オークランド滞在記

ニュージーランド最大の都市オークランドにやってまいりました。
ホテルに着くと、こちらの水産大手であるSANFORDの社長 エリックさんが、
ディナーに招待してくれました。

着いた先は、焼鳥屋。
社長さんとディナーと言うから、スーツを着ていったのですが、そんな必要は有りませんでした。
実に気さくな方でした。
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魚市場のサイトhttp://www.afm.co.nz/

次の日は朝の5時半集合でセリを見に行きました。
セリは全て電子化されています。この画面を見ながら、値段を入力します。
魚種毎に設定された最大金額から、徐々に値段が下がっていき、
最大金額を入れた人が競り落とします。
最低金額まで達すると、UNSOLDとなって、終了します。
この最低価格は輸出価格と等しくなっているそうです。
輸出価格以上の値段がつくなら市場に流すし、そうでなければ輸出すると言うことです。
実に合理的だと思いました。
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これがセリ人の机にある操作パネルです。これで値段を入力します。
インターネットからも、オークションに参加できるそうです。
スーパーマーケットの水産物担当者は品物の下見をした上で、
事務所からインターネットで入札したりするそうです。
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魚はプラスチックケースにシャーベットアイスとともに入れられています。
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この市場はSANFORDが経営しているそうです。手数料は落札金額の10%です。
もし魚が売れなくても、輸出をするので、確実に利益が出る仕組みになっています。
値段がつくまで価格を下げる日本の商売とは根本的に違います。

セリを見た後、事務所で話を聞きました。
エリックさんのインタビューも撮影しましたので、いずれアップします。
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手に持っているのが、情報開示優秀企業のトロフィーです。
2007,2008年と連続で、もっとも情報開示が進んだ企業として表彰されているそうです。
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市場では、有名レストランのシェフを招いて、料理教室を開いています。
魚の消費をのばすための地道な努力も怠りません。
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ここの魚市場にも、消費者向けの小売店があります。
真ん中に注目してください。なんと、サンマです。
Kg700円ぐらいでしょうか。それなりの値段がついています。
このサンマは、韓国やロシアが日本の200海里外で獲ったサンマだそうです。
日本のサンマ業界は、日本の市場以外は見ていません。
生産調整をしていますが、国内の相場は崩れたままで利益は全然出ていないのです。
そのいっぽうで、他国は200海里外でとって、輸出をしている。おかしいとは思いませんか?
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俺は、納得いかんですよ。
サンマは資源が良い。もっと獲れる。しかし、国内での需要は限定的である。
なぜ、どんどん輸出をしないのか理解に苦しむ。
その一方で、枯渇したマサバを0歳から根こそぎ巻いて、
中国にたたき売ってるんだから開いた口が塞がらない。
こんな馬鹿なことばかりしていて、利益なんて出るわけ無いだろ。

で、午後はマルハNZ法人の宅間さんから、いろいろとおもしろい話を伺いました。
海外の視点も大切ですね。実に、勉強になりました。

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シドニー魚市場

木曜日、金曜日と、キャンベラで缶詰勉強会した後、
土曜日にシドニー、日曜日にニュージーランドのオークランドに移動しました。

途中で、シドニーのフィッシュマーケットを視察してきました。
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市場は、シドニーの町中にあります。
競り場もあるのですが、残念ながら日曜日は競りは休みでした。
セリについては、ほぼ同じシステムのものを後日ニュージーランドで見学しましたので、
後ほど詳しく説明します。

 

場内、場外には魚屋やレストランがあり、新鮮な魚介類を楽しむことができます。
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ここに来て、思ったのは、小さい魚が無い。
日本の市場だと、「こんな小さい魚を流通させて恥ずかしくないのかな?」というようなのが少なからずある。
豪州ではそういう魚は一切無かった。
十分なサイズの鮮度の良い魚しか並んでいない。
そして、値段が高い。平均単価は1500円ぐらいだろうか。
俺の手と比較してもらえば、このサワラの切り身がかなり大きいことがわかると思う。
これが1kg約2000円だ。決して、安くはないが、十分にお買い得だと思う。
「この魚が値段なら、食べてみたい」と感じるものが多かった。
論より証拠というか、実際の水揚げをみると、ITQの効果を実感できる。
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鮫も売ってました。普通の白身魚と同じように流通・消費されているようです。
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市場の外には港があり、小さなトロール漁船が停泊中でした。
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漁業者の写真もありました。
マフィアのなんとか一家みたいなかんじだと思ったら、イタリアから移民してきた家族のようです。
イタリア移民が漁業を興したのが、ここの漁業の始まりみたいですね。
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豪州では資源管理をする側の話しか聞けなかった。
実際に管理をされている側の声も聞きたかったのですが、漁業者は見あたりませんでした。
残念。

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豪州政府は燃油価格の高騰に対して、補助金ではなく、資源管理で対応するらしい

燃油の価格が高騰しているのは、日本だけではありません。海外ではいったいどのようになっているのでしょうか?

