マサバ Archive
「サバ時代到来明るく、中央水産研究所報告」を検証する
サバ時代到来明るく、中央水産研究所報告
http://www.news-kushiro.jp/news/20070807/200708073.html
サバ時代到来ですか。マジですか。釧路新聞は凄いなぁ。
この記事の元になったのは、
平成19年度第1回太平洋イワシ・アジ・サバ等長期漁海況予報と思われます。
http://nrifs.fra.affrc.go.jp/yohou/2007_1/5.pdfhttp://nrifs.fra.affrc.go.jp/yohou/2007_1/5.pdf
では、中を見てみましょう。
1. 資源状態
(1)マサバ
資源量は1990 年以降依然として低い水準にあるが、加入量水準の高い2004 年級群の発生により資源量は増加傾向にある。2003 年級群(4 歳魚)以上の残存資源量は少ない。
2004 年級群(3 歳魚)現在の残存資源尾数は2.6億尾と、3 歳魚としては近年にない高い水準である。
2005 年級群(2 歳魚)加入量水準の低い2001、2003 年級群並みの水準と判断される。
2006 年級群(1 歳魚)2005 年級群をさらに下回る水準と評価されている。
2007 年級群(0 歳魚)は、黒潮-親潮移行域中層トロール幼魚調査(中央水研・北水研)による加入量指数が12.1 と、2004、2005 年並みの高い値であった。東北水研による北西太平洋中層トロール資源調査(サンマ漁期前調査)から推定される推定資源尾数は105 億尾(暫定値)と、2004 年級群(64 億尾)を上回った。茨城県の船曳網、千葉県の定置網など沿岸域でも昨年、一昨年よりマサバ0 歳魚の分布が多くみられているほか、釧路水試による流し網調査においても分布が確認されている。これらのことから2007 年級群は2005、2006 年級群より加入量水準は高いと考えられる。しかし発生後間もない現時点での調査結果に基づく評価は極めて不確実である。
以上のことから本予測期間は2004 年級群(3 歳魚)が主体となる。これに2005 年級群(2 歳魚)、2006年級群(1 歳魚)が混じるが少ない。期後半に2007 年級群(0 歳魚)が漁獲され、漁獲の主体になる可能性もあるが、0 歳魚の加入量の見積もりは非常に不確実である。マサバ全体としては、多かった前年を下回ると考えられる。
(4)資源管理
マサバの親魚量は2004 年級群の高い加入により増加傾向にある。2007 年産卵期は2004 年級群が3 歳魚として活発に産卵した。産卵量は2007 年1~6 月でサバ類で312 兆粒、マサバのみでも251 兆粒と大きく増加、1982 年以来15 年ぶりに200 兆粒を超えた。しかし2005、2006 年級群の加入量水準は低く、親魚量は今後減少すると考えられる。続く2007 年級群は、現段階では不確実であるが、比較的豊度の高い年級であると期待され、2007 年級群を保護することにより親魚量の減少を一時的なものにとどめ、更なる増加につなげることができると期待される。現在マサバ太平洋系群の親魚量の回復を目指した資源回復計画が実行されている。親魚量の増加傾向を維持しマサバ資源の回復を図るため、若齢魚の保護を継続することが肝要である。
以上をまとめてみると、こんな感じ。
- 主力の3歳は、約2.6億尾と推定されている。
- 0歳は、今の段階ではまだ何とも言えないが、3歳の1.5倍ぐらいいるようである。
- 1歳、2歳、4歳以上は殆ど居ない。
- 0歳の獲れ方次第だけど、漁獲量は前年を下回るんじゃないの?
