北海道ブロック会議に来たよ

今、釧路です。
北海道のブロック会議に来ています。
朝、ホテルの部屋を出たら、海洋研の伊藤がいてびっくり。
どうやら、白鳳が来ているらしい。
同じホテルで階まで一緒というのは、世の中狭いものだ。

ブロック会議は公開なので、内容をレポートしてみよう。

今回は東シナ海の航海実習により、事前検討会をスキップした。
ブロック会議までに、だいたいの議論は終わっているから、後の祭りという感じがする。

今日の検討事項は、いきなりスケトウダラ北部日本海系群です。
当初の資源評価では、親魚量が禁漁の閾値Bban3万トンを割っていたらしい。
その後、魚探データでチューニングすることになり、
親魚量の推定値が4.2万トンと上方修正され、禁漁勧告はしないですんだらしい。

ただ、魚群探知機の調査によると、05年・06年生まれの未成魚が、それなりにいるようなので、
今後、2~3年は、資源は一時的に回復の見込み。 というような状況だ。

今までは、ABCTargetとABCLimitの2つを提案していたが、
水産庁の決定で、今年から、ABCを複数提案することになった。
沢山出させて、その中で一番高い数字を選ぼうという作戦だろう。 

シナリオ

ABC

目的

30年後の回復率

1.8千トン

親魚量の増大(10年)

99.9%

3.1千トン

親魚量の増大(制御ルール)

26.9%

5.9千トン

親魚量の増大(20年)

79.8%

7.4千トン

親魚量の増大(30年)

46.8%

9.3千トン

親魚量の増大(微増)

8.4%

10.3千トン

親魚量の現状維持

2.5%

12.7千トン

漁獲圧の半減

0%

24.1千トン

漁獲圧の維持

0%

担当者は次のようなシナリオを準備して、1~5をABCとして選択をした。
この資源は、超低水準で、回復が必要な状態だから、親魚量を増大させないと話にならない。
シナリオ5だと実質的に資源は回復しないので、ABCとして適当だとはおもえない。
つっこみを入れようと思っていたら、先に管理課から意見がでた。
「水産庁が定めた中期的管理方針では、資源回復計画に基づき資源の減少委に歯止めをかけることを
目指して管理を行うこととされている。だから、シナリオ6の現状維持もABCにしよう」 という提案があった。

資源回復計画があるから、管理目的を「資源回復」から「現状維持」に下方修正しようというのだ。
さすがの俺もこれにはびっくり。
「現状維持では資源は回復しないが、それで資源回復計画と言えるのか?」とつっこみを入れた。
それに対しては、要領を得た回答は得られなかった。
結局、シナリオ6はABCとして盛り込まれることになった。
資源回復計画なるものを税金を使ってやる以上、
なんとしても資源を回復させるという姿勢を見せるべきだと思う。

ただ、ABCを千トン水増ししたところで、焼け石に水だ。
去年のABC11.0~8.9千トンに対して、漁獲量は18.0千トン。
ABCを無視した過剰なTACが設定され、ABCの倍も実漁獲がある状態で、
ABCの重箱をつついても時間の無駄だろう。
これだけ大勢の人間が、これだけ時間をかけて、資源評価を出して、それが何にも使われない。
なんか、俺はむなしくなってきたよ。
現在の過剰漁獲をどうやって適正水準に近づけていくかを議論すべきだろう。
そのためには権利ベースの漁獲枠配分と、ちゃんとした取り締まりの2つが必要だ。
ABCの精度を上げるより、規制改革をするほうが、よっぽど漁業の役に立つ。

スケトウダラ日本海北部系群は、05年、06年生まれが多いようなので、
ブロック会議全体として、楽観的な雰囲気があったようにおもう。
しかし、安心するのは、実際に資源が回復してからにすべきだろう。
俺は5年以内にBbanを割る可能性もかなりあると踏んでいる。
今回、05年、06年を成熟まで残せるかどうか、この先1~2年が正念場だ。
98年生まれの卓越級群は、「豊漁だ!!豊漁だ!!」と言って、獲りまくり、
蓋を開けてみたら、資源が回復するどころかむしろ減らしていたわけだ。
「まだ獲れる」という状況で漁業を止めるのは、漁業者的には凄く難しいことだと思うが、
同じ失敗を犯さないように、北海道の漁業関係者の学習能力に期待をしたい。

