ノルウェーのサバに関しては、ロシアウクライナへの買い負けが続いている。
値段が上がっている中で消費が伸びているので、今後もこの傾向は続くだろう。
また、中国も日本と同じ程度の購買力がありそうなので、
1990年代のようにノルウェーのサバを日本が独り占めできない状況だ
買い負け現象は、国内のサバ漁業が日本のサバ市場を取り返すための絶好のチャンスである。
しかし、サバは0歳1歳といった未成熟なうちに乱獲されているせいで、
日本の生鮮市場に十分な個体を提供できる状況にない。
このまま買い負けと国内資源の乱獲がつづけば、日本人はサバを食べられなくなる。
サバの供給がとぎれて、サバ食文化の壊滅するという最悪のシナリオは避けないといけない。
今後、中長期的な時間スケールで日本のサバ市場の空白化が進むはずであり、
この空白を日本のサバで埋められるように関係者は準備を始める必要があるのだが、
現状では正反対の方向に走っている。
この図は、日本のサバの輸出量である。近年、急速に伸びていることがわかる。
2006年には18万トン。これは国内の漁獲量の1/3程度を占める。
一方、Kg単価は次のようになる。
2002年までは、ノルウェーと大差がない単価がついていたが、
2003年以降は、小サバの輸出の増加により70円程度に低迷している。
世界的な値上がり傾向とは逆に、日本のサバの値段は下がっているのだ。
小型個体の価値は世界市場でも低く、飼料よりはましという値段しか付かないからだ。
現在低水準にある資源の未成魚を二束三文で輸出してよいのだろうか?
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Comments:3
- 水産流通関係者 07-06-17 (日) 15:01
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日本の水産食品文化は半ば崩壊していると私は感じています。料理自体が、下処理を軽視する方向に向かっているようにも思います。量販店に買いに行かないようにしませんか?。
- 水産C 07-06-20 (水) 0:35
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鯖に関していうと、高く売れないものばかりを生産しているということですね。そして他の魚種についても資源的には枯渇に向かい、にたような現象が起きている、と。漁業者にしてみると未来は明るくないですね。それだけではない。輸入品の品質の良いものが高くなり、それを原料として加工している業者の利幅が減っていく。買い負けによるいい品質の水産物の供給が減るので水産品の割高感から消費者は魚離れを起こし(勝川さんは魚離れはないと仰っていますが)、需要と供給の点からいうと将来的に水産を扱う業種は衰退するかもしれませんね。
- 勝川 07-06-20 (水) 12:18
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水産流通関係者さん
調理をする文化は危機的ですが、食べる文化は健在だと思います。
調理が廃れた背景には、都市生活者の生活の変化があります。
30代の過労死が増えていることからもわかるように、
20代、30代には、ゆっくり料理をするような暇がないのです。近年、主婦という存在は、希少になりつつあります。
昼に買い物をして、夕方から調理が出来る人口は今後も減るでしょう。
共働きの場合、5時半に仕事が終わり、7時にはご飯にしたいとなると、
買い物は量販店で一気にすませて、簡便な調理で食べられるものになる。
魚の消費量が全体として落ちていないことからもわかるように、
みんな、忙しい中で、健気に魚を食べているのです。
これらの魚を食べたいけど料理をする時間がない人達でも、
もっと魚を食べられるようにしたいものです。水産Cさん
魚離れは、今でも多少はあると思います。
ただ、漁業が傾くほどの魚離れが起きているようには見えないのです。
むしろ、漁業が自滅をして、魚離れを引き起こしているように見える。
このまま乱獲によって資源を枯渇させ続ければ、
魚離れは確実に進行するでしょう。>需要と供給の点からいうと将来的に水産を扱う業種は
>衰退するかもしれませんね。
このままでは、水産関係は確実に衰退するでしょうね。
でも、やりようによっては、まだまだ延びる余地はあります。
日本近海の生物生産や、自国のマーケットを考えると、
日本の漁業はとても有利な条件にあります。
非合理的かつ硬直的な産業構造によって、利益が出せないだけです。
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