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英国のセラフィールド再生工場周辺の生物の放射能汚染

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http://www.sellafieldsites.com/UserFiles/File/Monitoring%20Our%20Environment%202008.pdf

セラフィールド再生工場が、放射性物質を海洋に流した後の周辺の生物の放射性物質の値が時系列で示されている。1974年にCs137を4000TBq放出したら、1975年に15km内のタラから、600Bq/KのCs137が検出された。

Cs137の放出量と、魚のCs137の含有量は1年遅れで、良く対応している。再生工場から海への放出量を増やせばすぐに増えるし、放出量を減らせばすぐに減る。1980年代に入ると工場の放出量が減少し、1986年以降は非常に低い水準になった。生物の放射性物質含有量も速やかに減少し、1986年以降は、日本の基準値500Bq/kgを上回る値は出ていない。

放出が多かった1970年代中頃は、種によって、蓄積量に大きな違いがある。タマキビガイは、タラの1/3ぐらい。甲殻類はタラの1/20ぐらいの水準であるのに対し、アマノリはRu106を12000Bq/K(湿重量)に達している。

ドイツ研究機関続報:「日本の原子炉事故:海洋生態系に与える影響」

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4/2追記 このドイツの研究機関の分析は、放射性物質の漏洩が短期小規模で終わるという日本政府の初期の発表に基づいています。現在は状況が大きく変わったことを留意した上で、読んでください。

ドイツの研究機関Johann Heinrich von Thünen-Institutは,2011年3月22日付で報道発表「日本の原子炉事故:海洋生態系に与える影響(Reaktorunglück in Japan: Folgen für das Ökosystem Meer)」を出しました。慶應義塾大学の三瓶愼一先生に訳していただいた文章をコメント欄より転載します(三瓶先生、ありがとうございます)。

日本の原子炉事故:海洋生態系に与える影響

日本の福島原発事故の状況はさらに今後も危機的なレベルで推移するものと見られる一方で,環境調査における放射性物質の初の測定値が発表された。
海洋環境の領域では,現在,海水中における境界値を超える値について報道が行われている。日本の官庁による公的な測定値はまだ存在しない。日本からの日本の報道発表では,原発施設前100メートルの海域で,ヨウ素131が日本の基準値の126倍,セシウム134とセシウム137が境界値のそれぞれ25倍および16.5倍検出されたという。あいにく境界値の値と種類が公表されていないので,当研究所の研究員が食料品の境界値を基に検討してみると,日本ではヨウ素131については2000Bq/kg,放射性セシウムについては500Bq/kgとなる。
水中では汚染の拡散が速いため,太平洋では魚類に重大な汚染が生じることはないとの見方を変えていない。
この根拠となるのが,定期的にセラフィールド核燃料再処理工場周辺においてモニタリングを行っている英国の研究者のデータである。そこでは1965年から85年にかけて,毎年莫大な量の放射性セシウムが排水とともにアイリッシュ海に放出された。最高値としては1970年代中頃で5000テラベクレル/年(1テラベクレル=1兆ベクレル)が計測された。放出されたセシウムのこの大きな値に対し,アイリッシュ海の魚類に対する影響は極めて小さいと見られる。2008年の最新のデータでは,アイルランド海産のタラ(Kabeljau)の汚染は最大値で10Bq/kgであった。これは,バルト海のタラ (Ostseedorsch)の汚染の最大値と一致するが,その汚染は相変わらずチェルノブイリ原発事故の影響によるものである(チェルノブイリ原発事故により汚染された食料品の境界値はEUにおいては600Bq/kgである)。
太平洋に関しては,当研究所の研究員は,魚類におけるセシウムの値はアイリッシュ海とバルト海の値を明らかに下回るだろうと考えている。現在,原子炉付近の海水中で測定されている値は高いが,当研究所では,原子炉付近の魚類にわずかな汚染があり得るものの,例えばベーリング海におけるアラスカのサケマス漁場や太平洋のその他の場所で事実上汚染は生じないものと考えている。

チェルノブイリ事故の魚類への影響

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Chernobyl’s Legacy: Health, Environmental and Socio-Economic Impacts

IAEAのチェルノブイリの環境影響評価のレポートの中から、魚類に関係する部分のみを和訳(P26-27)しました。

水圏生態系はどの程度汚染されたか?(How contaminated are the aquatic systems?)

