乱獲の渦に巻き込まれる原因は多数あるが。
新漁具開発・設備投資のための融資(及びその結果の借金)などは、
漁業者が希望しているものである。
必然的に、その他の原因がクローズアップされることになる。
なかでも、自然環境のせいにすれば、相手は反論できない。
その結果、「資源が減ったのは、環境変動が原因だ」という大合唱になる。
でも、少し待って欲しい。
生物資源の生産力が自然に変動するならば、。
そのことを前提とした漁業システムをつくらないといけないのではないだろうか。
自然に変動するとわかっているものを、
変動をしないことを前提に利用していたら、行き詰まるのは必然だ。
そして、行き詰まったら、「環境変動が悪い」では、通用しない。
生物資源の生産力が、自然に増えたり減ったりしても
乱獲の渦に巻き込まれないような政策が必要なのだ。
規制がない漁業では、生産力の変動が過剰努力量を生み出す。
そのメカニズムを見てみよう。
ここでは、生物の生産量が一時的に増加してまた元に戻る場合を考える。
規制がない漁業
1)最初に、生物の生産力と漁獲努力量が釣り合っているとしよう。
2)生物の生産力が増加すると、収入が増加する。
これを設備投資にまわすことで、漁獲努力量は時間遅れで増加する。
3)生物の生産力が再び元の水準まで戻ると、
増加した漁獲努力量が過剰努力量となる。
漁獲努力量>生物の生産力 となり、乱獲状態になる。
4)採算がとれなくなった経営体が撤退することで、漁獲努力量は縮小する。
資源の生産力と漁獲努力量が釣り合った段階で、資源の減少は止まる。
どの段階まで、乱獲が進行するかは、過剰努力量が淘汰されるまでの時間で決まる。
過剰漁獲量が淘汰されなければ、資源はどこまでも減るだろう。
乱獲を回避するにはどうすればよいか?
このようなメカニズムを理解すれば、獲るべき政策は明らかだろう。
まず、生物の生産力が上昇したからといって、努力量を安易に増やさないことだ。
漁獲努力量は増やすのは簡単だが、減らすのは難しい。
もし、設備投資をするならば、
その投資が過剰努力量に繋がらないかを慎重に判断する必要がある。
「本当に資源の生産力に余裕があるのか?」
「資源の生産力の増加は、どの程度の期間、維持できそうか?」
「設備の減価償却期間は、どのくらいか?」
といったことを考慮した上で、問題の無さそうな投資のみ許可すべきだ。
思慮のない設備投資をすると、投資した本人だけでなく、
同じ資源を利用する全員に損害を及ぼすのだから。
また、注意をしていても過剰漁獲量が発生してしまうこともあるだろう。
この場合は、速やかに漁獲量を資源の生産量と釣り合った水準まで落とすことだ。
その上で、資源が回復するまでの年数を考慮して、
努力量を処分するか、休漁状態で維持するかを決めればよい。
適切な管理システム
自然変動する資源を持続的に利用するためには、
努力量を如何に抑えるかがポイントになる。
日本の漁業システム
1)最初は生物の生産力と漁獲努力量が釣り合っていたとしよう。
2)公的な融資によって、すばやく設備投資を行うことが出来る。
資源が増えるとすぐに設備投資をして、高い漁獲をあげることができる。
3)資源の生産力が減少すると、大量の過剰努力量を抱えることになる。
一転して、資源は厳しい乱獲に晒されてしまう。
4)資源が減少をしても、借金があるから、漁業者は操業を止められない。
また、休漁補償によって収益が悪化した経営体を生き残らせ、
結果として肥大化した努力量を維持しつづけることになる。
カツカツの状態で維持された努力量は、
回復の兆しが見えた資源に殺到し、回復の芽を摘むのだ。
ここにも書いたけれど、
「資源が減ったのは、環境変動が原因で、漁業は悪くない!」というのは違うと思う。
確かに、資源の生産力の低下が、乱獲スパイラルに突入するきっかけになったかもしれない。
でも、問題の本質は、そこではない。
資源の生産力が少しでも下がったら、必然的に乱獲になるような状況を
人為的に作り出す現在の漁業システムには根本的な問題があるのだ。
漁業システムの構造的な問題点に目を向けずに、全てを環境変動のせいにしている限り、
今後も同じことを繰り返すだろう。