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勝川俊雄公式サイト

いくつかのエントリーを非表示にしました


本や論文は、全体を完成させてから、出版されることになる。
それに対して、ブログは徐々に書きながら逐次掲載をしていく。
ブログの読者は、作者が書かない限り、先を読むことが出来ない。
全体図が見えないなかで、話がゆっくりと進行していくので、
先を知りたくなっても不思議ではない。

コメント欄にて、「じゃあどうすれば良いんだ」と結論を要求する読者がいる。
彼らへのサービスとして、「現段階で、できることはない」という結論を書いたのだが、
今度は「その理由を説明しろ」とコメントがつくことになった。

最終的には、ジグソーパズルのようにそれぞれの記事がはまる予定なんだけど、
かなり先に出てくるピースを出したら意味が通じないだろう。
やっぱり、順を追って話すべきだったと反省しました。

ということで、時期尚早とおもわれる記事はいったん非表示にしました。
しかるべきタイミングで、再び掲載することにします。
コメントについても、現段階では議論をする下地が整っていないので、
宿題とさせてください。

乱獲を抑制する漁業システム


乱獲状態の解消には、社会的・経済的に莫大なコストがかかる。
だから、資源管理のポイントは、予防にある。
防火に勝る消火なし、というワケだ。
乱獲状態を放置すれば必ず悪化するので、
対策が遅れれば、そのぶんだけ社会・経済的なコストは増えてしまう。
ボヤのうちに消しておくことが重要なのだ。

乱獲を回避するための基本戦略は次の3点

1)過剰な設備投資を抑制する(控えめで充分)
資源を持続的に有効利用するためには、
「努力量は控えめに、資源量は高めに」が基本となる。
この状態は、設備投資をすれば短期的には利益が出る水準でもある。
つまり、何らかの規制がなければ、良い状態は保てないのだ。

2)資源に減少の兆しがあれば、漁獲を弱める
水産資源の生産力はコンスタントではない。
多くの資源の加入率は産卵場の水温と相関があることが知られている。
環境要因によって、一時的に生産力が落ちてしまうことは良くあるのだ。
ぎりぎりまで努力量を拡張していた場合、一時的な生産力の低下によって、
資源を大幅に減少させてしまう。
こうなると、資源はもはや漁業を支えられなくなってしまい、
乱獲スパイラルへと突入する。
資源の生産力の一時的な低下が、乱獲の引き金となるケースは非常に多い。
「自然環境のせいだ」と漁業者も行政も言うが、これは管理の失敗なのだ。
資源の生産力が変動するというのは常識であり、
生産力が一時的に低下するのは、当然のこととして対応しなくてはいけない。
生産力が回復したと見なされるまで、漁獲を弱めれば数年で回復するのだから。

3)資源の減少が明らかになれば、素早く回復処置をとる
日本のように、わざわざ政策で誘導するのは論外として、
乱獲を予防する対策を練っていたとしても、
乱獲状態を100%回避できるわけではない。
気がついたら、資源が減っていたというのは、良くある話だ。
漁獲努力量が資源の生産力を超過した状態を放置すれば、
手のつけられない乱獲まで確実に進行する。
この場合には、素早く、回復措置を講じる必要がある。
もちろん、経済的な混乱は不可避である。
そもそも、この状態になってしまう時点で戦線は悪化しており、
急ブレーキか、事故かという選択肢しかない。
どちらが良いかは言うまでもないだろう。
一時的な混乱を避けて、産業をつぶすという選択は馬鹿げている。

ノルウェーの場合は、断固たる漁獲量削減をしたのが功を奏した。
徹底した措置を素早く導入したからこそ、10年程度の漁獲減で済んだのだ。
中途半端な削減措置を逐次的に導入しても漁獲の低迷が長期化するだけだろう。
極端な漁獲量削減が成功したのは、失業しても食べていける福祉国家だからというのもある。
そのための道筋をつけない限り、こういった極端な方向転換は出来るはずがない。
日本漁業は、そのためのコストを払ってでも方向転換をすべきかを問う段階に来ているだろう。
いくら方向転換をしても、元の補助金付けの政策に戻ってしまえば、
資源が再び減少するのは時間の問題なのだ。
ノルウェーの場合は、基本的な政策を変更して、努力量の抑制を行っている。
補助金も削減しているので、以前のような過剰漁獲にはならないだろう。