チェルノブイリ由来の放射性物質によって、原発付近、および、ヨーロッパの多くの場所で、表層水の放射能レベルが上昇した。初期の上昇は、川や湖の表層への、放射性核種の直接的な堆積によるもので、短命の核種(ヨウ素131)が主であった。事故後、数週間の間の、キエフ貯水池の高い放射能レベルの飲料水が懸念材料である。

数週間後には、希釈、物理崩壊、貯水池の土壌への吸収によって、水中の放射能レベルは、急激に減少した。底質層は、放射性物質の重要な長期的な貯蔵庫である。

魚類の放射性核種の摂取は、非常に早かった。しかし、物理崩壊によって、放射能活性はすぐに減少した。最も影響を受けた領域、および、スカンジナビアやドイツのような遠くの湖で、水中の食物連鎖によるセシウム137の生物濃縮が、有意な放射性物質の濃縮をもたらした。降下量が少なかったことと、生物濃縮が低いことから、魚類のストロンチウム90のレベルは、セシウム137と比較して人体への影響は軽微であった。ストロンチウム90が食用になる筋肉ではなく、骨に集積することも理由の一つだろう。

長期的には、寿命が長いセシウム137とストロンチウム90の土壌からの流出が、今日まで続いている(以前よりもかなり低い水準)。今日では、表層水、および、魚類の放射性物質の密度は低い(p26の図6を参照)。それにより、表層水による灌漑が、害悪を及ぼすとは考えられていない。

川や開放形の河川や貯水池での、セシウム137とストロンチウム90の密度は現在は低いものの、ベラルーシ、ロシア、ウクライナの外部への流出がない「閉鎖的」な湖のいくつかでは、数十年経過した現在も、セシウム137で汚染されたままである。たとえば、閉鎖的なロシアのKozhanovskoe湖の隣に住む人々の、セシウム137の摂取は、主に魚類の消費によるものである。

黒海およびバルト海は、チェルノブイリから遠く離れていることと、これらの系の希釈によって、海水の放射性物質の濃度は、淡水系よりも大分低い。水中の放射性核種のレベルが低い上に、海洋生物相でのセシウム137の生物濃縮が低いため、海産魚のセシウム137を気にする必要は無い。

福島の汚染された海水はどこに行く?

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11:32に追加情報があります。13:24にさらに追加をしました。最後まで、目を通して下さい。

最終的な影響は、大規模なモニタリング調査をしないとわかりません。このページは私個人が現時点までに知り得た情報をまとめたものであり、政府がしっかりとした調査結果を公開するまでの参考程度でお願いします。

原発近くの海水から放射性物質が検出されました。

福島原発近く海水から放射性物質 最大で基準の126倍
東日本大震災で被害を受けた福島第一原発近くの海水から、最大で安全基準の126倍にあたる濃度の放射性物質が検出されたことを、東京電力が22日未明の記者会見で明らかにした。漁業への影響などを評価するため、今後も調査を続けるという。

東電によると、21日午後2時半に放水口付近で0.5リットルの海水を採取して調べたところ、ヨウ素131が原子炉等規制法が定める基準の126.7倍、検出された。この水を1年間、毎日飲み続けると、一般人の年間限度の126.7倍にあたる放射線を被曝(ひばく)することになる。このほかセシウム134が基準の24.8倍、セシウム137が16.5倍検出された。
http://www.asahi.com/national/update/0322/TKY201103210384.html

まず重要な点は、サンプルが放水口付近(南100m)ということです。今まさに漏れ出てくる放射性物質を風下で計測しているような状態でしょう。周辺の海水を代表できる値ではないということに注意が必要です。

つぎに、この放射性物質を含んだ海水が、どこに行くかを考えてみましょう。

3/15-3/21の平均海水温の衛星写真です(NOAA1週間合成)。黄緑の領域が黒潮系の海水、青の部分が親潮系の海水です。両者は温度が違うので、混ざりません。犬吠沖で親潮と黒潮がぶつかり、蛇行しながら外に流れていく様子がわかります。福島の原発付近の海水は親潮系で、きわめて流れが速い場所ですので、北に行くことはありませんこのあたりの流れは複雑で、北東方面(三陸沖)に抜ける場合もあるようです(3/25訂正)。親潮にのれば急速に南下し、黒潮にぶつかって、アリューシャン方面に抜けていきます。

