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11月3日の「世界一受けたい授業」に小松さんが出るらしい
- 2007-11-01 (木)
- お知らせ
そういえば、11月3日の「世界一受けたい授業」という番組に
小松 正之さんが出るようです。
http://www.ntv.co.jp/sekaju/index.html
うちはテレビがないのだけれど、テレビがある人は是非みてください。
水産の問題について、一般の人にも知ってもらう良い機会だと思います。
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AFCフォーラムの10月号は必読!
- 2007-11-01 (木)
- 日記
農林漁業金融公庫の月報誌にAFCフォーラムというのがある。
PDFで全文を読むことができるのだが、実に、内容が濃厚。
10月号は、こんな感じです。
10月号(特集:守れるか日本の魚食文化)
特集 日本の水産業と魚食文化を守るには 坂井 真樹
負のスパイラルに陥っている水産業を建て直すには 黒倉 寿
日経調、漁業者と意見交換 日本経済調査協議会
活性化に成功したノルウェーの漁業制度と資源管理 丹羽 弘吉
水産業を取り巻く環境は劇的に変わった 垣添 直也
伊勢・三河湾のイカナゴ資源管理(愛知県) 船越 茂雄
いま現場では 宮古漁業協同組合 大井 誠治 調査室
コメント 小松 正之
髙木総裁が率いる農林漁業金融公庫だけに、高木委員提言に関連するものが多いです。
黒倉先生のところを読むと、高木委員提言が出てきた背景がよくわかります。
丹羽さんのノルウェーの漁業制度と資源管理も必読ですね。
丹羽さんには今回のノルウェー訪問でも大変お世話になりました。
ここで、目次のチェック&ダウンロードが出来ます。
http://www.afc.jfc.go.jp/information/publish/afc-month/2008/0810.html
PDFの存在に気づかずに、本を送付してもらたので、代金を振り込まねば・・・
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ノルウェーに行ってきました
1週間ほどノルウェーに行き、
漁業とその管理について学んできました。
ノルウェーの漁業制度などは日本からでも勉強はできるけど、
現地に行かないとわからないことも多い。
「どういう経緯でその制度になったのか?」とか、
「実際のところ、どんな感じなのか?」とか、
「漁業者はどうおもっているの?」とか、
そういうところを忌憚なく聞いてきました。
ノルウェーの漁業政策はオープンな議論を重ねて方向を決めていきます。
だから、なぜ現在の政策になったかを皆が理解しています。
もちろん、細かい部分での不満はいろいろありますが、大筋では納得しているし、
細かい部分は今後の議論を通して解決していけると思っている。
漁業者のみならず、加工業者、流通、自然保護団体など多くの人間の意見が、
政策に反映されている。
日本のTACなんて、よくわからない値が密室で決められて、
何でその値になったのか誰も説明できないのとは雲泥の差ですね。
大勢の方に協力していただき、実に有意義な訪問スケジュールでした。
ぎっしり詰め込まれて、一分の隙も無いぐらいです。
フリーは28日(日)だけでしたが、この日は雨と風が強かったので、
次の日のアポに備えて、ホテルで予習&復習をしていました。
23日 午前:日本発
深夜:ベルゲン着
24日 午前:サバ水揚げから冷凍までのプロセスを見学
午後:輸出会社訪問
25日 午前:販売組合を訪問
午後:オスロに移動
26日 午前:オスロでオロオロ
午後:漁業省訪問
27日 終日:ベルゲンに戻る
28日 終日:雨のためホテルで資料整理
29日 午前:販売組合を訪問
午後:漁業庁、海洋研究所を訪問
30日 早朝:日本に出発
31日 昼 :日本に到着
スケトウダラシリーズを、片付けたら、ノルウェー訪問記を書きますね。