大きさが変わるツボがあるとしよう。
常にツボのぎりぎりまで水を入れ続ければ、
ツボが小さくなったときに水は溢れるだろう。
水をこぼさないためには、
ツボが小さくなった時を基準に水を入れること。
また、水面がツボの入り口に近づいたら、水を抜くことだ。

「月刊 学術の動向」の9月号


月刊 学術の動向の9月号の特集は、「海洋生物学の新たな時代」
これが、ウェブからpdfで読めてしまいます。太っ腹だねぇ。

http://www.h4.dion.ne.jp/~jssf/text/doukousp/2006-09.html

なんか、東大海洋研の関係者ばかりじゃないか(笑
こういうのを読むと、「あの先生はこういうことをやってたのか」という発見がある。
普段は、「隣は何をする人ぞ」だったりするから。

今回、特に面白かったのは、益田玲爾さんの「魚種交替とは何か?」。
俺的には、益田さんと魚種交替って意外な組み合わせだったんだけど、
やっぱり、魚の行動を長時間観察している人は、発想が違う。
魚種交替にクラゲを入れるというのは、実に面白い観点だ。

クラゲを入れた魚種交替を数理モデルで再現するのも面白そうだ。
ただ、クラゲは水揚げされないから、過去のトレンドがわからないかもね。
そういえば、太平洋のクラゲはどうなっているんだろう?

学問の世界も縦割りです


現状では、漁業に明るい未来が無いことは明白だ。
しかし、どうすれば良いかを明確に示すのは困難だ。
俺は漁業という大きなシステムのごく一部しか知らないから。
経済のことは、あまり知らない。
漁業の現場のことも良く知らない。
水産庁の考えていることも良くわからない。

漁業という大きくて複雑なシステムは、至る所に致命的な問題を抱えている。
全体像と問題を把握している人間など一人も居ないだろう。
おのおのが、自分の知っている範囲の問題点を述べるのが限界だ。
水産経済学と水産資源学はきれいに別れていて、接点がほとんど無い。
水産学という狭い世界もまた縦割りであり、資源と経済が独立に論じられている。
経済学者は経済が問題だと言い、資源研究者は資源の枯渇が問題だと言う。
まさに、「群盲象をなでる」だろう。

「群盲象をなでる」ではダメだというのでは、そこで話は終わり。
誰も何も語れなくなってしまう。
逆に、「群盲象をなでる」という状態で何が出来るかを問うべきだろう。

ある人は尻尾を触って「象とはヘビのようなものだ」と言い、
ある人は足を触って象とは「柱のようなものだ」と言う。
みんながバラバラなことを言って、紛糾するのがこの故事の内容だ。
もし、この二人がお互いにコミュニケーションがとれていたなら、
象にはひも状の部分と、柱のような部分があるとわかっただろう。
「群盲象をなでる」の故事では、皆が自分のさわった部分が全てで、
それと違う情報を切り捨てたところに落とし穴があった。
自分が漁業の一部しか知らないと言うことを自覚した上で、
余所の部分を知っている人間と情報交換をすれば、
視覚に頼らずとも象の全体図を把握できるはずだ。
それ以外に、漁業の問題点を把握する方法は無いだろう。

そういう意味では、11月のシンポジウムにはいろいろと期待をしている。
経済系と資源系の研究者がほどよいバランスで混ざっている。
お互いに接点が無かっただけに、急には話がかみ合わないだろうけど、
今後も接点をもっていかないと、問題解決型の学問に発展しないだろう。

その前に要旨を書かないと。もうすぐ、締め切りなんだ。
何を聞きたい?