福島沖は、親潮と黒潮がぶつかって、太平洋に流れ出す、水道のじゃ口のようなところです。放射性物質が、海底に固定されずに、海水と一緒に流れていけば、福島→犬吠沖→アリューシャンという経路で日本から遠ざかります。流れていく過程で放射性物質の粒子は北太平洋全域に素早く希釈されると思われます。

広く希釈されるというのは、長期的に見た話。実際には、局地的な流れがあるので、短期的には注意が必要との指摘もあります。温度が異なる排水が、水塊を形成したばあいには、放射性物質の密度が局所的に維持されることも考えられます。いずれにしても福島近辺、および、下流に当たる海域では、しばらくは注意が必要です。

ウンコがベルトコンベアーにのって運ばれている状況をイメージしてください。ウンコのにおいが広がるよりも早く、ベルトコンベアーが流れていけば、強い臭いは残りませんよね?ウンコのにおいは、ベルトコンベアー周辺に広く薄く分布するはずです。

逆に言うと、今回の放射性物質の漏洩は、北太平洋全域に広く影響を及ぼすことになるのですが、そこまで広がってしまえば影響は軽微です。排水口付近で基準値の24倍ですから、太平洋全域に薄まれば無視できる水準になります。現状では福島原発から流出した放射性物質の量がわかっていませんが、今回の事故で、太平洋の魚が汚染で食べられなくなると言う話ではなさそうです。

以上は、放射性物質が海流とともに流れて大規模に拡散するシナリオです。微粒子など混濁体に付着して、沿岸流に一定期間漂うケースや、海底に付着して流されないで残るケースも考えられます。こういった局所的な汚染がどの程度残るかは現段階ではわかりません。局所的な汚染については、沿岸砂州と砂浜のモニタリングで状況を把握することになるでしょう。福島から犬吠崎までは、今後の環境モニタリングが重要になります。

11:32追加情報

先ほど、ツイッターにて、2009年に大型クラゲが犬吠崎をこえて移動したことを教えていただきました。@mtoyokawさん、ありがとうございます。

下の図は、2009年の大型クラゲの出現時期と移動経路を示したものです。

http://www.fra.affrc.go.jp/kurage/h21/h21kurage.pdf

9/30に福島沖で観察されたクラゲは、2ヶ月後には和歌山まで達しています。10 月に関東近海で黒潮が離岸していたために(黒潮は移動するのです)、千葉まで輸送された大型クラゲは黒潮内側域にまで拡がり、神奈川・静岡で大量出現となったそうです。このクラゲは全て黄海から流れてきたものであり、黒潮系に進入した後で増えたわけではありません。放射性物質の多くは外洋に流れ出るとは思いますが、海洋条件次第では、クラゲと同様に、沿岸流によって、南下する可能性はあります。黒潮系(犬吠崎以南)は、親潮系と比較すればリスクが低いとはいえ、手放しで安心を出来る状況ではありません。数ヶ月の間は、モニタリング結果に注意をする必要があります。

13:24 追加情報

クラゲが犬吠崎を越えた2009年の9月22-30日の海流の図です。黒潮が大きく離岸して、親潮系の水が千葉沿岸を南下しています。2009年の秋には、この青の矢印の海流に乗って、クラゲが南下したと思われます。黒潮がこの状態なら、沿岸を伝って串本(和歌山県)まで、クラゲが漂流するのもうなずけます。


(ソース:海上保安庁 海洋速報海流図)http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/KAIYO/qboc/2009cal/cu0/qboc2009183cu0.html

2011年3月10-17日の黒潮は次のようになっています。幸いなことに、外房にかなり接近しています(ラッキー!)。放射性物質の流入が収まるまで、このまま黒潮が外房沿岸近くを流れてくれれば、福島の水が大量に南下することはなさそうです。


(ソース:海上保安庁 海洋速報海流図)http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/KAIYO/qboc/2011cal/cu0/qboc2011052cu0.html

