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ノルウェー

ノルウェーの政府関係者の聞き取りメモ

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24 June 2009
Ministory of Fisheries, Norway

small scale fishermen policy

漁業、社会経済、環境については、40年間同じ目標だが、ウェイトは変わってきた。持続的でなければ、漁業は成り立たない。目的が、より多く獲ることから、長期的な漁獲を増やすことに変わった。TACについて議論はほとんど無い。

ノルウェーは魚種が少ないので、管理をしやすい

14000名の漁業者
船は7000隻

558加工工場 
13000人の雇用

昔は、漁業は魅力的ではなかった
大勢が漁業を離れた→離れて何をした?→オイル産業などに転職
漁獲量は一定で、船を減らす→利益がでる。

管理システム
いくつもの異なる手法を併用している→どの漁業をどう管理するかは、誰がどうやって決める?→漁業者の話し合い
漁獲枠、ライセンス

15年間の実験のフィードバックで確立された。マスタープランに従って進んだわけではない。
大きな改革はない。小さな修正を徐々に積み重ねてきた。
もっとも大きな改革は####聞き取れず

ノルウェーの方法を輸出するのは難しいかもしれない。EUの共通漁業政策は大きな改革をしようとしているが、ノルウェーはそのような経験がない。

漁獲枠がICESの勧告を超えることはある?
以前はあったが、現在は、ICESの勧告内になった。
ICESの勧告を守る強制力はない。

2つの要素
precautionary and stability
漁獲圧は控えめにすべき、

blue whitingは漁獲枠が勧告を超えている。→joint managementの失敗、no agreement at all, free fishing going on.  2年以内に、漁獲枠を減らす計画がある。

shrimpはIVQがあるが混獲枠はトロール漁業全体で設定。
メインターゲットにしかIVQはない。それ以外は、テクニカルレギュレーション。
若齢魚が多くなったら、その海域を閉鎖する。

cod haddokは予防的枠の範囲になっている。

cod haddokは魚種別の漁獲枠だけど、それ以外はエコシステムベースのアドバイスを行っている。
海洋生物の保全に対するnew acts , new obligation
monitor and consider impact of bycatch

ノルウェーのトロール

3-4 target
10-14 bycatch
20種で90%ぐらい。
100魚種ぐらいが商業価値を持つ。

変化をとらえるindicator をモニターし、よからぬ兆候があれば、triggerが発動する

混獲物を持って帰らせることが第一歩。

1987年に、バレンツ海のdiscardを持ち帰るようなルールを作った
2003年 19種-75種に増えた。
持って帰れば、養殖の餌に使える。海に捨てるよりもマシな使い方がある。

どうやって、漁業者にそうさせるかが重要。
獲れたものは、全部持って帰る。投棄には厳しい罰則。
持って帰ると利益の80%は没収される。
minimum allowed size以下の魚でも20%の収入は入る。
持って帰るインセンティブが生じる。

FAO unwanted mortalityをへらすためのガイドライン
国際的な関心になりつつある。

最初から、魚はノルウェー社会に属している。
ノルウェー人か、それとも州に属しているかという議論があった。
魚はノルウェー人のもの、漁業の利益は漁業者の私有物
リソース・レントはとらない。
資源維持のためのリソースレントの導入が議論をされたことはあるが、導入には至っていない。

open accessは失敗
IVQの導入

1890年 ロフォーテンで漁業規制
60年代前半から、資源管理が徐々に導入される
科学が進むにつれて、行政・漁業者・大衆に、漁業管理の重要性が理解された。
1970年代にヘリングが崩壊することによって、気運が高まった・

ノルウェーの漁業者は科学的アセスメントを重視する。
科学者が警告をすると、漁業者は、生活を守るために、自ら漁獲制限を求める

漁業者14000人
4000はパートタイム
4000はラージスケール(船が20m以上)
6000はスモールスケール

船は7000隻
4500は、10m以下

small scale (<10m cod) gross income 1mil NOK some are 2mil NOK
沿岸の小型船の売り上げは、1500万円ぐらい。多い人は3000万円。

補助金政策
水揚げ地から、加工工場まで距離がある場合に、輸送を補助する補助金があるぐらい(南北問題か)

liscence
漁業の参加するためのライセンスが必要:年間許可と永続許可がある。
ライセンスには漁獲枠がついてくる。
漁船のライセンスが必要
個々の漁業にはライセンスがある。
ライセンスがない漁業もあり、生活ぐらいはできる。

漁船の大きさは、作る人間の自由。漁獲枠に見合ったサイズになる。
サイズと漁具によって、操業可能海域が決定される。
many different line
非常に複雑な線引きがされている。
conflictを避けるために、必要。
大型トロールは4マイルまでは入れない。
最初は漁具の接触を避けるためであったが、徐々に保全が目的になってきた。

15m以上の船にVMS VMS 10000 – 15000 NOK
排他的な漁業権を行使する以上、ルールに従う義務がある。

産業の生産性が増すと、自立した方が良いので、補助金の要求は無くなった。
補助金は変化へのインセンティブを失わせるので良くない
漁業補助金の問題点については、OECDレポートにある。