アイスランド、商業捕鯨再開キター!


アイスランドが自国の沿岸での商業捕鯨を再開。
捕獲枠は、ナガス9頭、ミンク30頭だそうだ。

BBC 必死だな(笑
http://news.bbc.co.uk/2/hi/europe/6074230.stm

Iceland has broken a 21-year-old international moratorium on commercial whaling by killing a fin whale – an endangered species.

ついでに、ABCも必死だな(笑
http://abcnews.go.com/Technology/wireStory?id=2598999&CMP=OTC-RSSFeeds0312


アイスランド沿岸に4万3千頭もいるミンクを年間30頭捕ったからって、がたがた言うなよ。
ナガスクジラは IUCNの絶滅危惧種だとか騒いでいるようだが、
ナガスクジラも、アイスランド沿岸に2万5千頭もいる。
絶滅危惧種を商業利用するアイスランドが非常識なのではなく、
こういう生物を絶滅危惧とか言っているIUCNの基準が非常識なだけだろ。

書くのも無責任、書かないのも無責任


このブログを読み返すと「我ながら風呂敷を拡げすぎたな」と思う。
自分のなわばりである資源管理の理論だけなら、しっかりとした話が出来ると思うけど、
漁業全般の話をするのは、正直しんどい。
専門家は、狭い「なわばり」の外のことは、あまり知らないものだ。
だから、研究者は自分のなわばりを出ない。
「語り得ないことは、沈黙せねばならない」と言って口を閉じる。

哲学や純粋な理学であれば、沈黙は金かもしれない。
水産学のような実学の研究者に、沈黙が許されるのだろうか?

資源研究者として、次のことは自信を持って言える
○ 海洋生物資源の生産力は、今の漁業を支えることはできない
○ 日本の漁業が生き残るための選択肢は多くない
○ 時間の経過と共にその選択肢は失われていく

こういう状況で何のメッセージも発することが出来ないなら、
もはや実学とは言えないだろう。

リオデジャネイロ宣言では、
「十分な科学的確実性がないことを、環境悪化を防ぐ費用対効果の高い対策
を引き延ばす理由にしてはならない」と明記された。
研究者も同じだと思う。
不確実性を理由に、専門知識を社会に還元するのを遅延すべきではない。

資源管理の成功例:ノルウェー(2)


North Sea herringの復活に成功した背景には、国の政策の大転換があった。
特定の漁業だけ頑張ったわけではなく、国の漁業全体を方向転換させたのだ。

ノルウェー政府の基本政策
1.資源の保護を最優先した漁獲量の規制を徹底する
2、漁業ライセンスの発行を控えて、漁業者を減らす
3.補助金を減らして、水産業の自立を促す

これら3つの古典的な管理手法が、如何に効果的であったかは歴史が証明している。

資源量
資源量はコンスタントに上昇を続けて、浮魚・底魚共に、85年から倍以上に回復した。

  浮魚のSSBの合計値
 norway05.png
(http://www.fiskeridir.no/fiskeridir/content/download/7568/61949/file/tabeller2005_1.xlsのFigur 1Aより引用)

  底魚のSSBの合計値
 norway06.png
 (http://www.fiskeridir.no/fiskeridir/content/download/7568/61949/file/tabeller2005_1.xlsのFigur 2Aより引用)


漁業者の数
漁業者の数は、どんどん減っている。資源が高水準にあっても、漁業者の数を絞るための努力が続けられている。
 norway07.png
ノルウェー漁業白書のp5より引用


漁獲量
一時的に漁獲量が減らし、資源を回復させた。
そして、資源回復後も、漁獲量を増やし過ぎないように努力をしている。
norway08.png
  http://www.fiskeridir.no/fiskeridir/content/download/5459/43391/file/rapport2004.pdfのP40より作図


