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勝川俊雄公式サイト

小サバの乱獲で、加工業者が廃業の危機らしい

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2/15日には、「サバ水揚げ減少に悲鳴、静岡加工連など水産庁に陳情」という記事があった。マサバの未成魚を中国に輸出しているために、産卵場である銚子以南のマサバ漁業はほぼ壊滅。静岡の加工業者、産地出荷業者、関連業者は打撃を受け「廃業する業者が増えている」というのだ。サバの未成魚を海外に投げ売りしてきた当然の結果である。

漁業で生活しているのは魚を捕る人だけではない。加工する人、流通する人、小売り業者、そして、消費者までが漁業というシステムに取り込まれている。漁業システム全体の利益を増やすのが、国の水産政策のあるべき姿だとおもう。しかし、水産庁のやっていることは、全く逆だ。未成魚を乱獲している一部の漁業者が、あぶく銭を手にする一方で、その他の漁業関係者は廃業に追い込まれているのだ。もし、未成魚を中国に投げ売りする代わりに、十分な大きさで漁獲をすれば、加工・流通・小売り業者は皆利益を得ることが出来る。

0歳1歳で獲っているサバを、3歳4歳で待って獲れば、500g-700gの国内で需要が高いサイズになる。3年間に個体数は3割に減少するが、体重が3.3倍になるので、全体の漁獲量としては変わらない。180gのサバと600gのサバでは浜値はまるで違う。加工されてスーパーに並べば、1尾300円、場合によっては500円にもなる。仮に300円としても3尾で900円の経済利益になる。この利益を漁業者と後方(流通・加工)で分けることになる。 ざっくり計算しても、国内の経済効果は10倍になる。さらに、素性のたしかな、国産の美味しいマサバの供給量が増えれば、消費者も大喜びだ。

体重
個体数
重量
漁業売上
後方売上
合計
小サバ
180g
10尾
1800g
90円
0円
90円
中サバ
600g
3尾
1800g
250円
650円
900円

海の生産力は限られている以上、そこからいかに利益を引き出すかが重要になる。獲る技術よりも、経済価値を加える技術が重要なのだ。 高く売れる魚を持続的に漁獲し、価値をつけて売ることが、儲かる漁業の条件だ。世界で有数の利益率の高さを誇るノルウェー漁業は、殆ど付加価値をつけてない。加工技術がないので、丸のまま冷凍で売るしかできないのだ。日本には、魚食の知恵と加工技術がある。、ノルウェーのような魚の獲り方をして、日本独自の加工をして売れば、ノルウェー漁業に必ず勝てる。しかし、一部漁業者の乱獲のせいで、せっかくの加工技術を活かすことが出来ないばかりか、加工技術自体が失われようとしている。 取り返しのつかない事態が進行中だ。

納税者が小サバと中サバのどちらの獲り方を望んでいるかは、議論の余地がないだろう。日本のサバを未成魚で乱獲して、中国に投げ売りして欲しいと思う日本人などいないだろう。素性のたしかな国産魚を日本人向けに安定供給することこそ、国益である。そのために、産業規模に比べて不相応な予算が水産業に割かれているのである。

にもかかわらず、水産庁は小サバの輸出事業を税金で進めているのである。小サバを輸出している漁業者は軒並み赤字で、補助金で支えられている状態だ。「マサバ太平洋系群回復計画」と称して、未成熟なサバを乱獲するための油代を税金から払っているのである。中国で小サバをPRする事業まで国がやっているのだから、至れり尽くせりだ。赤字を垂れ流しながら、資源を徹底的に痛めつける漁業を保護して、金の卵である水産資源と貴重な加工技術を荒廃させている。それを「回復計画」などと呼ぶのは、ブラックジョークだろう。本当にマサバを回復させたいなら、未成魚の漁獲は禁止すべきだし、それが出来ないなら補助金をばらまくのを辞めるべきだ。