ベルゲンの町並みは、とても美しかったです。
なんか、おもちゃの町みたいでした。
ノルウェーのサバ漁船
噂に聞いていたとおり、設備もグッドでしたよ。
ノルウェーでは古くなった船はデンマークなどに売って、常に最新の船を使うようです。
ノルウェーの海洋研究所の調査船は、格好いいですね。
何隻も船があるのだけど、これは一番大きなG.O.SARS号。
生物のモニタリングのために、静穏性が非常に高いそうです。
Hjort号なんていうのもあるようですよ。
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スケトウダラのおもひ出 その6
卓越年級群を未成熟のうちに取り尽くしたことがわかって、
「まあ大変」という状況で、俺が北海道に呼ばれたのだった。
その時点では、資源的にはまだ間に合ったが、漁業的には手遅れだったと思う。
この資源は90年代から減り始めたが、
漁獲量の削減が真剣に議論されるのは、ほんの数年前。
誰の目から見ても資源の枯渇が明らかになってからである。
この状態になると、漁業経営は苦しくなっており、
漁獲を控えめに減らすのはすでにできない相談である。
年収800万が400万になるのと、
年収400万が200万になるのでは、話がぜんぜん違う。
すでに厳しい状況でさらに減らすというのは無理だろう。
資源が減れば減るほど、漁業者から漁獲枠を上げるようにプレッシャーが強まり、
TACはABCから乖離していく。
研究者もまた、ABCを増やすことで、漁業者に迎合してきた。
スケトウダラ日本海北部系群の管理目標は、毎年、下方修正されている。
平16年度:2014年度の親魚量が184千トンを上回る
平17年度:2021年度の親魚量が184千トンを上回る
平18年度:2026年度の親魚量が 85千トンを上回る
平19年度:2027年度の親魚量が 55千トンを上回る
管理目標を下方修正すれば、当面のABCを水増しできる。
その年の合意形成はやりやすくなるかもしれないが、
資源状態が悪化するほど、高い漁獲率を許すのは資源管理ではない。
平成17年から平成18年にかけて大幅な目標修正があった。
管理目標が資源回復ではなく現状維持に変わったのだ。
資源が良い状態に回復したなら、現状維持に目標を変えても良いかもしれないが、
資源が減っている中で目標を現状維持に変えるのは好ましくない。
また、資源管理に一貫性をもたせるためには、平成19年度の管理目標は、
平成18年度の目標(2026年度当初のSSBが85千トンを上回る)をそのまま利用すべきである。
資源が減ればそれだけ目標水準を減らしていたら、いつまでたっても漁獲にブレーキはかからない。
このように資源が減るたびに目標を下方修正していけば、
一見、管理をしているように見えて、資源はどこまでもずるずる減っていく。
前に進んでいるように見えて、後ろに進むムーンウォークのようなものである。
(やっぱり、マイケルの動きはキレがちがうね!)
この資源を持続的に利用するうえでの本当の勝負所は、90年代中頃だっただろう。
卓越がでなくて、資源が減ってきたことは実感としてあったと思う。
この時代には、まだがんばれば獲れたが、ここで漁獲量を減らすべきだった。
がんばっても獲れなくなってからでは遅いのだ。
そして、1998年級群を未成熟で獲らずに産卵をさせていたら、
今頃、全く違う展開になっていただろう。
スケトウダラ北部日本海系群は獲らなくても減るような資源ではない。
適切な時期に適切な漁獲量まで減らしていたら、今後も持続的に利用できたはずだ。
産・官・学が強固なスクラムを組んで、問題を先送りすることで、
雪だるま式に問題を深刻化させて、
ついには解決不可能にしてしまったのである。
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日本の漁業者は、甘やかされているが、大切にされていない
ノルウェーの漁業者は大切にされているが、甘やかされていない。
日本の漁業者は甘やかされているが、大切にされていない。
この違いがわかるかな?
