補助金が、必要な変化を妨げる

この前のテレビで驚いたのは、関サバの漁師。
この半年1尾も釣れてないにもかかわらず、毎日300隻も船が出しているという。
交代で1隻か2隻ぐらいを出漁させて、
魚がいることがわかってから皆で出るぐらいのことがなぜできないのか。
「燃油が高い、高い」と文句を言う割に、コストへの配慮が欠如している。
真っ先に、「月夜」に一斉休漁をしたイカつり漁船も同様である。
少ないイカを漁業者間で奪い合うから、規制違反の明かりを炊くことになる。
宇宙を煌々と照らしながら、ストをする前に、業界内でルールを徹底するのが先ではないか。

関サバやイカつりばかりでなく、たいていの漁業は魚の奪い合いだ。
他の漁業者よりも早く漁場に行くために、
小さい船に不釣り合いな大馬力のエンジンを積んで、
規定の時間になると一斉にスタートする。
先を争って、値段がつかないような小魚まで必死に獲って、
未来の収益をどぶに捨てているのだ。

早い者勝ちの日本では、無駄に早いエンジンも、
漁場に急ぐために使われる燃油も、すべて必要経費である。
この経費をけちったら最後、何も獲れないのだから。
他の部分は極限まで削っても、
早取り競争のための投資は削ることができない。

無駄なコストの削減に関してはノルウェーは徹底している。
ノルウェーのサバは、日本人には脂がのりすぎている。
成熟が進むにつれて、体の栄養が卵に移り、徐々に脂が抜けている。
毎日、調査漁獲で脂の具合をモニターし、
最も良いタイミングで皆で獲りに行く。
業界全体で協力することで、コストを抑えて、利益を最大化できるのである。
ノルウェーの漁船漁業は常に最新の設備を使っているが、
より早く獲るためではなく、漁獲物の質の向上のために設備投資をおこなっている。


今回の燃油高騰は、無駄が多い日本漁業のあり方を見直す契機になったはずだ。
無駄な競争を続ければ共倒れになるのは明らかだから、
漁業者同士で協力をして無駄な競争をやめる以外に道はないのだ。
過剰競争を緩和する手段としては、個別漁獲枠、ローテーション出漁、
プール制など、やり方ならいくらでもある。

ローテーション出漁なら、1回の漁でより多くの魚をもち帰るために、
過剰に獲るだろうし、プール制だと良質の魚を生産しても、リターンがない。
最も操業の自由度が高く、合理的なのは個別漁獲枠だろう。
ただ、ローテーション出漁も、プール制も、問題はあるものの、
導入は、個別漁獲枠よりも容易であり、その気になればすぐにできる。
何もやらないよりは100倍マシだ。

ピンチとチャンスは表裏一体である。
人間というのは、必要性があって、初めて変化ができる。
無駄な競争をやめて、ほどほどに獲って、ばっちり儲ける。
俺が常々唱えている「持続的に儲かる漁業」への一歩を踏み出すチャンスだったのだ。

その芽を摘んだのが、今回の直接補償だ。
(政府は直接補償ではないと言っているようだが、どうみても直接補償だろ)
漁業者はこれからも、安心して過剰競争をつづけることができる。
価値の低い小魚を水揚げしておきながら、
魚価が安いのは、消費者がわるいと、愚痴り続けるだろう。
この無責任きわまりないばらまきののツケは、
すべて未来の世代が返していくのだ。
国産魚は食べられず、国の借金だけが残る。

かつて漁業を補助金漬けにして、乱獲に苦しんだノルウェーでは、
みなが口を揃えて、補助金の害悪とそれを断ち切ることの必要性を強調した。
「補助金は、必要な変化を遅らせるだけで、漁業にとってマイナスでしかない」と。
いまの日本の状況が、まさにそれだ。