水産庁のやっていることは、自分たちと関係の深い一部の漁業者の短期的利益のために、国の食料供給の未来を奪おうとしているようにしか見えない。 水産学の専門家として、自国の漁業がこんな有様であることに対して、恥ずかしい限りである。専門家の一人として、静岡の加工業者さん達には、申し訳ない気持ちで一杯だ。未来の世代が美味しくて安全な日本のサバを食べ続けられるように出来ることをやるしかない。しかし、時間はあまり残されていない。 90年代以降、マサバ太平洋系群の生産力は非常に高かった。92年,96年,04年,07年と15年間で4回も卓越年級群が発生した。乱獲のせいで全く資源回復には結びつかなかった。マサバの高い生産力は餌のカタクチイワシが豊富だったからだと考えられている。そのカタクチイワシが減っているのだから、しゃれにならない。上の記事と同じ2/15のみなと新聞に、「カタクチイワシ、水揚げ、かつて無い少なさ」との記事があった。これは実にやばいサインだ。マサバを0歳から獲りまくっている現状で、加入の失敗が続けば、あっという間に資源崩壊だろう。浮魚は自然変動するから、幾ら獲っても構わないという珍説が日本ではまかり通っているが、そんなことはない。実際に、北海のサバ資源は80年代に乱獲で消滅しているのだし、北海道のニシンだってほぼ壊滅している。このままだと、マサバが沿岸性のローカル資源になってしまうかもしれないということで、俺は焦っておるのです。

中国で加工の冷凍サバから「ジクロルボス」だってさ

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餃子ネタはすでにおなかいっぱいなのだが、今度はサバだそうだ。食品衛生法の基準はかなりマージンがあるので、食べたら病院送りとかそういう話ではない。ただ、薬品のリスク管理ができていないのは明らかだろう。

中国で加工の冷凍サバから「ジクロルボス」…52品目を回収

 香川県さぬき市の水産物製造販売会社「香西物産」は18日、中国の工場で加工された業務用の冷凍サバ「炙(あぶり)トロ〆鯖(しめさば)スライス」(200グラム)の切り身から、有機リン系殺虫剤「ジクロルボス」が、食品衛生法の基準の14倍にあたる0・14ppm検出され、同工場が加工した冷凍サバ商品52品目の自主回収を始めたと発表した。
香西物産は昨年3月から中国・山東省の加工工場2か所に、デンマーク産サバの加工を委託していた。
(2008年2月18日20時42分  読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080218-OYT1T00505.htm?from=main2

中国を経由して、日本に入ってくる水産物は多い。なんと言っても人件費が安いからね。ノルウェーから中国に行くサバのほとんどは、中国で加工されて最終的には日本に出荷される。日本の加工の空洞化は深刻な問題だ。漁業者はなんだかんだで保護されているが、加工業者に対する支援は何もない。魚は全般的に捕りすぎなんだから、漁業者ばかりを保護しても漁獲量が減るのが早くなるだけだ。ヨーロッパのサバは、品質も良いし安定供給できるだろうけど、彼らは日本向けの加工はできない。国内の加工が衰退すれば、ここでも中国に依存することになる。食の安全を守るためには、小型魚の乱獲をする一部漁業者への補助金を打ち切って、代わりに加工業者を保護するべきだろう。

平成19年度全国資源管理推進会議の感想

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先日の会議は、予想を上回る内容の薄さに驚いた。書かずにスルーしようかとも思ったが、「感想を書いてね」と言われていたので、読者サービスの一環として書くことにする。

まず、いきなりマサバ回復計画が成功例として紹介されてたのはビックリだね。 サワラ回復計画が賞味期限切れで、他の回復計画も軒並み失敗しているから、出す事例が無いのはわかるんだが、よりによって、マサバ太平洋系群ときたもんだ。04年の卓越年級群の発生で、ここ数年はバイオマスが増加したが、卓越年級群は獲り尽くしてしまったし、05、06年生まれは殆ど居ないので、来年以降は資源量が激減することは確実だ。要するに、自然に増加したところ、漁業で叩いて回復の芽を摘んだわけだ。にもかかわらず、ここ3年は増加しているバイオマスのグラフを見せて、「回復した!」と自画自賛するのには呆れてしまう。内情を知らない人間を騙せればそれで良いということだろう。