黒潮は動くときは数日で動くので、今後も注意が必要です。最新の情報は海上保安庁海洋情報部で確認できます。最近の海流の変化のアニメーションがわかりやすいです。

最終的な影響は、大規模なモニタリング調査をしないとわかりません。このページは私個人が現時点までに知り得た情報をまとめたものであり、政府がしっかりとした調査結果を公開するまでの参考程度でお願いします。

ドイツの研究所が、「福島原発から、海に入った放射性物質は、短い期間で、検出できないレベルに希釈される」と考察

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4/2追記 このドイツの研究機関の分析は、放射性物質の漏洩が短期小規模で終わるという日本政府の初期の発表に基づいています。現在は状況が大きく変わったことを留意した上で、読んでください。

興味深い記事が中国のサイトに掲載されました。

「ドイツの漁業環境の放射能汚染観測を担当しているチューネン研究所はこのほど、日本の福島第一原発から漏洩した放射能は魚類などの海洋生物に長期的な汚染をもたらさないと発表しました」
http://japanese.cri.cn/881/2011/03/20/162s172309.htm<

元の記事はこちらだということをツイッターで教えてもらいました。

Japan: Zur möglichen Kontamination von Fischen und Meerwasserpflanzen
Google翻訳で、ドイツ語を英語に直したものを、私が日本語に翻訳したのが下の文章です。(2011 3/21 17:39 update)

ここ数時間、福島の原発から、大きな変化は伝わってきません。危機的な状況をコントロールしようと、努力が続けられています。現場を指揮する組織(東電)からは、これまでに放出された放射性物質の種類や量に関する情報が提供されていません。
IAEAはそのため、官庁が計測した (behördlich gemessen) 日本の放射性物質に関する情報を照会しました。それらのデータが利用可能になるまでは、一般論としては、引き続き揮発性の放射性物質が放出されることが考えられます。放射性物質としては、放射性核種を含むセシウム134(半減期2年)とセシウム137(30年の半減期)、およびヨウ素131(半減期8日)が含まれます。
消費者にとっては長寿命のセシウム同位体が問題で、ヨウ素131は数週間で検出できなくなります。
チェルノブイリ事故後25年にわたる北海とバルト海の魚の放射能データを、当研究所(the Johann Heinrich von Thünen Institute)の研究員が解析したところ、北海のような灌流の激しい海では、放射性物質は比較的素早く希釈されることがわかりました。たとえば、チェルノブイリ事故があった1986年以降、北海では、海水からも、魚からも、セシウム137の濃度が急激に薄まりました。事故の翌年には、チェルノブイリ由来のセシウムは検出不可能になりました。北海の魚と海水に現在残っているセシウム-137は、1950年代、1960年代の核兵器実験に由来する潜在的な汚染(background contamination)によるものです。ドイツの海水の計測は、連邦海事水路庁(BSH)が行っています。
これらの情報と、今まで得られた太平洋の情報を総合すると、福島の汚染された冷却水や大気から、海洋に入った放射性物質は、非常に短い期間で、検出できないレベルに希釈されると予想できます。
当研究所の科学者は、日本の状況を監視して、新しいイベントに対して、迅速に対応することができるように、万全の備えをしています。

以上です。

三瓶愼一先生(慶應義塾大学,ドイツ語学)に添削していただきました。ありがとうございます。初期の私の和訳は、この記事の下につけてありますが、やや不正確な点がありました。

中国のニュースサイトは、「日本が発表したデータに基づき」と書いていますが、これは誤りです。正しくは「現状ではデータがないので、IAEA経由で日本のデータが公開されるのを待っている」ようです。

海洋中の放射性物質は、急速に希釈されて、すぐに検出できなくなるという内容は、非常に勇気づけられるものです。また、半減期が長いセシウムの生態濃縮が気になっていたのですが、魚の中からも、すぐに検出できなくなったというのは朗報です。

生物濃縮については、コメント欄をご覧ください。

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シーシェパードが急成長した原因は、日本の失策

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朝日新聞にシーシェパードが初めて登場したのは1987年。その後20年間は、ごく希にメディアに登場するに過ぎなかった。過激なパフォーマンスにもかかわらず、数年前まで、鳴かず飛ばずだったのだ。シーシェパードはゴムボートから瓶を投げたり、停泊中の捕鯨船にいたずらをするぐらいの、しょぼい集団であり、支持者はそう多くなかった。しかし、シーシェパードの活動は、2008年から、突然活発化する。わずか4年後には、大きな船を複数所有し、日本の調査捕鯨を実力阻止してしまった。

