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マサバ太平洋系群資源回復計画

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 マサバ太平洋系群資源回復計画については、下のpdfを見て欲しい。
http://www.jfa.maff.go.jp/sigen/masaba%20taiheiyou.pdf

本系群でも数年間隔で卓越年級群の発生が確認されており、1990年代には産卵親魚量が5~11万トン(推定値、以下同じ。80年代は50~60万トン)と低い水準にある中、1992年(28億尾、翌93年6億尾)、1996年(43億尾、翌97年5億尾)に卓越年級群の発生が確認されている。しかしながら、これら卓越年級群の発生にもかかわらず、当時の未成魚の多獲により産卵親魚量は回復せず、低水準のまま現在まで推移している。

漁獲量は1978年の147万トンをピークにその後徐々に低下し、1990年には2万トン程度まで減少した。その後、1992年と1996年に発生した卓越年級群により30万トン程度の漁獲をあげた年もあったが、当時の未成魚の多獲により資源回復は図られず、低い漁獲水準のまま現在まで推移している。

このように、これまでの卓越年級群の発生にも拘わらず、的確な発生予測や発生確認後の広範囲に亘る操業体制の迅速な整備が困難であったこと等から未だ資源回復に至っておらず、このため、今後、複数年にわたる計画期間を設定し、卓越年級群の発生に備えた操業管理体制を前もって整え、卓越年級群の発生時には、このタイミングを逸することなく大量の未成魚を保護するとともに、それらが親漁に成長した後も適切な管理を行うことにより、資源回復に必要な数量の産卵親魚を確保して、資源の回復を図ることが必要となっている。

中型まき網漁業、サバたもすくい網などでも漁獲が行われている。主体となっているまき網漁業の近年の特徴としては、①三陸から常磐海域の大中型まき網漁業は未成魚を主体に漁獲していること、②太平洋南区(和歌山~宮崎県)や熊野灘で操業するまき網漁業のサバ類に占めるマサバの割合はかなり小さいものとなっていることがあげられている。

資源回復計画の現状認識は、妥当だろう。
このブログや資源評価票とも整合性がとれているはずだ。
では、具体的な中身について見ていこう。

3.資源回復の目標
本資源の高水準での持続的利用を可能とするためには、安定的な再生産(新規加入)の維持に必要な産卵親魚量45万トン以上の確保が必要とされている。一方、現在の資源水準(産卵親魚量約8万t:平成15年度推定値)及び資源回復措置の漁業経営に及ぼす影響を考慮した場合、必要な親魚量を短期間で確保することは困難となっており、複数回の卓越年級群の発生を利用し、段階的に資源回復を図っていくことが必要となっている。このため、5カ年間の本計画期間を第1段階と位置付け、本計画終了時の産卵親魚量を18万トン水準に引き上げることを本計画の目標とする。なお、資源状況により上記水準を上回る水準にまで産卵親魚量を回復することが可能な場合は、45万トンにできるだけ近づく水準にまで回復を図ることとする。

4.資源回復のために講じる措置と実施期間
image07071101.png


現在、マサバは未成魚で殆どが漁獲されている状態であり、
まず、未成魚の漁獲圧を減らさなければお話にならない。
回復計画の成否は大中まきの未成魚への漁獲圧を弱められるかどうかにかかっており、
そのために大中まきに休漁補償金を支払うことにした。
漁に出ていたら得られていたであろう金額を税金で補償するから、魚をとるなということだ。
補償金は、国と地方自治体と漁業者で1/3ずつ出し合うことになっているが、
実際には地方自治体はお金がないから払っていないようであり、
国から休漁による減収の1/3が補助されている状態のようである。

これもまた、おかしな制度だと思う。現に未成魚を乱獲をしている漁業者にはあめ玉を配って、
未成魚の乱獲のせいで漁業が崩壊している成魚を対象とするサバ漁の漁業者には何もなしだからだ。
筋を通すなら、未成魚を乱獲している漁業者が、成魚を獲る漁業者に補償金を支払うべきだと思う。