漁獲高
漁獲高(million Nok)は、上昇の一途を辿っている。
世界中で魚の需要が高まり、魚の単価が上昇しているので、漁獲量が横ばいでも収益は増えている。
豊富な資源から、需要があるサイズを安定的に供給できるので、
日本のように獲れるものをその都度獲りきる漁業よりも、価格の面で有利である。
ゆとりある資源利用によって、経済効率を高めているのだ。
「漁獲量を減らし、収益を増やす」というのが、ノルウェーの政策目標である。
norway09.png
http://www.fiskeridir.no/fiskeridir/content/download/5459/43391/file/rapport2004.pdfのP40より作図

補助金について
70年代の補助金依存体質からの脱却には15年かかった。
この図は80年代からのデータだが、実は70年代よりも80年代の方が補助金は増えている。
過剰努力量が自然淘汰されるのを待っていては資源が持たないので、税金を使って淘汰したのだ。
ピークの81年には200億円ぐらいだった補助金が、現在は殆どゼロまで削減されている。
漁業の採算を自立させる方向に誘致したので、補助金を打ち切ってからも生産性は向上している。
不適切な補助金を出さないことが、漁業の競争力を高めて、漁業者の経営を安定させるという実例だ。 
norway10.png 
(http://www.fiskeridir.no/fiskeridir/content/download/7568/61949/file/tabeller2005_1.xlsのFigur 13より引用)


日本とノルウェーの漁業構造の比較

日本  ノルウェー
漁業従事者 21万人 1.9万人
漁獲量 550万トン 280万トン
漁業者あたり漁獲量 26トン 147トン
資源状態 低位減少 高位横ばい
補助金 1800億円+α ほぼゼロ 
貿易(重量) 輸入一位 輸出一位

ノルウェーの漁業者あたり漁獲量は、日本の5倍以上。
この表面的な数字以上に、日本の漁業の方が効率が悪い。
ノルウェーは資源量を高めに維持しつつ、経済的に価値が高いサイズを計画的に漁獲している。
一方、日本では値段がつけば何でも獲る漁業が主流であり、
こんなことまでしている。
http://www.hokkoku.co.jp/_today/H20061002001.htm
これは、ぼちぼちやっている魚屋さんのBBSで仕入れたネタなのだが、
サゴシで豊漁貧乏とは酷すぎる。1年待てば高級魚なのに・・・
こういう漁獲をしていたら、日本の市場が輸入品に席巻されても仕方がないだろう。
負けるべくして負けているのだ。

補助金漬けの日本漁業に国際競争力がないのは当然だ。
国内の漁業関係者は、10年後には漁業者が10万人に減るとか心配しているようだが、
10年後には資源も半減しているだろうから、それでもまだまだ漁業者が多すぎる。

資源管理の成功例:ノルウェー(1)


ノルウェーの最近30年の歩みは、日本漁業の将来を考えるうえで、貴重なモデルケースになると思う。
1970年中頃までのノルウェー漁業は補助金漬けで、漁業経営は悲惨な状態であった。
「補助金漬け→過剰努力量→資源枯渇→漁獲量減少」というおきまりの路線を進んだ。
乱獲スパイラルに巻き込まれて、多くの漁業が瀕死の状態であった。
まるっきり、今日の日本と同じ状況だ。
そこから、ノルウェーは漁業政策を転換して、20年がかりで漁業を立て直した。
減少した資源を回復させて、漁業生産高を着実に伸ばしている。

資源の枯渇が最も顕著だったNorth Sea herringを例に、どのようにして漁業を立て直したかを見てみよう。
この資源の長期的なデータはICESのレポートにまとまっている。
http://www.ices.dk/products/AnnualRep/2005/ICES%20Advice%202005%20Volume%206.pdf
以下の図は、このpdfファイルのp195からの引用である。

