めるために、ポンプで漁獲をし、良い品質で輸出をする体制を整えた。

ノルウェーは、国を挙げて、日本のサバ市場を取りに来た。
そして、日本のサバ市場は、完全にもっていかれてしまった。
日本のサバ市場を巡る競争は、グランドデザインの部分で勝負は決まっていた。
日本市場に最適化されたノルウェー漁業と、行き当たりばったりの日本漁業の差は、
漁業者個人の努力でどうこうというレベルではない。
日本漁業は、負けるべくして、負けたのだ。

日本の漁業関係者は、ノルウェーに自国市場を奪われた理由を真剣に考える必要がある。

日本も、限られた生物資源の生産力を持続的に有効利用するためのグランドデザインを持たなくてはならない。
サバだったら、サバ漁業全体を長期的,総合的に見わたした構想を練るべきである。
獲る前に「どの大きさで獲って、どこに売るのが一番儲かるのか?」という視点を持たないといけない。
とにかく獲れるものを早い者勝ちで獲って、その後で「どうやって売ろう?」と悩んでいる現状が続く限り、
日本漁業は衰退の一途だろう。

ウナギの心配は値段だけですか?

[`evernote` not found]

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2007060902022939.html

日本人の好む食材への包囲網が狭まっている。
さらに値上がりするのは必至だ。

日本人は、自分の国のウナギは河口で根こそぎとりつくして、
その上、ヨーロッパのウナギも20年前の2%の水準まで減らしてしまった。
世界中のウナギを食べ尽くしておきながら、安く買えるかどうかしか頭にない。

欧州が2%まで減った資源を保護するのは当然だろう(というか、明らかに遅すぎ)。
それを「日本人の好む食材への包囲網」とか被害者面して、恥ずかしい限りだ。
ウナギの値段よりも、この記事の資源への配慮の無さが心配だよ。
何でも食べ尽くす日本人という評価は身から出たさびだな。

海の幸、山の幸に感謝をする持続的な食生活こそ文化だろうに・・・

儲かる漁業はどっちかな?

[`evernote` not found]

サバの漁獲物の年齢組成を比較してみよう。

saba14.png

ノルウェーは、ICES各区IVのデータ
http://www.ices.dk/marineworld/fishmap/ices/pdf/mackerel.pdf

2歳以上が生鮮用として高価になるのだが、
ノルウェーは2歳以上が81%に対し、日本はたったの13%。
日本人が食べるサバの生産はノルウェー頼みなのだ。

マサバは何歳で獲るべきか?

[`evernote` not found]

0歳の漁獲は資源の無駄遣いであり、絶対に辞めるべきだ。
では、何歳で獲るのがよいだろうか?
獲り方を変えたら、どのぐらい儲かるのだろうか?
今日は、これらの疑問に答えてみよう。

昨日のエントリーに書いたように、大きな魚ほど、高く売れる。
待てば待つほど、個体の価値は増加する。
しかし、自然死亡によって、個体数が減ってしまうので、
あんまり待ちすぎると獲るべき魚が居なくなるかもしれない。
どの年齢で獲るべきかは、「価値の上昇率」と「自然死亡率」のかねあいで決まる。
個体数の減少を補うだけの価値の上昇があれば待つべきだし、
そうでなければ早く獲った方がよい。

マサバの場合は、自然死亡係数は0.4と推定されている。
0歳で加入した個体は、漁業がなければ下の図のように減耗していく。
saba12.png

生残率と単価をかけると次のようになる。
saba13.png
自然死亡の減耗を考えても、成長させてから獲った方が儲かることがわかる。
4歳まではコンスタントに価値が上昇し、その後は頭打ちになる。
0歳から5歳まで生き残る確率は14%だが、個体の値段は235倍になる。
0歳、1歳の漁獲を辞めて、大型個体を獲った方が格段に儲かるのだ。

0歳のサバは、最近中国への輸出が伸びている。
国内で飼料だとkgあたり20円のところが、
中国輸出なら輸送費を引いて50円程度の値段がつく。
まあ、20円も50円も大差がないぐらい、0歳の漁獲は非効率的だ。

現在、体重200gの小サバが漁獲の中心である。
この小サバの漁獲を控えて、4歳で漁獲をするとどうなるかを試算してみた。

4歳まで待つと個体数は1/5になる。
しかし、体重が3倍以上になるので、トータルの重量は約2/3になる。
小サバ3箱が、4歳の大サバ2箱分に相当することになる。
小サバのkg単価は飼料で20円、中国に輸出で50円なので、
それぞれ3箱で900円と2250円になる。
一方、4歳のKg単価は600円なので、2箱で18000円になる。