ノルウェーでは、漁業への補助金はほとんど無い。
漁業者がけがや病気で働けなくなったときの生活保障ぐらいらしい。
その代わり、最低価格制度やオークションなど、
漁業者が漁業から安定した収益をえるための社会制度が整っている。
一方で、日本の漁業者は社会的な保証がない中で、厳しい競争にさらされている。
生き残るためには乱獲をしないとどうしようもないような状況が放置されているので、
漁業から得られる収益は減る一方である。
本来は、漁業と社会のあり方を変えないといけないのに、
補助金というあめ玉でごまかされている。
補助金の額だけみれば、日本の方がよっぽど恵まれているが、
社会に支えられて、安定した生活を営むことができるノルウェーの漁業者の方が
日本の漁業者より、よっぽどハッピーだよ。
基本的な部分を変えないと駄目だ。
そう実感した。
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スケトウダラのおもひ出 その5
卓越年級群の過大推定に関して、水研を責めるつもりはない。
誰がやっても不可避であっただろう。
資源評価など全く無視して、獲りたい放題の現状では、実質的な影響は軽微である。
たとえ、資源評価が正確であったとしても、同じように獲っただろう。
ただ、資源評価の問題点が明らかになった以上、
同じ過ちを犯さないように対策を練る必要がある。
大切なことは、失敗を認めて、原因を解明し、対策を練ることである。
平成18年の評価票には、次のように明記されている。
2003~2004年度の評価においては、資源動向が横ばいあるいは増加と、他の年とは異なる判断をしており、またこの期間に算出されたABCおよび過去の再評価結果の全てが、その後の資源状態の好転を予想した上で非常に高いABCを提示している(八吹 2003、2004)。これらの数値は、結果的に実漁獲量を上回った。これは、当時の1998年級群の好漁の結果、同年級豊度の評価を実際よりもかなり高く見積もり、その後の資源を支え、回復させる効果を過大に期待したことが原因であった。一方、2005年度以降の評価では、1998年級群の好漁が続かなくなり、当初想定したほど年級豊度が高くないと予想が修正されたこと、および2002年度漁期に、先の楽観的な資源予測の下で1998年級群を中心に獲り減らしてしまったことに伴い、資源状況およびABCの見積もり(過去の再評価、再々評価を含む)は大きく減少し、ABCは1万トン台で推移している(八吹 2005、本田ほか 2006)。なお、2005年度の実漁獲量はABCを上回った。
もちろん2003~2004年度の評価においても、当時使用しうる全ての情報を用いた上で、当時としては最適な評価を実施しており、1998年級群が当時想定したほど大きな年級群では無かったことは、当時の調査、研究技術の下では予見することが出来ず、当時の評価技術の限界によるものであった。これらを踏まえ、出来るだけ早い(若い)段階で年級豊度を正確に把握し、早急かつ適切に資源解析・評価に反映させることが必要となる。現在それを目的として、仔稚魚・若齢魚を対象とした計量魚探調査など、漁業情報と独立した調査の実施と情報の収集に取り組んでいるところである。
1998年級群の過大推定と資源評価の限界を認めた上で、
漁業情報と独立した調査の実施と情報の収集に取り組みを始めたのだ。
下の図は水試が行っている稚魚の調査結果である。
上が計量魚群探知機の調査で、下がトロールによる採取量を示したものである。
水研も時期をずらして同様の調査を行い、その結果を共有している。 *1
これらの調査によって、分布域のほとんどを網羅しているので、
漁業開始前に年級群の情報が得られるようになった。
現在、これらの調査結果は漁業者からも評価されているようである。
1998年級群の過大推定という失敗を経て、北海道の資源評価は進歩した。
再び同じ失敗を起こさないような体制が整いつつある。
最近、じりじりと減少しているスケトウダラ太平洋系群に卓越が発生したとしても、
北部日本海系群の1998年級群のような過ちは犯さないであろう。
これはきちんと失敗に向き合ったからである。
日本における資源評価の歴史は短いし、十分なノウハウはない。
だから、不可避な失敗は山ほどあるだろう。
失敗に向き合う姿勢があれば、それをヒントに資源評価を改善していくことができる。
失敗事例というのは、貴重な財産なのである。
日本の水産業界には、失敗に向き合う姿勢が欠如している。