- 07年級群を産卵まで残さないと、更なる増加には繋がらないだろう
原文を読むと「マサバ時代到来!!」というトーンでは無いことがわかる。
3歳の近年にない高い水準(2.6億尾)というのは、具体的にどの程度かというと、こんな感じ。
90年代に入って、資源量が低迷してからであれば例外的に多いのだが、
70年代、80年代と比べると依然として低い水準である。
さらに、3歳の上も下も居ないことに注意が必要だ。
年齢組成を見るとこんな感じになる。
3歳はかろうじて見えているが、のこりは0歳しかいない。
0歳は、70年代の高水準期には適わないものの、歴史的に見ても高い水準である。
だからといって安心することは出来ない。
この予測値と同程度の加入があった96年級群は、未成熟のうちにほぼ獲り尽くされてしまった。
つまり、現在の漁獲能力であれば、獲り尽くせる水準なのである。
また、「発生後間もない現時点での調査結果に基づく評価は極めて不確実である」との記述もある。
では、実際にどの程度のズレがあるかを見てみよう。
マサバ太平洋系群の資源評価票(平成18年版)の25ページに次の2つの表がある。
- 補足表4-1.太平洋における浮魚類の資源量調査の概要
- 補足表4-2.各調査による資源量指標値
このなかの4番(東北水研 6~7月)の調査が0歳魚の推定に用いられたのだろう。
(ただ、2004年が101億尾となっているので、平成19漁海況予報の64億尾という記述とはずれるので、要確認)
補足表4-2に実際の値があるので、その後の情報から推定された加入量と比較してみよう。
トレンドとしては良く追えているけれど、絶対量はあまりあてにならないことがわかる。
全体的に過大推定の傾向がある。
この東北水研の調査は、おそらく「サンマの資源量を調べるついでに獲れたサバの数も数えてみました」というものだろう。
その年のマサバの分布域がサンマとかぶるかどうかに大きく影響されてしまう。
そういう意味で、精度はあまり期待できない。参考程度につかうべき値だ。
ただ、いろんな場所で0歳のサバが捕れているのは事実であり、この年級群がそれなりに居ることは間違いない。
だからといって、「サバ時代到来明るく」と言えるような状況ではない。
04、07と卓越年級群が発生したことで、最低水準からは脱しつつあるが、
04年生まれはもってあと1~2年。その間に07年生まれをつぶしてしまえば、そこでアウトだ。
三陸沖で、「サバが獲れて獲れて困っちゃう」とか良いながら、ガンガン獲っているようだが、
そういう獲り方をしても値段は付かないし、資源の回復の芽を摘むだけである。
この漁海況予報のなかで、最も気になる記述はこれ。
※付記
東北海区サバ長期漁況予報の太平洋イワシ・アジ・サバ等長期漁海況予報への統合のお知らせ
これまで三陸沖でのサバ類を対象とした漁業に対応するため、毎年10 月始めに東北海区サバ長期漁況予報を出して参りましたが、近年ではサバ資源の分布回遊範囲の縮小と対象魚群の若齢化によって漁期が早まり、10 月には三陸沖漁場が終盤となる状況になっています。
そのため、東北海区のサバの漁況予報は、現在、太平洋全体のサバ類の漁況予報として中央水研で出される太平洋イワシ・アジ・サバ等長期漁海況予報の7 月の予報に統合することが適切であることから、今後は当該予報に東北海区におけるサバ類の漁況予報を統合することとして整理し、予報精度を維持・向上して参ります。従いまして本年10 月から東北海区サバ長期漁況予報は出されなくなりますのでご承知ください。
日本サバが美味しくなるのは、秋から冬。特に三陸沖の脂ののったサバは最高だ。
現在は、美味しくなるまえに、漁業が終わってしまうというお寒い現状なのだ。
本当にもったいない話である。
美味しい日本のサバが食卓に並ばない理由はここにある。
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マサバ太平洋系群資源回復計画
- 2007-07-11 (水)
- マサバ
マサバ太平洋系群資源回復計画については、下のpdfを見て欲しい。
http://www.jfa.maff.go.jp/sigen/masaba%20taiheiyou.pdf
本系群でも数年間隔で卓越年級群の発生が確認されており、1990年代には産卵親魚量が5~11万トン(推定値、以下同じ。80年代は50~60万トン)と低い水準にある中、1992年(28億尾、翌93年6億尾)、1996年(43億尾、翌97年5億尾)に卓越年級群の発生が確認されている。しかしながら、これら卓越年級群の発生にもかかわらず、当時の未成魚の多獲により産卵親魚量は回復せず、低水準のまま現在まで推移している。
漁獲量は1978年の147万トンをピークにその後徐々に低下し、1990年には2万トン程度まで減少した。その後、1992年と1996年に発生した卓越年級群により30万トン程度の漁獲をあげた年もあったが、当時の未成魚の多獲により資源回復は図られず、低い漁獲水準のまま現在まで推移している。
このように、これまでの卓越年級群の発生にも拘わらず、的確な発生予測や発生確認後の広範囲に亘る操業体制の迅速な整備が困難であったこと等から未だ資源回復に至っておらず、このため、今後、複数年にわたる計画期間を設定し、卓越年級群の発生に備えた操業管理体制を前もって整え、卓越年級群の発生時には、このタイミングを逸することなく大量の未成魚を保護するとともに、それらが親漁に成長した後も適切な管理を行うことにより、資源回復に必要な数量の産卵親魚を確保して、資源の回復を図ることが必要となっている。
中型まき網漁業、サバたもすくい網などでも漁獲が行われている。主体となっているまき網漁業の近年の特徴としては、①三陸から常磐海域の大中型まき網漁業は未成魚を主体に漁獲していること、②太平洋南区(和歌山~宮崎県)や熊野灘で操業するまき網漁業のサバ類に占めるマサバの割合はかなり小さいものとなっていることがあげられている。
資源回復計画の現状認識は、妥当だろう。
このブログや資源評価票とも整合性がとれているはずだ。
では、具体的な中身について見ていこう。
3.資源回復の目標
本資源の高水準での持続的利用を可能とするためには、安定的な再生産(新規加入)の維持に必要な産卵親魚量45万トン以上の確保が必要とされている。一方、現在の資源水準(産卵親魚量約8万t:平成15年度推定値)及び資源回復措置の漁業経営に及ぼす影響を考慮した場合、必要な親魚量を短期間で確保することは困難となっており、複数回の卓越年級群の発生を利用し、段階的に資源回復を図っていくことが必要となっている。このため、5カ年間の本計画期間を第1段階と位置付け、本計画終了時の産卵親魚量を18万トン水準に引き上げることを本計画の目標とする。なお、資源状況により上記水準を上回る水準にまで産卵親魚量を回復することが可能な場合は、45万トンにできるだけ近づく水準にまで回復を図ることとする。4.資源回復のために講じる措置と実施期間
現在、マサバは未成魚で殆どが漁獲されている状態であり、
まず、未成魚の漁獲圧を減らさなければお話にならない。
回復計画の成否は大中まきの未成魚への漁獲圧を弱められるかどうかにかかっており、
そのために大中まきに休漁補償金を支払うことにした。
漁に出ていたら得られていたであろう金額を税金で補償するから、魚をとるなということだ。
補償金は、国と地方自治体と漁業者で1/3ずつ出し合うことになっているが、
実際には地方自治体はお金がないから払っていないようであり、
国から休漁による減収の1/3が補助されている状態のようである。
これもまた、おかしな制度だと思う。現に未成魚を乱獲をしている漁業者にはあめ玉を配って、
未成魚の乱獲のせいで漁業が崩壊している成魚を対象とするサバ漁の漁業者には何もなしだからだ。
筋を通すなら、未成魚を乱獲している漁業者が、成魚を獲る漁業者に補償金を支払うべきだと思う。
まあ、なんにせよ、漁獲努力量が減ることが重要だろうと思うが、実際にどのくらい減ったのだろうか?
