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勝川俊雄公式サイト

ニュージーランドの漁業大臣が、組合の大会で行ったスピーチ

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ニュージーランドの漁業大臣が、組合の大会で行ったスピーチがここにある。

http://www.marinenz.org.nz/index.php/news/page/sustainability_issues_for_new_zealand_fisheries/

要約すると「長期的な漁業の発展のためには、資源管理が欠かせない。
厳しい状況ではあるが、資源管理の質を高めるために今後もがんばろう」ということだ。
読んでて勇気づけられる。

Consumers are demanding it; and if consumers want it-and we can
show we are achieving high standards while other countries can’t —
then that will help our industry as a whole. There is no point in
joining a race to the bottom. There is nothing in that for New Zealand
long term.

消費者がそれを望むなら、我々は他国にまねできないような水準で、
資源管理を遂行できることを示そうではないか。
そのことは、我々の漁業全体の利益に適う。
資源管理をやらない方の競争に加わっても、
長期的にはニュージーランドにとって良いことはなにもない。

We can achieve a premium and avoid being punished by international
markets if we have standards in place that show strong commitment to
the sound environmental management of our fishery. This is not just
theoretical. This is a shark that is already circling our boat.

我々の漁業を生態系ベースでしっかりと管理するという共通認識を打ち出すことが出来れば、
我々が偉業をなし、国際市場で(乱獲によって)罰せられることはない。
生態系の配慮が欠けていると、罰せられるようになるのは、時間の問題である。

When I was in Europe last year the hot issue was carbon costs and
‘food miles’-targeting the carbon used in transporting food long
distances. Clearly, as the world’s most remote food producer, we have
to respond to these issues and get ahead of the game.

去年、欧州を訪問したときには、炭素コストとフードマイルが話題になっていた。
世界でもっとも隔離された食糧生産者として、
我々は機先を制していかなければならない。

Concerns over food miles and the like are also an opportunity for us.
Last month, Ireland’s Minister for Fisheries expressed strong support
for initiatives to ensure that fish products sold in Europe carry eco-
friendly labelling. This is an opportunity for New Zealand, because we
can show that our products are eco-friendly. We can claim to be as
ecologically careful as any nation on earth.

フードマイルへの関心の高まりは我々にとってチャンスでもある。
先月アイルランドの漁業大臣が、欧州で販売されるエコラベル認証製品を、強くサポートすることを表明した。
我が国の製品がエコフレンドリーであると示すことが出来るので、我々にとって大きなチャンスだ。
我々は、自らが、世界一、環境に配慮していると主張することが出来る。

今後、環境問題に対して、規制が高まるのが明白である。
自ら、高い水準をクリアして、ビジネスチャンスを作ろうというのは、実に合理的。
やらない言い訳を並べているだけ日本とは差が広がっていくのは明白だろう。

農業の議論は興味深い

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なかなか、農業改革に関する議論は興味深いです。
規制改革の中の人と話をしたときに、「漁業は何の議論もしてないけど、
農業はすでに議論をしつくした感がある」というような話が出たんだけど、それもうなずけます。

その中でも、特におすすめなのが、農水省OBの山下一仁さんのコラム。
ネットで読めるのも便利でよいです。

世界で穀物が高騰し、食糧危機が迫る中、作らないという逆方向の農政を続ける余裕は、今の日本にはない。高い消費者負担を強いる政策に財政も負担するという政策はやめ、それだけの財政負担を価格低下で影響を受ける農家への直接支払いに転換したほうが、消費者のためにもなるし、農業の構造改革も進む。そもそも農協も政府も自分たちが何を守ろうとしているのか、もはやきちんと説明できないはずだ。
http://diamond.jp/series/agric/10005/

実に正論ではありませんか。
穀物は売れるんだから、どんどんつくって輸出をすればよいし、
米の値段が下がれば需要も増えるだろう。
実際の農政は正反対の方向に向かっているわけです。
こんな当たり前のことがなぜ出来ないかという構造にも踏み込んでいる。

