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特集:水産物の放射能汚染から身を守るために、消費者が知っておくべきこと


特集として、水産物の放射能汚染に関連する情報をまとめることにしました。随時更新予定です。

http://katukawa.com/?page_id=4304

JAMSTEC福島沖海洋シミュレーションの結果


お待ちかねのJAMSTECのシミュレーション結果が出ました。詳しくは文科省のサイトをご覧下さい。

http://www.mext.go.jp/a_menu/saigaijohou/syousai/1304938.htm

http://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2011/04/12/1304939_0412.pdf

大まかな動きは、以前に福島の汚染された海水はどこに行く?で考察した通りだとおもいますが、実際に計算をして、図が出てくるとイメージがつかみやすいですね。

シミュレーションの仮定

排出される水の放射能濃度に関する仮定はこんな感じ。東電とJAMSTECの海水サンプリングの値を使っています。4月12日以降は、排出が停止したと仮定しています。指数は、排水基準値の何倍の濃度かということ。

結果

4/8の時点で、こんな感じで広がっている。北東に流れた後、徐々に南下する。


4/15の予想図はこんな感じ。放射性物質は茨城沖を南下し、黒潮にぶつかると一気に東に移動する。東に移動した後は希釈で濃度が急激に薄まるので、すぐに検出出来なくなる。


一ヶ月後はこんな感じ。ヨウ素は半減期4回分なので、総量が1/16に減少するので、福島沖以外は、みえなくなる。一方、半減期が長いセシウムは、しばらく検出出来る。生物の体内に取り込まれたヨウ素も、総量が減るので、少なくなるだろう。一方、セシウムは、長期的な影響が残る可能性がある。

結論

1)千葉以南はリスクが小さい。茨城以北はしばらく注意。
現在は黒潮が房総半島に接岸しているので、汚染水は犬吠崎から南下できない
千葉以南の魚は安全と考えた銚子市場の判断は海洋学的に見ても妥当

2)汚染水の流出が止まれば、ヨウ素の影響は1ヶ月後には激減する
ヨウ素は子供への影響が大きいので、子供がいる家庭は、汚染水の流出が終わってしばらくは様子を見ると安心

海に放出された放射性物質の行方を考える


海に廃棄された放射性物質には、大きく2つの経路が考えられます。

1)外向きの海流に取り込まれて、遠ざかっていく
2)沿岸流に取り込まれ、沿岸沿いをじわじわ広がる

1)外向きの海流

放射性物質を含む海水が、外向きの海流に取り込まれると、太平洋の真ん中へと流されていきます。その過程で周りの海水と混ざって、どんどん薄まっていきます。この外側の流れに相当する部分を、JAMSTECが、30Km沖合で計測しています。30km離れた時点で、すでに排水の基準値を下回っているので、このまま移流・拡散していくと、いずれは生物に影響がない(軽微な)濃度まで薄まるでしょう。それに希釈に要する時間は、拡散係数と初期濃度によって決まります。

2)沿岸流

放射性物質を含む海水が、外側の流れに乗らずに、沿岸を滞留する場合、沿岸をゆっくりと移動します。排水が続けば、放射性物質は、じわじわと周りにしみ出していきます。この場合、沈降した放射性物質が底質にトラップされたり、海草類に取り込まれたりして、汚染が長期化する可能性があります。また、周りの海水と温度が違う水塊を形成した場合には、長期間濃度を維持したまま、移動する可能性もあります。

まとめ

現状では、海の生態系にどの程度の影響があるかは不明です。ます、廃棄された放射性物質の総量がわかりません。また、廃棄された放射性物質のうち、どの程度が沿岸に留まり、どの程度が沖合に流出したかもわかっていません。

まずは、流出を止めることです。流出さえ止まれば、外洋の放射性物質が薄まって、検出できなくなるのは時間の問題でしょう。一方、沿岸域は、汚染が長期化する可能性があります。どの程度の範囲が汚染されたかは現状ではわかりません。

イギリスのセラフィールドの核兵器再生工場から、大量の放射性物質が海に廃棄されました。これらの放射性物質は今も土壌からも、魚や貝からも検出されています。こう言ったことが、福島沿岸でも起こっているかどうかを調べるために、流出が止まった後に、大規模な沿岸生態系の調査が必要です。

放射性セシウムの海洋汚染が人体に及ぼす影響を数理モデルで試算してみた


福島原発から、放射性のセシウムが海水に漏れ出しています。その濃度は、基準値の350倍にも達しているようです。このまま放射性物質の漏洩が続くと、魚が汚染されて、それを食べた人間が被曝する危険性があります。汚染された魚を食べ続けると、どの程度の被曝を受けるのかを、単純なモデルで、乱暴に計算してみました。