次の図が、大中まきの航海数である。
(航海数の統計は、国内全体をまとめたものしか見あたりませんでした。
北部太平洋の統計がどこにあるか知っている人は、ご一報ください。)
それまで減少傾向で推移していたのに、
休漁補償を始めた平成15年から増加に転じています。
一統あたりの平均航海数も急上昇しています。
川崎先生の論文によると、ピストン輸送をしているので、結果として航海数が増えているそうです。
休漁補償金が、ピストン輸送をする油代になっているだけかもしれない。
一般的に、補償金は資源の保護に繋がらないことがわかっている。
経営が苦しい漁業者が乱獲を続けるのを助けるだけに終わる場合が多いのだ。
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WordBox: 巻き網漁業
巻き網の厳しい現場が伺える面白い新聞記事を発見。
http://www.nishinippon.co.jp/news/wordbox/display/5013/
漁協幹部は「魚価安を補うため、一晩当たりの投網回数が5割は増えており、乗組員の体力消耗が激しい」と顔を曇らせる。
販売戦略としては、関サバ、関アジなどの成功に代表されるように、一本釣りによるブランド化で大衆魚を高級魚化する方策もあろう。だが、「巻き網で多獲性の魚種を市場へ安定的に供給する技術、能力を確保しておかなければ、国民に安価で良質な水産タンパクを供給することはできない」と、福岡県水産海洋技術センターの渡辺大輔さん(34)は力説する。
「魚価安→努力量を増やす」は、乱獲スパイラルの典型例だな。
努力量が5割り増しだと、かなりの漁獲率の上昇になるはずだ。
東シナ海のアジ、タチウオ、マダイの資源状態はそれほど悪くないようだが、今後が心配。
「目先の利益のみを追求する漁業を止めない限り、国民に水産タンパクを供給できなくなるのは時間の問題である」と、東大海洋研の勝川俊雄さん(34)は力説したい。
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「卓越年級群が発生したが、未成魚の多獲によりSSBは回復しなかった」とはどういうことか
資源評価票に毎年出てくる記述にこんなのがある。
1992年に加入量28億尾、1996年に43億尾の卓越年級群が発生したが、未成魚(0、1歳魚)の多獲によりSSBは回復しなかった。
これでは素人にはわかりづらいと思うので、少し説明をしよう。
多くの水産生物は、親の量が一定でも、子供の量は年によって変動する。
マサバもマイワシほどではないが、それなりに変動をする。
親に比べて子供が多い年が「当たり年」であり、その年に産まれのものを卓越年級群と呼んでいる。
マサバ太平洋系群の親子関係は、下のようになる。
データは平成18年度の資源評価票から引用をしたが、
その後の調査で2004年級群は1992年よりも大きかったことがわかっているので、
最新の知見を反映して、その部分は変更してある。
普通の年の親子関係は青の三角形の領域に収まるのだが、
例年よりも多くの子供が生まれて来る年がある。
これが当たり年だ。
最近では、1992,1996,2004が当たり年であった。
1992年と1996年の卓越年級群は、0歳、1歳で獲り尽くされてしまい、
資源の回復には全く結びつかなかった。
当たり年ですら、未成魚で獲り切れてしまう可能な漁獲能力が存在する以上、
ほぼ無規制な漁獲を続けていたら、未来永劫資源は回復しないだろう。
我々のグループが、1992年産まれを未成魚のうちに獲り尽くさないで、
1996年に産卵をさせていれば、かなりの水準まで資源が回復していたことを示した。
数年おきに卓越年級群が発生している現状では、ちゃんと卵を産ませればマサバは回復するのだ。
水産資源管理の難しいところは、保全と利用を両立させないといけないことだ。
「回復するまで一切獲るな」と言っても、今度は漁業者が絶滅してしまう。
漁業経営を安定させつつ、資源を回復させるためには、
当たり年を資源回復に結びつける必要がある。
当たり年に例年並みの漁獲量に抑えておけば、漁獲収入を確保しつつ、資源の底上げが可能である。
大きくなって、卵を産ませてから獲れば、そっちの方がトータルでは儲かるはずだ。
業界への痛みを最小限に抑えつつ、マサバ資源を回復させるためには、
当たり年の未成魚の漁獲を以下に抑えるかが鍵になる。
研究者と一部の行政官の尽力によって、
2003年の11月から、マサバ太平洋系群資源回復計画がスタートした。
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生食用のサバを獲るひとと小さいサバを獲るひとは違う?
