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ノルウェーの漁業管理は世界一らしい

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 ノルウェー水産物輸出審議会のプレスリリースで面白い記事を発見

英国王立国際問題研究所(通称:チャタムハウス、本部:ロンドン)はこのたび、『責任ある漁業への取り組みに関する調査』の結果、ノルウェーが世界でもっとも優れた漁業管理を行っているとするレポートを発表しました。
3年にわたって実施された同調査では、国連食糧農業機関(FAO)*が定める『責任ある漁業のための行動規範』の第7 条、「漁業管理」の遵守が評価されました。対象となったのは世界の総漁獲高の96%を占めるノルウェー、日本、中国などの53カ国です。調査では「水産資源の管理目標」、「正確な管理を実施するための仕組み」、「管理の実現に向けた予防措置の実施」の3分野で規範遵守への意思が評価され、「水産資源・船舶・漁具の管理と規制」、「社会と経済に対する責任の果たされ方」、「水産資源のモニタリング・管理・監督の徹底」の3分野で規範遵守の達成度が評価されました。ノルウェーに次いで高い評価を受けたのはアメリカ、カナダ、オーストラリアです。日本は第9位でした。

ノルウェーの1位とオーストラリアの4位は良いとして、
アメリカの2位は微妙だなあ。
3位に資源が枯渇しているカナダは無いだろう。
そこはかとなくアングロサクソンびいきですね。
どうみてもアイスランドの方がこれらの国より上だと思うが、
アイスランドのアの字もないのはThe Cod Warsの恨みですか?
日本が第9位というのもアレだな。
いったい、どういう採点基準か激しく気になるので、
元ネタを探したけど見あたらない。
英国王立国際問題研究所といえば、これだと思うんだけど、
http://www.chathamhouse.org.uk/
お目当ての文書が見あたらないずら。
どなたか、元ネタを知っている方はご一報ください。

国が進める小サバ輸出倍増計画の効果を試算する

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百害あって一利なしの小サバ輸出事業を、国として全面的に拡大していくようだ。

輸出拡大は地域経済の回復など我が国の将来に大きなプラス効果をもたらすものであることから、17 年に政府は、農林水産物・食品の輸出額を「5年で倍増」することを目標に定めました。(水産白書)

最近、水産分野では急激に伸びている小サバに期待が高まっているようです。
最低でも5年で倍、あわよくばそれ以上に増やしたいと思っていることでしょう。
現状ですら、サバ漁業全体の利益やサバ資源の持続性を犠牲にして成り立っている
小サバの輸出を倍にするとどうなるのかを試算してみよう。
0歳の漁獲率を35%から70%に挙げると次のようになる。

漁獲組成は0歳が突出し、1歳以降は激減する。
saba35.png

漁業利益はこんな感じで激減します。
漁業全体の利益は、現在の42%まで低下するでしょう。

saba36.png

産卵親魚量も同様に46%の水準に減少します。
ちなみに%SPRは5.1%です。
%SPR一桁台とは、漁業大国の面目躍如ですね(^^

saba37.png

小サバ倍増計画の効果
小サバの輸出に関与する業者の利益は倍になる。
その代償としてサバ漁業全体の利益は半分以下(42%)に減少する。
また、今でさえ少ない親魚量も現在の46%の水準に低下する。

どこをどうひっくり返しても、
小サバの輸出が日本漁業のためになるとは思えない。
0歳魚の輸出促進とかいってる段階で、常軌を逸していると思うのだが、

ひょっとして、それはギャグで言っているのか? (AA略)

これから食えなくなる魚

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これから食えなくなる魚
これから食えなくなる魚

posted with amazlet on 07.06.22

小松 正之
幻冬舎 (2007/05)
売り上げランキング: 27795

日本漁業全体を俯瞰できる良質なレビュー。
日本漁業は至る所に問題を抱えて、全身複雑骨折状態なのだが、
諸々の問題を前提知識が無くても理解できるように平易に説明している。
一人でも多くの人に、この本を手にとってもらい、
日本の水産業および日本人の食生活の未来について考えてもらいたい。