体重

15Kg箱

個体数

重量

値段

小サバ

200g

3箱

225尾

45kg

900円~2250円

4歳

684g

2箱

45.4尾

31kg

18640円

つまり、小サバの漁獲をやめて、4歳で獲れば、9~20倍も儲かる。
現在の小サバの漁獲は経済的にみて実に非合理的なのだ。

獲り方を変えれば、魚の値段は上がる

[`evernote` not found]

1992、1996、2003と3回の当たり年があった。
にもかかわらず、未成魚の乱獲で資源増加の芽を摘んでしまい、
マサバ太平洋系群の資源量は今も地を這うような低水準だ。

普通に考えたら、大きくしてから獲った方が儲かるような気がするが、
なんで、未成魚で獲りきってしまうのだろう?
マサバの未成魚はそれほど儲かるものなのだろうか?

マサバの年齢別の体重はこんな感じ。
資源評価票に数値が記載されていなかったので、90年代のデータを引っ張り出してきた。
(図だけじゃなくて、数値も載せてください>担当者殿)
saba08.png

サバは大きさによって、名称と用途が違う。
200g以下は、ジャミと呼ばれて、飼料になる。
200~400gは、塩干し・節・缶詰になる。
400~600gは、生鮮、しめさば、フィーレになる。
600g以上の大サバは、生鮮の高級品だ。

年齢別の個体の値段はこんな感じになる。
小サバは1尾3円だが、6歳になれば1尾1000円になる。
saba09.png

 

マサバをどういう段階で利用しているかを見てみよう。
2000から2005年の漁獲量を年齢別にまとめると、次のようになる。
saba10.png


飼料・缶詰にしかならない小さいサイズで獲りすぎて、
値段が上がってくる3歳以上は殆ど居ないのだ。

さて、漁獲個体数に個体単価をかけると、年齢別の漁業収益を計算できる。
漁獲尾数と漁業収益を基準化して比較してみよう。
saba11.png

0歳は漁獲尾数はべらぼうだが、収益には殆ど結びついていない。
一方、尾数としては少ない大型個体が収益の大きな割合を占めている。

たとえ、天の恵みで、小サバが大量に発生しても、
食用として需要があるサイズになる前に獲られてしまう。
「サバが豊漁」なはずなのに、スーパーの鮮魚コーナーは
ノルウェー産のサバに席巻されている理由はここにある。
日本の漁業者は、生鮮用として価値が上がるまでの数年を待てないで、
飼料にしかならないような小型のサバを我先にと獲ってしまう。
結果として、消費者が高く買う大型個体は国内では供給できない。
魚離れ?冗談じゃない。
漁業者が乱獲で資源をつぶした結果として、消費者には輸入品に頼らざるを得ないのだ。

また、サバは2歳で一部が成熟し、完全に成熟するのは3歳からだ。
ということで、0歳、1歳で大半を獲り尽くしてしまう漁業をしている限り、
永遠に資源量は低水準のままだ。

90年代のマサバ資源を振り返る

[`evernote` not found]

漁業がマサバ資源の増加の芽をどのように摘んだかを見ていこう。

下の図は、マサバの卵の生残率だ。
90年代以降、それまでよりも高い水準で推移している。
さらに、1992, 1996, 2004年と、加入に成功していることがわかる。
90年代以降、マサバの生産性は極めて高かったのだ。
saba04.png

下の図が毎年の加入資源量(1000トン)である。
加入の成功が起こった年は、周囲よりも飛び抜けているが、
親の量が少ないために、過去のピークには及ばない。
saba05.png

92年や96年のような加入の成功があっても、
未成熟のうちに獲りきっているから、資源の回復に結びつかない。
では、未成熟個体の漁獲を控えて、
92年の卓越年級群が96年の産卵に参加できたらどうなっていただろうか?
この試算を我々のグループが行い、論文として、公開している(俺はそんなに関わってないけど)。

Kawai H., Yatsu A., Watanabe C., Mitani T., Katsukawa T. and Matsuda H. (2002) Recovery policy for chub mackerel stock using recruitment-per-spawning. Fish. Sci. 68: 961-969.