オーストラリアは燃油高騰対策の補助金が不要だそうです。実際に業界からも要求がほとんど出てこないというから、驚きです。そして、その理由が資源管理をしているから、というので、またまたびっくり。

インタビューをしたのは、オーストラリアの資源管理機関AFMA(Australian Fisheries Management Authority )のExecutive ManagerのNick Rayns氏です。つまり、政府の漁業管理機関の責任者。このインタビューは実に興味深いです。

豪州では規模が大きい漁業からITQを導入している最中です。ITQを導入した漁業では、産業が変化に対して柔軟になるから、不満はでないそうです。豪州では、船ごとに獲れる漁獲量が決まっているので、漁師は毎日海に出る必要はありません。利益を出せない漁業者は、その年の漁獲の権利を他の漁業者に売って利益を得ることも可能です。
水揚げの効率化が進むことで、産業全体としては利益を確保できるので、魚を獲りに行く漁業者も、魚を獲らない漁業者も補助金が無くても問題はない。

ITQがまだ導入されておらず、網目規制や漁期規制のみで管理をしている漁業もあります。そういう漁業では、漁に出なければ収入はゼロです。みんなが漁に出ても、みんな赤字という状況になるので、漁業者からは不満の声が上がっているそうです。燃油価格が上がると採算がとれなくなる漁業に関しては、燃油の補助金を配るのではなく、ITQへの移行を進めるというのが、豪州政府の方針だそうです。

いやぁ、実に明快ではないですか。目から鱗でした。
詳しくは下のビデオを見てください。

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キャンベラ勉強会

7時に起きて、ご飯を食べて、8時過ぎにAustralian Fisheries Management Authority(AFMA)に出発。
キャンベラの真ん中のおしゃれなビジネスビルの中にAFMAが入っているのです。

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今回の視察は、小松さんと一緒です。
もともと、小松さんが資源管理の勉強にいくための計画をしていたのです。
「勉強になるから勝川君も一緒に来ないか」と誘われて、ついて行くことにしました。
水産庁が嫌がりそうなツーショットです。壁紙にどうですか?
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 朝から晩まで、ミーティングルームに缶詰でした。
食事も、中でサンドイッチ。
小松さんが相手だと、向こうもべらべら話すし、内容は盛りだくさんだしで、とても疲れました。
ついて行くだけで精一杯というか、一部ついて行けませんでした。
でも、とても勉強になったよ。


部屋の壁がガラスになっていて、サインペンでいろいろ書きながら説明をしてくれます。
これはe-monitoringの説明です。e-logbookで漁獲情報をxmlで送ってデータベース化するということです。
ノルウェーと同じことをやってますね。
オブザーバーの人件費は馬鹿にならないので、これが一番良い方法だと思います。
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これが、データロガーの試作品です。4つのカメラが取り付けられる。
カメラ以外にも、いろんなセンサーが取り付け可能で、漁具の使用状況などをリモートモニタリングできる。
部品の汎用化もすすんでおり、これならコストも安そうだ。
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キャンベラで勉強してます

キャンベラに昨日の昼に着きました。遠かったです。
今日はキャンベラのAustralian Fisheries Management Authorityと
いうところで、ミーティングです。
http://www.afma.gov.au/

今日は次のような話を聞きます。

  • 全体的な説明
  • E-log(電子モニタリングシステム)
  • 調査体制
  • モニタリング・規制
  • ITQs-TACの設定方法

朝の8時半から、夜の5時まで、予定がびっしりつまってます。
それぞれの専門家が来て話をしてくれるというから、実にありがたい。
こんな機会は無いですよ。
有意義かつ、ハードな一日になりそうです。

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成田より

今から海外出張です。
行く先は、オーストラリアとニュージーランドです。
異動後、いきなりで申し訳ないですが、今しかタイミングが無いのです。

IQ, ITQについては、導入するかどうかの段階は終わり、
今後はどうやって導入するかを議論する段階に入ってきました。
ところが、日本国内にはIQ, ITQのノウハウが全くない。
国内で議論をしていても、未経験者が文書で得た知識を披露しあうだけで終わってしまう。
中学校男子の修学旅行の夜の会話(?)みたいな状態ですな。

これでは埒があかないので、豪州、NZに行って、ITQ経験者の話をたっぷりと聞いてきます。
理論的にITQが良いというのは明らかなんだけど、
実践はどうなっているのかを、しっかり見てきますよ。

  • そもそもどういう経緯でITQを導入しようと思ったのか?
  • 漁獲枠の初期配分はどうしたのか?
  • 導入当初の漁業者の反応は?
  • 今になって、振り返るとITQで良かったと思う?
  • 寡占化はどうなのか?
  • 現在の問題点は?