以前の著書では、日本に都合がよい部分をつなげて説得力のある議論を展開していた。
官僚的な文章の手本のようなイメージがあった。
この本では、漁業のもつ様々な問題点にかなりストレートに解説しており、
筆者の漁業を何とかしたいという気持ちが伝わってくる。
「小松さんはこういう文章も書く人なんだ」と正直、驚いた。

漁業への問題意識は、個人的に共感できる部分が多い。
この本と当サイトを読み比べれば、重なる部分も多々あることがわかるだろう。 
国内でも有数の影響力を持つ人がこういう本を出すというのはとても意義がある。

ということで、当サイトの読者のかたも是非、目を通してください。
さっと読めて、いろいろと勉強になります。

小サバの輸出によって得たものと失ったもの

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 小サバの輸出によって短期的な収益は増えるのだが、
その代償として失われたものが2つある。
大きくしてから獲った場合に得られた収益と産卵である。
小サバ輸出の是非を問うために、これらの失われたファクターを定量的に評価してみよう。

2000から2006年までの漁獲を合計すると次のようになる。

漁獲尾数(10^5) 個体単価(円) 漁獲収益(億円)
13026 4.2~6.9 54~90
9381 44.8 420
2004 131.2 263
696 217.4 151
406 410.3 167
106 650.6 69
53 967.1 51

ここから近年の漁獲パターンがわかる。
小サバ(0歳)を輸出すると、輸送量が20円かかるが、
KGあたり70円で売れるので、全体として50円の儲けになる。
一方、国内で餌料になると30円の儲けにしかならない。
国内餌料だと個体単価が4.2円のところが輸出をすれば6.9円に跳ね上がる。
6年間の漁獲金額としては54億円が90億円に増える計算になる。

小サバの輸出で、マサバの生産金額はこんなに増えました!!
saba31.png

もともとタダ同然の0歳魚の値段が少し上がったところで、大した儲けにはならない。
しかも行く先がアフリカと中国では、値段が上がりようがない。
それでも、獲った人と輸出をした人の手元にはなにがしかの金額が残る。
ただ、その代償として何が失われたかを考える必要がある。  

現状と比較するために、次の2つの漁獲パターンを考えてみよう。
0歳禁漁シナリオ:現状の漁獲圧を維持したまま、0歳魚のみを禁漁にした場合
70-80年代シナリオ:70年代、80年代の平均的な漁獲圧をかけた場合

0歳禁漁シナリオは0歳魚の漁獲の影響を評価するためのシナリオであるが、
実際に0歳のみを完全に禁漁するのは技術的に不可能だ。
ということで、70年代、80年代の平均的な漁獲圧をかけたらどうなるかも合わせて計算した。
過去に実際にやっていた獲り方なら技術的にも可能だろう。
結果にはほとんど影響がないので、0歳はすべて中国に輸出するものとして計算をした。
国内で餌料として消費する場合は、0歳の収益が3/5になります。
細かい計算結果は、一番下の続きを読むをクリックしてください。 

漁獲尾数はこんな感じになる。
現状では0歳の漁獲が突出しているが、それを無くすと1歳以降の漁獲尾数がまんべんなく増える。
また、70,80年代は1歳もそれほど獲っていなかったので、2歳以降の漁獲の割合が増える。

saba32.png

この場合の漁獲高はこんな感じになる。
saba33.png
殆ど利益にならない0歳の漁獲を控えると、漁獲高は1211億円から1726億円へと跳ね上がる。
0歳魚を1億円分漁獲すると、漁業全体の利益が5.7億円失われる計算になる。
利益率の低い1歳の漁獲も抑制することで、さらに漁獲高は増加する。
最近の早獲り競争が如何に資源の生産力を無駄にしているかが良くわかる。

次に再生産を見ていこう。
漁獲のタイミングを遅らせると、その分だけ産卵に関与できる個体数が増える。
saba34.png
0歳を獲らなければ、産卵量は1.5倍になる。
また、昔の漁獲だと、産卵量は倍以上に増えたのである。