マリン・エコラベル・ジャパンは、何をやりたいのかわからなかった。枠組みのはなしとか、少ない人員で頑張ってます、といった苦労話がメインで、「何のためにエコラベルを作るのか」というビジョンが全く見えてこない。たぶん、話している人にもわかってないのだろう。MSCの話を一切しなかったのが印象的だ。やっぱり、「MSCはシールを貼らしてくれないから、自前で作っちゃいました」という程度の展望しかないのだろう。

次の馬場先生の話は、俺の理解だとこんな感じ。

自分としては資源管理型漁業は高く評価している。
とくに漁業者主体という理念が素晴らしい。
でも、成功といいきれないのが残念だ。
80年代には熱心だった漁業者にも90年代に入ったら、
消極的になってしまった。

日本の資源管理型漁業は、
西欧かぶれのアフリカや南アメリカでは相手にしてもらえない。
唯一、話を聞いてくれるのは東南アジアだ。

資源回復計画は、資源管理型漁業の枠組みを遵守している点は評価できる。
ただ、研究が足りないようなので、もっと研究費を確保して欲しい。

実際に効果が無かった資源管理型漁業を観念的に賞賛されても、同意できない。ポジショントークこそ説得力が大切だろうに。 どこからどう見ても、日本の漁業は衰退中なわけで、そんな国の政策を参考にしようという国などあるはずがない。アフリカや南アメリカの反応は、極めて常識的だと思う。

時間の関係で、俺はここまでしか聴けなかったのだけど、その後の話は面白かったようですね。残念。


サワラにしても、マサバにしても、資源が増えたのは卓越が発生しただけ。卓越が発生した直後に資源量がふえるのは当たり前で、それを回復計画の手柄ではない。自然に増加したものを次世代に結びつけることなく獲り尽くしている現状は、乱獲の見本だろう。資源回復計画自体は山のようにあって、自然変動で一時的に増える資源も1つぐらいあるだろうから、自然増加した資源を入れ替わり立ち替わり、成功事例として紹介していくつもりだろう。資源が増えてる印象を与えるグラフが一つでもあれば、水性心ぐらいは何とでもなるからね。

資源管理の取り組みを「やってる、やってる」と言うけれど、実際に資源は増えていないのだから、「資源管理をやっている」とは言わない。「資源管理が出来ていない」のである。実効性の無い資源管理型漁業は、「参加賞」や「頑張ったで賞」が限界であり、関係者の自己満足の域を出ない。「俺たちは頑張った、頑張った。(でも資源は回復していないけどね)」というのでは、やらない方がマシだ。

今回の会議だって、せっかく、日本中から水研・水試の人間を招集したのだから、「資源回復計画はあまり上手くいってないけど、どうしましょう?」という相談でもすればよいのに。どんな資源管理だって、最初から上手くいくわけ無い。計画を進めていく中で、問題点を洗い出し、打開策を練って行く必要がある。そういう努力を積み重ねれば、資源回復計画だってものになるはずだ。でも、現状で上手くいっていない計画を、上手くいっているように見せかける努力しかしていない。だから、いつまで経っても進歩がない。その場しのぎだけ出来ればよいという姿勢が変わらない限り、回復計画には期待薄だな。 まあ、これは回復計画に限ったことではなく、水産政策全般に関して共通するのだけど。

業務連絡

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大人の事情により、2月6日のエントリーは削除し、2月12日のエントリーは一部修正しました。せっかくコメントを書いていただいたのに、返事も書けずに申し訳ありません。

平成19年度全国資源管理推進会議

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今日は、平成19年度全国資源管理推進会議というのがあるみたいですね。
http://www.jfa.maff.go.jp/j/press/kanri/080212.html

