燃油補填が漁業を滅ぼす

今の漁業は完全に過剰漁獲の状態にある。
漁業者間の魚の奪い合いで、エネルギーを浪費しながら、資源を食いつぶしている。
大型魚を取り尽くし、小さな未成魚からなりふり構わず獲っている漁業も多い。
こういう漁業は、単価も安いし、利益も出ないので、燃油が上がると真っ先に行き詰まる。

今回、これらの赤字漁業が採算のとれない操業を続けるために、税金を投入する。
すでに非持続的な漁獲圧を維持しても、資源の枯渇が早まるだけであり、
将来の食糧供給に対して、利益がないどころか、害でしかない。
資源が枯渇すれば、ますます漁業の収益は悪化して、
今後も補助金を要求され続けるだろう。
今回の補助金は、漁業の将来にとっても、国民にとっても、最悪の選択だ。

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また、補助金の条件である10%の燃油消費削減も、全く本質的ではない。
資源管理もしないで、魚を獲りたいだけ獲っていたら、
燃費が10%良くなったところで、経営が行き詰まるのは、時間の問題である。  


よく引き合いに出されるEUの補助金は、構造改善のためである。 
EUは問題の本質は過剰漁獲であると明確にした上で、
休漁・減船を行い、自然の生産力とバランスがとれた大きさまで、漁業を縮小させるのが狙いだ。

休漁・減船による資源の回復こそ、今の日本漁業に必要である。
漁業者の痛みを和らつつ、減船・休漁ができるように、補助金を使うべきだ。
また、休漁・減船だけでなく、資源管理をしっかりとすることが肝要だ。
資源管理をしなければ、過剰努力量に陥るのは時間の問題だからだ。

補助金をつかうならば、次の3点を柱にすべきである。

  1. 休漁による資源回復
  2. 非効率経営体の減船
  3. 資源管理の導入


これらの方向に進んでいけば、適切なコストで安定供給ができるようになるので、
長い目で見て納税者にも利益がある。

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ただ、構造改善のための補助金に対しても、EUでは非難の声が上がっている。
漁業以外の業種では、自らの投資で構造改善を行うのが当たり前である。
漁業だけが、補助金で助けてもらえるのは、おかしな話だ。
補助金を出した結果、漁業がどう改善されるのか、
それによって国民にどのような利益があるかを明確にした上で、
国民の審判を仰ぐ必要があるだろう。


燃油の差額補てんには基本的に反対である。
100歩譲って補てんをするにしても、資源状態が良い漁業に限定すべきである。
資源が枯渇している漁業に、税金で船を出させても、
乱獲が進行するだけで、国民には良いことなど一つもないのだ。

俺は、乱獲されている魚は食べたくないから、買わないことにしている。
しかし、税金で有無を言わさずに、これらの漁業に金をむしられ、
漁業の未来が奪われようとしている。
こんな馬鹿な話はない。

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漁業者支援745億円 燃料高騰分直接補てん

http://news.nifty.com/cs/domestic/governmentdetail/mainichi-2008072900m106/1.htm
省エネに取り組む漁業者に対し、漁船用などの燃料価格の上昇分について、国が実質的に直接補てんすることが柱。
政府内では、燃料代の上昇分への直接補てんには慎重な声も多かった。
しかし、漁業者に加えて与野党からの要求も強まったため、漁業の省エネ推進の支援などの対策を抱き合わせることで、
最終的に実質的な直接補てんを認めた。

額もすごいけど、内容はもっとすごい。
「燃料使用量を10%以上削減」なんて、
現在の漁業の壊滅的な生産性の低さからすると、誤差みたいなモノです。
EUの補助金は、長期的な漁業の構造改善のための費用ですが、
日本の補助金は、非持続的な現在の漁業を維持するためのばらまきであって、
全くの捨て銭といえるでしょう。
日本には魚がいないんだから、休漁をして資源回復をした方が
長期的な食糧供給にはプラスです。
木が無いのに、木こりを増やしても、しょうがないだろうに。

ニュージーランドは、古いカナダの漁船を使って利益を出している。
燃費がよいからではなく、資源管理によって、魚を高水準に保ちつつ、
市場価値が高い大きな魚のみを捕っているからだ。
日本のように、未成魚から根こそぎ獲るような漁業で利益を出している国など無い。

燃費が10%良くなっても、今のままでは経営は成り立たない。
このまま、ずるずると補助金付けにして、産業を駄目にするだけだろう。
今回の燃油高騰をきっかけに、世界の漁業はより持続的な方向に変わろうとしている。
税金で非持続的な漁業を維持しようとしているような馬鹿な国は、日本と韓国ぐらいだろう。

納税者がこれで納得するとは思えないのだが、
政府は漁業と心中するつもりなのだろうか?