ノルウェーに行ってきたよん

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漁業省、漁業庁、組合、輸出業者、ミール工場など、いろいろなところを見学し、昨日、帰ってきました。1週間ほどの短い滞在でしたが、今回も盛りだくさんで、勉強になったYO。近日中に滞在記でも書きたいところだが、なんか時間が無いっぽいな。まあ、期待せずに待っててください。

でもって、今日は東大の工学部で授業でした。時差ぼけ&体調不良で、後半に少し息切れをしたけれど、無事に終わって良かった。いつも思うんだけど、水産と無関係の人間に話をするのは難しいね。講演などで、俺の話を聴くために集まった人間なら、それなりに話を聞いてくれるんだが、工学部の授業だと漁業に興味も関心もない学生が多くいる。そういう学生にも聞ける話をするには、特に導入部が重要になる。そのことは、わかっているのだが、実践はまだまだ不十分だ。次は、三重大で情報科学基礎の授業だが、これも重要。漁業の改革も、授業も、チャレンジの連続ですよ。

組合・個人ベースで利益を伸ばすノルウェー漁業

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企業化を進めて、国際競争力を高めている代表的な国が、ニュージーランド(NZ)である。一方、組合が企業の役割を補完して個人ベースの漁業で生産性を上げているのがノルウェーだ。

ノルウェーの漁船漁業は、世襲の家業である。親父の船を息子が継いで漁を続けている。サバを獲っているような旋網船は、船主の所有物である。このあたりの構造は、銚子の漁船漁業とほぼ同じ。漁業が儲かる家業のノルウェーでは、漁業を辞める人間がいない。だから、ノルウェーで漁業をするには、漁業者の子供として産まれる以外に方法はないという話だ。

個人・組合ベースであっても、ちゃんとやれば利益がでることを、ノルウェー漁業は証明している。ノルウェーの基本戦略は次の2点だ。

1)国が資源の持続性を保障するために、責任ある管理措置をとる。
2)個別漁獲枠制度を導入し、早どり競争を抑制する
3)単価が上がるように、組合が努力をする

ノルウェーはEUと協力して、サバ資源の管理に取り組んでいる。資源水準は良好であり、漁獲は厳しく資源されている。また、個別漁獲枠制度によって、自分の漁獲の権利は保障されているから、焦って獲る必要はない。豊富な資源の中から、高く売れるサイズを、高く売れるタイミングで獲りに行けばよい。資源は豊富だが、漁獲枠が限られているという状況なので、探索船や運搬船などの余計な設備は不要である。魚の奪い合いに無駄なコストをかけずに、良い魚をコンスタントに水揚げできる。

魚価を上げるために組合は最大限の努力をしている。たとえば、最低価格制度というものがノルウェーにはある。最低価格制度というと、日本の漁業関係者は、「安い値段しかつかなかったら、最低価格との差額を税金で補填して貰えるのかな」と思うだろうが、そんな甘っちょろい制度ではない。ノルウェーでは全ての魚は組合を通して販売しなくてはならないのだが、組合は自らが設定した最低価格以下では、魚を売らないのである。もし、設定した最低価格で売れなければ、その魚は鮮魚市場では売れずに、ミール工場に直行だ。漁業者からすると、自分の漁獲枠を安価なミール向けの魚では埋めたくない。だから、最低価格に届かない品質の魚は、極力獲らないのである。ノルウェーの最低価格制度は、最低品質制度ともいえる。バイヤーは、ノルウェーの魚は買いたたけない代わりに、品質については安心して買うことが出来るのだ。

最低価格制度が、経営の柔軟性を奪っている側面もある。ライバル国(たとえばアイスランド)は、ノルウェーが最低価格以下では売れないことを知っている。だから、ノルウェーの業者よりも、少し安い金額を提示して、商談をまとめることもある。そういう不利益は百も承知で、ノルウェーは最低価格制度を続けている。品質と供給が安定させれば、魚価は自ずと上昇することを、ノルウェー人は知っているからだ。安売りをしないことで、短期的に失う利益よりも、長期的に得る利益の方が多いことを理解しているのだ。

今でこそ、高品質で知られているノルウェーのサバも、90年代に日本に入ってきた当初は値段が安かった。日本の消費者にとっては、単なる輸入魚に過ぎなかったのである。しかし、安定した品質の魚を、安定供給することで、日本国内でのノルウェーサバの認知度は向上した。今では、店頭でノルウェーサバの方が値段が高いのが当たり前だし、塩鯖ならノルウェーという消費者も多いだろう。

また、ノルウェーの組合は、出来るだけ高い値段で売れるように、ネット上でのセリを運営している。少ない人員・コストで、大きな成果を上げている。オークションの結果は、インターネット上で、リアルタイムで確認できる

日本の旋網はなんで儲からないのか

銚子とノルウェーの旋網を比べると、むしろ、銚子の方が大規模かつ企業的だろう。ノルウェーは1隻(8~10人のクルー)で操業の全てをこなす。銚子の巻き網船団は、探索船、運搬船、旋網船×2の4隻がセットで操業をおこなう。それだけ、人件費も燃油もひつようになる。銚子の旋網船団は、最新のソナーで武装した探索船を駆使して、群れの奪い合いをしている。群れを見つけたら、他の船団に獲られる前に、とにかく獲る。値段は、港に帰ってのお楽しみである。早い者勝ちの一網打尽操業の結果、資源は低迷を続けている。卵の生き残りが良かった、当たり年産まれを取り尽くす操業形式であり、漁獲サイズに多様性がないので、多様な需要を満たすことが出来ない。