以上の結果をまとめてみよう。
小サバ(0歳)は、国内で餌料になるとKGあたり30円にしかならない。
これを中国に輸出すれば、送料を引いてもKGあたり50円の売り上げになる。
輸出によって、6年間の売り上げが54億円から90億円へと利益が増える計算になる。

0歳魚の漁獲によって90億円を稼ぐ代償として、全体の利益が515億円失われた。
0歳魚を1億円輸出すると、マサバ漁業全体の利益が5.7億円失われるのだ。
また、0歳を獲らなければ、産卵量は1.5倍に、昔の獲り方をしたら2倍以上に増えたこともわかった。

つまり、小サバの輸出によって、特定の人間が短期的利益を得る代償として、
マサバ漁業全体の利益が大きく損なわれている。
さらに、未成魚の乱獲で資源の再生産能力を著しく損なうことで、
マサバ資源の回復の芽を摘み、漁業の未来を奪おうとしているのだ。

また、70年代、80年代には、かなりまともな漁業をしていたことがわかる。
後先考えずに獲れるものを獲れるだけ獲り尽くす漁業を続けた結果として、
資源も、漁業もここまで酷くなってしまったのだ。

水産物の輸出が伸びる背景

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水政審の議事録から、水産物の輸出に関する議論を追ってみよう。
http://www.jfa.maff.go.jp/sinseisaku/keikaku_19/minute/180413.htm

○浅川加工流通課長 
漁獲自体は小型が多いということで、産地価格は低いんですが、消費地では中型、大型サイズが求められているということで、高値で推移するということで、こちらも需給のミスマッチが生じています。このようなものを打開するために、サバについては、小型のものについて国内では需要がないということで輸出をするという新たな方向が出てきております

○浅川加工流通課長 
 まず、農林水産省全体の取り組みとして、現在、農林水産物または食品の輸出が平成16年は3000億円あるんですが、5年後に倍増しようという目標のもとに、輸出に取り組む方たちを支援しているところでございます。中でも輸出実績自体、右の方なんですけれども、平成16年から17年に12%近く増えているわけですが、うち水産物は2割近く増えているということで、輸出の品目としてはメインの部類に入るかと考えております。
 次のページですけれども、水産物の輸出の取り組みとして、外国での日本産品の普及ですとか販路開拓といった取り組みに対して農林水産省で支援しております。水産物につきましては、右に書いておりますとおり、H団体というのは北海道の団体なんですけれども、ホタテとかアワビ、サケを出荷したり、下の方は九州の団体になりますけれども、サバの小魚を出荷したり、輸出したりという取り組みが始まっているところです。
 輸出の現状が次のページになります。全体的には、輸出という状況はここに書いてあるとおりなんですが、かつては香港とかアメリカといったところが輸出のメインだったわけですけれども、最近は韓国とか中国というお隣の国への輸出がふえているということ。また、かつては真珠とか貝柱、ホタテといったものがかなり中心だったんですが、最近の動きとして、サケ、マスですとか、サバといったものが少しずつ増えてきているといった動きにございます。
 このような動きは、国内で価格が上がらない場合に外国へ出すことで新しい需要が増えるといったこと、また国内のダブついた市場を少し引き締めるといった効果もございますし、漁業の活性化といった、いい効果もあると考えております。
 次のページが取り組み事例でございます。輸出先にさまざまなニーズがございます。ここに書いてあるとおり、いろいろな魚種によってニーズがございますので、それに応じて輸出をしているという取り組みの事例を書いてありますのが、このページでございます。
 最後に、ただ輸出するときに必要なことということで、これも第2回のときに少し触りを御説明いたしましたけれども、EUとかアメリカといったところが衛生面での管理をきちんとやってくださいということを諸外国に求めておりますので、輸出する業者は、それぞれの輸出先の基準に合致した衛生水準のものを出す必要がある。こういうものに今後、対応していくことが課題となっております。
 以上でございます。