業界の一拗ね者さんからのコメント
以前、小生は、生食用のサバを獲るひとと小さいサバを獲るひとは経済的に棲み分けていたのではないかと書き込みしたのですが、古い資料から読み取れるのは、まき網が生食用のサバを獲る漁業を排除してきた構図です。小生は、ノルウェーサバは嫌いで食しませんが、スーパーや外食で出ているサバの惣菜にも食指が動きません。国産のサバをおいしくいただけないのは、まき網ものだから(また、だからこそ魚体が小さいから)と決め込んでいます。大きくしてから獲るなら、まき網はご免蒙りたい。(では、どうやって獲ればいいんでしょう?)
水揚げされた物がどのような割合で利用しているのかを知りたいと思っていたら、
おあつらえ向きの統計が出てきました。
http://www.jfa.maff.go.jp/sigen/masaba.htmの真ん中へんの表です。
2001年漁獲量(千トン) |
||||||
漁港名 | 生鮮食用 | 食用加工 | 非食用 | 合計 | 生鮮率 | 非食用率 |
銚子(千葉) | 2.3 | 2.5 | 53.7 | 58.5 | 0.04 | 0.92 |
小名浜(福島) | 1.6 | 2.7 | 10 | 14.3 | 0.11 | 0.70 |
石巻(宮城) | 5.1 | 5.6 | 14.7 | 25.3 | 0.20 | 0.58 |
気仙沼(宮城) | 0.5 | 0.1 | 0.5 | 1.2 | 0.42 | 0.42 |
宮古(岩手) | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.3 | 0.33 | 0.33 |
三崎(神奈川) | 0.2 | 0.1 | 0.1 | 0.3 | 0.67 | 0.33 |
沼津(静岡) | 7.4 | 9.2 | 1.8 | 18.5 | 0.40 | 0.10 |
八戸(青森) | 4.2 | 13.3 | 0.5 | 18 | 0.23 | 0.03 |
早速グラフを造ってみます。
水揚げ重量(千トン)はこんな感じ。
きれいに食用と、非食用の水揚げ港が別れました。
特定の漁港の非食用が突出しています。
気仙沼、宮古、三崎がこれじゃわからないので、比率だけを見てみます。
気仙沼、宮古、三崎のように生鮮率が高い港は軒並み壊滅状態です。
これは2001年の統計なので、1996年の卓越年級群をつぶした後の谷間の年です。
現在は2004年の卓越年級群によって、生鮮食向けの魚も数年ぶりに捕れています。
しかし、2005-2007の加入状況が良くないので、
2004年級群を獲り尽くして2001年の状況に逆戻りするのは時間の問題でしょう。
沼津と八戸は食用率が高くいわりにそれなりの漁獲量が維持されている。
これらの港ではどのような漁業が営まれているのか興味深い。
沼津に関しては、産卵回遊群しか漁場に来ないが故に、
未成魚は獲りようがないのかもしれないが、まとまった量が獲れるのは何でだろう?