最近、出版されたこの本を、読んでいるんだが、実におもしろい。
本の題名もすごいよね。よほどの覚悟がないと、これは無理。
こういう長期ビジョンを持った人から、スピンアウトしてしまうのが、農水省の悲しい現状だろう。

農協の大罪 [宝島社新書] (宝島社新書)
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米国のラジオでITQが紹介されてるよ

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ITQに関するラジオ番組を井田さんから教えてもらったよ。
ネットワークプロバイダーとして活動するNPOらしい*1が、なかなかおもしろいね。
米国の漁業者も、新しい制度に対して、
戸惑いや不安を感じているようだ。

http://www.npr.org/templates/story/story.php?storyId=98791630

*1:国営ラジオではないようです。つっこみありがとうございます。

あけましておめでとうございます

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去年は、三重大に移ったり、NZ、豪州を訪問したり、
いろいろありました。

漁業改革への関心が高まりつつあり、
今後は具体的な議論に移るステップに着たことを実感しています。

次世代のために、漁業の未来について、考えていくつもりですので、
今年もよろしくお願いします。

カツオ不漁に高齢化、負債返済できず漁協解散…三重

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三重県尾鷲市古江町の古江漁協は20日、約3億6000万円に上る県信用漁協連合会からの負債が返済できないとして、自己破産の手続きを開始し、来年1月末までに漁協を解散することを決めた。
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20081220-OYT1T00605.htm?from=navr

明日は我が身のところも多そうだ。

例年は12月は忘年会需要で、高級鮮魚を中心に値段も流通量も増えるのだが、
今年は、消費が冷え込んでて、忘年会もキャンセルが相次いでいる。
今まで、それなりの店で忘年会をしてきた大企業も、安売りがウリのチェーン店に流れていて、
国産高級鮮魚の動きが極めて悪く、年を越せない業者も出てくるだろう。

水産庁OBによれば、日本漁業はまあまあ良い状態で、改革の必要は無いそうだし、
水産庁が選んだ日本を代表する有識者の方々は税金をつかって1年間、話し合った結果、
「混乱を避けるために、国は何もしない方が良い」という結論みたい。

彼らには、こういう末端の漁業関係者の困難は、どうでも良いんだろうか?

改革を葬られた日本漁業が溺死する

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新潮社のフォーサイト誌に、漁業改革の特集が出ました。

せっかく提言された改革を、よってたかって潰した者たち。このままでは漁民も消費者も苦しむことに――。

参院選の敗北で“票が大事”との安直な「反省」をした自民党は、水産庁、全漁連と手を組むことにした。〇八年に入って以降は、政官産トライアングルによる「二次答申」の骨抜き作業が急速に進んでいる。農水省や水産庁は閣議決定された各項目について「検討した(が実施は困難)」と結論づけるアリバイ工作に余念がない。

http://www.shinchosha.co.jp/foresight/new/topic_03.html

続きは本誌でご覧下さいということで、フォーサイトを買いに行こう。

ただ、状況はそれほど悲観的ではないんだけどね。
骨抜き工作は織り込み済みだし、それを指をくわえて眺めている我々ではありません。

今年度もなんだかんだで、進展した一年だと思いますし、
来年は、さらにおもしろいことが起こりそうですよ。
改革の議論も進んできたけど、漁業の衰退も進んでいるわけで、時間との戦いですね。

NZのITQは資源管理として機能していない? その3

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2) Do you have any alternative idea other than ITQ?

There are some specific elements that I think need to be in any system.  These include:

a) A public process for considering the areas that should remain unfished and for avoidance of and protection of these and vulnerable marine ecosystems as per the UN General Assembly resolutions on the impacts of damaging fishing techniques;
b) A presumption of closed to fishing until open after due consideration of ecosystem values and that the opening to fishing should consider fishing impacts and methods, areas, vulnerabilities and sustainability considerations;
c) Management within an ecosystem based framework;
d) Strong institutions and processes for environmental and stock assessment, with commissioning and conduct of research open to public discussion and review and independent of the fishing industry;
e) Minimum stock rules that do not allow stocks to fall below agreed benchmarks.  With our stocks they are often less than 30% of Bmsy, often much less, and it is a battle to get fisheries closed.  Some of our Orange roughy stocks have been allowed to decline to 7% and 3% before there has been closure.
f) Provisions for the protection of bycatch and incidental mortality.
g) Public good science available to interested community groups and support for their involvement in decision making.
h) Some form of clawback or retirement of quota if any quota management system is instituted.