North Sea herringは、伝統的に重要な資源であり、1965年のピークには120万トンもの水揚げがあった。
しかし、過剰な漁獲圧によって、60年代後半から坂道を転がり落ちるように漁獲量が減少した。

norway01.png
 
SSB(産卵親魚バイオマス)を見ると、1960年代の高い漁獲量は、資源を切り崩していたことがわかる。
その後も漁獲圧を上げ続けたので、1970年代後半に親魚量はほぼ壊滅状態になる。
norway02.png
 
下の図が、漁獲死亡係数の変動である。
1960年代後半から、資源が減少するに従って、漁獲率が急上昇していく。
漁獲死亡係数F=1.5というのは、現在の日本のマイワシ漁業に匹敵するような非常識に強い漁獲圧だ。
現在のマイワシ漁業と似たようなことをやっていたのだ。
ただ、0歳や1歳の漁獲圧は低めに保たれていたので、日本のマイワシよりもマシだろう。
norway03.png
 
1970年代中頃には、このまま漁業を放置すれば、資源は崩壊し、漁業も壊滅することは明白だった。
そこで、ノルウェー政府は、努力量を抑制すると同時に、厳しい漁獲量規制を行った。
1970年代後半のFの急激な減少を見て欲しい。
1.5もあった漁獲死亡係数が、殆ど0まで下がっている。
70%近い漁獲率の漁業を、ほぼ禁漁にしたのだから、かなり思い切った措置である。
経済は大混乱したが、これによって崩壊の瀬戸際にあった資源を生き残らせることが出来た。
あと一歩でもブレーキをかけるのが遅ければ、Newfoundlandのコッドのように壊滅していただろう。
首の皮一枚で、資源が生き残ったのだ。

禁漁の効果は、徐々に現れて、1980年代には資源は目に見えて回復した。
その後は、資源の回復にあわせて漁業を復活させたが、努力量を厳しく抑制する政策がとられたので、
資源は以前の水準に戻っても漁獲率は低く抑えられたままだった。
近年、漁獲量が伸びていないのは、予防的措置に基づいて漁獲率を低めているからであり、
SSB(産卵親魚バイオマス)を見ればわかるように資源状態は極めて良い。
短期的な漁獲量を追求するのではなく、資源を良い状態に保ちつつほどほどの漁獲量で利用しているのだ。
漁獲量は抑えつつも、世界的な魚の値上がりを背景に、着実に生産高を増やしている。
norway04.png

North Sea Herringを回復させるために、ノルウェー政府は画期的な資源管理をしたわけではない。
回復のための管理は、努力量を抑制と、TACによる漁獲量の規制のみである。
使い古された管理手法であっても、徹底して行えば効果はでるのだ。

過剰漁獲量はガン細胞のようなもので、放置すれば資源を食いつぶし、
健全な経営体まで乱獲の渦に引きずり込んでしまう。
ノルウェー政府は、大規模な外科手術によって、
過剰な努力量を削減し、資源と漁業の一部を生き残らせることに成功した。
漁業が自然淘汰されるのを指をくわえて眺めていたならば、
Newfoundlandのタラのように資源を崩壊させていただろう。
その場合、今でもこの漁業が存在しない可能性が高い。
ノルウェー政府の決断が資源と漁業を救ったのだ。

この例を見ると、日本海北部のスケトウダラだって、諦めるのはまだ早いと思う。
今すぐにTACを5000トンぐらいに落として、その漁獲量で食っていけるだけの船に減らす。
そして、今後10年は船を一切増やさなければ、きっと回復するだろう。
首を完全に切ってしまうか、首の皮一枚残せるかで、漁業の運命は右と左に泣き別れで、
今がその境目なのだろう。

漁業システム論(8) ジーコジャパンと日本漁業


世界のサッカーでは、システムとして機能するチームが勝ってきた。
スーパースターを並べればそれで勝てるわけではない。
歴代のサッカーチームのなかで、最もタレントが豊富だったと言われる
黄金のカルテットですら、結果を残せなかったのだ。

