この記事には赤字の部分に誤りがあります。正しくは
http://kaiseki.ori.u-tokyo.ac.jp/~katukawa/blog/2007/11/post_244.html
をご覧ください
日本の基本戦略は、IWCおよび米国との関係をどうするかによって決まる。
1)ノルウェー・アイスランドと共にアメリカ様の許可が無くとも商業捕鯨を復活させる
→南氷洋調査捕鯨を犠牲にしてでも鯨肉を輸入をすべき
2)アメリカ様にはたてつかずに、IWC,CITESの決定に従い、世論の変化を待つ
→南氷洋調査捕鯨とIWC多数派工作は即刻止めるべき
3)IWCを脱退して、沿岸捕鯨で細々とやっていく
→南氷洋調査捕鯨とIWC多数派工作にかかる経費は不要になる
選択肢は少ないはずなのに、日本の捕鯨陣営の戦略は全く見えてこない。
捕鯨陣営の建前(ポーズ)としては1)であるが、実際には鯨肉を禁輸して、
ノルウェー・アイスランドのはしごを外してしまった。
ノルウェーとアイスランドは、IWCの商業捕鯨モラトリアムを留保しているので、
IWCの枠内でも捕鯨をする権利があるわけだ。
日本およびノルウェーはCITESのミンククジラを留保しているので、
取引をすること自体は可能である。
IWCにしても、CITESにせよ、会議としては禁止されていることを、
抜け道を利用して行うわけである程度の非難は覚悟すべきだろう。
ただし、留保という制度が加盟国の正当な権利であると考えると、
鯨肉「販売」によって成り立っている「調査」捕鯨よりはマシだろう。
まあ、50歩100歩というのは間違いない。
日本は国として、鯨肉を輸入をするという姿勢を2006年には示していたわけだ。
一端は輸入に合意 しておいて、相手が捕鯨を再開してから、
はしごを外すのは国としての姿勢に問題があるだろう。
やる気がないなら、先方にもそう言っておけばよいのに。
日本の捕鯨陣営は口先だけで、これらの捕鯨国と共闘していく覚悟があるようには到底思えない。
日本の捕鯨陣営は捕鯨国による新たな商業捕鯨の復活を目指していないのだろう。
一方で、日本は国際的な協調性を重視しているわけでもない。
調査捕鯨に対する国際的な風当たりは、ノルウェー・アイスランドの商業捕鯨の比ではない。
調査と称して、これら両国の商業捕鯨の倍も獲っていれば、当然だろう。
「自衛隊は軍隊ではありません」みたいな詭弁が通用するのは日本人だけである。
国際世論を無視した調査捕鯨が、結果として世界の反捕鯨運動を支えている。
反捕鯨運動はアンチ巨人みたいなものと考えるとわかりやすい。
アンチ巨人は巨人というブランドがあって初めて成り立つわけだ。
日本のプロ野球がメジャーのファームのようになってしまった現状では、
巨人軍というブランドは失墜し、わざわざアンチ巨人をしようという人間は絶滅危惧だ。
それと同じで、日本が反対するから、反捕鯨がパフォーマンスとしての価値をもつ。
世界の反捕鯨運動を支えているのは日本の捕鯨運動、特に調査捕鯨である。
日本がごり押しすればするほど、自然保護団体も米国も集金できて勢いづくわけだ。
日本が「もう公海で捕鯨なんてやんねーよ、バーカ、バーカ」といって引っ込めば、
反捕鯨活動に対する旨みはほとんど無くなり、関心もなくなるだろう。
アメリカ様の心変わりを待つなら、そちらの方が早道だ。
米国が捕鯨容認に回ってから、調査を再開した方が結果として早道だ。
IWCもCITESも米国に支配されているわけで、
これらの枠組みの中で捕鯨を再開するにはグレーゾーンを使う以外にない。
グレーゾーンをつかってでも、早期の商業捕鯨再開を目指すならば、
ノルウェー・アイスランドの鯨肉を輸入して、捕鯨をビジネスの軌道に乗せる必要がある。
一方、グレーゾーンを使わないと言うことであれば、米国の雪解けを待たなければならない。
「調査」捕鯨を強行して、反捕鯨陣営に燃料を投入し続けるようなマネは止めるべきだろう。
俺個人としては、ノルウェーアイスランドと組んで、商業捕鯨の枠組みを再構築して欲しいと思う。
アイスランドはまだ完全に撤退を決めたわけではない。
http://news21.2ch.net/test/read.cgi/bizplus/1191919991/27n-
ノルウェーも日本の態度を見極めるために、漁業大臣が来日する。
今が、これらの捕鯨国に明確なシグナルを送るラストチャンスであろう。
茨の道を目指さないというのであれば、「調査」捕鯨は止めるべきだろう。
公海での調査捕鯨がある限り、米国の世論は捕鯨容認へとは向かわない。
米国が反対する限り、IWCはもとよりCITESは絶対に動かない。
「国際社会の合意が無い限り、外には獲りに行きません」という態度を明確にした上で、
IWCを一時的に脱退して沿岸捕鯨で一定量を国内供給するのが良いだろう。
牛肉の生産には水が大量に必要になる。
長期的には水資源の問題で牛肉の生産は減るだろう。
代替はクジラぐらいしか見あたらない。
日本が調査捕鯨によって、反捕鯨陣営に燃料を投入し続けない限り、
クジラを利用しようという方向に世界が動くのは時間の問題だと思う。
強硬路線にせよ、雪解け路線にせよ、最大の障害は調査捕鯨である。
日本が調査捕鯨利権にこだわる限り、時計の針は永久に止まったままだろう。
そもそも、商業捕鯨再開のための調査捕鯨だったはずであり、まさに本末転倒である。
日本は基本的な戦略を国際社会に対して明確にした上で、
商業捕鯨再開という大きな目的のために、調査捕鯨を中止する英断が必要だろう。