There are many other provisions.

質問2) ITQ以外にどのような管理方法がありますか?

ITQにかぎらず、どのようなシステムにでも次の要素が必要でしょう。

a) 漁業の生態系破壊に関する国連総会決議に則り、大衆参加の下で、傷つきやすい海洋生態系を保全するために、漁業を禁止にする保護区を検討すべきです。
b) 漁業を当面中止して、生態系の価値について熟慮をする。漁獲の影響、方法、漁区、(生態系の)傷つきやすさ、持続性について十分に考慮した上で、漁業を再開する。
c) 生態系ベースの枠組みで管理を行う
d) 環境および資源評価を行う強力な組織、プロセスが必要。漁業から独立した議論・レビューを促すために、大衆への公開を前提に、調査を遂行する。
e) (それ以下だと禁漁になる)最低資源量は、MSY水準の30%と決まっているが、この水準は多くの魚種にとって低すぎる上に、漁業を閉鎖するための交渉に時間がかかります。オレンジラフィーの資源では、漁業閉鎖の前に7%や3%に減少したものもあります。
f) 混獲と水揚げされない漁獲死亡(ゴーストフィッシングとか)に対する規制
g) 科学的な知見を関心をもつコミュニティーグループに公開し、彼らが意志決定に加わることを促進する
h) 漁獲枠による資源管理を行う場合、何らかの形で漁獲枠を回収できるようにするか、漁獲枠利用権に有効期限をもうけておくべきです。

これ以外にも多くの規定が必要でしょう。

NZは、エコ系の人間が大変な力を持っている。Cathさんは、その典型だろう。
彼らが要求するのは、漁業の影響を受けない大規模保護区と、
生態系に対する十分な考慮ができるまで、漁業を一時中断することである。
こういった価値観にたてば、NZのQMSなど不十分にもほどがあるとなるわけだ。
俺的には、既存の漁業を続けながら、生態系への考慮を高めていく方が良いと思う。
これは価値観の違いであり、どちらがより長期的な利益にかなうかをみていくべきだろう。

日本がすでにCathさんのaからhの提言を実行しているなら、Cathさんの言葉を引用し、
今更NZの資源管理から学ぶことなどないといってもよいだろう。
しかし、日本には生態系への配慮はおろか、まともな資源管理制度がないのが実情だ。
NZのQMSでも不満のCathさんに、日本のTAC制度を紹介したら、卒倒しかねない。
水産庁には、Cathさんの言葉を引用し「NZの資源管理は機能していない」と主張する資格はない。

また、Cathさんは、QMSをやめて漁業者任せにすればよいと言う意見の持ち主ではない。
寿命が長く、低水準な資源には、現状よりも厳しい漁獲枠の削減が必要だと考えている。
また、本来は国民の財産である水産物の利用権を漁業者に永続的に与えるのではなく、
短期的なリースによって、レンタル費用を回収し、国民に還元すべきという意見のようだ。
(この件に関してはNZ全体で議論が続いている)

俺個人としては、Cathさんの意見には賛成しかねる部分も多い。
しかし、彼のような人物は必要だ。
Cathさんのような勢力が、業界と綱引きをすることで、NZの漁業はよりよい方向に向かうだろう。
出来レースのぐだぐだ検討会で、権力者が予め決めたコースを進むより、よほど良い。
NZ漁業と日本漁業の根本的な違いはここだろう。