データ・モデル

パラメータの値や、計算内容は、このワークシートを参照して下さい。

魚のセシウム137の生物学的半減期 50[日](ソース
1日経過後のセシウムの残留率:0.5^(1/50)=0.986
毎日、1.4%ぐらいのセシウムが、体の外に出て行く。

生物濃縮係数  50(環境の50倍まで濃縮される)(ソース
体に取り込む量は、海水のセシウム濃度X  [Bq/L]に比例すると仮定し、その係数をdとする。魚の体内のセシウムの濃度が、環境濃度Xの50倍になったときに、摂取量と排出量が釣り合うことになる。よって、次式から、dを求めることができる。

体内に取り込む量=排出する量
d*X=(1-0.986)*50*X
d=(1-0.986)*50=0.688

n日目の魚の汚染F(n) [Bq/L]は、次の式で表現できる。

F(n+1)=F(n)*0.986+d*X(n)
F(0)=0

日本人は、平均すると1日にちに82.3gの水産物を食べる(ソース)ので、魚を食べることによる人間の被曝量 H(n) [Bq]は次式になる。

H(n)=0.0823*F(n)

Cs137の内部被曝[Bq]をすっかりおなじみのシーベルトに換算することができるようだ。Bq/SVの変換係数は1.3*10^-8(ソース)なので、1日の被曝量をSVに換算すると次のようになる。(注意:内部被曝と外部被曝は、単純に変換できないという意見もあるようです)

dSV(n)=1.3*10^-8*H(n)

シミュレーション

汚染シナリオ:最初の1年は1000Bq/Lの環境。1年過ぎたら、水が綺麗になる。

魚の汚染

魚の汚染は最初は早いが、汚染が進むにつれて、増加が鈍り、環境の50倍程度の濃度に収束する。汚染が収まった後は、50日に半分の割合で減少していく。

人間の被曝量

5万Bq/kgの魚が、市場にでる可能性はまず無いと思うけれど、汚染された海域の魚を何も考えずに食べ続けるた場合の被曝量を試算してみた。一年半後にはほぼ頭打ちになり、だいたい20mSV程度の被曝になる。もちろん、汚染の濃度や期間が変われば、この数値は大きく変わってくるので、あくまで参考ですよ。「このパラメータやシナリオでは甘い」という人は、エクセル形式でダウンロードして、いろいろいじってみて下さい。

ちなみに、国の基準値の500Bq/kgの魚を、平均的な日本人の摂取量だけ食べつづけると、0.2mSV/yearの被曝になります。

被曝量の安全性は、こういった情報を参考にして、判断してください。
http://www.bbc.co.uk/news/health-12722435

パラメータやモデルに間違いがありましたら、コメント等で指摘していただけると助かります。

4/3追記

誤解無きように書いておきますと、このモデルは、将来の影響を予言するのが目的ではありません。今後の海の汚染がどの程度まで進むかは、現状では全くわかりません。

計算の結果としてでてくる値よりも、むしろ、定性的な挙動に着目してください。海水の汚染が終わってから、何年も魚の汚染が高止まりすることはありません。一度汚染された海域の魚は、半永久的に食べられないという訳ではないのです。一方で、「セシウムは魚に蓄積されないので、汚染にさらされても問題が無い」というのも誤りであることがわかります。ひとたびレベルが上がれば、数ヶ月は影響が残ります。汚染が収まって半年経ってから、魚を食べ始めれば、水産物経由の被曝はかなりの部分防げます。そういうことを感覚的にイメージする道具として、使ってもらえると、ありがたいです。

2号機タービン建屋地下階溜まり水


2号機の汚水のCs137の濃度:3.0*10^6 Bq/cm3 = 3.0*10^9Bq/L = 3.0*10^12Bq/ton
汚水の量
:6000 ton
Cs137の総量:18000TBq = 1.8*10^16Bq

IAEAのレポートによると、チェルノブイリ事故で放出された137Csの総量は、0.085EBq。これは85000TBqに相当する。単純に計算すると、2号機の汚染水には、チェルノブイリの21%の137Csが存在することになる。にわかには信じられないような量の放射性物質が、冷却容器から漏れ出していることになる。

http://www.iaea.org/Publications/Booklets/Chernobyl/chernobyl.pdf
The total release of radioactive substances was about 14 EBq(EBq=10^18Bq), including 1.8 EBq of iodine-131, 0.085 EBq of 137Cs, 0.01 EBq of 90 Sr and 0.003 EBq of plutonium radioisotopes. The noble gases contributed about 50% of the total release.