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(マサバの漁獲の年齢組成 資源評価票より引用)

今年も、円高で輸出が止まっているのに、国内需要がないような小型魚ばかりを水揚げして、せっせと凍らせているようだ。海に泳がしておけば、電気代もかからない し、成長するし、卵も産むのに、もったいない話である。まともな取り締まりもせずに、早どり競争を野放しにしている日本では、必然的にこうなる。

まとめ

ノルウェー漁業が儲けているのは、企業ベースだからではないし、漁業の規模が大きいからでもない。行政と組合がやるべき仕事をきちんとやっているからである。

もちろん、薄利多売でも短期的な利益が出るかもしれない。北巻にだって、利益を出している船はある。そういう船だって、マイワシに続いてマサバが、本当にいなくなれば、終わりである。今のままでは、「今年はいいけど、来年はわからないなぁ」という程度の経営しか成り立たないのだ。北巻が今まで続けてこられたのは、90年代以降のマサバの生産力が安定していたからである。もし、加入の失敗が数年か続 けば、マサバもマイワシと同じようになるだろう。そうなるまえに、ノルウェーを見習って、ほどほどの漁獲で利益が出るような体質に変える必要がある。

そのためにやるべきことは3点だ。

1)十分な産卵親魚を取り残すこと
2)漁獲枠を個別配分して、早どり競争を抑制すること
3)魚価を上げること(安売りをしないこと)

どれも、当たり前のことである。この当たり前のことをやらずに、漁船漁業構造改革総合プロジェクトとかいって、すでに過剰な漁船を増やすようだけれど、金が余っているなら、補償金でも積んで、0歳・1歳魚の漁獲を禁止にすればよいのに。これをきっちりやれば、2年後ぐらいには、資源も漁業もかなり良くなると思うよ。


ちゃんとした獲り方をすれば、ちゃんと儲かるということで、新聞記事をはっておきますね。

norway0905

みなと新聞6月5日より

こちらもどうぞ。

読者の皆さん、ありがとうございました

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多数の情報提供をいただき、ありがとうございました。情報はこちらで分析/整理したうえで、有効活用させていただきます。

「TACがABCを超えているけど、どうなの?」という参加者からの質問に対して、木島室長は以下のように答えたそうです。

現在におきましては、TACはABCのすべて枠の中、一部スケトウダラだけは非常に資源状況が、かなり振れているものですから、ABCを若干超える状況にございますが、他の6つの魚種に関しましてはABCの枠の中に入っている状況にございます。

ICレコーダーの記録もありますので、このような発言があったのは確実でしょう。

(↓については、後日、発表があり、来年度はABCの枠にいれるようです!!)

私の理解では、サバ類のTACは、ABCの枠内に入っていません。もともとABCを超えてたTACを設定しておきながら、期中改訂で増枠をして、小さいサバを捕りまくっています。小さいサバを捕ったところで、この円高では、中国に輸出すらできません。今年に入ってから、小さいサバすら捕れなくなったようで、ずいぶんと南の方までいって、状態の悪い小サバを漁獲しているそうです。これでは、いつまでたってもサバは回復ませんね。太平洋マサバ回復計画とかいって、税金を大量に投入しておきながら、実際は乱獲をアシストしているのです。

あと、スケトウダラ日本海北部系群は、一直線に減少しているので、こういうのを「振れている」とは言わない。一貫して、過剰な漁獲枠を設定し続けて、今に至っている。資源は減っても漁獲割合は、微動だにしないことからも、漁獲圧を抑制していないことは明白でしょう。現在の漁獲枠にしても、ABCが現状維持4000トンに対して、漁獲枠が16000トンなんだから、「ABCを若干超える状況」とは、到底、言えない。TAC制度に対して、責任ある立場の人間が、公的な場所でする発言としては、不適格ではないでしょうか。

またノルウェー漁業が記録更新です

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また、ノルウェーが記録を更新したようだ。ノルウェー漁業は、強いね。NZもそうだが、資源管理をしている漁業は、自国の通貨が弱くても強くても、安定した利益を出すことが出来る。一方、資源管理をしていない日本の漁業は、円が強ければ輸入魚に淘汰され、円が弱ければ途上国に小型魚を投げ売りして自滅。
うまくいっている漁業国の後追いすらせずに、公的資金で燃油補填をしてもらって当然みたいな態度は、正直、どうかと思います。

なぜ、ノルウェー漁業は、自己改革できるのか?