Cathさんの主張については、次の文献をよむとよくわかるだろう。

Wallace, Cath and Barry Weeber. (2005) The devil and the deep sea – economics, institutions and incentives: the theory and the New Zealand quota management experience in the deep sea. Shotton, Ross ed (2005) Deep Sea 2003 : Conference on the Governance and Management of Deep-sea Fisheries, Part 1: Conference Reports, Queenstown, New Zealand, 1-5 December 2003.  FAO Fisheries Proceedings. No 3/1. Rome, FOA.2005. 718p. ISBN 92-5-105402-9, 511-543

http://www.fao.org/docrep/009/a0210e/a0210e0s.htm

NZの資源管理のことを知らない人間を集めて、
NZの資源管理の悪い点だけを意図的に集めた資料をくばり、
「だから、ITQをやめましょう」という結論を導く。
こんな茶番を税金を使ってやっているのだから、あきれてしまう。

NZのITQは資源管理として機能していない? その2

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1b)  and give fishermen the right to catch as many fish as they want?

No, that would be a disaster.  But our system where too often the catch limits simply follow the decline of fish stocks, rather than controlling it, is just not adequate.  Further, our system gives no incentive for fishers to find less damaging ways of fishing.

From an economic point of view, the problem remains for long lived, low productivity species that the rate of growth of the biomass and its value continues to be less than the interest rate or available return from mining the resource and investing the proceeds in other industries.  This is a discount rate v net rate of increase in the capital value of the resource problem.

A problem with the NZ system is that the industry now has so much clout, so many unrecovered resource rents, that they bully officials, use money and other techniques to pressure politicians ( and possibly others) and so the setting of catch limits is influenced heavily their way.

1b) 漁業者に自由に魚を捕る権利を与えるべきでしょうか?

絶対に反対です。破滅が待っているでしょう。しかし、NZの漁獲枠は、資源の減少に追従して減少する場合が多く、資源をコントロールしているとはいえず、現状では不十分です。さらに、NZの資源管理システムは、漁業者が環境への負荷の少ない漁法を開発する動機付けがありません。

経済的な観点から言うと、寿命が長く、生産力が低い種、すなわち、バイオマスの増加率が割引率よりも低い種では問題があります。魚を獲れるだけ獲って、その利益を他の産業に投資した方が、経済的になるでしょう。これは、割引率と資源の固定資本の成長率の問題です。

業界の発言力が資源使用料が大きくなったため、金やその他の方法で政治家(おそらくそれ以外も)に圧力を与えています。業界の意向によって漁獲枠が大きく影響されるというのがNZの資源管理システムの問題です。

NZはサブプライムまで経済成長率が7%程度あったので、割引率を考慮する必要はあるでしょうね。オレンジラフィーのような深海性の種では特に問題だと思われます。

“unrecovered resource rents”の訳はすこし迷いました。NZでは資源利用代金(resource rent)のことをCost Recovery(資源回復コスト)という名目で徴収している。Cathさんは、資源が回復していないことから、unrecovered resource rents (全然回復しない利用料)と揶揄したものと考えました。

日本語訳はオマケです。丁寧に訳している暇などないので、あしからず。
英語がわかる人は原文を読んで下さい。
訳について問題があればコメント欄で指摘してください。

NZのITQは資源管理として機能していない? その1

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ITQをやりたくない水産庁は、NZの資源管理の悪い点だけを抜き出したレポートをつくり、
資源管理をやらない口実の一つとして利用した。
img08121601.png

このPDFの8ページ

ノルウェー、NZ、アイスランドは、資源管理の成功例として取り上げられることが多く、
完璧ではないが、他よりは、うまくいっているというのが一般的な認識であり、
どこからも相手にされていない日本のTAC制度よりは100倍マシだろう。