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グーグルのストリートビューが凄すぎる

グーグルマップにストリートビューという機能が加わった。
まだ、東京や札幌などの大都市に限られているが、
地図の上の景色が写真で表示できるのだ。
しかも、写真をドラッグすると角度がスムーズに変化する。
本当に散歩をしているような錯覚に陥るぐらい。

たとえば、東京大学海洋研究所はこんな感じ
すぐ向かいに、いかがわしい店があるのも、ばっちりわかる

すでに、大規模かつ詳細にデータが記録されているからびっくりだ。
とんでもない情報量だよ。
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これを使うと、バーチャル大学巡りも簡単にできる。
東京海洋大は、ここ。 
東大の弥生キャンパスは、ここ

ラーメン屋の説明にも使えるぞ。
「微妙ラーメンの只助ってどこ?」と聞かれれば、こことすぐに教えることができる。
俺が最高に愛しているカフェアロマティカはここ
ここのパスタは絶品です。
こういう店が近所にあるといいんだけどな。

さらに、これが日本だけじゃない。
この前、訪問したオーストラリアの資源管理機関はここだし、
そのあと、ディナーを食べたのはここだ。

高校時代の家を見たり、いろいろ楽しんでます。
やばい。おもしろすぎる。

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無事帰りました

トロール実習から、帰ってきました。
自分にも学生にも事故がなくて、何よりでした。

行ったら、行ったで、楽しかったですが、
不在中の雑用がたまっていて、まいっちんぐ。
お待たせ中の皆様におかれましては、ただいま鋭意作業中ですので、
今しばらくお待ちください。

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くろいわ & 我流風

鹿児島といえばラーメンと言うことで、しっかりたべてきました。
まずは、老舗のくろいわから。

くろいわ

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ここではラーメン(700円)をいただきました。
とにかく、スープが良い。
鶏ガラ+豚骨で、風味はあるがあっさりとした仕上がり。
だしの味がしっかりしていながら、雑味が無い。これは名人の技です。
細麺にスープが良く絡むし、トッピングも良かった。
完成された味に大満足。実に美味しいラーメンでした。
スープを最後まで飲まずにはいられない。
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我流風(がるふ)
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トロ肉ラーメン(880円)をいただきました。
トロ肉は、香りは良いし、味も悪くはないんだけど、風来居のトロ肉の方が頭一つ美味しい。
スープは今風の醤油豚骨で、Wスープと思われる。印象としては「田ぶし」に近い。
面は太め。小麦粉の味がしっかり出ている。完成度は高い。
最近のトレンドをフォローした上で、隙がない仕上がり。

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鹿児島のラーメンは、実にレベルが高い。
伝統の味のくろいわも、モダンな仕上がりの我流風も良い仕事をしています。
どちらも大満足でした。もう一杯食べたいです。

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鹿児島に寄港しました

東シナ海でトロール実習を行ってきました。
ひたすら暑かったです。
ずーっと、こんな天気でした。
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漁獲のほとんどがヒラツメガニです。
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ひたすらカニを選別します。勢水丸は現代の蟹工船だねっ!!
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「えーっと、これは何の魚かな?」 「よくわからないから、海に捨てちゃおうか」
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一仕事おわったあとは、これ。
カニVSヱビスビール
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鹿児島に到着。
おや、どっかで見た船がいるよ? 世間は狭いですな。
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1週間ぶりににネットにつながりました。
おそるおそるメールをチェックしたら、特に急ぎの用事もなかったので、一安心。

これから気合いを入れて原稿書きです。
AFCの原稿を急いで仕上げねば。あとみなと新聞の原稿も書かなきゃ。
それから、北海道の評価票の原案にも目を通さねば。
なんか、夏休みの宿題に追われる小学生のような感じですよ。とほほ・・・

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亀和商店の和田社長の話を聞いてきた

亀和商店というのは、築地の仲卸で、
日本におけるMSC認証製品の販売の草分け的存在だ。
和田社長とは、今回初めてお会いしたのだが、
みなと新聞の連載を読んでくださっているとのこと。
俺のことは前から、亀和水産のことは知っていたのだが、
社長がこんなに若い人だとは思わなかった。