「マサバ太平洋系群資源回復計画について」とか、「マリン・エコラベル・ジャパン(MELジャパン)の概要と展望」とか、興味深い演題が並んでおります。

新鮮なネタをたっぷりと仕入れて来ますね。

日本のサバが安いのは低品質&補助金によるダンピング

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日本のサバは、市場価値が出る前に取り尽くされ、世界一安い値段で途上国にたたき売られている。まさに不合理漁獲の極みである。このことを指して、「日本の漁業の価格競争力は世界一」という意見も一般論としてあるようだが、これは全くの誤りである。そのことを少し整理してみよう。

製造コストが低く、品物をより安価に供給できことを価格競争力と言う。例えば、人件費が高くて製造コストが高くなるJ国と、人件費がただ同然で製造コストが安いC国があったとする。同じクオリティーの製品を製造した場合、1個当たりの利益が大きくなるのはC国になる。 C国がシェア拡大のために価格をAからBへと下げたとする。この場合、J国は赤字になるのでBまで価格で追従できない。C国はシェアを拡大し、薄利多売で利益を増やすことができる。値下げ競争をした場合に、製造コストが安い(=価格競争力がある)方が勝つのである。

Image200802101.png

1)ノルウェーのサバと日本の小サバは競争関係にはない
もし、日本がノルウェーが輸出しているような500gの脂ののったサバを、今の単価で製造できるなら、価格競争量が高いと言えるだろう。しかし、日本が輸出しているのは200gの小サバである。ノルウェーが輸出しているサバと日本が輸出しているサバは別物であり、サイズ・価格・用途など、全く重なっていないのだ。ノルウェー漁業は日本で高級鮮魚として消費できるようなサバのみを漁獲・輸出している。一方、日本漁業は日本市場で価値が出る前のサイズで獲り尽くし、中国・アフリカに輸出している。日本が小サバを幾らたたき売ろうと、ノルウェーのサバの値段には影響を与えない。そもそも、市場も用途も違うのだから、当たり前だ。サバを輸出している国で、日本のように未成魚を輸出している国は他に無い。日本の小サバ輸出にはライバルは存在しないのである。価格競争で安くなっているのではなく、その値段でしか買い手がいないから安いのである。

2)日本のサバの安い値段は補助金によるダンピング
 世界一安い値段で小サバを輸出している大中巻き漁業は、軒並み赤字。太平洋系群を獲っている北部巻き網組合は、10年以上赤字続きで、補助金で支えられている状態だ。自国よりも購買力が格段に落ちる国に雑魚を輸出しても、船の維持費にもならない。それでも収入が全く無いよりはマシと言うことで、まとめて獲って捨て値で売る。こうして、サバ資源の回復の芽を摘み続けているのだ。

日本の小サバの安い値段は、企業の価格競争力ではなく、税金によって支えられているのである。小サバを中国に売り込むためのプロモーションまで、税金でやっているんだから、至れり尽くせりだ。政府の補助金によって不当に安い価格で輸出をすることを「ダンピング」と言う。ダンピングは、市場の健全な競争を妨害し、最終的には消費者の利益を害するので、独占禁止法などで禁止されている。WTOでも「ダンピングを相殺し又は防止するため、ダンピングされた産品に対し、その産品に関するダンピングの限度をこえない金額のダンピング防止税を課することができる」となっている。 ただ、日本の小サバ輸出をダンピングとして提訴する国はいないだろう。なぜなら、貴重な水産資源であるサバを、日本みたいに価値が上がる前にたたき売る国など他にないからだ。ノルウェーなどのサバ輸出国だって、日本の小サバ輸出に反対をするはずがない。日本の漁業者が未成魚を乱獲するおかげで、世界一美味しい日本のサバ市場が手にはいるのだから、棚からぼた餅だ。