八戸はいったいどんな漁法をしているのか。興味は尽きない。
資源状態が悪い中で、非食料に未成魚が大量に利用されていた。
現在は、この非食用が二束三文で中国に輸出されているわけだ。
ここを何とかしないことには、マサバ資源は回復しないだろう。
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小サバ輸出の言い分を検証する
第7回太平洋広域漁業調整委員会議事録は、
業界と水産庁のマサバ太平洋系群に関する認識がわかって、とても面白い。
伊豆のたもすくいと北部巻き網の競合関係などが見て取れる。
是非、隅から隅まで目を通してもらいたい。
この文章から小サバの輸出に関連する部分をピックアップして、つっこみを入れてみよう
○香川管理課長 輸出の件については、輸出の実績を見ると確かにかなりふえていること
は事実でございます。例えば、2005 年には5万8,000tのサバ類の輸出がございます。
こういう中で、実は大臣の指導のもとで、農林水産物の輸出の振興を一生懸命やってお
ります。それは当然、例えば漁獲されたサバの場合で言えば、小さいサバは日本で市場に
ほとんど価値がつかないけども、輸出をすれば相手国で非常に高い価値がある ということ
で、それは非常に漁業経営の改善に役に立つのではないかという観点でやっているわけで
ございます。
ただ、私も前任は貿易対策室長をやっていまして、そのときに随分言っていましたのは、
貿易を促進することによって、資源が一方において悪化する、非常に重大な要因になるこ
ともあるということで、貿易の輸入の拡大みたいなものには非常に反対してきたこともご
ざいます。
そういう中で、自然にとって、とられて小型のものが入った場合に、それを輸出すると
いうことは、恐らく皆さん何の問題もないと思います が、例えば輸出をするために小型の
ものをねらって、多獲をして漁獲するということは、一方において資源管理上非常に好ま
しくないだろうと思っております。
どういうふうに漁獲しているのかというふうに調べなければいけないと思いますが、現
在のところは輸出のために小型を特にターゲットにしてとっているというふうには、私ど
もも理解をしておりません。○鈴木委員 時間よろしいですか。私も一言。
決意表明という話がありましたが、その割にちょっと誤解を受けるといけませんので、
昨日外記さんが話されました。あと今日も話をしました、中国の輸出の話をちょっとだけ
させていただきます。
250g以下のサバは、日本人が余りにもぜいたくになっちゃったために、市場価値がない
と見向きもしてくれないわけでございます。それで、ノルウェーあたりを中心にどんどん
輸入しても、小さいサバは日本人は食べてくれない。そのサバがどうだったのかというと、
かつて大量にとられたときにはミールでした。そして、その次の段階では養殖のえさでし
た。
このサバの価値が、値段が高くなるからって全くそういうのを多くとろうということは
やっていませんし、実際に数量もトン数制限と休漁によって下がっていると思います。
ある時点の話で、養殖に行くのは30 円の価値だと。中国に行くのは現地で80 円で引き
取ってくれると。そうすると輸送費とか手間賃とか20 円かけても、日本で売るよりも30
円のもうけがあるという、全くの市場原理であります。
そのために、養殖は衰退してきていると聞いております。ハマチを一番食べていたんで
すが、このハマチの養殖が打撃を受けまして、そのおかげで天然のイナダ、ブリの小さい
のがふえていると言われております。それは養殖が成り立たないから稚魚をとらないと。
そういう話が私の方に伝わっております。
そういうことで、小さいサバはとらないようにしていますが、今までにもとってないん
ですけど、結果的に養殖なんかに回っていた部分が中国にどんどんいっているということ
で、それは我々にとっても経営上ありがたいことだなと思っております。これから中国へ
輸出がふえていくとしても、とるということはしないと思います。
つっこみどころが多すぎるのだが、要約するとこうなる
- 小サバは日本市場では価値がないが、輸出をすれば相手国では非常に高い価値がある
- 小型を狙っているのではなく、自然に獲れてしまう
- 飼料になっているのを輸出しているだけだから、何の問題もない
1.については、すでに書いたように、
国内(鮮魚)>>中国(小サバ)>国内(小サバ)
という関係がある。
「非常に高い価値」とか言っても、飼料よりは若干高いという価格にすぎないわけで、
日本の生鮮市場とは文字通り桁が違う。
輸出するよりも何年か待って、国内に鮮魚として出した方が圧倒的に価値があり、合理的なのだ。
小サバを高く売る努力よりも、小サバで獲らない努力が必要なのだ。
2.についても、釈然としない。
未成魚の乱獲を10年以上続けていて、成魚がほとんど居ないことはわかっている。
その状況でガンガン網を巻けば、未成魚ばかりがとれるのが物の道理だ。
それで、小型を狙ってないからそれで良いというのは違うだろう。
定置に入ってしまうというなら、まあ、しょうがないかなとも思うけど、
魚探を使って魚群を巻いておきながら、「獲れちゃうものはしょうがない」は無いだろう。
中国に輸出する以外の使い道がないようなローソクサバを乱獲するような獲り方しかできないなら、
巻き網でサバを捕るのを禁止すべきだ。
3.についても今後はどうなるか不明。
中国への販路が出来たことで小サバへの漁獲圧が強まる可能性が高い。
というか、すでに高まっていると思う。
小サバの輸出のうち、どの程度がマサバ太平洋系群かがわからないが、