1987 1 アイスランドで停泊中の捕鯨船を襲撃
1988 1 ロシアのクジラ救出に対するポール・ワトソンのコメント
1992 1 日本イカ流し網を妨害
1994 1 ノルウェーで停泊中の捕鯨船を襲撃
2003 2 太地町のクジラ漁妨害
2004 0
2005 0
2006 0
2007 1 日本のザトウクジラ捕獲宣言
2008 52 捕鯨船への相次ぐ攻撃
2009 18
2010 88
2011 20

ここ数年のシーシェパードの装備の充実には目を見張るものがある。2007年12月には、スコットランドの漁業監視船を中古で購入し、さらに、2010年には、中古の捕鯨船を購入する羽振りの良さだ。

M/Y Steve Irwin December 5, 2007 全長53m, スコットランドの漁業監視船
M/Y Bob Barker January 5, 2010, 全長52.2 m、ノルウェーの捕鯨船

今は、ヘリコプターも持っているので、ひとたび発見されたら、逃げ切るのは困難だろう。

切っ掛けはザトウクジラ

シーシェパードの急成長の要因は、水産庁のザトウクジラ捕獲宣言だ。豪州やNZのホエールウォッチング愛好家は、南氷洋のザトウクジラを個体識別して、名前をつけて、愛でている。水産庁は、2007年から、南氷洋のザトウクジラを50頭捕獲すると宣言して、南半球の反捕鯨運動の火に油を注いだのである。豪州は「誰が、日本の捕鯨船に殺されるの?」と半ばパニック状態になってしまった。日本でも、釧路のラッコのくーちゃんが大人気であった。もし、地球の反対から、釧路沖にラッコを捕る船がわざわざやってきたら、釧路のくーちゃんファンは、どう思うだろうか。

それまで、日本が調査捕鯨で獲っているミンククジラは、資源も豊富で、ホエールウォッチングの対象でもなかった。「ミンククジラを守れ」では、寄付金は集まらなかったのだ。日本がザトウクジラ捕獲宣言をしたおかげで、寄付金がいくらでもあつまるようになった。ザトウに手を出したら、こうなるのは、ちょっと考えればわかる話なのに。日本のザトウクジラ捕獲宣言によって、豪州・NZにおけるシーシェパードの集金力は一気に跳ね上がり、2007-2008の調査から、妨害工作が大規模化したのである。水産庁は「近年、シーシェパードの妨害が活発化して・・・」と言っているけど、その原因を作ったのは日本なのだ。

シーシェパードの活動の活発化の背景には、日本政府の失策がある。シーシェパードが怪しからんと思う人間は、その怪しからん団体が、何で大型船をバンバン買えるのか考えてほしい。ザトウ捕獲宣言をして、シーシェパードに寄付金があつまる状況をつくったのは、他ならぬ水産庁だ。今回、南氷洋から撤退するにあたり、「シーシェパードの妨害のせいで撤退する」とわざわざ世界中に宣言して、シーシェパードに捕鯨阻止という大金星をあたえてしまった。日本の国益を考えれば、「船の調子が悪くて」とか、「国内の都合で」とか、別の理由を準備すべきだろう。どこまでシーシェパードの発展に寄与すれば気が済むのだろうか。

日本がシーシェパードを育てたせいで、これから世界中の漁業者が彼らのテロに晒されるだろう。申し訳ない気持ちで一杯だ。

北洋サケマス漁業について

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露への資金提供、4社以外で違法操業見つからず

水産庁は4日、4社以外で同EEZ内でサケ・マス漁などを行う43隻を調査したところ違法操業は見つからず、調査を継続すると発表した。

操業日誌や市場が発行した伝票の提出を求めたが、金品提供を明らかにした漁船はなく、過去に違反が判明し た4隻を除き、漁獲超過も確認できなかった。また、調査では、「保存していない」などとして伝票を提出しない漁船が続出したほか、調査への協力を拒んだ漁 船もあった。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110304-OYT1T00973.htm