Image200802103.png

日本のサバが世界一安いのは、日本の漁業者に知恵が無く、日本の水産行政に何のビジョンもないからである。日本から輸出されるサバの安い価格は、企業努力ではなく補助金によるものである。日本の漁業者はダンピングをしても誰からも苦情が出ないぐらい酷い獲り方をして、サバ資源の回復の芽を摘み続けている。こういった不合理漁獲を税金で支えているのが日本のお役所なのだ。このデタラメな水産政策によって、損をするのは日本の納税者・消費者である。

みなと新聞 連載 08年1月 「文句があるなら、対案を示せ」

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みなと新聞の1月25日に掲載された記事です。大反響だったみたい。この記事に対する読者の感想は真っ二つに分かれるだろうね。「良く書いた」「勇気づけられた」という意見を多数いただいた一方で、頭から湯気を出して怒っている人も多いだろう。後者の人たちが、あの手この手でいろいろやっているようだが、ここに書いてあるとおりで笑ってしまった。

対案が複数あれば、長所短所を比較できるし、いいとこ取りもできる。対案が出てきて欲しいのは山々だが、残念ながら対案は出てこないだろう。漁業を変えようとすれば、変化に反対をする人間は必ずでてくる。何らかの方向性を示すには、しっかりと理論武装をした上で、反対意見を抑える必要がある。水産庁や全漁連にそういうリーダーシップは期待できない。だから、誰からも反対がでない次の2つを繰り返すことになる。1)既得権を守りましょう、2)補助金を増やしましょう。全漁連のお抱えの漁業経済学者たちが対案を準備しているらしいが、半年以上たったがなしのつぶてだ。どうせ待つだけ時間の無駄だろうから、漁業を良くしようという志を持った人間で道を開いていくまでだ。

平成19年度のマイワシのTAC超過について

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こんどは、マイワシがTACを超過しましたね。こんどは、知事許可(沿岸)が枠をオーバーということです。では、どの県がどうやってオーバーしたかを見ていきましょう。TAC魚種の漁獲実績はここにあります。
http://www.jafic.or.jp/tac/index.html

まず、去年の4月にTACと漁獲量の推移を見ていこう。6月に期中改定で、TACが35千トンから、60千トンに増枠された。最終的な配分は、大臣許可43千トン、 知事許可17千トンである。大臣許可は、最後までTACに達しなかった。一方、知事許可は8月の段階で、配分枠を使い切っていたのである。その後も順調に漁獲を続けて、10月に7千トン獲ったのが大きかった。12月の値は暫定値であり、ここから2~3千トンは増えるだろう。 最終的には、200%近くなるだろう。

TACと漁獲量

TAC
7月
8月
9月
10月
11月
12月
合計 60000 45172 51308 53568 61914 65710 66361
大臣 43000 30747 33662 34227 35801 36005 36658
知事 17000 14425 17646 19341 26113 29705 29703

TACの消化率

7月
8月
9月
10月
11月
12月
大臣
72%
78%
80%
83%
84%
85%
知事
85%
104%
114%
154%
175%
175%

 

では、県ごとに見ていこう。県別漁獲量の上位は西の県が占めている。これは例年通りである。

19年度漁獲量
1 高知県 5414
2 宮崎県 5135
3 長崎県 5042
4 島根県 3446
5 三重県 2327
6 鹿児島県 1984
7 和歌山県 935
8 神奈川県 776
9 石川県 690
10 愛知県 660

 

知事許可としてはTAC枠に達した9月以降の漁獲量をみると、こんな感じ。高知、島根は殆どが9月以降ということになる。

TAC超過後の漁獲量(t)
1 高知県 4485.1
2 島根県 2122.9
3 長崎県 1713.5
4 鹿児島県 1011
5 三重県 968

 

平成19年12月と平成18年12月の報告漁獲量を比較してみよう。漁獲量の差が大きいのは九州・四国であった。長崎、鹿児島が突出していることがわかる。去年は殆ど獲れていなかった長崎での高い漁獲量は、対馬暖流系群の卓越年級群の発生を示唆する。漁獲量としては上位の三重県は、前年比でみると減少している。