安易な直接補償ではなく、持続的に儲かる漁業への転換を手助けするべきだった。
漁業者に、いくつかの資源管理のオプションを提示する、
話し合いの場所を設ける、専門家を派遣して方策を検討する。
そいうったことを、もっと積極的に行って欲しい。
政府や漁業団体は、EUの漁業補助金を見習えと言う論調が多かったが
EUの補助金は、休漁支援、生活保障、構造改革であり、直接補償ではない。
これらの漁業の変化を助ける補助金ですら、世界的には非難に曝されている。
俺個人としては、変化のための補助金は必ずしも悪いものではないと思うし、
こういう方向を目指すのであれば、目くじらを立てるつもりはない。
しかし、日本の745億円の補助金は、すでに破綻している現在の漁業を
そのまま延命するためのものである。
必要な変化を遅らせても、漁業がますます衰退するのは明白だ。

政治家は、目先の票のために、漁業の未来を破壊している。
次の選挙に頭がいっぱいで、漁業を破壊しているという自覚すらないかもしれない。
「他人のふんどしで、問題先送り」というのは、
漁業独自の問題ではなく、日本という国家全体の問題でもある。

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燃油補填が漁業を滅ぼす

今の漁業は完全に過剰漁獲の状態にある。
漁業者間の魚の奪い合いで、エネルギーを浪費しながら、資源を食いつぶしている。
大型魚を取り尽くし、小さな未成魚からなりふり構わず獲っている漁業も多い。
こういう漁業は、単価も安いし、利益も出ないので、燃油が上がると真っ先に行き詰まる。

今回、これらの赤字漁業が採算のとれない操業を続けるために、税金を投入する。
すでに非持続的な漁獲圧を維持しても、資源の枯渇が早まるだけであり、
将来の食糧供給に対して、利益がないどころか、害でしかない。
資源が枯渇すれば、ますます漁業の収益は悪化して、
今後も補助金を要求され続けるだろう。
今回の補助金は、漁業の将来にとっても、国民にとっても、最悪の選択だ。

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また、補助金の条件である10%の燃油消費削減も、全く本質的ではない。
資源管理もしないで、魚を獲りたいだけ獲っていたら、
燃費が10%良くなったところで、経営が行き詰まるのは、時間の問題である。  


よく引き合いに出されるEUの補助金は、構造改善のためである。 
EUは問題の本質は過剰漁獲であると明確にした上で、
休漁・減船を行い、自然の生産力とバランスがとれた大きさまで、漁業を縮小させるのが狙いだ。

休漁・減船による資源の回復こそ、今の日本漁業に必要である。
漁業者の痛みを和らつつ、減船・休漁ができるように、補助金を使うべきだ。
また、休漁・減船だけでなく、資源管理をしっかりとすることが肝要だ。
資源管理をしなければ、過剰努力量に陥るのは時間の問題だからだ。

補助金をつかうならば、次の3点を柱にすべきである。

  1. 休漁による資源回復
  2. 非効率経営体の減船
  3. 資源管理の導入


これらの方向に進んでいけば、適切なコストで安定供給ができるようになるので、
長い目で見て納税者にも利益がある。

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ただ、構造改善のための補助金に対しても、EUでは非難の声が上がっている。
漁業以外の業種では、自らの投資で構造改善を行うのが当たり前である。
漁業だけが、補助金で助けてもらえるのは、おかしな話だ。
補助金を出した結果、漁業がどう改善されるのか、
それによって国民にどのような利益があるかを明確にした上で、
国民の審判を仰ぐ必要があるだろう。


燃油の差額補てんには基本的に反対である。
100歩譲って補てんをするにしても、資源状態が良い漁業に限定すべきである。
資源が枯渇している漁業に、税金で船を出させても、
乱獲が進行するだけで、国民には良いことなど一つもないのだ。

俺は、乱獲されている魚は食べたくないから、買わないことにしている。
しかし、税金で有無を言わさずに、これらの漁業に金をむしられ、
漁業の未来が奪われようとしている。
こんな馬鹿な話はない。

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漁業者支援745億円 燃料高騰分直接補てん

http://news.nifty.com/cs/domestic/governmentdetail/mainichi-2008072900m106/1.htm
省エネに取り組む漁業者に対し、漁船用などの燃料価格の上昇分について、国が実質的に直接補てんすることが柱。
政府内では、燃料代の上昇分への直接補てんには慎重な声も多かった。
しかし、漁業者に加えて与野党からの要求も強まったため、漁業の省エネ推進の支援などの対策を抱き合わせることで、
最終的に実質的な直接補てんを認めた。