かなりの量が流れていると思われる。
役所にも、漁業者にも、サバ漁業全体の利益という視点がすっぽり抜け落ちている。
漁業者に関しては、情状酌量の余地があるというか、「しょうがないよなぁ」とも思う。
現在の青天井のオリンピック方式では、
他の漁業者よりも早く獲らないと獲る以外に、利益を確保する選択肢は無いわけだから。
漁業者が言うように、市場原理の行き着く果てが、小サバの中国輸出なのだろう。
市場競争原理のみに任せていたら、漁業の経済性はどこまでも失われる。
こうなることは、50年前からわかっていたことなのだ。
小サバ漁獲は、漁業の生産性と資源の持続性にとってマイナスでしかない。
特定の漁業者が短期的な利益を得る代償として、漁業をつぶしかねない。
こういう事態を防ぐのが、水産庁の本来の役目である。
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国が進める小サバ輸出倍増計画の効果を試算する
百害あって一利なしの小サバ輸出事業を、国として全面的に拡大していくようだ。
輸出拡大は地域経済の回復など我が国の将来に大きなプラス効果をもたらすものであることから、17 年に政府は、農林水産物・食品の輸出額を「5年で倍増」することを目標に定めました。(水産白書)
最近、水産分野では急激に伸びている小サバに期待が高まっているようです。
最低でも5年で倍、あわよくばそれ以上に増やしたいと思っていることでしょう。
現状ですら、サバ漁業全体の利益やサバ資源の持続性を犠牲にして成り立っている
小サバの輸出を倍にするとどうなるのかを試算してみよう。
0歳の漁獲率を35%から70%に挙げると次のようになる。
漁獲組成は0歳が突出し、1歳以降は激減する。
漁業利益はこんな感じで激減します。
漁業全体の利益は、現在の42%まで低下するでしょう。
産卵親魚量も同様に46%の水準に減少します。
ちなみに%SPRは5.1%です。
%SPR一桁台とは、漁業大国の面目躍如ですね(^^
小サバ倍増計画の効果
小サバの輸出に関与する業者の利益は倍になる。
その代償としてサバ漁業全体の利益は半分以下(42%)に減少する。
また、今でさえ少ない親魚量も現在の46%の水準に低下する。
どこをどうひっくり返しても、
小サバの輸出が日本漁業のためになるとは思えない。
0歳魚の輸出促進とかいってる段階で、常軌を逸していると思うのだが、
ひょっとして、それはギャグで言っているのか? (AA略)
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小サバの輸出によって得たものと失ったもの
小サバの輸出によって短期的な収益は増えるのだが、
その代償として失われたものが2つある。
大きくしてから獲った場合に得られた収益と産卵である。
小サバ輸出の是非を問うために、これらの失われたファクターを定量的に評価してみよう。
2000から2006年までの漁獲を合計すると次のようになる。
漁獲尾数(10^5) | 個体単価(円) | 漁獲収益(億円) |
13026 | 4.2~6.9 | 54~90 |
9381 | 44.8 | 420 |
2004 | 131.2 | 263 |
696 | 217.4 | 151 |
406 | 410.3 | 167 |
106 | 650.6 | 69 |
53 | 967.1 | 51 |
ここから近年の漁獲パターンがわかる。
小サバ(0歳)を輸出すると、輸送量が20円かかるが、
KGあたり70円で売れるので、全体として50円の儲けになる。
一方、国内で餌料になると30円の儲けにしかならない。
国内餌料だと個体単価が4.2円のところが輸出をすれば6.9円に跳ね上がる。
6年間の漁獲金額としては54億円が90億円に増える計算になる。
小サバの輸出で、マサバの生産金額はこんなに増えました!!
もともとタダ同然の0歳魚の値段が少し上がったところで、大した儲けにはならない。
しかも行く先がアフリカと中国では、値段が上がりようがない。
それでも、獲った人と輸出をした人の手元にはなにがしかの金額が残る。
ただ、その代償として何が失われたかを考える必要がある。
現状と比較するために、次の2つの漁獲パターンを考えてみよう。
0歳禁漁シナリオ:現状の漁獲圧を維持したまま、0歳魚のみを禁漁にした場合
70-80年代シナリオ:70年代、80年代の平均的な漁獲圧をかけた場合
0歳禁漁シナリオは0歳魚の漁獲の影響を評価するためのシナリオであるが、
実際に0歳のみを完全に禁漁するのは技術的に不可能だ。
ということで、70年代、80年代の平均的な漁獲圧をかけたらどうなるかも合わせて計算した。
過去に実際にやっていた獲り方なら技術的にも可能だろう。
結果にはほとんど影響がないので、0歳はすべて中国に輸出するものとして計算をした。
国内で餌料として消費する場合は、0歳の収益が3/5になります。
細かい計算結果は、一番下の続きを読むをクリックしてください。
漁獲尾数はこんな感じになる。
現状では0歳の漁獲が突出しているが、それを無くすと1歳以降の漁獲尾数がまんべんなく増える。
また、70,80年代は1歳もそれほど獲っていなかったので、2歳以降の漁獲の割合が増える。
この場合の漁獲高はこんな感じになる。
殆ど利益にならない0歳の漁獲を控えると、漁獲高は1211億円から1726億円へと跳ね上がる。
0歳魚を1億円分漁獲すると、漁業全体の利益が5.7億円失われる計算になる。
利益率の低い1歳の漁獲も抑制することで、さらに漁獲高は増加する。