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自己改革と言っても、ほとんどの日本人にはピンとこないだろう。
そこで、ノルウェーがどのように自己改革をしてきたかを、構造的に解説しよう。

ノルウェーの漁業管理の意志決定

ノルウェーでは、年に1回、漁業省主催の漁業者代表ミーティングが開かれる。
この会議で、来年の漁業管理の意志決定がなされるのである。
代表ミーティングには、漁業関係者(代表)、科学者、環境NGO、行政などが参加をするが、
純粋に漁業者の話し合いの場であり、行政と環境NGOは傍聴、科学者は助言をするのみである。

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この漁業者ミーティングが、ノルウェーの漁業政策を決定する。
たとえば、漁獲枠の配分も、漁業者の話し合いで決まるのである。
ノルウェーはほとんど全ての水産資源をEUと共有しているので、
国としての漁獲枠はEUとの交渉により、外向的に決定する。
そこで得た漁獲枠を、国内でどう配分するかは、このミーティングで決まる。
たとえば、コッドの場合は、次のように細かく配分されている。

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2007年のノルウェー全体の漁獲枠は199500トン。このうち30%がトロール漁船に割り当てられた。
トロール漁船は船毎に漁獲枠が比率で配分されているので、56903トンを比例配分していく。
1%の権利を持っている漁船には、569トン配分される。
70%が伝統的な漁業に配分されるのだが、北の小規模漁業者に優先的に漁獲枠が配分されている。
それらの配分は、漁業者の話し合いで決まっており、行政や研究者は口出しをしない。
ここで決定された配分を遵守するように、法的な手続きをおこない、
監視・取り締まりをするのが行政の役目である。

ノルウェーでは、日本よりもきめ細かな漁具・漁法の規制が行われている。
この漁具・漁法の規制についても、決定権は漁業者にある。
漁業者が予め提案した素案の管理効果を科学者が評価し、レポートを作成する。
そのレポートを参考にして、漁業者が話し合い、どういう規制をするかを決定する。
操業規制に関しても、政府は基本的に介入しない。
漁業者が決めたルールが守られているかを監視し、
違反を取り締まるのが国の役割だ。

読者の多くは、「漁業者の話し合いで、本当に漁獲枠の配分が決定できるのか?」と疑問を持つことだろう。
俺もそう思ったので、決定に至るまでのプロセスを根掘り葉掘り、質問してみた。
今でこそスムーズに配分できるようになったが、70年代に資源管理を開始した当初は、
大もめにもめたそうだ。
いくつかの漁業では、漁獲枠が決まらなかった。しかし、その後のノルウェー政府の対応が凄い。
何もせずに、放置しておいたというのだ。「漁業者は、自分たちで決定することが出来る。2年待ったら、
お互いに納得の上で、漁獲枠の配分をすることが出来た」ということだ。
ノルウェー政府は、漁業者の自主性を信じて待ったのである。
漁獲枠の決定が少し遅れただけで、自分の出世に響くからと言って、
安易に漁獲枠を増やして話をまとめようとするどこかの国の役人とは大違いだ。

ノルウェーの漁業政策の決定プロセス

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この意志決定過程を理解すれば、ノルウェーが自己改革できた理由は自明だろう。
漁業者自らがルールを決定するから、理不尽なルールや無駄なルールは改善される。
科学者が助言を与えることで、政策に合理性をもたせている。
そして、行政が漁業者の決定を尊重し、その取り締まりをしっかりするから、
漁業者は納得の上、安心して、規制を守ることが出来るのだ。
これらのプロセス全てが、環境NGOに公開されている。
彼らの目を通して、一般市民は漁業が国益に適うやり方で行われていることを確認できる。
漁業者の決定に問題があれば、すぐに外からプレッシャーがかかる。
ノルウェーの漁業組合の人間によると、「外部の目は業界にとってはプレッシャーだが、
漁業の健全化に不可欠」とのことである。

ノルウェーの漁業制度は実に合理的なのだが、
はじめから、洗練された制度が導入されたわけではなく、
30年間、議論と試行錯誤を通じて、現在に至ったのである。

結論

ノルウェー漁業は、民主化によって、自己改革・効率化を成し遂げている。

改革のゴールについて

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漁業先進国の政策は、明確な戦略に基づいている。
EEZ時代の漁業戦略を単純化すると次の2点である。
1)資源の持続性を最優先し、生産力を維持する
2)個別割当によって、早どり競争を抑制して、単価を上げる
ノルウェーもニュージーランドも上の2点を高いレベルで実現しているが、
実装のディテールをみると、方法論には大きな差があることがわかる。
他国の制度は、その国の漁業・政治価値観と不可分に結びついている。
ノルウェーのやり方をニュージーランドにもっていってもうまくいかないだろうし、
逆もまたしかりである。
日本にも、日本漁業に適したスタイルで、上の2点を実装する政策設計が必要だ。
EEZ時代に入って、30年以上、何もしてこなかった日本の漁業関係者が、
零から制作設計をできるとは思えない。
他国の政策を参考にする必要があるだろう。
新自由主義のニュージーランドよりも、
既得権重視の社会的価値観をもつノルウェーの方が、まだ日本に近い。
ノルウェーの漁業政策をたたき台に、日本独自の方法論を模索すべきである。

俺の頭の中には、ノルウェーの資源管理を日本向けにカスタマイズしたものの青写真がある。
そう遠くない将来に、この青写真と近い制度が日本にも導入されると思う。
ただ、それは改革のゴールではない。むしろスタート地点である。