額もすごいけど、内容はもっとすごい。
「燃料使用量を10%以上削減」なんて、
現在の漁業の壊滅的な生産性の低さからすると、誤差みたいなモノです。
EUの補助金は、長期的な漁業の構造改善のための費用ですが、
日本の補助金は、非持続的な現在の漁業を維持するためのばらまきであって、
全くの捨て銭といえるでしょう。
日本には魚がいないんだから、休漁をして資源回復をした方が
長期的な食糧供給にはプラスです。
木が無いのに、木こりを増やしても、しょうがないだろうに。

ニュージーランドは、古いカナダの漁船を使って利益を出している。
燃費がよいからではなく、資源管理によって、魚を高水準に保ちつつ、
市場価値が高い大きな魚のみを捕っているからだ。
日本のように、未成魚から根こそぎ獲るような漁業で利益を出している国など無い。

燃費が10%良くなっても、今のままでは経営は成り立たない。
このまま、ずるずると補助金付けにして、産業を駄目にするだけだろう。
今回の燃油高騰をきっかけに、世界の漁業はより持続的な方向に変わろうとしている。
税金で非持続的な漁業を維持しようとしているような馬鹿な国は、日本と韓国ぐらいだろう。

納税者がこれで納得するとは思えないのだが、
政府は漁業と心中するつもりなのだろうか?

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Barratt氏のインタビュー

NZには大手水産企業が3つある。
その大手の一角、Sanford社の代表取締役のEric Barratt氏のインタビュー。

Sanfordは上場企業なので、財務状況が公開されている。
先日公開された半期報告書(Interim Report)を見てみよう。
http://www.sanford.co.nz/documents/SAN017%20Sanford%20Interim08-FINAL2.pdf

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NZD=80JPYでざっくり計算すると、経常利益が168億円で、 当期純利益が28億円。
経常利益率は17%だから、立派なものです。

やり手の経営者のインタビューをじっくりとお楽しみください。

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シーフードショーのポスター

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シーフードショーでは15分の口頭発表の他にも、ポスターの展示があります。
発表の前後に、ポスターの前で説明をして欲しいと言うことだったのですが、
みんな試食に忙しくて、ポスターの所にはあまり人がいませんでした。

ポスターの解説の代わりに、海洋大の学生さんから、
海藻のしおりの作り方をレクチャーしてもらいました。
海藻には糊の成分があるので、水切りネットを使うのがこつみたいです。勉強になりました。

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ジャパンインターナショナルシーフードショーで講演します

第一回 水産海洋プラットフォーム「新技術説明会」
シーズプレゼンテーション

日時:7 月 23 日( 水) 11:30~11:45
会場:東京国際会議場東 4・5 ホール
第 10 回ジャパンインターナショナルシーフードショー内・セミナーD 会場

「資源管理で持続的に儲かる漁業」 勝川俊雄  三重大学

詳しくは、こちらをご覧ください。
http://liaison.s.kaiyodai.ac.jp/contents.php?id=415
http://liaison.s.kaiyodai.ac.jp/suip01.pdf

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日本に帰ってきました

ネルソンのホテルはネットにつなげなくて、結局、尻切れトンボになってしまった。

帰ってきたら、すぐ授業だったり、シーフードショーで講演だったりで、
えらく忙しいです。

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今日、NHKで資源の番組をやるようだ

[字]魚が消える?~“海の幸”に忍び寄る危機~
    * 放送日時7/21 (月) 19:30 20:00 (30分) この時間帯の番組表
    * 放送局NHK総合・東京
    * ジャンルドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
    * 番組概要 過剰な漁獲と温暖化等のため、サバやマグロ、ブリが深刻な資源減少に直面している。私たちになじみ深い海の幸の危機と、これからの食ありようを考える特集

http://tv.so-net.ne.jp/schedule/101024200807211930.action

これは要チェックです。

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ウェリントン その2

今日の新聞では、食品価格の値上がりが特集されていました。
政府は価格調整などは一切しない方針みたいです。
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Fish Serve