最近の早獲り競争が如何に資源の生産力を無駄にしているかが良くわかる。
次に再生産を見ていこう。
漁獲のタイミングを遅らせると、その分だけ産卵に関与できる個体数が増える。
0歳を獲らなければ、産卵量は1.5倍になる。
また、昔の漁獲だと、産卵量は倍以上に増えたのである。
以上の結果をまとめてみよう。
小サバ(0歳)は、国内で餌料になるとKGあたり30円にしかならない。
これを中国に輸出すれば、送料を引いてもKGあたり50円の売り上げになる。
輸出によって、6年間の売り上げが54億円から90億円へと利益が増える計算になる。
0歳魚の漁獲によって90億円を稼ぐ代償として、全体の利益が515億円失われた。
0歳魚を1億円輸出すると、マサバ漁業全体の利益が5.7億円失われるのだ。
また、0歳を獲らなければ、産卵量は1.5倍に、昔の獲り方をしたら2倍以上に増えたこともわかった。
つまり、小サバの輸出によって、特定の人間が短期的利益を得る代償として、
マサバ漁業全体の利益が大きく損なわれている。
さらに、未成魚の乱獲で資源の再生産能力を著しく損なうことで、
マサバ資源の回復の芽を摘み、漁業の未来を奪おうとしているのだ。
また、70年代、80年代には、かなりまともな漁業をしていたことがわかる。
後先考えずに獲れるものを獲れるだけ獲り尽くす漁業を続けた結果として、
資源も、漁業もここまで酷くなってしまったのだ。
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水産物の輸出が伸びる背景
水政審の議事録から、水産物の輸出に関する議論を追ってみよう。
http://www.jfa.maff.go.jp/sinseisaku/keikaku_19/minute/180413.htm
○浅川加工流通課長
漁獲自体は小型が多いということで、産地価格は低いんですが、消費地では中型、大型サイズが求められているということで、高値で推移するということで、こちらも需給のミスマッチが生じています。このようなものを打開するために、サバについては、小型のものについて国内では需要がないということで輸出をするという新たな方向が出てきております○浅川加工流通課長
まず、農林水産省全体の取り組みとして、現在、農林水産物または食品の輸出が平成16年は3000億円あるんですが、5年後に倍増しようという目標のもとに、輸出に取り組む方たちを支援しているところでございます。中でも輸出実績自体、右の方なんですけれども、平成16年から17年に12%近く増えているわけですが、うち水産物は2割近く増えているということで、輸出の品目としてはメインの部類に入るかと考えております。
次のページですけれども、水産物の輸出の取り組みとして、外国での日本産品の普及ですとか販路開拓といった取り組みに対して農林水産省で支援しております。水産物につきましては、右に書いておりますとおり、H団体というのは北海道の団体なんですけれども、ホタテとかアワビ、サケを出荷したり、下の方は九州の団体になりますけれども、サバの小魚を出荷したり、輸出したりという取り組みが始まっているところです。
輸出の現状が次のページになります。全体的には、輸出という状況はここに書いてあるとおりなんですが、かつては香港とかアメリカといったところが輸出のメインだったわけですけれども、最近は韓国とか中国というお隣の国への輸出がふえているということ。また、かつては真珠とか貝柱、ホタテといったものがかなり中心だったんですが、最近の動きとして、サケ、マスですとか、サバといったものが少しずつ増えてきているといった動きにございます。
このような動きは、国内で価格が上がらない場合に外国へ出すことで新しい需要が増えるといったこと、また国内のダブついた市場を少し引き締めるといった効果もございますし、漁業の活性化といった、いい効果もあると考えております。
次のページが取り組み事例でございます。輸出先にさまざまなニーズがございます。ここに書いてあるとおり、いろいろな魚種によってニーズがございますので、それに応じて輸出をしているという取り組みの事例を書いてありますのが、このページでございます。
最後に、ただ輸出するときに必要なことということで、これも第2回のときに少し触りを御説明いたしましたけれども、EUとかアメリカといったところが衛生面での管理をきちんとやってくださいということを諸外国に求めておりますので、輸出する業者は、それぞれの輸出先の基準に合致した衛生水準のものを出す必要がある。こういうものに今後、対応していくことが課題となっております。
以上でございます。○原田委員 輸出について、現状、日本に入ってくる輸入水産物、輸出されている国々の戦略と、日本が輸出に打って出ようという戦略を比べると、大きな開きがあります。ノルウェー、チリのサケですとか、インドネシア、東南アジアからのエビですとか、どういった魚種をどこに売るかというところまで国がターゲットを決めてつくっているようなところがあります。
そういう意味で、輸出を増やすということは結構だと思うんですけれども、先ほどからも意見あったような余ったものを出しましょう、輸入が入ったので、はじかれたものを何とか付加価値をつけてって、これでは本当の輸出対策の戦略ではないと感じます。
国として、輸出を5年後に倍増であれば、もうちょっと明確な戦略を立てて、日本の漁業が活性化するような戦略でもってやっていただけたらというふうに思います。
日本の水産物の輸出には構造的な問題があることがわかる。
漁業者の早どり競争の結果、消費者の需要が低いような小型の魚が多獲されている。