というような質問を向こうの行政官・漁業者にぶつけて来ます。

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なんだか、とてもワクワクするなぁ。

きっと、忘れられない旅になる

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これって、どうよ?

どうやら、某役所でも人事異動があるらしい。
しばらく静観しようと思ってたけど、そうも行かない感じになってきたな。

資源管理ができない言い訳を並べて、何とかなる局面じゃないんだけど・・・

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お知らせ

gmailは今後も利用可能ですし、
東大のメールもしばらくは読めますので、

用事の方はu-tokyo.ac.jp、またはgmail.comまでお願いします。

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三重での新生活


部屋の整理がようやく終わりました。


机はこんな感じです。

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今までとあまり代わり映えしないような気もしますが、

何年もかけてこのロケーションに落ち着いただけに、これがベストなんだよね。

部屋が小さくなったのでスピーカーも小さくしてみた。

といっても、前が広すぎただけで、新しい部屋も一人には十分な広さです。

これぐらいの方が落ち着くかも。


窓から、海が見えます。これはポイント高い。

天気が極めてよい日には、対岸に富士山が見えるらしいです。

「富士山は見えない」というつっこみを多数いただきましたので、最後の一文を削除します。
今後も当ブログの正確性向上のために読者の皆様のご協力をお願いします。(08.07.08)

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環境調和論という授業をした

東京大学の工学部で環境調和論という授業を2日分担当した。

前半は漁業の現状(惨状)について解説し、

後半は水産業改革について紹介した。
後半は異動日前日で、午前中に辞令を受け取ってから、午後に授業だったので、
「ここで交通事故にあったら、俺の身分は35歳無職なのかな?」と思い、車に注意しながら本郷に向かった。

後半の内容はこんな感じ

  • 専門知識をつかって社会を良くする新しい研究者のありかた
  • 水産庁と全漁連はなぜ改革に反対するのか?
  • 役所と闘うにはどうしたらよいか?
  • マスコミ対応(失敗談&成功談)
  • ウェブサイトの効用

とにかく学生に刺激を与えて欲しいという依頼だったので、
授業と言うよりは、放談会みたいな感じ。

パワーポイントファイルは、ウェブでは公開できません(笑

やばいところを削ったのを作るのは可能だけど、それじゃおもしろくないからなぁ。



漁業の現状を解説した前半の授業は寝ていたり、
下を向いていたりしている学生が多かったが、

後半はほとんどの学生が顔を上げて最後まで集中力を持って聞いてくれた。

俺としても情熱を持ってはなせるテーマで、そのために準備もした。

そうすると、学生も関心を持って聞いてくれる。

聞いてくれていることが伝わるとこちらも話し甲斐があるから、さらに楽しくはなせる。

授業もライブだということを実感したよ。

教官と学生の相互効果が合ってこそ、良い授業になる。



つまらない授業の原因は、教官の側にある場合が多い。

そこで学生が露骨につまらなそうなリアクションをすると、教官の側もモチベーションが低下する。

そうするとますます授業がつまらなくなると言う悪循環だ。

この悪循環を避けるために、教官は授業のスキルを磨かねばならない。

逆に学生の側も、自分の態度が教官のモチベーションを通じて授業に影響を与えることを自覚した方がよい。

まあ、俺も学生の頃は、つまらない授業は速攻で寝てた口なんだけどね(笑
逆の立場になると見えてくるものがあります。



俺が授業において伝えたかったことは次の2点。

● 自分の信念をつらぬくことは、大変だけれども、楽しいことだ。

● 若いうちから、守りに入らずに、自分の考えを大切にした方がよい。

俺のメッセージはどの程度、伝わったのだろうか。

まあ、授業の時間を楽しく過ごしてくれて、

「自分もなんかやってみるか」と少しでも積極的な気持ちになってくれれば、

俺としては授業をした意味があったと思う。

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