前年の漁獲量と比較(12月報告)
差(t)
1 長崎県 4855 27.0
2 鹿児島県 1914 28.4
3 島根県 1907 2.2
4 宮崎県 1860 1.6
5 高知県 1373 1.3
34 三重県 -248 0.9

TAC魚種のうちマイワシとスルメイカ以外は、大臣許可と知事許可に配分された後、知事許可分はさらに県に配分される。マイワシは、漁場形成が偏るので漁獲枠をそれぞれの県には配分していない。沿岸漁業全体の枠しかないのである。各都道府県が、前年度実績を目安に漁獲をするという通達しかない。9月以降の漁獲が多かった高知は、前年度実績をそれほど超えていない。三重に至っては、前年度実績を下回っている。目安は守っているのである。前年と比べて漁獲量が急増した長崎・鹿児島は漁獲の中心が8月以前であった。この2県と島根は9月以降の漁獲をもう少し抑えるべきだった。この前年度実績というのはあくまで目安であって、実行力は何もない。これでは、漁獲枠など無いも同然である。マイワシは資源が減少中なので、前年度実績通り獲ってたら、どんどん減る。また、今年のように少しでも資源が増えれば、枠など守られるはずがない。現在のTAC制度は、管理をしていますというポーズだけで、過剰漁獲を取り締まる気など無いのである。今回の知事許可分の超過に関しては、管理としての枠組み作りを放棄している水産庁の責任が重いだろう。

水産庁は「ウルメやカタクチを獲る中で、(マイワシが)混じる量が多かったようだ。混獲と専獲を分けるのは難しい」といつものように開き直っている。混獲だろうと専獲だろうと、資源に与える影響に代わりはないのだから、全体の漁獲量を抑えるのは当然のことである。混獲だから良いという問題ではないだろうに。こんな理屈をこねるのは、世界広しといえども、日本の水産庁と日本の漁業経済学者ぐらいだ。南アフリカは、カタクチ漁業が混獲するマイワシに対して、混獲漁獲枠を設けて資源の保全に努めている。まじめに資源管理をしている国を少しは見習って欲しいものである。混獲・専獲が問題であるならば、なおのこと地域に漁獲枠を配分しておく必要がある。予め枠が決まっていれば、混獲を含めて漁獲枠に収まるように工夫して操業をできる。混獲でどうしても獲れてしまう分を引いた残りを専獲すればよいのである。それでも混獲で獲りすぎてしまったなら、超過分は翌年のその地域の漁獲枠を減らすことで対応できる。TACを超過したマイワシの混獲をゼロには出来ないが、減らす方法は幾らでもある。日本はそういった努力をなにもしていない。管理をする側の人間が、資源管理ができない理由を並べれば、それで良いと思っているかぎり、今後も乱獲に歯止めはかからないだろう。

 漁獲量の県ごとの内訳を見ると、去年とは資源の構造が変わっていることが示唆される。去年と比較して漁獲量が増えた県を黄色、減った県を青で示すと下のようになる。

 image08020505.png

今年の10月以降の漁獲増は、産卵場の周辺で0歳魚の漁獲が増えたためだ。太平洋系群、対馬暖流系群ともに卓越が発生したようである。ただ、卓越といっても現在の低水準では簡単に獲り切れてしまう水準である。この年級群を確実に産卵につなげていくことが、マイワシ資源にとって死活問題だ。07年級群は、この後、東に摂餌回遊を行い、来年、産卵場に戻ってくる。どうせ、北巻は獲って、獲って、獲りまくるだろう。水産庁は北巻の乱獲を抑制するどころか、少しでも多く獲れるように最大限の援護射撃をするだろう。この年級群が再生産に結びつくかどうかは、東への回遊しだいということになる。07年級群は今のところ、西に止まっている。このまま西に止まってくれれば、資源回復の芽はあるのだが、東に行けばそれで終わりだ。

05年、07年と親が少ないながらも、順調な加入が観察されている。これらに確実に産卵をさせれば、資源を緩やかに回復させながら、漁獲を安定させることもできるだろう。獲るなとは言わないから、せめて1年だけでも我慢して欲しい。