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Barratt氏のインタビュー

NZには大手水産企業が3つある。
その大手の一角、Sanford社の代表取締役のEric Barratt氏のインタビュー。

Sanfordは上場企業なので、財務状況が公開されている。
先日公開された半期報告書(Interim Report)を見てみよう。
http://www.sanford.co.nz/documents/SAN017%20Sanford%20Interim08-FINAL2.pdf

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NZD=80JPYでざっくり計算すると、経常利益が168億円で、 当期純利益が28億円。
経常利益率は17%だから、立派なものです。

やり手の経営者のインタビューをじっくりとお楽しみください。

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シーフードショーのポスター

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シーフードショーでは15分の口頭発表の他にも、ポスターの展示があります。
発表の前後に、ポスターの前で説明をして欲しいと言うことだったのですが、
みんな試食に忙しくて、ポスターの所にはあまり人がいませんでした。

ポスターの解説の代わりに、海洋大の学生さんから、
海藻のしおりの作り方をレクチャーしてもらいました。
海藻には糊の成分があるので、水切りネットを使うのがこつみたいです。勉強になりました。

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ジャパンインターナショナルシーフードショーで講演します

第一回 水産海洋プラットフォーム「新技術説明会」
シーズプレゼンテーション

日時:7 月 23 日( 水) 11:30~11:45
会場:東京国際会議場東 4・5 ホール
第 10 回ジャパンインターナショナルシーフードショー内・セミナーD 会場

「資源管理で持続的に儲かる漁業」 勝川俊雄  三重大学

詳しくは、こちらをご覧ください。
http://liaison.s.kaiyodai.ac.jp/contents.php?id=415
http://liaison.s.kaiyodai.ac.jp/suip01.pdf

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日本に帰ってきました

ネルソンのホテルはネットにつなげなくて、結局、尻切れトンボになってしまった。

帰ってきたら、すぐ授業だったり、シーフードショーで講演だったりで、
えらく忙しいです。

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今日、NHKで資源の番組をやるようだ

[字]魚が消える?~“海の幸”に忍び寄る危機~
    * 放送日時7/21 (月) 19:30 20:00 (30分) この時間帯の番組表
    * 放送局NHK総合・東京
    * ジャンルドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
    * 番組概要 過剰な漁獲と温暖化等のため、サバやマグロ、ブリが深刻な資源減少に直面している。私たちになじみ深い海の幸の危機と、これからの食ありようを考える特集

http://tv.so-net.ne.jp/schedule/101024200807211930.action

これは要チェックです。

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ウェリントン その2

今日の新聞では、食品価格の値上がりが特集されていました。
政府は価格調整などは一切しない方針みたいです。
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Fish Serve

午前中は、FISH SERVEを訪問した。
FISH SERVEは、漁業ライセンスの管理、漁獲枠の管理、
漁獲報告の収集などを行っている。
ITQを導入している国には、ノルウェーのFisheries Direktori、豪州のAFMAのように
資源管理を行う独立の機関がある。
漁船の登録、モニタリング、漁獲量の集計などの手続きが煩雑になるので、
漁業に近い実働部隊が必要になるのだろう。
FISH SERVEのユニークな点は、政府組織ではなく民間企業だと言うことだろう。
もともとは、漁業省の一部であったが、現在は完全に独立した企業になっており、
予算は業界が全て出しているとのことであった。

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政府を小さくするために、事務手続きを行う部署を外に出すことにした。
もともと漁業省の該当部門にいた人間は、
1999年にdata.comという一般企業の社員になった。
FISH SERVEがビジネスとして成り立たなかった場合に、
社員が路頭に迷わないための措置だという
2年後の2001年に新しい資源管理制度が導入されるのにあわせて、。
FISH SERVEが組織として独立し、DATA.COMから分離された。
DATA.COMに残った社員はいなかったという。

FISH SERVEになってから、経営の自由度が増した。
また、金を払う人間と常に接することで、コスト感覚が磨かれた。
収益を高めるためにコスト削減を進めているが、
サービスの質は向上している。

この経験を生かすために、コンサルタント業も開始した。
公務員と一般企業の両者視点をもっているので、
両者を結ぶような仕事を得意としているようである。

公務員からサラリーマンになった感想を聞いてみたら、
「企業だから倒産の危険性があるし、安定性は前よりもない。
でも、新しいことにどんどんチャレンジできてやりがいがある。
FISH SERVEに移って、本当に良かったよ」とのことでした。
日本でも、こういうキャリアパスがあると良いかもしれないね。


SeaFIC

さて、午後はSeafood Industry Council(SeaFIC)におじゃまをして、
ゼネラルマネージャーのAlastair Macfarlane氏から、話を伺ってきました。

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Sea FICは、業界の利益のために、政府によって作られた団体で、
沿岸漁業、沖合漁業、養殖に関わる組合だそうです。
いわゆる全漁連に相当する組織なのでしょう。

ITQに対する漁業者の意識を質問してみました。
昔は漁業者よって、ITQに対する意見の相違があった。
しかし、今は小規模漁業から、大会社まで産業全体で、強くサポートしている。
早獲り競争では、だめだということです。