この論文では以下の4つの漁獲シナリオを比較している。
シナリオ0:現状の漁獲
シナリオ1:加入の成功した年の未成魚を保護
シナリオ2:70年代と80年代の平均的な漁獲圧を維持
シナリオ3:シナリオ2より更に55%漁獲率を下げる

91年以降、それぞれのシナリオで漁獲をしていたら、下図のように資源は変動した。
saba06.png
資源管理シナリオ(1-3)は、全て増加している。
92年のまとまった加入(卓越年級群)を、次に加入が成功する96年まで残しておけば、
マサバ資源はかなり回復したのだ。
また、80年代以前の漁獲圧を続けるシナリオ2でも資源はかなり回復した。
90年代以降の早獲り競争を抑えておけば、マサバは高水準に回復している可能性が高い。
90年代以降の未成魚への高い漁獲圧が、資源増加の芽を摘み、資源を低迷させているのだ。

下の図は、資源管理をしたら、漁獲量がどうなったかを示している。
シナリオ0では、1992年のまとまった加入を1993年に獲り尽くした。
資源管理シナリオではここで未成魚を保護するので、漁獲量は上がらない。
その代わり、94年以降に成長させながら徐々に利用していくことが出来る。
そして、96年の加入の成功で、資源が増えると漁獲量は更に増える。

saba07.png

近年は、コンスタントに加入の成功が起こっている。
卓越年級群を次の加入の成功まで残しておけば、マサバ資源は回復するはずだ。

この論文が出る以前は、マサバの減少も全て海洋環境のせいにされていた。
「マサバが増えないのは、自然減少だからしょうがない」というわけだ。
要するに、今のマイワシと同じような状況だったわけだ。
この論文が漁業が資源回復の芽を摘んだことを示したことで、マサバ回復計画へと繋がっていった。
しかし、資源回復のためと称して、漁業者に給料補償金がばらまかれただけで、
現在まで、未成魚獲りきり漁法は以前として続いており、乱獲に歯止めはかかっていない。

マサバの増加に関して面白い現象がわかった。
加入の成功が連続することで、資源は階段状に増加していく。
現在の低水準から、高水準まで増やすには、3回の加入の成功が必要になる。
これをホップ・ステップ・ジャンプ仮説と呼ぶ(今思いついた)。
現在の漁業は、「ホップ」の段階で増加の芽を摘んでいるから、資源はいつまでも低水準だ。
マサバがホップできるうちに、ステップジャンプへとつなげていく必要があるだろう。

1996年は、黒潮が特異的に蛇行した年で、マイワシも大発生した。
マサバ、マイワシとダブルで、大発生したにもかかわらず、
どちらも未成魚のうちに獲ってしまった。
まき網の漁獲能力は驚異的だ。
高い漁獲能力をもつまき網は、しっかりとした管理が必要だろう。

毎日の記事をアップしました

[`evernote` not found]

毎日新聞から掲載許可が得られたので、アップします。
いろいろとつっこみどころもあると思うので、忌憚無き意見をお願いします。

mainichi.gif

教科書に載せたい乱獲

[`evernote` not found]

さて、マサバの歴史に何が起こったかを振り返るために、
年代別の平均漁獲量とその組成をまとめてみた。

saba03.png

漁獲量が減少するのと並行して未成熟個体の割合が大きくなっている。
典型的な乱獲スパイラルだ。

  1. 資源が減少する
  2. 漁獲量を確保するためにより多く獲ろうとする
  3. 大型個体が獲り尽くされる
  4. 小型個体の割合が増えていく
  5. 単価の下落を漁で補うために、ますます多く獲ろうとする→1へ戻る

現在は乱獲が行き着くところまで進行してしまった状態。
卵の生き残りがよい年があると、「豊漁だ!豊漁だ!」と言って、
0歳、1歳の未成熟で根こそぎ獲ってしまう。
確かに、90年代以降のマサバの生産性には目を見張るものがあるのだが、
大中まき網の漁獲能力は桁違いであり、マサバ太平洋系群は完全にフタをされた状態だ。

乱獲によって、
①資源の低迷 ②漁獲組成の小型化 ③漁獲率の上昇
が同時進行し、漁業の生産性が失われる。
管理をしない漁業は生産性が下がるという良い見本だろう。

マサバ太平洋系群は、水産資源学の教科書に見本として載せたいような典型的な乱獲だ。

毎日新聞に載りました

[`evernote` not found]

6月3日の毎日新聞に 、私の文章が掲載されました。
5面の発言席というコーナーです。
恥ずかしいことに顔写真入りです。
「魚の乱獲防止に税金投入を」というタイトルで、
このブログに書いてあるようなことをまとめました。

興味がある方は、読んでみてくださいな。

 

Home

Search
Feeds
Meta
Twitter
アクセス
  • オンライン: 2
  • 今日: 1138(ユニーク: 690)
  • 昨日: 1254
  • トータル: 9370272

from 18 Mar. 2009

Return to page top