まあ、なんにせよ、漁獲努力量が減ることが重要だろうと思うが、実際にどのくらい減ったのだろうか?
次の図が、大中まきの航海数である。
(航海数の統計は、国内全体をまとめたものしか見あたりませんでした。
北部太平洋の統計がどこにあるか知っている人は、ご一報ください。)

image07071104.png

それまで減少傾向で推移していたのに、
休漁補償を始めた平成15年から増加に転じています。
一統あたりの平均航海数も急上昇しています。

image07071102.png

川崎先生の論文によると、ピストン輸送をしているので、結果として航海数が増えているそうです。
休漁補償金が、ピストン輸送をする油代になっているだけかもしれない。

一般的に、補償金は資源の保護に繋がらないことがわかっている。
経営が苦しい漁業者が乱獲を続けるのを助けるだけに終わる場合が多いのだ。

Comments:3

kato 07-07-11 (水) 15:59

岩手の市場ブログ。連日サバ豊漁の様子がアップされてます。定置ものですね。
http://uolog.npo-iwate.jp/

ある水産関係者 07-07-11 (水) 19:51

11日付の水経4面に「サバ 国産、操業自粛解除で輸出向けに」と題する興味深い記事が掲載されました。主な内容は、今年4月から続いていたサバまき網の操業自粛が解除され銚子・波崎で2日間に計4700トンの水揚げがあったこと、浜値は初日70~60円、2日目60~50円、ゴマサバ混じりで400~600gサイズ、大半は輸出向けで残りが鮮魚、缶詰向け、輸出はアフリカ向けが中心で今回水揚げされた殆どが(輸出向けに)完売、この2日間を見る限り商社や加工業者の予想通り国産サバが豊漁になる可能性が高い、このペースで漁が続けば北まきの枠を早々に消化しそうな気配であるため「船は脂の少ない今のサバを獲るより旬のマイワシ狙いに切り替えている」とも、サバの水揚げラッシュの後銚子で6日に2500トン、7日に1000トンのマイワシが水揚げされた、石巻、女川でもサバ水揚げが170トン、270トンを皮切りにコンスタントに数十トンペースで続いている、等々・・・。

記事を読む限り、一応、漁業者もTAC制度の「縛り」を気にしている様子ですが、資源回復計画の趣旨がキチンと理解されているかどうかは大いに疑問。また、ABCを大幅に超えるTACが設定されたマイワシも、たった2日間でTACの1割が消化された計算で、ABC limitは既に軽くオーバー。どうやら2004年級群のマサバだけではなく、マイワシ資源も危ない??

北部太平洋の許可を持つまき網漁船は、同時に、他の海区(東海・黄海、日本海など)の許可も併せ持つケースがママあります。このため、北部太平洋で休漁した分は、他の海区で操業した可能性が考えられます(その場合、休漁補償の対象?)。

北部太平洋のみの航海数のデータは見当たりませんが、統数、出漁日数のデータで良ければ漁業養殖業生産統計年報の174頁~180頁(平成16年度版の場合)にかけて掲載された海区番号41~43が近似の数値として使えると思います。
このほか、平成18年度マサバ太平洋系群資源評価票の図5「北まきのサバ類に対する有効努力量の推移(投網回数等、JAFIC提供)」と、20頁の補足資料1:漁獲努力量の補足表1-1があります。これによると資源回復計画開始以降のマサバ狙いの投網回数が凄い! まるで水産庁が漁業者の資源回復計画休漁補償金「やらずぼったくり」を自ら証明しているみたいなもの、これじゃあ詐欺ですね。

勝川 07-07-24 (火) 13:02

katoさん
サバについては、2004年級がどこまで持つかは不明です。
次にまとまった加入が出るまで、充分な量を残す必要があります。
まあ、定置で獲れてしまうのはしょうがないと思いますが、
「安い、安い」と文句を言いながら獲り尽くすのは勘弁して欲しいです。
この時期のマサバは旨くないんだし。

関係者さん
>また、ABCを大幅に超えるTACが設定されたマイワシも、
>たった2日間でTACの1割が消化された計算で、ABC limitは既に軽くオーバー。
>どうやら2004年級群のマサバだけではなく、マイワシ資源も危ない??

マサバは2004年級群が当面はありますし、
2007年級群もそれなりにありそうと言う速報が入ってきています。
やりようによっては、資源回復は十分可能です。
一方、マイワシには卓越は出ていないようなので、本当にまずいのはこっちです。

春先の銚子沖での漁獲が好調だったからといって、
期中改定でTACを25千トンから60千トンに増やしました。
7月の頭に期中改定を下らしいのですが、
水産庁のサイトをあさっても、この情報はでてきません。
困ったものです。

7月の水産学会和文誌にマイワシ特集が掲載されますので、
良かったらご覧ください。

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