現在の日本の水産業はすごい勢いで衰退しており、問題があることは明らかである。
役所も漁業者も、何でもかんでも鯨や海洋環境のせいにして、
自分たちの責任をうやむやにすることしか考えていない。
この無責任体質によって、漁業がどこまでも廃れていくのである。
*1 公開当時は、「これは水研の調査だが、水試も同様の調査を独自に行い
と記述しておりましたが、上の図は水試の調査の結果でした。
メールにて指摘をいただいたので、10月30日に訂正しました。
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スケトウダラのおもひで その4
先のエントリで、卓越年級群を過大評価するプロセスについて説明したが、
平成15年と平成18年の評価表を元に、どれぐらい過大評価したかを検証しよう。
|
平15評価 |
平18評価 |
過去5年 |
2歳 |
0.029 |
0.059 |
0.020 |
3歳 |
0.090 |
0.200 |
0.082 |
4歳 |
0.121 |
0.513 |
0.137 |
平成15年と平成18年の評価表より、卓越年級群が2~4歳で経験した漁獲係数(F)を抜粋した。
平成15年の時点では、Fをかなり過小推定していたことがわかる。
最後のカラムに、平18の評価表の卓越年級群より前の5年のFの平均値を示した。
これは平成15年の評価でのFの推定値と近い。
平成15年の時点で、卓越発生前のFはそれなりの精度で推定できていたのだ。
そして、卓越を漁業者が選択的に利用するということが織り込まずに、
そのFを資源評価に使ってしまった。
Fが過小推定されると、資源量は過大推定される。
大まかに言って、Fが半分になると、資源量は倍程度に推定される。
平成14年の資源評価では、
2歳魚で9.1億尾、2001年度には3歳魚で6.6億尾
平成15年の評価表には、
1998年級群が、2000~2002年度に2~4歳で、それぞれ8.4億尾、6.1億尾、4.3億尾と算定され、
とあるが、実際は4.1億尾、2.9億尾、1.8億尾であったことがわかってる。
|
平14評価 |
平15評価 |
平18評価 |
2歳 |
9.1億尾 |
8.4億尾 |
4.1億尾 |
3歳 |
6.6億尾 |
6.1億尾 |
2.9億尾 |
4歳 |
|
4.3億尾 |
1.8億尾 |
これが現在の資源評価の限界である。
だから、低水準資源の卓越年級群は細心の注意を持って、
成熟年齢まで保護しないといけない。
これは鉄則なので、ルールとして明記しておくべきだろう。
アンチ資源管理陣営は、資源評価が不確実だから、
資源管理などやめて漁業者は好きなだけ獲って良いと主張するが、
それがとんでもない暴論であることはいうまでもない。
不確実な段階で利用しなければ良いだけの話である。
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スケトウダラ北部日本海系群のおもひ出 その3
スケトウダラ日本海北部系群に関しては、研究者側にも大チョンボがあった。
そのことはきちんと書き示しておくべきだろう。
1998年は10年ぶりの卓越年級群であり、世紀末救世主と目されていた。
漁業者は、この年級群が漁獲対象になるのを指折り数えて待っていたわけだ。
主に沖合底引きと沿岸延縄の2つのグループがこの資源を利用している。
沖底は、大陸棚でえさを食べている群れを狙うので、未成熟も成熟も獲れる。
沿岸は産卵場に戻ってきた成熟個体をターゲットにするので、未成魚はとれない。
まずは、2000年に未成魚の段階で沖底が漁獲を開始した。
期待された卓越年級群だけあり、当初は調な水揚げであった。
「次は俺たちの番だ」と、沿岸漁業者の期待も高まった。
しかし、ふたを開けてみれば成熟までにとりつくしてしまい、
資源の回復には全く寄与しなかったのである。
日本ではありがちなパターンである。
資源評価の精度が悪いというのは、まあ、皆さんご存じの通りだが、
特に精度が悪いのが最近年の若齢魚である。
一般的な資源評価では、過去の年齢別の漁獲尾数を元に資源量を推定する。
漁獲を繰り返すうちに、推定精度は上がっていくが、
若齢魚は肝心な漁獲のデータが少ないので、推定値は大きくぶれることになる。
さらに、これが卓越年級群だったりすると、推定精度はさらに悲惨になる。
他の年級群との漁獲量の比から、それぞれの年級群の大きさを推定するのだが、
資源が低水準で卓越が出た場合、周りの年級とは桁が違うので比較が困難である。