ジーコ・ジャパンのシステムは素人目にも破綻していた。
システムが破綻しているときに、選手個人に出来ることはほとんど無い。
ジーコ・ジャパンがドイツで惨敗したのは選手の責任ではない。
誰がピッチに立とうと、同じような結果に終わっただろう。
システムの不全は、監督であるジーコの責任だ。

だからといって、ジーコを非難してもしょうがない。
彼なりにベストを尽くしたのだろうから。
世界のサッカーは90年代以降、戦術が急速に進化したのだが、
ジーコはその時期に日本でプレーして、そのまま引退した。
プレイヤーとしてシステマチックな近代サッカーを経験していないし、監督経験もない。
80年代のサッカーしか知らない人間に、近代的なチームを作れといっても無理だろう。
ジーコを監督に選んだ時点で、システムが破綻することは確定的だった。
ネームバリューだけでジーコを選んだのが日本サッカー協会であり、
それを暗に支持したのが日本のサッカーファンなのだ。
ファンの多くは、日本を応援をして騒ぎたいだけで、サッカーの内容には興味がないだろう。

ジーコジャパンと日本の漁業は共通点が多い。
上の文章を日本の漁業に置き換えると次のようになる。

漁業システム論(7) 共同体は十分条件ではなく必要条件


この前の記事では、漁村共同体管理の限界について論じたのだが、
「現にコミュニティーベースの管理の成功例があるじゃないか!」
という反論があるだろう。
たしかに、自主管理の成功例はあるにはあるが、
引き合いに出されるのは、秋田のハタハタ、伊勢湾のイカナゴ、京都のズワイガニの3つだけ。
逆にこれしか上手くいっている事例が無いのだ。
ここ数年、新しいものは出てきていないし、
俺が把握している範囲では上手くいきそうな次の計画は見あたらない。
3つの例外的に上手くいった事例を除いて、全く広がっていかなかった。
成功例があるということよりも、成功例が非常に少なく、
後に続く漁業が無いことに着目すべきだろう。
3つの成功例の共通点から、自主管理が機能するための条件が見えてくる。

1)生産力が高い資源を自分たちだけで囲い込める
2)コミュニティーに個人の利益よりも全体の長期的利益を重んじるリーダーがいる
3)長期的な視点から、漁業者にものが言える現場系研究者がいる
4)資源の壊滅的な減少を経験

成功例である3つの漁業は、共同体で管理をするための条件が整っている。
ここまで条件がそろった資源は、かなり例外だろう。
さらに、これらの条件がそろった資源だって、最初から上手く資源を利用していたわけではない。
どの例をみても、過去に資源を壊滅的に減少させているのだ。
資源の崩壊を経験した後に、ようやく厳しい管理が出来るようになった。
コミュニティーがあれば乱獲を自動的に回避できるといった、
甘っちょろいものではないのだ。

漁村共同体があるから、管理をしなくても乱獲が回避できるわけではない。
実態は全く逆なのだ。
日本は行政主導のトップダウン型管理が機能していないから、
漁村共同体でボトムアップ型管理ができる資源しか守れない。
漁村共同体は、乱獲を回避するための十分条件ではなく、必要条件なのだ。
日本で資源管理が成功するのは、ラクダが針の穴を通るようなもの。
その針の穴がコミュニティーベースの自主管理であり、
針の穴を通り抜けた3匹のラクダが、ハタハタ漁業、イカナゴ漁業、ズワイガニ漁業である。

現在の日本で機能している資源管理の実例から学ばない手はない。
日本の漁業を守るためには、この3つの成功例を手本に、
自主管理の条件が満たされている資源から管理を進めるべきだろう。
自主管理が出来そうな資源は限られると思うが、探せばいろいろとあるはずだ。
11月の海洋研のシンポジウムでは、ハタハタとイカナゴの当事者の話が聞けてしまう。
3つのうち2つをまとめて勉強できてしまう、貴重な機会はそうあるものではない。
ズワイガニがそろえば大三元だったが、小三元でも実質4翻だ。
全ての水産関係者は、午前中だけでも聞いておくべきだろう。

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