EEZ時代に適応した漁業国のシステムを輸入することで、日本漁業は当面延命できる。
しかし、それでは一時しのぎに過ぎない。
世界の漁業を取り巻く状況は日進月歩である。
ノルウェーやニュージーランドは、今日も漁業制度についての議論を重ねている。
来年はよりよいシステムに改善するだろう。
現在のノルウェーやニュージーランドのスナップショットに追いついたところで、
彼らは常に先に進んでいるのである。
日本漁業が再び沈没するのは時間の問題だろう。

日本の漁業改革の最終目的は、日本の漁業を自己改革できる組織にすることだ。

規制改革と日本の資源管理(無修正版)

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10月に農林漁業金融公庫が、他の公庫と合体し、日本政策金融公庫が誕生した。
農林漁業金融公庫時代から続く機関誌AFC Forumの10月号(日本政策金融公庫としての第一号)は、
「規制改革急ぎ水産再生を」ということで、必読です。

http://www.afc.jfc.go.jp/information/publish/afc-month/2008/0810.html

俺がトップバッターで、小松さんに加えて、アミタの有路さんと大水の石原理事という布陣。 

この4人でも個々の意見に多様度はあるが、
漁業の現状を何とか打開したいという思いは同じだろう。

 

この原稿は、8月に学生の航海実習で海に出ているときに、一気に書き上げた。

「いま、この文章を書かねばならない」という使命感に燃えて、暑く書いたのだけど、

AFC事務局の手直しで、かなりぬるくなってしまった。読んでいて、テンポが悪いのです。

俺としては、元の文章の方がしっくりくるので、このブログには修正前のバーションを掲載する。

PDFや印刷物とは、細部が少し違うのですが、こっちがオリジナルです。


規制改革と日本の資源管理

 かつては世界一の水揚げを誇った日本漁業は、衰退の一途をたどっている。日本近海の水産資源は枯渇し、漁獲量および漁獲高の減少に歯止めがかからない。日本漁業の生産性が極めて低く、公的資金によって存続している状態だ。

日本では漁業は衰退産業だと考えられているが、世界的に見れば、漁業は成長産業である。持続的に利益を伸ばしている漁業国が複数ある以上、漁業自体が衰退産業なのではなく、日本漁業の構造に何らかの問題があると考えるのが自然だろう。

 

漁業を持続的に発展させる4つの条件

ノルウェー、アイスランド、豪州など、積極的に資源管理に取り組んできた国は、資源量を維持しながら、漁業生産をコンスタントに伸ばしている。これらの国は豊かな先進国であり、人件費は日本よりも高い。また、国内の水産物市場が小さいため、高い輸送料を上乗せした上で、変動の大きな国際市場で利益を出している。成功している漁業国の共通点から、漁業の持続的な発展に必要な4つの条件が見えてくる。

 

①個別漁獲枠制度

漁獲枠を漁業者にあらかじめ配分する管理方法を、IQ(個別漁獲割当)制度と呼ぶ。IQ制度には、無益な早獲り競争を抑制し、無駄な投資を抑える効果がある。個人の漁獲量が制限されれば、他の漁業者よりも早く獲る必要性がなくなるからだ。IQ制度のもとで利益をのばすには、重量あたりの単価を上げる以外に方法はない。漁業者は、自ずと価値の高い魚を選択的に獲るよう努力し、結果として漁業全体の利益が増加する。

 

②譲渡可能性

個人に配分された漁獲枠を、相互に売買することを許可する制度をITQと呼ぶ。譲渡によって、漁獲枠の譲渡によって、漁業から無駄を省き、経済効率を高めることができる。漁獲枠の譲渡をどこまで許容するかは、漁業の方向を決定する上で重要なファクターである。ここでは保守的なノルウェーと、進歩的なニュージーランドの事例を紹介しよう。

 

ノルウェー方式(減船する場合のみ譲渡が可能)

ノルウェーは、漁業者の既得権を最優先に考え、過剰努力量の削減のみ目的とした、限定的な譲渡を認めている。ノルウェーでは漁獲枠を漁船に配分しているので、漁業者以外は漁獲枠をもてない。漁獲枠の売買は原則として禁止されているが、漁船を廃船にする場合に限り、他の漁船へ漁獲枠を移転できる(図1)。漁獲枠を他の漁業者に売ることで、採算のとれない漁業者が、漁業から撤退する道筋を作ったのである。

 

ニュージーランド方式(漁獲枠の自由な譲渡が可能)

ニュージーランドは、経済効率を高めるために、漁獲枠を漁船から切り離した上で、自由な譲渡を認めている。利益率の高い漁業者が漁獲枠を買い集めることで、漁業全体の利益増加する。また、漁獲枠を投機の対象とすることで、外部から資金を調達できるというメリットもある。

ニュージーランドでは、97魚種384資源がITQで管理されている。漁獲枠はTACに対する割合で配分される。ある資源のTACが10トンだったとしよう。20%の漁獲枠を持っている漁業者は、2tの年間漁獲権(ACE Annual Catch Entitlement)を得ることになる(図2)。ニュージーランドでは、漁獲枠の譲渡だけでなく、ACEの売買も認めている。この漁業者は、自分で2tの魚を獲っても良いし、漁獲の権利を他の漁業者に売ることもできる。漁獲枠を売却すると来年以降のACEも手放すことになるが、ACEのみを売却すれば、来年以降もACEを得ることができる。