このブログで紹介した、ドイツの研究機関の楽観的な見通しは、日本政府が初期に発表した「軽微な漏洩」を前提にしているので、高濃度の汚染水が大量に出ることは想定外だろう。この濃度になると、希釈で薄まるにも時間がかかる。渦に取り込まれた場合、数ヶ月と言ったスケールで濃度 が維持される可能性もある。この汚染水が大量に流出した場合の影響は計り知れない。なんとしても、環境への流出を食い止めて欲しい。

水産物に関連する放射能測定データの所在


JAMSTEC白鳳丸の沖合30kmの計測データ(文科省)

http://www.mext.go.jp/a_menu/saigaijohou/syousai/1304148.htm

東京電力の沿岸海水データ

福島第一原子力発電所付近の海水からの放射性物質の検出について(第七報)

http://www.tepco.co.jp/cc/press/11032704-j.html

福島第一原子力発電所付近の海水からの放射性物質の検出について(第6報)

http://www.tepco.co.jp/cc/press/11032602-j.html

水産物の調査(水産庁)

福島県内での原発事故にかかる我が国水産物の検査(輸出業者の方へ)

水産物(マサバ等)の放射能検査結果について

水産物(キンメダイ)の放射能検査結果について

農林水産庁のポータルサイト

福島第1原子力発電所事故による農畜水産物等への影響

文科省の福島沖(30km)の海洋調査の結果がでました


文科省の福島沖の海水の調査結果が出ました。

http://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2011/03/24/1304149_0324.pdf

調査は、沖合30kmの8定点で行われ、それぞれ次のような値が出ています。

ヨウ素-131

今回計測された放射性ヨウ素-131は、24.9-76.8Bq/Lでした。国の排水の安全基準値40Bq/Lより高い値が3点で観測されました。東京の金町浄水場のヨウ素が210Bq/kgですから、半分以下の水準です。東電が計測した排水口付近の値は、5066Bq/Lですから、二桁ほど薄まっています。また、ヨウ素-131は半減期が8日と短いので、この程度の濃度で推移するならば、大規模、長期的な汚染の心配はなさそうです。

セシウム-137

福島沖30kmの8定点のセシウムは11.2-24.1Bq/Lでした。国の安全基準(90Bq/L)を大きく下回っています。こちらも東電が計測した排水口付近の値(1484Bq/L)よりも二桁ほど値が小さくなっています。半減期が30年と長いセシウム137の値が基準値以下に希釈されていることは、朗報と言えるでしょう。

今回の調査結果は、ドイツのチューネン研究所の「福島から、海洋に入った放射性物質は、短い期間で検出できないレベルに希釈される」という予想に合致します。沖合に流出する放射性物質の濃度が、現在の水準にとどまれば、外洋に長期的な汚染をもたらすことはなさそうです。1回の調査で、判断を下すのは早計ですから、今後の経過を注意深く見守りたいとおもいます。

英国のセラフィールド再生工場周辺の生物の放射能汚染


http://www.sellafieldsites.com/UserFiles/File/Monitoring%20Our%20Environment%202008.pdf

セラフィールド再生工場が、放射性物質を海洋に流した後の周辺の生物の放射性物質の値が時系列で示されている。1974年にCs137を4000TBq放出したら、1975年に15km内のタラから、600Bq/KのCs137が検出された。

Cs137の放出量と、魚のCs137の含有量は1年遅れで、良く対応している。再生工場から海への放出量を増やせばすぐに増えるし、放出量を減らせばすぐに減る。1980年代に入ると工場の放出量が減少し、1986年以降は非常に低い水準になった。生物の放射性物質含有量も速やかに減少し、1986年以降は、日本の基準値500Bq/kgを上回る値は出ていない。

放出が多かった1970年代中頃は、種によって、蓄積量に大きな違いがある。タマキビガイは、タラの1/3ぐらい。甲殻類はタラの1/20ぐらいの水準であるのに対し、アマノリはRu106を12000Bq/K(湿重量)に達している。

ドイツ研究機関続報:「日本の原子炉事故:海洋生態系に与える影響」


4/2追記 このドイツの研究機関の分析は、放射性物質の漏洩が短期小規模で終わるという日本政府の初期の発表に基づいています。現在は状況が大きく変わったことを留意した上で、読んでください。

ドイツの研究機関Johann Heinrich von Thünen-Institutは,2011年3月22日付で報道発表「日本の原子炉事故:海洋生態系に与える影響(Reaktorunglück in Japan: Folgen für das Ökosystem Meer)」を出しました。慶應義塾大学の三瓶愼一先生に訳していただいた文章をコメント欄より転載します(三瓶先生、ありがとうございます)。