午前中は、FISH SERVEを訪問した。
FISH SERVEは、漁業ライセンスの管理、漁獲枠の管理、
漁獲報告の収集などを行っている。
ITQを導入している国には、ノルウェーのFisheries Direktori、豪州のAFMAのように
資源管理を行う独立の機関がある。
漁船の登録、モニタリング、漁獲量の集計などの手続きが煩雑になるので、
漁業に近い実働部隊が必要になるのだろう。
FISH SERVEのユニークな点は、政府組織ではなく民間企業だと言うことだろう。
もともとは、漁業省の一部であったが、現在は完全に独立した企業になっており、
予算は業界が全て出しているとのことであった。

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政府を小さくするために、事務手続きを行う部署を外に出すことにした。
もともと漁業省の該当部門にいた人間は、
1999年にdata.comという一般企業の社員になった。
FISH SERVEがビジネスとして成り立たなかった場合に、
社員が路頭に迷わないための措置だという
2年後の2001年に新しい資源管理制度が導入されるのにあわせて、。
FISH SERVEが組織として独立し、DATA.COMから分離された。
DATA.COMに残った社員はいなかったという。

FISH SERVEになってから、経営の自由度が増した。
また、金を払う人間と常に接することで、コスト感覚が磨かれた。
収益を高めるためにコスト削減を進めているが、
サービスの質は向上している。

この経験を生かすために、コンサルタント業も開始した。
公務員と一般企業の両者視点をもっているので、
両者を結ぶような仕事を得意としているようである。

公務員からサラリーマンになった感想を聞いてみたら、
「企業だから倒産の危険性があるし、安定性は前よりもない。
でも、新しいことにどんどんチャレンジできてやりがいがある。
FISH SERVEに移って、本当に良かったよ」とのことでした。
日本でも、こういうキャリアパスがあると良いかもしれないね。


SeaFIC

さて、午後はSeafood Industry Council(SeaFIC)におじゃまをして、
ゼネラルマネージャーのAlastair Macfarlane氏から、話を伺ってきました。

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Sea FICは、業界の利益のために、政府によって作られた団体で、
沿岸漁業、沖合漁業、養殖に関わる組合だそうです。
いわゆる全漁連に相当する組織なのでしょう。

ITQに対する漁業者の意識を質問してみました。
昔は漁業者よって、ITQに対する意見の相違があった。
しかし、今は小規模漁業から、大会社まで産業全体で、強くサポートしている。
早獲り競争では、だめだということです。

あと、漁獲枠を既得権として認めることで、漁獲枠が資産および収入補償になるので、
銀行から資金の調達が容易になったことが良い効果を及ぼしたそうです。

組合として、燃油価格高騰の補填を政府に求めるかを質問したら、笑われました。
「補助金がもらえるなら、誰だってもらいたいけど、そんな補助金はあり得ない」らしいです。
それどころか、来年の1月から、燃油に二酸化炭素排出税が課されるそうです。
「このタイミングで燃油に税金なんて、正気かよ?」と思いきや、
こっちの漁業者は魚の値段が上がっているからあまり困っていなさそう。
SANFORDも業績が良くて株価を上げているらしいし・・・

ニュージーランドで、ITQが導入できた理由を、当時の時代背景から詳しく説明してくれました。
あと、どの漁業でも、漁獲枠の値段は、ACEで売る場合の約10倍になるとか、
いろいろおもしろい話がありました。今日も勉強になった。
Macfarlane氏のインタビューも録画したけれど、編集してアップするのはいつになることやら。

オーストラリア、ニュージーランドで、いろんな立場の漁業関係者に会いましたが、
皆、ITQのことを高く評価していました。
また、タクシーの運転手も含めて、漁業は儲かっているかどうかを聞き込みしましたが、
「漁業者は儲けている。漁業は良い仕事だよ」というのが共通認識でした。
今回の訪問で、自分が進んできた道が間違えていなかったことを実感したよ。

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ニュージーランドのセリのビデオ

ニュージーランドのセリの様子を伝えるべく、動画を作ってみた。
動画を見る人は↓をクリックしてください。

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