○原田委員 輸出について、現状、日本に入ってくる輸入水産物、輸出されている国々の戦略と、日本が輸出に打って出ようという戦略を比べると、大きな開きがあります。ノルウェー、チリのサケですとか、インドネシア、東南アジアからのエビですとか、どういった魚種をどこに売るかというところまで国がターゲットを決めてつくっているようなところがあります。
 そういう意味で、輸出を増やすということは結構だと思うんですけれども、先ほどからも意見あったような余ったものを出しましょう、輸入が入ったので、はじかれたものを何とか付加価値をつけてって、これでは本当の輸出対策の戦略ではないと感じます。
 国として、輸出を5年後に倍増であれば、もうちょっと明確な戦略を立てて、日本の漁業が活性化するような戦略でもってやっていただけたらというふうに思います。 

日本の水産物の輸出には構造的な問題があることがわかる。
漁業者の早どり競争の結果、消費者の需要が低いような小型の魚が多獲されている。
その結果、需要が高い中型大型の供給が減少し、高値で推移することになる。
ここに輸入魚が殺到するのは自明の理だろう。

需給のミスマッチは、小型乱獲の結果である。
小型のものは国内で価値がないから、輸出します、というのはおかしい。
それを大きくしてから国内で売るという選択肢もあるはずだし、
それこそが需給のミスマッチを解消し、食糧自給率を上げる道だろう。
また、輸出についても、かつては水産物を高く買う香港やアメリカがメインだったのだが、
最近は韓国、中国と言った、水産物の値段が安い国にしか相手にしてもらえなくなっている。
世界の水産物の値段が上がる中で、日本の輸出単価が減少している。
日本の水産物が先進国から相手にされない理由はいくつかある。

1) 衛生管理基準
EUや米国は独自の衛生基準をもっているが、日本の水産物のほとんどはその基準をクリアしていない。
今のままでは門前払いをされてしまうので、衛生基準を国際水準まで引き上げる努力が必要である。

2) 品質の問題
輸出をするには良い状態の冷凍品が必要になる。
日本で魚と言えばまず生鮮であり、余ったものが冷凍になるという頭がある。
港で余った魚を冷凍させても、既に品質の劣化は進んでいる。
水産物の輸出を振興している国は、獲ってすぐの新鮮な状態で冷凍できるように、
船上冷凍設備が充実している。
今の日本の冷凍技術では、漁業先進国とは戦えない。 

3) 資源の持続性の問題
日本の漁業は資源の持続性の配慮がまるでない。 
水産資源は軒並み低水準であり、ある資源が増え出すと、
「豊漁だ!豊漁だ!」といって、すぐに増加の芽を摘んでしまう。
その結果、漁獲のサイズも量も安定しない。
安定供給が出来なければ、大口の小売りからは相手にされない。
また、EUや米国では、「持続的でない漁業で獲られた魚」は高く売れない。
たとえば、ウォールマートやマクドナルドは持続的に獲られた魚しか店頭に並べない。
そうしないと消費者からそっぽを向かれるからである。
国際的な基準では日本の殆どの漁業は管理されていないと見なされる。
これでは、意識が高い消費者からは相手にされないのである。

今のままでは、日本の水産物は途上国に買いたたかれるしか無いのである。
原田委員の発言にあるように、今の日本の水産物の輸出には戦略も糞もない。
乱獲によって市場価値が無いような小魚しか供給できない。
国内では相手にされないから、二束三文でも買ってくれるところに輸出するしかない。
最近の輸出の伸びは、乱獲のつじつま合わせであり、日本漁業の断末魔なのだ。
現在の水産物の輸出は、海の幸を切り売りしているのであり、国が進めるようなものではない。
このような末期的な状態を避けるための政策が必要なのだ。