操業日誌に漁獲超過の痕跡が無いのは当然だ。漁獲枠の超過を馬鹿正直に操業日誌に記録して、わざわざ証拠を残す漁業者がいるはずがない。過去に立ち入り検査で違反が判明した船だって、操業日誌はつじつまを合わせていたはずだ。操業日誌の確認など、やっても無駄なことは、やる前からわかっている。

このニュースの重要な点は、伝票の提出を求めた点である。伝票は取り引き相手があるので、漁業者単独で、魚種や数量を虚偽記載するのは難しい。伝票の方が、確実に漁獲の実態を反映しているから、提出できないのだろう。

豊進丸の違法操業

数年前に、ロシアに拿捕された豊進丸の場合は、単価の高いベニザケをシロザケと偽って、隠していた。私が書いた本文より、コメントの方が内容があるので、そっちを中心に読んでください。

豊進丸拿捕 ロシアに乗組員解放命令

豊進丸事件のまとめ&続報

裁判記録によると、「ロシアEEZで操業していた豊進丸(割当量:シロザケ85.2トン、ベニザケ85.7トン、ほか)は、6月1日にロシア側から臨検を 受け、45トンのベニザケのうち20トンをシロザケとして記録・報告していたために拿捕された。捜査の結果、ベニザケはシロザケの覆いの下に隠匿され、船 舶日報の虚偽報告、意図的な虚偽の漁獲量情報の提供、意図的な操業日誌不実記載などが判明した。」となっている。
日本政府は、国際海洋法裁判所の公判において、「豊進丸の違反は、操業を許可された2種類の魚について操業記録を不正確に書いたこと以外の何物でもな い。違反の重大性は比較的限られたものである。参考までに申し上げると、日本政府はこの種の違反を悪質性の低いものとして取り扱っており、他の殆どの国々 も同じ扱いをしていると思う。」と、如何にも「IUUに優しい国」日本の取締りがグローバルスタンダードであるかのように証言している。
これに対し、ロシア側は「今回の違反事件は(単なる操業日誌の記入ミスではなく)、船長が綿密に証拠隠蔽を企てた、詐欺と事実歪曲による高度の計画的犯行である。」と、犯行の核心をつく厳しい証言で切り返している。
これら日ロ両国の証言を受けた裁判の判決では、これは一切報道されなかったが、「ITLOSは、豊進丸の船長が犯した違反を、単に些細な違反や純粋な技 術的ミスであるなどとは考えるべきではないとの見解にある。正確な報告が要求される漁獲量のモニタリングは、海洋生物資源の管理において最も重要な手段の 一つである。そのようなモニタリングを実施することは、単にロシア連邦の権利としてではなく、適切な保存及び管理措置を通じてEEZの生物資源が過剰漁獲 による危機に晒されないことを確保するための海洋法条約第61条第2項の規定も考慮されるべきである。」と、IUUに優しい日本の立場を断罪し、レポート システムの重要性を指摘しつつ、資源管理に対する背信行為を厳しく非難している。

日本政府は「軽微な違反」と主張しているが、国際海洋裁判所は、「違法操業に甘い日本政府の姿勢は、国連海洋法条約に反する」と一刀両断している。このことは、日本のメディアは一切、伝えなかった。「ロシアが漁船の乗組員を不当に拘束している」と人道上の問題ばかりを報道したのだが、実際には、日本人漁業者は拘束されていなかったのである。そのことも、伝えなかった。国連海洋法条約は日本の領海でも適用されるので、自国漁業についても、漁獲量のモニタリングを正確に行う義務が生じているが、水産庁はこれを無視し続けている。

北洋漁業の実態については、此方が参考になります。

揺れる北海道サケ・マス漁 社会新報道内版1993/1/15
http://www.kotoni.net/kadowaki/kado/suisan/sakemasu.htm

サケ・マス漁にはボタンのかけ違いという発端が確かにあった。そして国や道の担当者は不正な状態を事務的に引き継ぎ、海上保安庁は政策がらみのことに手を出さなかった。それに加えて不正をチェックすべきジャーナリズムが見て見ぬふりをしてきたのである。
私は今回逮捕された漁業者を大上段から非難することなど到底できない。罪人は漁業者ではあるが罪人をつくったのは行政であり、保安庁であり、ジャーナリズムだと思っている。しかし一番の悪人がだれだったのかといえば、特定できそうもない。
不幸だったのは日ソ交渉が国家と国家とのぶつかり合い、だまし合いに終始し、本来最も重要なはずのサケ・マス資源論争がねじ曲げられてしまったことである。サケ・マスだけでなく、日本の遠洋漁業ではおしなべて資源論争がねじ曲げられてきたと言えよう。