ACEの売買によって、短期的な操業の自由度が増し、漁業の適応力が高まる。たとえば、燃油価格が高騰し、燃費がわるい漁業者は漁に出ても赤字になるとしよう。赤字の漁業者は、黒字の(燃費の良い)漁業者にACEを売却することで、一定の収入を得ながら、燃油価格が下がるのを待つことができる。ACEの売却が許可されていなければ、赤字の漁業者が利益を確保する手段はない。

ACEの売買を許可すると、漁獲枠の所持者と実際に魚を獲る人間が一致しなくなるので、不在地主問題が生じる。ニュージーランドでは先住民に15%の漁獲枠を与えているが、彼ら自身は商業漁業を行わず、ACEをレンタルして収入を得ている。一方、漁業者の中には、漁獲枠を持たず、ACEを購入して漁業を営んでいる者もいる。

ニュージーランドでは、一つの経営体が保持できる漁獲枠の上限が、35%と定められている。漁獲枠を集中した方が、合理的な操業が可能な種については、寡占化を促進するために、上限を45%まで引き上げている。ニュージーランドでは、規制の範囲内で寡占化が進行しているが、同じくITQを導入している豪州では寡占化の動きはない。ITQにすれば、必ず寡占化が進行するというわけでは、ないようだ。
img08111001.png 

 

③予防原則に基づく控えめなTAC

 先進漁業国では、科学者が予防原則に基づく控えめな漁獲枠を提案し、漁業者もそれを当然のものとして受け入れる。原因が人為的か否かを問わず、資源が減れば禁漁を含む厳しい措置をとる。たとえば、ノルウェーはシシャモが自然減少したときに、素早く禁漁にして、短期的に資源を回復させた。また、ニュージーランドの主要魚種のホキが加入の失敗により減少した時に、政府がTACを20万トンから12万トンに削減するよう提案した。それに対して、漁業関係者は、より保守的なTACを要求し、TACが9万トンへと引き下げられた。資源状態が悪くなると、価値の高い大型魚が減り、単価が下がる。無理に漁業を続けるよりも、資源回復を最優先させた方が、結果として長期的な利益につながるのだ。TACを早めに削減するのは、合理的な経営判断である。


④厳正な取り締まり

 自分が我慢をしても、他の漁業者が根こそぎ獲ってしまうような状況では、規制は守られない。資源管理に実効力を持たせるためには、厳正な取り締まりが必要である。厳正な罰則規定は、漁業者を罰するためではなく、皆が安心してルールを守るために必要なのだ。資源管理が軌道に乗れば、安定した漁業利益がえらるようになる。その段階になれば、リスクを冒してまで、違法行為をする漁業者はいなくなる。

 

日本の資源管理の現状

 

TAC対象魚種が少ない

TAC制度の対象はたったの7魚種しかない。そのうち法的な拘束力があるのはスケトウダラとサンマの2種のみ。他の5魚種に関しては、「中国・韓国との漁業協定が無い現状では、日本人だけ取り締まれない」という理由で法的拘束力を除外している。少なくとも太平洋側の資源に関しては、日本のみで管理できるはずである。多種多様な魚を利用する日本漁業の管理としては、極めて不十分である。

 

早い者勝ちのオリンピック制度

日本のTAC制度は、全体の漁獲枠を決めているだけで、個別に配分されていない。他に先駆けて早く大量に魚を捕れば、自分の取り分が多くなる仕組みである。漁業者間の過剰な競争をあおることから、「オリンピック制度」と呼ばれている問題が多い方法だ。他の漁業者よりも早く獲るために、過剰な設備投資をして、高く売れないことが分かっている小魚まで、根こそぎ獲ることになる。

 

生物の持続性を無視した過剰なTAC

 日本では、科学者の勧告を無視した、過剰なTACが慢性的に設定されている。乱獲を抑制するどころか、乱獲のお墨付きを与えているようなものである。特に資源状態が悪いマイワシやスケトウダラで乖離が大きくなっている(図3)。
img08111002.png 

TAC超過は野放し

近年、漁獲量がTACを超過する現象が頻発している。昨年2月に大臣許可漁業のサバ類の漁獲量がTAC6.6万トン超過したが、水産庁は自主的な停止を要請したのみであった。その後も、「アジなど」、「混じり」という名前のサバが水揚げされ続けた。また、去年の8月に、知事許可漁業がマイワシ太平洋系群のTACを超過したが、その後も漁獲は続けられ、最終的にはTACの倍近く漁獲をした。どちらの事例も、超過漁獲をした漁業者には何のペナルティーもなかった。

 

日本とノルウェーのサバ漁業の比較

資源管理をしていない日本と、資源管理をしているノルウェーのサバ漁業を比較してみよう(図4)。日本のマサバ太平洋系群は極めて低い水準にあるが、「漁業者の生活を守るため」に過剰な漁獲枠が設定されている。また、漁獲枠の超過も放置されているので、実質的には無管理状態と言える。日本のマサバは、0歳・1歳で獲り尽くされ、中国やアフリカに投げ売りされている。成熟する3歳まで生き残る個体はほとんどいない。