その結果、需要が高い中型大型の供給が減少し、高値で推移することになる。
ここに輸入魚が殺到するのは自明の理だろう。
需給のミスマッチは、小型乱獲の結果である。
小型のものは国内で価値がないから、輸出します、というのはおかしい。
それを大きくしてから国内で売るという選択肢もあるはずだし、
それこそが需給のミスマッチを解消し、食糧自給率を上げる道だろう。
また、輸出についても、かつては水産物を高く買う香港やアメリカがメインだったのだが、
最近は韓国、中国と言った、水産物の値段が安い国にしか相手にしてもらえなくなっている。
世界の水産物の値段が上がる中で、日本の輸出単価が減少している。
日本の水産物が先進国から相手にされない理由はいくつかある。
1) 衛生管理基準
EUや米国は独自の衛生基準をもっているが、日本の水産物のほとんどはその基準をクリアしていない。
今のままでは門前払いをされてしまうので、衛生基準を国際水準まで引き上げる努力が必要である。
2) 品質の問題
輸出をするには良い状態の冷凍品が必要になる。
日本で魚と言えばまず生鮮であり、余ったものが冷凍になるという頭がある。
港で余った魚を冷凍させても、既に品質の劣化は進んでいる。
水産物の輸出を振興している国は、獲ってすぐの新鮮な状態で冷凍できるように、
船上冷凍設備が充実している。
今の日本の冷凍技術では、漁業先進国とは戦えない。
3) 資源の持続性の問題
日本の漁業は資源の持続性の配慮がまるでない。
水産資源は軒並み低水準であり、ある資源が増え出すと、
「豊漁だ!豊漁だ!」といって、すぐに増加の芽を摘んでしまう。
その結果、漁獲のサイズも量も安定しない。
安定供給が出来なければ、大口の小売りからは相手にされない。
また、EUや米国では、「持続的でない漁業で獲られた魚」は高く売れない。
たとえば、ウォールマートやマクドナルドは持続的に獲られた魚しか店頭に並べない。
そうしないと消費者からそっぽを向かれるからである。
国際的な基準では日本の殆どの漁業は管理されていないと見なされる。
これでは、意識が高い消費者からは相手にされないのである。
今のままでは、日本の水産物は途上国に買いたたかれるしか無いのである。
原田委員の発言にあるように、今の日本の水産物の輸出には戦略も糞もない。
乱獲によって市場価値が無いような小魚しか供給できない。
国内では相手にされないから、二束三文でも買ってくれるところに輸出するしかない。
最近の輸出の伸びは、乱獲のつじつま合わせであり、日本漁業の断末魔なのだ。
現在の水産物の輸出は、海の幸を切り売りしているのであり、国が進めるようなものではない。
このような末期的な状態を避けるための政策が必要なのだ。
代替案としては、次の2つがある。
1)国内で消費する
2)欧米など水産物を高く買う国に輸出する
要求される品質のハードルは、
欧米>>日本>途上国
となっており、現在の日本漁業はいきなり欧米の市場をねらえる状態にはない。
まずは国内市場を狙うべきである。
輸出が全て悪いとは思わない。
次のような条件を満たしていれば、輸出を促進すべきだと思う。
1)国内市場へ充分に供給できている
2)資源状態が良い
たとえば、サンマのように豊漁貧乏で国内市場が飽和している資源は、積極的に輸出をすべきだ。
そのためには、衛生基準をクリアできるようにすると同時に、船上冷凍設備への投資も必要になる。
国は、こういう漁業の輸出を補助すべきである。
サンマが輸出できるようになれば、豊漁貧乏で泣いているサンマ漁業はかなり救われるだろう。
原田委員が指摘するように、もうちょっと明確な戦略を立てて、
日本漁業が活性化するような方向で輸出促進をすべきである。
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近年増加する小サバの輸出
ノルウェーのサバに関しては、ロシアウクライナへの買い負けが続いている。
値段が上がっている中で消費が伸びているので、今後もこの傾向は続くだろう。
また、中国も日本と同じ程度の購買力がありそうなので、
1990年代のようにノルウェーのサバを日本が独り占めできない状況だ
買い負け現象は、国内のサバ漁業が日本のサバ市場を取り返すための絶好のチャンスである。
しかし、サバは0歳1歳といった未成熟なうちに乱獲されているせいで、
日本の生鮮市場に十分な個体を提供できる状況にない。
このまま買い負けと国内資源の乱獲がつづけば、日本人はサバを食べられなくなる。
サバの供給がとぎれて、サバ食文化の壊滅するという最悪のシナリオは避けないといけない。
今後、中長期的な時間スケールで日本のサバ市場の空白化が進むはずであり、
この空白を日本のサバで埋められるように関係者は準備を始める必要があるのだが、
現状では正反対の方向に走っている。
この図は、日本のサバの輸出量である。近年、急速に伸びていることがわかる。
2006年には18万トン。これは国内の漁獲量の1/3程度を占める。
一方、Kg単価は次のようになる。
2002年までは、ノルウェーと大差がない単価がついていたが、
2003年以降は、小サバの輸出の増加により70円程度に低迷している。
世界的な値上がり傾向とは逆に、日本のサバの値段は下がっているのだ。
小型個体の価値は世界市場でも低く、飼料よりはましという値段しか付かないからだ。
現在低水準にある資源の未成魚を二束三文で輸出してよいのだろうか?
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