和田社長がMSCの販売に取り組む切っ掛けは、アラスカでの経験らしい。
1959年にアラスカが州となる以前は、乱獲で資源は危機的状況。
このままでは漁業が壊滅するとの危機感から、
独自の水産資源管理をするために、州として独立した。
こういう歴史的経緯が有るだけに、アラスカの資源管理は米国でも独自であり、
たとえば個別漁獲枠もいち早く導入している。

アラスカのサーモンも厳しい規制のもとで操業が行われている。
漁獲量が限られていれば、獲った魚をいかに高く売るかが重要になる。
和田社長が見学をした漁船では、
獲ってすぐ、頭を落として、腹を開いて、毛細血管までしっかり血抜きをし、
2時間以内に船上冷凍しているとのこと。
品質は抜群だが、入れ食いでも1日250本の生産が限度。
完全に、量ではなく質で勝負する漁業だ。
こういう経営スタイルは、資源管理がしっかりしていて初めて可能になる。
社長は、このサーモンに惚れ込んで、日本に輸入することにした。
「こんなに良い魚を扱えないのは魚屋としてみっともない」とのこと。
魚に惚れると、採算度外視になってしまって儲からないと笑うが、
穏やかな外見の内に秘めた、熱い水産魂を感じることができた。
流通、消費者も含めて、漁業全体を変えていくためには、
こういう人と連携をする必要があると確信した。

とりあえず、近いうちに築地に見学に行かねば。

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しばらく、旅に出ます。探さないでください。

今日から航海です。東シナ海でトロールをしてきます。
世界でもっとも乱獲された海を体感してくるよん。
しばらくネットから切断されてしまいます。
次の週末まで、記事はアップされないとおもいますが、
フォトレポートをお楽しみに。
こんなに長く、ネットから切断されるのは、何年ぶりだろう?
ちょっと記憶にないですね。

右も左もわからないのに、教官は俺だけという、
なんか、サバイバルな展開であります。
どこの業界も、甘くはないのです。

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共同通信から記事が出ました

シーフードショーの後、共同通信の井田さんとあって、いろいろ話をしたのだ。
そのときのインタビューが記事なりました。
さっき、記事を読んだ漁業者から電話がかかってきて知ったのだが、
31日にいくつかの地方紙に写真入りで記事が出てたみたい。
三重大の図書館でチェックしたら、三重新聞にも載っていました。
ちょうど745億が決まった直後で、実にタイムリーでした。

―日本の漁業の現状をどう見るか。
 「公海でも日本の近海でも水産資源は減少が目立ち、漁獲量が低迷、収益は上がっていない。魚は少なくなったのに、収益確保のため、より多くの魚を捕ろうとしているので、ますます魚が減る。この負の連鎖を続けている限り、どこまでも衰退を続けるだろう」

―日本の資源管理の問題点は。
「日本は全体の漁獲枠を決めているだけなので、他に先駆けて早く大量に魚を捕れば、自分の取り分が多くなる仕組みだ。この結果、高く売れないことが分かっているのに、小さな魚を捕り、資源を食いつぶし、漁業者も不幸になっている」

―燃料価格の高騰と魚の価格の低迷が話題になっているが。
 「海外では、適切な資源管理を行い、燃料価格が高騰しても収益が上がる漁業はたくさんある。日本の漁業は、早捕り競争によってエネルギーを浪費しながら、価値が出る前の小魚を多く漁獲するので利益が出ない」

―水産行政に問題は。
「行政は持続性を無視して、目先の漁獲量を増やすことを主眼に置いている。これは第二次大戦直後の食糧難時代の発想だ。日本では資源を持続的に維持できるレベルを大きく上回る漁獲枠が設定されており、資源管理など、ないに等しい」

―燃料費の補助が決まったが。
「日本の漁業補助金は極めて不透明で、資源管理に役立っていないどころか、乱獲を招き、持続的でない漁業を続ける結果を招いている。燃料費の補てんも同様。今のような操業を続けるために税金を投入しても資源の枯渇が早まるだけだ。今回の補助金は漁業の将来にとっても、国民にとっても最悪の選択だ」

―漁獲量の減少が収入源の原因か。
「自然の生産力は限られている。漁獲を増やして収益を上げるとの考えを抜本的に改め、高値で売れる魚を持続的に捕り、質で勝負しなければならない。世界では水産物への需要が高まり、価格は上がる傾向にある。漁業は成長産業だ。日本の漁業者は、国内市場しか見ていないから買いたたかれる。国際市場に通用する魚を安定供給すれば、価格は上がるはずだ」

