日本の捕鯨運動について批判をしたところ、次の論文を著者から送っていただいた。
‘An Alternative Explanation of Japan’s Whaling Diplomacy in the
Post-Moratorium Era’, Journal of International Wildlife Law & Policy, 10:1, 55 – 87
http://www.informaworld.com/smpp/content?content=10.1080/13880290701229911
これは、国際政治学の分野から、日本の捕鯨外交を分析した論文なのだが、
当ブログで主張したことと、殆ど同じ内容のことが書いてあるではないか!!
引用するとこんな感じ。
We further argue that the whaling camp even does not want to lift the moratorium and is only pretending that it is devoted to resuming commercial whaling because it preferes the status-quo which favores the continuation of “scientific” whaling.
あんまりにも結論が同じなので驚いたが、良く考えると一致するのは必然かもしれない。
思いつく範囲で、日本の行動を合理的に説明できるのは、あのシナリオしかないのだから。
俺のブログは思いつきを書き殴りスタイルなので、
莫大な引用文献と論理構成によって構築された論文とは、
比較の対象にもならないのだが、同じような道筋で同じ結論に達したというのは、
それ以外の見方が難しいと証拠だろう。
捕鯨プロレス論に対する確信をさらに強くした。
俺は、無為無策とその場しのぎを繰り返して、
プロレス状態になってしまったのかと思ったのだが、
この筆者らは、現在の膠着状態は意図的に造られたものだと主張している。
メディア戦略の分析は目から鱗であり、かなり説得力がある。
大本営のメディア戦略については、じっくり調べてみる必要がありそうだ。
このあたりの比較手法は、実に、参考になります。
あと、国際法についてもいろいろと教えてもらいました。
捕鯨再開への選択肢として、
3)IWCを脱退して、沿岸捕鯨で細々とやっていく
→南氷洋調査捕鯨とIWC多数派工作にかかる経費は不要になる
と書いたのだけど、IWCを脱退したからといって、沿岸捕鯨が出来るわけではないようです。
国連海洋法条約によって、地域管理組織の管理下でないと、沿岸であろうと捕鯨は出来ないらしい。
正しくは、
3a)IWCを脱退して、国連海洋法条約を脱退し、沿岸捕鯨で細々とやっていく
3b)IWCを脱退して、新たな地域管理組織をつくり、沿岸捕鯨で細々とやっていく
となります。
ただ、捕鯨ごときで、国連海洋法条約を脱退するのは現実的ではないし、
国際的に孤立した状況で、地域管理組織などできるはずもない。
日本のみ地域管理組織の費用を負担するのは非現実に高くつくだろう。
ということで、この選択肢は現実的ではない。
そうなると、なおのこと、①ノルウェー、アイスランドと組んで、
グレーゾーンを使って商業捕鯨をビジネスの軌道に載せるか、
②米国の理解を得られる範囲で、捕鯨再開を目指すしかない。
沿岸捕鯨ということであれば、後者はIWCの枠組みでも可能だと思う。
米国はたびたび、南氷洋での調査捕鯨を辞めれば、
日本の沿岸捕鯨は認めるというような妥協案を出している。
しかし、日本側が「一切、妥協はしない」と蹴っている状況である。
害獣クジラから日本の漁業者を救いたいなら、
南氷洋の調査捕鯨を切ってでも、沿岸捕鯨の再開を優先すべきだろうに、
ここでも捕鯨グループの自己矛盾は明白である。
日本が本当に商業捕鯨再開を目指すなら、取り得る選択肢は2つ。
日本の行動を見ると、どの選択肢も目指してない。
むしろ、どちらの選択肢も日本側が拒絶しているのである。
日本は、捕鯨国による新しい捕鯨産業の構築しようとしてはいないし、
わざわざザトウクジラの捕獲を宣言したりするのは、
どうみても反捕鯨陣営を挑発しているだけだろう。
日本は、IWCでのクジラ論争を泥沼化し、捕鯨の再開を阻んでいる。
それは、なぜか。というのは、この論文を読んでほしい。
その上で、言っていることではなく、やっていることから、判断をして欲しい。