読売オンライン「#136 減る魚!!賢く食べよう」

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読売オンライン「#136 減る魚!!賢く食べよう」

http://www.yomiuri.co.jp/stream/index/tvotona/otona136.htm

ネットから試聴可能です。

私もちょっとだけ出演しております。
撮影の時は、寝不足&体調不良でへろへろでした。
元気が無くて、死にそうですね(笑

餃子の農薬汚染に関する雑感

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 今回の報道で産経新聞が水を得た魚のごとく元気だ。

 中国江蘇省太倉市で1997年から2002年にかけ、中国製ギョーザによる中毒の原因とされる有機リン系殺虫剤「メタミドホス」による中毒事故が654件発生、210人が死亡していたことが1日、分かった。
 中国の総合医学雑誌「中華中西医雑誌」(03年8月号)の論文を医学専門ウェブサイト「中華首席医学網」が1日までに伝えた。
 論文は、同期間中の市内での農薬中毒の約82%はメタミドホスが原因だったと指摘。1都市でこれだけの規模の中毒が起きていたことで、中国ではメタミドホスが農薬中毒事故の主要原因の一つだったことが裏付けられた。
 江蘇省は中国の農薬生産の中心地。中国農業省などは、メタミドホスの中国国内での使用、販売を昨年1月1日以降全面的に禁止する通達を出している。
 太倉は江蘇省南部の都市で人口約46万人。(共同)
http://sankei.jp.msn.com/world/china/080201/chn0802012041007-n1.htm

2003年の論文から数字を引っ張ってきたようだが、人口46万人の都市で6年間に210人死亡というのは凄い。これを人口13億の中国全体での1年間の死亡人数に直してみよう。

210人×13億/46万/6年=98913人

中国全土で、メタミドホスによって毎年10万人近く死んでいることになる。死亡の原因が特定されただけでこれだけの数字だから、実際にはもっと多いだろう。ちょっと信じがたい数字だが、あの国ならこれもアリだろう。中国人は「日本のメディアは小さいことを大げさに騒ぎすぎ」と言っているが、たった10人の被害で、死者もないのに、騒ぐ日本人の感性は中国人には理解不可能だろう。日本はそういう国に台所を預けているのである。

ただ、今回の残留量の130ppmというのは、偶然ではあり得ない数字に見える。過去の検出例を見てもたかだか3ppmである(http://www.fcg-r.co.jp/pesticide/linkpes.cgi?p267000)。日本の複数の大手企業に納入をしている工場なら、品質管理もちゃんとしているだろうから、こんなとんでもない量の農薬がうっかり混入するとは考えづらい。小麦粉にポストハーベストとして、農薬を直接混ぜていたという説もある。餃子の皮を作る段階で、小麦粉と水を混ぜて、てこねる行程を経る。メタミドホスは水溶性なので、濃度はかなり均一になるだろう。とんでもない高濃度の餃子の皮がごく少数出来るとは考えづらい。偶然ではなく、何らかの故意が働いているように思う。このあたりは、続報待ちである。

今回の食中毒が事件なのか、事故なのかは、未だに不明であるが、どちらにしても起こるべくして起こったように見える。少なくとも、製造元の天洋食品のみの話ではなく、中国食品全般にあるリスクとして考えるべきである。これだけ中国食品が出回っていても、今まで明確な健康被害を出していなかったというのは、日本の商社の商品能力の高さを伺わせる。彼らは良い仕事をしていると思う。ただ、リスクはゼロには出来ないのである。特に、故意が働く場合、チェックできるはずがない。現在の日本の食は中国食品なしには成り立たない。中国の食材を口にしないというのは極めて難しい。野菜などの食材はまだしも、加工品で中国を避けるのはほぼ不可能だろう。こういう状況で自衛の策は、外食はできるだけ避けて、安い加工品は口にしない。あとは、運を天に任せるしかない。http://www.yasuienv.net/Methamidophos.htm

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