ここに書かれていることは良くわかる。だからといって、現状を放置しておいて良いわけではない。「漁獲枠?ごまかせば良いよ」という、いい加減なことは、日本国内でしか通用しない。ロシアの取り締まりが強化されているし、国際的にも不正には厳罰が当たり前の時代になっている。重要なのは、これから、どうするかということ。

いつ頃から、誰が「魚離れ」と言い出したか

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朝日新聞を使って、いつ頃から、誰が「魚離れ」と言い出したかを調べてみた。

1976年 若い女性は魚離れ 料理は苦手、鮮度にも関心薄い おさかな普及協会調査
1978年 消費者に“魚離れ”52年度200カイリ時代初の漁業白書_漁業白書
1981年 魚離れ一段と 値上がりの分析不十分 漁業白書_漁業白書
1984年 魚離れ防止へ農水省がPR_水産業

朝日新聞に最初に魚離れが登場したのは1976年。
紙面には、

「魚が好き」やっと半数
一匹買わずに切り身で
魚屋よりスーパーが好き

という見出しが躍っている。実に、34年前の記事なんだけど、昨日の記事と言っても通用しそうだ。ちなみに、この「おさかな普及協会」というのは、大手水産と荷受け59社が作ったそうだ。

1978年から、水産庁が漁業白書で魚離れキャンペーンを開始する。当時は魚の値段が上がって、肉との価格差が無くなったことから、魚の消費の低下が懸念されていたので、販促をしたのだろう。その後もバブルによって、日本人一人当たり1年間の水産物消費量(KG)は増加を続けた。

2001年から、消費が落ちているのは、世界的な魚の値上がりで、輸入が減少のが理由。こちらは構造的なので、今後も魚の消費量は下がるだろう。ただ、これは、消費ではなく供給の問題。日本の消費者が魚を避けているのではなく、世界の魚が日本から離れているのだ。

急速に進行しているのは、「日本人の魚離れ」ではなく、「魚の日本離れ」

日本の食文化の喪失は、魚離れではなく、米離れ

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ここに過去100年の日本人の食料消費量の統計がある。日本の食卓の変化は、米離れに要約できる。

http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/0280.html

日本の食文化が失われつつあるのは確かだけど、最大の変化は米食の低迷だ。魚なんて、戦後に消費が急増した食品の代表格で、100年前より今の方が何倍も食べている。また、クジラを大量に食べたのは、戦後の食糧難の一時期だけ。日本の伝統的な食事における重要性は、「米+漬け物>魚>クジラ」なんだけど、文化的な価値は逆らしい。おかしな話である。

クジラは採算度外視で、国が地球の反対まで獲りに行き、魚は税金使って、プロモーションをする。その一方で、米は減反政策で、税金を使って、わざわざ生産量を減らしているのだから、本末転倒だろう。

日本の農政・漁政は、一次産業従事者の既得権の保護を最優先にして、食文化をないがしろにしてきた。減反政策の目的は、兼業農家を守るための米価格維持だろう。票田を守るために、水田を犠牲にしたのである。

本来は、乱獲されている水産物こそ国が規制をすべきなのに、漁業者が反対するから、漁獲規制はしない。魚食文化の普及と称して、乱獲された魚の販売促進を行っている。

こういった政策を正当化するために、「自給率」、「文化」、「多面的機能」、「省エネ」などが都合良く利用されてきた。これらの単語が出てきたら、疑ってかかった方が良い。一歩引いて、言っていることではなく、やっていることを見ること。誰が得をして、誰が損しているかを冷静に見極めること。

Gordon Ramsayがサメを追う

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The Cove風味の潜入ドラマになっている。画像の説得力はすごいね。
無管理なサメ漁業への風当たりは今後も強まるだろう。アジアでひとくくりにされて、日本も完全に同類だと思われているわけで、何とかしないとまずいです。

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