周りに低い家ばかりのところに高いビルが1つだけあるようなものである。
推定精度はさらに落ちることになる。
また、コホート解析では過去の平均的な漁獲パターンを仮定して最近年の計算をする。
実際には、漁業者は卓越年級群を狙って操業するため、
卓越年級群は普通の年級群よりも強い漁獲圧にさらされる傾向がある。
結果として、卓越年級群は過大推定をされることになる。
後からわかった年齢別の漁獲死亡係数はこのようになる。
赤で囲んだ部分が1998年生まれが2~4歳で経験した漁獲圧である。
漁業者が狙うので、他の年級群より高い漁獲圧にさらされていたことがわかる。
1998年級群は、2000~2002年度に2~4歳で多く獲れた。
確かに、年級群として多かったこともあるが、
それ以上に漁業者ががんばって獲った効果が大きかったのである。
当時の資源評価は、漁獲量だけをみていたので、
たくさん獲れる→たくさんいる→もっと獲ってOK
となってしまった。
2002年には、わざわざ期中改訂をして、未成魚の漁獲を促したのである。
で、ふたを開けてみたら、例年並みにしか残っていなかったのである。
待望の卓越年級群が、自分たちの漁場に来る前に獲り尽くされてしまった
沿岸漁業者の心境は察するにあまりある。
資源が低水準のときに発生した卓越年級群は、
推定精度が低い上に、過大推定しやすい。
これは現在の資源評価手法の構造的な問題点である。
低水準資源に卓越が発生した場合、若齢から積極的に獲るべきではない。
獲らなかった魚は後で捕ればよいが、捕った魚はもう戻せないのだ。
1日でも早く獲りたいのは漁業者の常であるが、
ほとんどの場合、大きくしてから獲った方が儲かる。
また、低水準資源を回復させるためには、資源を回復させなくてはならない。
長い目で見て、未成熟の段階から利用するメリットはほとんどないのである。
低水準資源の場合は、卓越が発生しても、
未成魚の漁獲は例年並みの漁獲量にとどめるべきである。
最低でも1回は産卵をさせてから、積極的な利用を開始すべきである。
こういう獲り方をしていれば、
1998年級群を次世代に結びつけられたはずだ。
また、卓越年級群を、沿岸と沖合で公平に利用できたはずである。
現在の資源評価の精度は決して高くはないが、
そのことを肝に銘じた上でリスクを回避するように心がければ、
資源管理は十分に可能である。
2000-2002年に、研究者が犯した過ちは、資源量の過大推定よりもむしろ、
過大推定をする可能性を考慮せずに、安易に高い漁獲圧を認めたことである。
不確実性を勘定に入れた上で、リスクを回避しなかったことが失敗の本質である。
不確実性ではなく、リスク管理に失敗したのである。
資源管理ができないことを資源評価誤差のせいにしているかぎり、
同じ失敗を繰り返すだろう。
資源が低水準なときに、虎の子の卓越年級群を
未成熟なうちにがんがん獲るような愚行は絶対に避けないといけない。
今、まさにこれと同じことをしようとしているのがマサバ太平洋系群だ。
現在のマサバ太平洋系群は、当時のスケトウダラと非常に近い状況にある。
資源量は低水準で、2007年級群は卓越である可能性が高い。
北まき&茨城水試は、0歳が卓越だから、TACを増やせと声高に主張している。
はっきり言って、今の段階で0歳魚の絶対量などわかるはずがない。
それを担保に漁獲を増やすのは危険すぎる。
もし、思ったよりも0歳魚がいなかったら、
もし、思った以上に獲りすぎてしまったら、
せっかく回復しつつある資源をもとの水準までたたき落とすことになる。
92年、96年と2回も卓越を未成熟のうちに取り尽くし、資源回復の芽を摘んできた。
それでも、なお、卓越が発生したとわかると同時に0歳から巻こうとする。
北まきと茨城水試は90年代の失敗から何も学んでいないのである。
もし、小サバの中国輸出で07年級群をつぶしたら、
「日本の海の幸を中国に切り売りする売国漁業」として後ろ指を指されるだろう。
マサバ太平洋系群はいまだに低水準なのだから、
卓越が発生したとしても未成魚の多獲は控えるべきである。
少なくとも1度は卵を産ませてから利用すべきだ。
スケトウダラの失敗を経験した人間の一人として、
マサバ太平洋系群の07年級の未成魚の漁獲を諫めないといけない。
それが、見殺しにされたスケトウダラ日本海北部系群へのせめてもの供養である。
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日本独自のエコラベルだって!?