―補助金の在り方は。
「資源管理をきちんとして、良質の魚を売る漁業者は、燃料費が高騰しても利益を上げている。補てんをしているのはいずれも資源管理が不十分な国だ。補てんというその場しのぎではなく、資源管理と漁業の構造改善に補助金を使うべきだ」

―解決への提案を。
「漁船ごとに漁獲枠を割り当て、これを相互に売買できる譲渡可能個別漁獲枠、ITQという制度が各国で採用されている。この制度を導入すれば無益な早捕り競争がなくなり、早さと量を競う漁業から質を重視する漁業に転換できる。収益が上がらない漁業者は、収益性のいい漁業者に枠を売ることで利益が得られる。こうすれば燃料費の補てんなど不要になる」

いつも言っていること、そのままですね(笑
当ブログの読者は、すでに耳にタコができていることだろう。
我ながらワンパターンだと思うけれど、信念と熱意を持って、同じことを繰り返すのが大切だ。
じわじわと共感者は増えているのを実感する今日この頃です。
継続こそ力なり。

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MELジャパンがパブリックコメントを募集してたので書いてみた

MELジャパンの第一号候補漁業の審査のドラフトレポートが公開されている。

http://www.melj.jp/press11.pdf

パブリックコメントも募集中だが、なんと今日までではないか!!
というのであわてて書いたのが次の文章

今回のべにずわいの認定は、再考の必要があると考えます。

1)資源情報が不十分

べにずわいがには、深海の生物であり、個体の年齢査定もできません。生物情報が不十分であり、資源量の推定すらできていないのが現状です。知事許可漁業の努力量、漁獲量の情報が部分的にしか得られていません。また、同じ資源を利用している韓国船の情報はほとんどない。これでは、資源状態が把握できるはずがないでしょう。

唯一の情報は漁獲量とCPUEですが、ここ3年程度の漁獲量が横ばいだからといって、資源が安定している保障はありません。(伐採量と森林の量は比例するとはかぎらない)

2)資源状態が良くない
水産総合研究センターの資源評価では、本資源は低水準で横ばい傾向となっております。国の資源回復計画が適用されているのも、資源が低水準で回復の必要があるからです。資源が回復したのを確認してから、エコラベル認証をすべきではないでしょうか。

3)漁獲制御の実効性は疑わしい
2006年のABCTarget(生物学的許容漁獲量)が6200tに対して、漁獲量が14226tと倍以上です。低水準で資源回復が必要な資源に対する漁獲量として妥当ではありません。また、同じ資源を利用している韓国と共同管理の枠組みが無い以上、管理の実効性には限界があります。


この認証は、全く賛成できない。
まず、資源の情報がない。資源量推定すらできていない。
評価表(http://abchan.job.affrc.go.jp/digests19/html/1979.html)を見て欲しい。
漁獲量もCPUEも低迷。評価票では、資源水準は「低位横ばい」となっている。

知事許可水域では過去最低だった2005年よりは漁獲量が増加したものの依然として低い水準にあり、
CPUEは横ばいまたはやや増加傾向が見られる。
いずれの海域でも漁獲物に小型個体および未熟個体を20%程度(重量比)含んでいる。
系群全体の資源状態としては依然として過去最低の水準にあるものの、動向は横ばいと判断される。

小型個体、未成個体の混獲の問題もあるし、漁獲量はABCの倍なのだ。

俺としても、境港の資源管理の取り組みは応援したい。
しかし、べにずわいは不確実性が大きく、資源の持続性を保証できない。
なんでこんなにハードルが高い漁業を選んできたのか理解に苦しむ。
もっと無難な漁業は、沢山あるだろうに。
憎きMSCへの当てつけだとしたら、見事な自爆です。

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補助金が、必要な変化を妨げる

この前のテレビで驚いたのは、関サバの漁師。
この半年1尾も釣れてないにもかかわらず、毎日300隻も船が出しているという。
交代で1隻か2隻ぐらいを出漁させて、
魚がいることがわかってから皆で出るぐらいのことがなぜできないのか。
「燃油が高い、高い」と文句を言う割に、コストへの配慮が欠如している。
真っ先に、「月夜」に一斉休漁をしたイカつり漁船も同様である。
少ないイカを漁業者間で奪い合うから、規制違反の明かりを炊くことになる。
宇宙を煌々と照らしながら、ストをする前に、業界内でルールを徹底するのが先ではないか。