あと、漁獲枠を既得権として認めることで、漁獲枠が資産および収入補償になるので、
銀行から資金の調達が容易になったことが良い効果を及ぼしたそうです。

組合として、燃油価格高騰の補填を政府に求めるかを質問したら、笑われました。
「補助金がもらえるなら、誰だってもらいたいけど、そんな補助金はあり得ない」らしいです。
それどころか、来年の1月から、燃油に二酸化炭素排出税が課されるそうです。
「このタイミングで燃油に税金なんて、正気かよ?」と思いきや、
こっちの漁業者は魚の値段が上がっているからあまり困っていなさそう。
SANFORDも業績が良くて株価を上げているらしいし・・・

ニュージーランドで、ITQが導入できた理由を、当時の時代背景から詳しく説明してくれました。
あと、どの漁業でも、漁獲枠の値段は、ACEで売る場合の約10倍になるとか、
いろいろおもしろい話がありました。今日も勉強になった。
Macfarlane氏のインタビューも録画したけれど、編集してアップするのはいつになることやら。

オーストラリア、ニュージーランドで、いろんな立場の漁業関係者に会いましたが、
皆、ITQのことを高く評価していました。
また、タクシーの運転手も含めて、漁業は儲かっているかどうかを聞き込みしましたが、
「漁業者は儲けている。漁業は良い仕事だよ」というのが共通認識でした。
今回の訪問で、自分が進んできた道が間違えていなかったことを実感したよ。

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ニュージーランドのセリのビデオ

ニュージーランドのセリの様子を伝えるべく、動画を作ってみた。
動画を見る人は↓をクリックしてください。

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ウェリントン滞在記 その1

宅間さんとのミーティングの後、オークランドからウェリントンへ移動。
荷物が飛行機に乗り遅れたみたいで、夜中にホテルに届くという事故があった。
まあ、出てきて何よりですな。

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でもって、今日はオーストラリアの漁業省でミーティング。
朝から晩まで缶詰でした。
ニュージーランド人は早口で、英語について行くのが大変。
昼ご飯を食べた後に、集中力がとぎれがちだった。
漁獲枠管理の技術的な部分や、立法的なことも含めていろいろと話を聞けた。

NZで漁業改革を担当した人の話が実に興味深かった。
ITQに対する漁業者の拒否反応は強くて、
トマトを投げられたり、チーズを投げられたりで、大変だったらしい。
「最初の10年は大変だけど、漁業は確実に良くなるから、がんばれ」と激励をされた。

いろいろな国を回っていると、ITQと一口で言っても、運用が全然違うことに気がつく。
漁獲枠システムを見ると、ピュアなITQはNZとアイスランド。
既存の漁業がら徐々に移行させていったのが豪州。
漁業者の既得権を維持しながら、部分的に移行したのがノルウェー。
それぞれ国の事情と、制度を照らし合わせると、なかなか興味深いです。
やはり、現地にいって話を聞くのは重要ですね。

夕方、町をタクシーで一回り。展望台からの見晴らしです。
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夜は、小規模漁業を営んでいる漁業者とディナー。気さくでとても楽しい人でした。
彼によると、政府の方針には、いろいろと問題が有るようです。
たとえば、新しいルールが2週間前にいきなり公表されたりと、
やり方が強引すぎるということです。確かに、納得がいく話で有りますな。

「俺たち漁業者は大学教授というだけで、聞く耳を持たない。
さらに東京から来たなんて言ったら、そこで終わりだよ」とのこと。
こちらから、「じゃあ、どうすればよいと思う?」と質問をすると、
「漁業者サイドに、理解者を作ることだね」と言われました。
うーむ、確かにその通りですね。

ITQ制度について、どう思うかを聞いてみました。
「NZ政府の運用がひどいだけで、ITQ自体はとても良いシステムだよ。
ただ、NZのITQシステムをそのまま日本に持って行くは無理だろう。
目的を明確にした上で、日本漁業の特色にあったITQ制度を
模索していく必要がある」とのこと。
なんだかんだ言って、ITQに対しては好意的でした。まあ、それもわかる話です。
車も立派だし、家は高級住宅地だしで、彼も儲けているんだろう。
漁業というのは、ちゃんとした制度の下で、ちゃんとやれば確実に儲かる。
日本は、###が###で、##だから、###だけど・・・・

原油補助金はあるかどうかを聞いたら、「政府が金をくれるなんてあり得ない」とのこと。
NZの漁業者にとって、政府はひたすら金を奪っていく存在のようです。
NZでも衛星をつかって漁船をモニターするシステム(VMS)が導入されたんだけど、
「俺たちの金でシステムを開発しておいて、さらに、それを売りつけるんだぜ」と怒ってました。
ITQによって、漁業が儲かるようになったから、ITQには賛成だけど、
儲けの一部を管理費用として徴収するから、漁業省は嫌いみたい。

漁業省は、漁業者との相互理解を重視しているという話だったと思うけど、
漁業者からみると、まだまだ努力が足りないようです。

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