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200710240003a.nwc
水産資源の保護や環境保全に配慮して漁獲したことを認証する日本独自の「海のエコラベル」が動き出す。漁業関連団体などで構成する大日本水産会が12月にも、「マリン・エコラベル(MEL)・ジャパン」を立ち上げ、来年初めから国内の水産物を対象とした認証を始めるもの。
本家の英国MSCは費用がべらぼうにかかる。
それが、「営利目的」と批判され、敬遠される一因になっている。
しかし、ユニリーバがMSCでビジネスをしようと思うなら、
金を積まれたからといっていい加減な漁業にMSC認定はできないので、
悪いことばかりではない。
一方、日本のエコラベルは交通費程度で取得できるらしい。
まあ、たしかに安いに越したことはないけど、
浜までいけばそれで資源が持続的に利用されているかどうかわかるわけではない。
過去のデータをもとに資源の持続性を検証するのは、専門的な知識が必要な作業である。
持続性を検証するには、時間もコストもかかるのである。
そういう作業を一切、抜きにして
審査員「資源管理やってる?」
漁業者「うちは、ちゃんとやってるよ」
審査員「じゃあ、OK! このシールを貼っておいてね」
というようなことをやるのだろうか?
「国内のほとんどの漁業者が、環境に配慮した漁業に取り組んでおり、
地道な取り組みを広く消費者にアピールするのが狙い」というのは笑うところかな?
じゃあ、なんで日本沿岸には魚がこんなにいないのよ?
形式的な、実効性に乏しい自己満足的な取り組みしかやっていないからだ。
非持続的に利用されてる日本のほとんどの魚にシールが貼れるようである。
これじゃあ、何の意味もない。
たとえば、今話題のスケトウダラ日本海だって、
沿岸漁業者は自主的な取り組みを積極的にやっていたよ。
かなり模範的な部類にはいるので、ここだってシールを貼れるわけだ。
資源を崩壊させるような漁業でも、楽々認定されるようなものは、エコラベルではない。
消費者が知りたいことは、
「資源管理の取り組みをなにかしらやっているか」ではなく、「持続的に利用されているか」である。
日本のエコラベルは、前者で資格認定をしておいて、
あたかも後者のようなイメージを植え付けるのであれば、消費者を欺くものである。
俺には、消費者に正しい情報を与えると言うより、
消費者をだまして魚を高く買わせようとしているようにみえる。
エコラベルを作ろうという方向性は良いと思うが、
現状では基本的な方向性が間違えていると思う。
どんな漁業が認定されるのかワクワクしながら待つことにしよう。
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初音ミク - この衝撃を君はもう体感したか?
- 2007-10-23 (火)
- その他
今、いろいろと話題の初音ミクをげっとしたのだが、
マジで、す・ご・す・ぎ!!
おじさんは、感動したぞ。
YMO世代には、夢のおもちゃだ。
初音ミクというのは、音符と歌詞を入れると歌を歌ってくれるソフト。
これで遊んでいると、DTMがネクストステップに突入したのを実感する。
その昔、ACIDが出てきた時も、ループベースのお手軽さに多大なショックを受けたが、
初音ミクは、それに勝るとも劣らない衝撃である。
すごいポテンシャルを秘めたソフトだ。
心ゆくまでいじり倒したいけど、時間が無い。
いろいろと忙しくて、アマゾンから届いて1週間で、
正味3時間ぐらいしか遊べてないという厳しい現実がある。
ただ、驚くほど簡単に歌がつくれる。
過去にシーケンサーをいじった経験があれば、
ちょっとした歌なら1時間もあれば作れるだろう。
メロディーをピアノロールでいれて、歌詞を流し込むだけだから。
もちろん、ニコニコ動画にあっぷされているような凄いのは無理だけどね。
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