NZのことを「資源管理としては機能していない」と言い切る根拠は何なのかと質問したところ、
「CathさんというNZ人がそういってたよ」という回答を得た。

こういう時は本人に聞くのがてっとり早くて、確実なので、
水産庁のレポートを英訳したものを送りつけて、いろいろと質問をしてみました。

Cathさんは、環境への意識が高い人のようで、「今のNZのやり方では生ぬるい。
もっと環境のことも考えて、しっかりと規制をすべきである」という意見のようです。

本人の了解をいただいたので、私の質問(太字)とそれに対するCathさんの回答を公開します。

1a) Do you think NZ government should stop QMS.
It needs significant design, and there are some strong lessons on what not to do from the New Zealand experience. 
Provision of “property rights” has strengthened the say of fishing companies in the public debate and has diminished the standing of public interest voices.  As larger fishing companies have gobbled up the smaller operators, we now have a few hugely powerful and wealthy fishing companies that provide a lot of money to political parties to get their way and use their financial and hence legal might to oppose any Ministers who try to institute controls over the catch limits or other sustainability measures.  The politics of control have become much harder now that the private property rights are well specified but the public entitlements to sustainability remain less well specified.
One vital element is to carefully specify the rights of the community to a healthy environment, to provide incentives to consider the impacts of fishing, to internalise the externalities and to strengthen the say of communities over the decision making processes for setting catches and other sustainability measures.  An ecosystem based management regime and recognition of the non-harvest values of fish in the ecosystem is required.


質問1a)NZ政府はQMSを止めるべきだと思いますか?

やり方を大幅に変える必要はあるでしょう。また、反面教師として学ぶべき点も多いです。

ITQによって所有権を与えたことで、公的な議論での漁業会社の発言力が強まり、一般人の声が弱まっています。より大きな漁業会社が、小さな経営体を統合し、いくつかの巨大な漁業会社が誕生しました。彼らは大量の資金を支持政党に与えています。財力、すなわち政治力を行使して、漁獲枠や他の持続的な手法をコントロールしようとする大臣に反対してきました。漁獲枠の所有権が確立されたことによって、政治的な介入は難しくなりました。その一方で、公共の持続性に対する権利は、未だに確立されていません。

健全な環境への、コミュニティー(一般国民)の権利をきめ細かく定め、現在は考慮されていない外部負荷をしっかりと考慮し、漁獲枠の決定などの持続性に関わる意志決定へのコミュニティーの発言力を強化すべきです。生態系ベースの管理システムの確立と、取り残した魚の価値の認識が必要でしょう。

まだまだ続く

日本のTAC制度はオリンピック制度ですらありません

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みなと新聞で読んだんだけど、TAC制度等の検討に係る有識者懇談会が、「日本はオリンピック制度ではない」と主張しているようである。珍しく正しいことを主張していて驚いた。

オリンピック制度とは、持続性の観点から漁獲枠を決定し、それを早い者勝ちで奪い合う資源管理方法である。一方、日本は、持続性を無視した漁獲枠を設定し、漁獲量が漁獲枠に近づいたら、漁獲枠が増えていく「青天井システム」を採用している。漁獲枠など有名無実であり、なんら漁獲量の抑制効果がないのだから、オリンピック制度ではなく、無管理と呼ぶのが正解だろう。

米国やカナダは馬鹿正直にオリンピック制度を行い、過剰な漁船を抱えたまま、漁期を短縮させた。漁期が1週間とか、3日とかになってしまったのだ。漁期が極端に短くなろうとも、魚を残す努力をしたのだから大したものだ。日本の場合は、低水準で減少している資源にも、漁獲にブレーキを全くかけていない。たとえば、スケトウダラ日本海北部系群。資源がこんなに減っているのに、漁獲割合はむしろ上がっている。管理されている資源なら、あり得ない話である。まともな漁業国なら、もっと早くに漁獲量を絞っているし、ここまで減ったら漁獲枠はゼロだよ。今年は、ABCが現状維持の4.6千トンに対して、TACが1万8千トンだから、お話にもなりやしない。こんなに減らしてしまったんだから、資源回復を最優先すべきであり、現状維持でABCを出す研究者にも問題がある。まあ、そんな問題は霞んでしまうほど、水産庁が設定したTACは非常識だけど・・・
2010-04.png

オリンピック制度は漁獲枠を巡る競争である。
一方、日本の漁業者は、実質的な漁獲枠が無い中で、魚を奪い合っている
オリンピック制度と日本のTAC制度の間には、スポーツと戦争ぐらいの差がある。
日本のTAC制度をオリンピック方式と呼んだら、まじめにオリンピック方式を実施してきた国に失礼だ。

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