日本の原子炉事故:海洋生態系に与える影響

日本の福島原発事故の状況はさらに今後も危機的なレベルで推移するものと見られる一方で,環境調査における放射性物質の初の測定値が発表された。
海洋環境の領域では,現在,海水中における境界値を超える値について報道が行われている。日本の官庁による公的な測定値はまだ存在しない。日本からの日本の報道発表では,原発施設前100メートルの海域で,ヨウ素131が日本の基準値の126倍,セシウム134とセシウム137が境界値のそれぞれ25倍および16.5倍検出されたという。あいにく境界値の値と種類が公表されていないので,当研究所の研究員が食料品の境界値を基に検討してみると,日本ではヨウ素131については2000Bq/kg,放射性セシウムについては500Bq/kgとなる。
水中では汚染の拡散が速いため,太平洋では魚類に重大な汚染が生じることはないとの見方を変えていない。
この根拠となるのが,定期的にセラフィールド核燃料再処理工場周辺においてモニタリングを行っている英国の研究者のデータである。そこでは1965年から85年にかけて,毎年莫大な量の放射性セシウムが排水とともにアイリッシュ海に放出された。最高値としては1970年代中頃で5000テラベクレル/年(1テラベクレル=1兆ベクレル)が計測された。放出されたセシウムのこの大きな値に対し,アイリッシュ海の魚類に対する影響は極めて小さいと見られる。2008年の最新のデータでは,アイルランド海産のタラ(Kabeljau)の汚染は最大値で10Bq/kgであった。これは,バルト海のタラ (Ostseedorsch)の汚染の最大値と一致するが,その汚染は相変わらずチェルノブイリ原発事故の影響によるものである(チェルノブイリ原発事故により汚染された食料品の境界値はEUにおいては600Bq/kgである)。
太平洋に関しては,当研究所の研究員は,魚類におけるセシウムの値はアイリッシュ海とバルト海の値を明らかに下回るだろうと考えている。現在,原子炉付近の海水中で測定されている値は高いが,当研究所では,原子炉付近の魚類にわずかな汚染があり得るものの,例えばベーリング海におけるアラスカのサケマス漁場や太平洋のその他の場所で事実上汚染は生じないものと考えている。

チェルノブイリ事故の魚類への影響


Chernobyl’s Legacy: Health, Environmental and Socio-Economic Impacts

IAEAのチェルノブイリの環境影響評価のレポートの中から、魚類に関係する部分のみを和訳(P26-27)しました。

水圏生態系はどの程度汚染されたか?(How contaminated are the aquatic systems?)

チェルノブイリ由来の放射性物質によって、原発付近、および、ヨーロッパの多くの場所で、表層水の放射能レベルが上昇した。初期の上昇は、川や湖の表層への、放射性核種の直接的な堆積によるもので、短命の核種(ヨウ素131)が主であった。事故後、数週間の間の、キエフ貯水池の高い放射能レベルの飲料水が懸念材料である。

数週間後には、希釈、物理崩壊、貯水池の土壌への吸収によって、水中の放射能レベルは、急激に減少した。底質層は、放射性物質の重要な長期的な貯蔵庫である。

魚類の放射性核種の摂取は、非常に早かった。しかし、物理崩壊によって、放射能活性はすぐに減少した。最も影響を受けた領域、および、スカンジナビアやドイツのような遠くの湖で、水中の食物連鎖によるセシウム137の生物濃縮が、有意な放射性物質の濃縮をもたらした。降下量が少なかったことと、生物濃縮が低いことから、魚類のストロンチウム90のレベルは、セシウム137と比較して人体への影響は軽微であった。ストロンチウム90が食用になる筋肉ではなく、骨に集積することも理由の一つだろう。

長期的には、寿命が長いセシウム137とストロンチウム90の土壌からの流出が、今日まで続いている(以前よりもかなり低い水準)。今日では、表層水、および、魚類の放射性物質の密度は低い(p26の図6を参照)。それにより、表層水による灌漑が、害悪を及ぼすとは考えられていない。

川や開放形の河川や貯水池での、セシウム137とストロンチウム90の密度は現在は低いものの、ベラルーシ、ロシア、ウクライナの外部への流出がない「閉鎖的」な湖のいくつかでは、数十年経過した現在も、セシウム137で汚染されたままである。たとえば、閉鎖的なロシアのKozhanovskoe湖の隣に住む人々の、セシウム137の摂取は、主に魚類の消費によるものである。

黒海およびバルト海は、チェルノブイリから遠く離れていることと、これらの系の希釈によって、海水の放射性物質の濃度は、淡水系よりも大分低い。水中の放射性核種のレベルが低い上に、海洋生物相でのセシウム137の生物濃縮が低いため、海産魚のセシウム137を気にする必要は無い。

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from 18 Mar. 2009

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