代替案としては、次の2つがある。
1)国内で消費する
2)欧米など水産物を高く買う国に輸出する

要求される品質のハードルは、
欧米>>日本>途上国
となっており、現在の日本漁業はいきなり欧米の市場をねらえる状態にはない。
まずは国内市場を狙うべきである。

輸出が全て悪いとは思わない。
次のような条件を満たしていれば、輸出を促進すべきだと思う。
1)国内市場へ充分に供給できている
2)資源状態が良い
たとえば、サンマのように豊漁貧乏で国内市場が飽和している資源は、積極的に輸出をすべきだ。
そのためには、衛生基準をクリアできるようにすると同時に、船上冷凍設備への投資も必要になる。
国は、こういう漁業の輸出を補助すべきである。
サンマが輸出できるようになれば、豊漁貧乏で泣いているサンマ漁業はかなり救われるだろう。
原田委員が指摘するように、もうちょっと明確な戦略を立てて、
日本漁業が活性化するような方向で輸出促進をすべきである。

近年増加する小サバの輸出

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ノルウェーのサバに関しては、ロシアウクライナへの買い負けが続いている。
値段が上がっている中で消費が伸びているので、今後もこの傾向は続くだろう。
また、中国も日本と同じ程度の購買力がありそうなので、
1990年代のようにノルウェーのサバを日本が独り占めできない状況だ

買い負け現象は、国内のサバ漁業が日本のサバ市場を取り返すための絶好のチャンスである。
しかし、サバは0歳1歳といった未成熟なうちに乱獲されているせいで、
日本の生鮮市場に十分な個体を提供できる状況にない。
このまま買い負けと国内資源の乱獲がつづけば、日本人はサバを食べられなくなる。
サバの供給がとぎれて、サバ食文化の壊滅するという最悪のシナリオは避けないといけない。
今後、中長期的な時間スケールで日本のサバ市場の空白化が進むはずであり、
この空白を日本のサバで埋められるように関係者は準備を始める必要があるのだが、
現状では正反対の方向に走っている。

この図は、日本のサバの輸出量である。近年、急速に伸びていることがわかる。
2006年には18万トン。これは国内の漁獲量の1/3程度を占める。

saba31.png

一方、Kg単価は次のようになる。
saba32.png
2002年までは、ノルウェーと大差がない単価がついていたが、
2003年以降は、小サバの輸出の増加により70円程度に低迷している。
世界的な値上がり傾向とは逆に、日本のサバの値段は下がっているのだ。
小型個体の価値は世界市場でも低く、飼料よりはましという値段しか付かないからだ。

現在低水準にある資源の未成魚を二束三文で輸出してよいのだろうか?

第2日 おしょろまる

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太平洋学術会議というところで順応的管理に関する講演をした。
反応はなかなか良かった。
発表はうまくいったし、質疑応答も何とかこなしたのだが、
総合討論で話を振られて、ぐだぐだに・・・・
MSYにもいろんな定義があるから、そこをクリアにしないと議論がかみ合わないと言いたかったのだが、
どこまでつたわっただろうか?
http://cod.ori.u-tokyo.ac.jp/~katukawa/study/docs/msy/
世界中の資源関係者は同じようなことに悩まされているんだなと思った。
MSYへの批判が相次いだのだけど、資源管理の失敗をMSYのせいにするのはどうかと思う。
日本のTAC制度が破綻しているのは、ABCの推定制度の問題ではなく、
ABCを無視して過剰なTACが設定されているからである。
管理システムよりもむしろ制度の運用でつまずいている。
それは漁業者の管理に失敗しているからだ。

その後、北大のおしょろまるという船でレセプションがあり、
前所長の小池先生(現琉球大)と日本の研究の行く末について語り合った。
大学も変化の時代の中で難しい舵取りを迫られているようだ。
研究活動という本分も大切だが、研究をするための場所を良い状態に保つ努力も必要だ。
東大海洋研の研究環境は恵まれているのだが、それも先人の努力のたまもの。
俺も少しは組織のために自分に何ができるかを考えていく必要があると思った。