サバ漁は7月から新しい漁期が始まる。今年も、7月上旬に、大量の水揚げが記録された。漁期はじめにまとめてとっても、港の冷凍能力にも限界があるし、相場も崩れてしまう。漁業者もそのことは理解しているはずだが、資源管理をしていない日本では、値段が上がるまで待つことはできない。魚に価値が出るまで待っていたら、他の漁業者に全て獲り尽くされてしまうからだ。漁業者個人にできることは、他の漁業者よりもより早く獲ることのみである。

 国内漁業では大型のサバを安定供給できないので、日本のサバ市場はノルウェーからの輸入に頼っている。ノルウェーは、十分な親を残した上で、全ての年齢の魚をバランスよく利用している。ノルウェーのサバは、夏には脂がのりすぎているが、秋に成熟が進むにつれて体脂肪が減っていく。ノルウェーの漁業者は毎日、試験操業によってサバの成熟度を調べて、日本市場で値段が最も高くなるタイミングで操業に出かける。ITQ制度によって早獲り競争を抑制しているので、単価が上がるまでじっくりと待てるのだ。
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規制改革で日本漁業を再生する

日本のTAC制度は、資源管理としての機能を全く果たしていない。資源管理を放棄した日本漁業が衰退するのは、自明の理である。サバ漁業を見ればわかるように、日本漁業は非生産的な操業で、自滅をしている。漁業の生産性を上げるには、「親の敵と魚は見たら獲れ」という姿勢を改めて、魚の価値で勝負する必要がある。その変化を促すには、資源管理によって、早獲り競争を抑制しなくてはならない。

そのために何をすべきだろうか。オリンピック制度のままTACを下げると、早獲り競争が激化して、漁業が破綻する可能性が高い。まず、重要魚種の全てにIQ制度を導入し、違法操業への取り締まりができるよう法制度・組織を整えるべきである。その次に、過剰なTACを徐々に削減していくのが良いだろう。

日本には、資源の生産力と比べて、過剰な漁業者が存在する。IQ制度を導入しただけでは、みんなで貧乏になる以外に選択肢はない。漁業者の生活を安定させるには、数を減らすしかない。ノルウェーのように、漁業からの撤退を前提とした漁獲枠の譲渡を許可すべきだろう。ここまでやれば、漁業は自ずと回復へと向かうはずだ。

漁獲枠の譲渡をどこまで自由化するは、時間をかけて慎重に議論をすべきテーマである。譲渡の自由度を増せば、それだけ経済的な最適化が進む反面、寡占化などの社会的リスクが増大する。日本はどのような漁業を目指すのかを明確にした上で、適切な政策設定をする必要がある。

 

以上を踏まえた上で、規制改革の二次答申に目を通して欲しい。二次答申では、具体的施策として以下の4点が挙げられている。

(ア)生物学的に計算される漁獲許容水準に基づくTAC設定の厳正化、決定プロセスの透明化

(イ)TAC設定魚種の拡大

(ウ)TACの厳守に向けた合理的操業モデルの樹立

(エ)IQ制度の導入対象魚種の拡大及びITQ制度の検討

これら施策の必要性は、本文章で説明したとおりである。この4つの施策を軸に資源管理を行い、日本の漁業を持続的に利益を出せる産業に再生することが、規制改革の狙いである。

 

人間の漁獲能力が生物の生産力を凌駕している現状では、適切な資源管理を抜きに漁業の存続は不可能だ。「早い者勝ちで、獲れるだけ獲る漁業」を続ける限り、いくら公的資金を投入しても、日本漁業は衰退をつづけるだろう。ITQ制度を導入し、質で勝負する漁業に切り替えねばならない。日本では、漁業改革の取り組みは始まったばかりだ。今後もしばらくは厳しい時代が続くだろうが、我々は進まねばならない。何も考えず、好きなだけ魚を獲っていれば良かった、幸せな時代は終わってしまったのだ。

ノルウェー水産業に学ぶ講演会が大船渡で開催

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ノルウェー水産業に学ぶ講演会が大船渡で開催
先進的なノルウェー水産業に学ぶ講演会が二十日、大船渡市で開かれた。主賓のノルウェー水産審議会日本事務所代表のハンス・ベター・ネス氏は、乱獲で激減した魚を漁獲制限で復活させた実績から、天然でも養殖でも持続的な資源管理の大切さを強調。“食の安全性” でも市場を席巻する世界戦略を紹介。
水産行政の転換点は大西洋ニシンの激減。乱獲で大不漁となったのを機に漁獲制限を続けたところ、資源が劇的に回復。「無制限操業の失敗を経て、持続的な資源管理の必要性を学んだ」と述べた。
 漁獲規制は厳しく、総量だけでなく各漁船に至るまで徹底。漁業団体の圧力もあったが、漁獲制限は最終的に漁業者の利益に結びついたことを強調。このノルウェー方式が、TAC(漁獲可能量)など水産資源管理の世界的評価に結びついたことも説明した。

http://www.tohkaishimpo.com/scripts/index_main.cgi?mode=kiji_zoom&cd=nws3950

ノルウェーの国家戦略は極めてシンプルだ。
1)資源の持続性を最優先に厳しい漁獲規制をする。
2)限られた漁獲量を少しでも高く売れるようにする。

極めて、当たり前の発想である。
漁業が生き残るには、この方向しかないだろう。
そのために必要のは、資源管理と、マーケティングの2つ。
ここに、ノルウェーは国家として力を注いでいる。
厳密な資源管理もさることながら、
ハンスさんのようなひとを、世界中に派遣し、
ノルウェーの水産物のPRにつとめているのもマーケティングの一環だ。
ノルウェーの水産大学は、資源管理学部とマーケティング学部が二本柱だ。