関サバやイカつりばかりでなく、たいていの漁業は魚の奪い合いだ。
他の漁業者よりも早く漁場に行くために、
小さい船に不釣り合いな大馬力のエンジンを積んで、
規定の時間になると一斉にスタートする。
先を争って、値段がつかないような小魚まで必死に獲って、
未来の収益をどぶに捨てているのだ。

早い者勝ちの日本では、無駄に早いエンジンも、
漁場に急ぐために使われる燃油も、すべて必要経費である。
この経費をけちったら最後、何も獲れないのだから。
他の部分は極限まで削っても、
早取り競争のための投資は削ることができない。

無駄なコストの削減に関してはノルウェーは徹底している。
ノルウェーのサバは、日本人には脂がのりすぎている。
成熟が進むにつれて、体の栄養が卵に移り、徐々に脂が抜けている。
毎日、調査漁獲で脂の具合をモニターし、
最も良いタイミングで皆で獲りに行く。
業界全体で協力することで、コストを抑えて、利益を最大化できるのである。
ノルウェーの漁船漁業は常に最新の設備を使っているが、
より早く獲るためではなく、漁獲物の質の向上のために設備投資をおこなっている。


今回の燃油高騰は、無駄が多い日本漁業のあり方を見直す契機になったはずだ。
無駄な競争を続ければ共倒れになるのは明らかだから、
漁業者同士で協力をして無駄な競争をやめる以外に道はないのだ。
過剰競争を緩和する手段としては、個別漁獲枠、ローテーション出漁、
プール制など、やり方ならいくらでもある。

ローテーション出漁なら、1回の漁でより多くの魚をもち帰るために、
過剰に獲るだろうし、プール制だと良質の魚を生産しても、リターンがない。
最も操業の自由度が高く、合理的なのは個別漁獲枠だろう。
ただ、ローテーション出漁も、プール制も、問題はあるものの、
導入は、個別漁獲枠よりも容易であり、その気になればすぐにできる。
何もやらないよりは100倍マシだ。

ピンチとチャンスは表裏一体である。
人間というのは、必要性があって、初めて変化ができる。
無駄な競争をやめて、ほどほどに獲って、ばっちり儲ける。
俺が常々唱えている「持続的に儲かる漁業」への一歩を踏み出すチャンスだったのだ。

その芽を摘んだのが、今回の直接補償だ。
(政府は直接補償ではないと言っているようだが、どうみても直接補償だろ)
漁業者はこれからも、安心して過剰競争をつづけることができる。
価値の低い小魚を水揚げしておきながら、
魚価が安いのは、消費者がわるいと、愚痴り続けるだろう。
この無責任きわまりないばらまきののツケは、
すべて未来の世代が返していくのだ。
国産魚は食べられず、国の借金だけが残る。

かつて漁業を補助金漬けにして、乱獲に苦しんだノルウェーでは、
みなが口を揃えて、補助金の害悪とそれを断ち切ることの必要性を強調した。
「補助金は、必要な変化を遅らせるだけで、漁業にとってマイナスでしかない」と。
いまの日本の状況が、まさにそれだ。

安易な直接補償ではなく、持続的に儲かる漁業への転換を手助けするべきだった。
漁業者に、いくつかの資源管理のオプションを提示する、
話し合いの場所を設ける、専門家を派遣して方策を検討する。
そいうったことを、もっと積極的に行って欲しい。
政府や漁業団体は、EUの漁業補助金を見習えと言う論調が多かったが
EUの補助金は、休漁支援、生活保障、構造改革であり、直接補償ではない。
これらの漁業の変化を助ける補助金ですら、世界的には非難に曝されている。
俺個人としては、変化のための補助金は必ずしも悪いものではないと思うし、
こういう方向を目指すのであれば、目くじらを立てるつもりはない。
しかし、日本の745億円の補助金は、すでに破綻している現在の漁業を
そのまま延命するためのものである。
必要な変化を遅らせても、漁業がますます衰退するのは明白だ。

政治家は、目先の票のために、漁業の未来を破壊している。
次の選挙に頭がいっぱいで、漁業を破壊しているという自覚すらないかもしれない。
「他人のふんどしで、問題先送り」というのは、
漁業独自の問題ではなく、日本という国家全体の問題でもある。

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