松田さんと、ネットに文章を公開することの難しさについて話す。
読者に不快感を与えないようにと諭される。
松田さんは、いろいろな場所でメッセージを発し続けている人だし、
俺の人となりも知っているので、このアドバイスは重要だ。
しかし、俺には読者の不快感というのがいまいちぴんとこない。(そこが問題なのか?)
俺は自分の信念に基づいて書くべきであり、
それをどう評価するのは読者次第だと思っている。
このブログの読者もいろいろいるのだが、
もっともアクセスが多いのがmaff.go.jpだったりする。
今の水産行政を見る限り、水産庁万歳とは書けないナリ。
しかし、15年で生産力が半減したことからもわかるように、
日本漁業は明らかにうまくいっていないのだ。
漁業にすり寄って、「日本漁業万歳」ということを言う研究者も多いが、
俺はそれには同調できない。
たしかに日本漁業独自のいい面もあるが、問題点も山積みだ。
現在の漁業の問題点を明確にした上で、
具体的な改善案を示していくのが研究者の義務だろう。
ただ、耳にいたいことを言う以上、表現にはもうちょっと気を遣うべきかもしれない。
うむ、そういうことだろうと解釈をしておこう。

「俺がこの世でただ一つ我慢できんのは―――鍵をかけ忘れた小型トランクだ!(ハートマン軍曹)」

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マサバ貿易戦線異常あり

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近年、世界のマサバ市場に変化が起こっている。

下の図はノルウェーから日本に輸出されたサバの重量だ。
saba26.png

1990-2004まで15万トン程度で安定して輸入されてきたのが、
ここ2年間で激減しているのがわかる。
2006年は5万トンを割っており、今年度もさらに低下しそうな見通しだ。

何でこんなに減ったかというと、値段が上がったからだ。
saba27.png
Kgあたり130円程度であった単価が、2005年から倍以上に跳ね上がっている。

値段が上昇したのは、日本以外の国もノルウェーのサバを輸入しだしたからだ。
90年代はほぼ全てが日本に輸出されていたのが、最近は中国や東欧諸国への輸出が増えている。
いわゆる買い負け現象である。
下の図はノルウェーの輸出統計。

saba25.png

日本と中国の輸出が半減しているのに対して、ウクライナとロシアの輸出が急激に増加している。
つまり、日本と中国がウクライナとロシアに買い負けているのだ。

サバの貿易をまとめると次のようになる。
1990年から2004年までは、ノルウェーから日本に年間15万トンのサバが安定して輸出されていた。
saba23.png

それが2006になると次のように様変わりをしている。
saba24.png
日本に流れていたサバが、中国や欧州に輸出されるようになった。
その一方で、日本のサバが大量に安い値段で中国・アフリカに輸出されている。

日はまた昇る?

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俺は海のそばで地先のサバを食べて育った人間であり、
旬のサバは相当においしい魚であることを知っている。
だから、日本のサバは、日本人がおいしくいただくのが筋だいう信念がある。
中国に二束三文で投げ売りすべき魚ではない。

実は、日本のサバ市場を取り返す千載一遇のチャンスが到来しているのだ。
おそらく5年以内に大きな動きがあり、10年後には結果が出るだろう。
しかし、今のままではそのチャンスを無駄にして、
日本のサバ漁業は沈没していくだろう。
どうすれば、このチャンスを活かすことができるのか?
関係者で知恵をしぼり、それを行動に移さないといけない。

日本のサバ市場を日本のサバが取り返すためのシナリオと、
そのために解決すべき課題について論じてみよう。

第1日 まいっちんぐ

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そろそろプレゼンを始めた当初のような感性が薄くなってきた。

ということはどういうことかというと
「変な発表をしたらどうしよう?」という危機感にさいなまれなくなり、
とりあえず、ガツンとかましてみようと達観できるようになった
ということである。

言い換えると破れかぶれに慣れてしまったのかもしれない。
ちょうど10年目くらいか。
これは興味深い収穫^^

今日はホテルで明日のプレゼンの準備をしつつ、
そうだ、京都に行こう、などと考えていた。

「知者は惑わず仁者は憂えず勇者は懼れず(孔子)」

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他人のブログを真似するのは難しい^^

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from 18 Mar. 2009

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