残念ながら、日本漁業には資源管理とマーケティングが完全に欠如している。
水産庁は漁業者が乱獲を続けられるようにがんばっているし、
漁業者は漁業者で値段など何も考えずに、多く獲ることしか頭にない。
グランドデザインを欠いた日本漁業が低迷するのは自明の理であり、
場当たり的に補助金をばらまいたところで、低迷に拍車をかけるだけなのだ。

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こういう状況で、補助金をばらまいて漁業への就職者を募ったところで、
増えるのは漁業者ではなく、失業者だろう。

ノルウェー漁業の情報公開

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ノルウェーでは、ありとあらゆる情報が公開されていることに、大変な衝撃を受けた。
組合のページを見れば、どの船が、いつ、どこで、どの大きさのどの魚をどれだけ獲ったかが一目瞭然だ。
また、バイヤーとして登録すれば、落札額なども見ることができる。
その情報は、伝票システムで幾重にもチェックされているので非常に正確なのだ。

ノルウェーでは、魚が取引されるたびに伝票(sales note)が発生する。
伝票には、ありとあらゆる情報が記述されている。
売り手、買い手、漁業者、漁船、漁船所有者、魚種、重量、漁具、航海番号、漁場番号、漁獲枠の種類、etc

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魚が漁業者→加工業者→輸出業者と流れていくたびに伝票が組合と管理当局に提出される。
伝票の整合性は細かくチェックされ、不正のにおいがする倉庫には抜き打ち検査が入る。

俺が見学に行った加工場でも、全ての箱に下の写真のような伝票が張ってあった。
この伝票から07年10月20日に漁獲された400-600gのサバが70kgあることがわかる。
伝票番号も記載されているので、漁獲されたときからこの場所までの経緯を、即座にたどることができる。
不正の疑いがある場合は、箱の中身と伝票が一致するかどうかをチェックする。
伝票と倉庫の中身をつきあわせることで、不正があれば確実にばれるだろう。

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ノルウェーでは組合のオークションを通さない魚の売買は禁止されている。
オークションの情報がそのまま水揚げ統計になるのだ。
さらに、水揚げをするときに、再び正確な重量を量る。
そして、魚が移動するたびに、必ず伝票が組合に提出される。
また、倉庫に保管してある魚にもすべて伝票の写しが張ってある。
トレーサビリティーもばっちりだ。

もちろん、公開性を高めることは短期的にはデメリットもある。
毎日の落札金額が世界中に公開されているし、気が利いた人間なら輸出業者の在庫量まで逆算できるだろう。
こうなると、買い手はノルウェーの輸出業者の足下を見ることもできる。
また、アイスランドなど他の漁業国が、ノルウェーよりも安い値段を提供して商談をまとめる場合もあるようだ。
短期的に見ると、ライバルに出し抜かれ、ビジネスチャンスを失うこともあるだろう。

「こんなに公開しちゃって、漁業者は反対しないの?」という質問を組合の人にぶつけてみたところ、
「もちろん、公開には消極的な意見もあるが、全体的には透明性を高める方向の意見が多い。
現在の情報公開は、民主的な結果である。
社会的な合意を得ながら徐々に公開を進めて、現在の水準に時間をかけて到達した。
今後の情報公開の方向性に関しても、議論を通して決めていくことになる」という答えが返ってきた。

出し抜くことで勝てるのは一瞬だ。長い目で見れば信用がある方が勝つ。
信用を高めることが長期的に見れば利益につながるという確固たる信念がノルウェー漁業にはある。
そして、ノルウェー漁業の成功は、彼らの考えの正しさを裏付けている。

信用こそが、日本ブランドの最大の武器であったはずだ。
現在、日本社会では信用が急速に失われつつある。
信用の価値が世界で失われてしまったわけではない。
ノルウェー漁業は信用の価値を高めて、しっかりと利益をあげているのだ。

信用の価値が失われている日本と、信用の価値を高めているノルウェー漁業はどこが違うのだろう?
日本とノルウェーでは、「信用」の意味が本質的に違うのだと思う。
日本社会は「調べずに安心」を前提としているのに対して、ノルウェー漁業は「調べて安心」を徹底している。
特に輸出をしようというなら、今の日本の信用システムでは、ノルウェーとは勝負にならないだろう。
http://kaiseki.ori.u-tokyo.ac.jp/~katukawa/blog/2008/01/post_288.html

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from 18 Mar. 2009

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