クロマグロ ワシントン条約(CITES) まとめ

大西洋クロマグロの資源状態について書きました(2010.Mar.19)

世界的にも危機的状況が伝えられているマグロ類。その中で、もっとも商業価値が高いのが、クロマグロ(太平洋)、タイセイヨウクロマグロ、ミナミマグロの3種である。タイセイヨウクロマグロを絶滅のおそれのある種として、ワシントン条約で規制しようという動きが世界中で活発化しています。今年の3月にドーハで開かれるワシントン条約締約国会議で、タイセイヨウクロマグロの規制の是非が議論されます。ここで、商業取引が禁止されると、日本への輸入は停止することになります。我々日本人に関係が深い問題なのに、国内メディアはほとんど伝えません。一般の人にも解るように、これまでの経緯と、今後の展望を順次まとめていきます。

背景

マグロは、国境を越えて大回遊するので、国際的な枠組みで管理する必要があります。それぞれのmぐろを管理するための国際機関があります。タイセイヨウクロマグロを管理するための国際機関はICCAT、ミナミマグロを管理するための国際機関がCCSBTです。これらの国際機関はかなり前から活動をしていますが、マグロの減少に歯止めがかかりません。ICCATの管理能力は致命的に低く、地中海のクロマグロ漁業はコントロールできていないという批判の声が高まっています。漁業者に任せておいたら、どこまでマグロが減少するかわからない。ここまでマグロが減った以上、自然保護の枠組みで規制をすべきという主張が国際的に広まっています。

ワシントン条約とは

正式名称は、絶滅のおそれのある希少生物の取引を規制する国際条約です。日本ではワシントン条約、海外ではCITESが一般的な通称です。ワシントン条約加盟国は、2年に1度、締約国会議を開き、付属書の見直しを行います。次の締約国会議は、今年の3月13日~25日にドーハで開催されます。ワシントン条約には、複数の付属書がありますが、モナコが次の締約国会議で、もっとも厳しい付属書Iにタイセイヨウクロマグロを記載するよう正式に提案しています。

付属書I
絶滅のおそれのある種であり、学術研究目的以外の国際取引を全面的に禁止する。

付属書II
必ずしも絶滅のおそれのある種ではないが、存続を脅かすような利用を制限するために、輸出許可書(その取引が種の存続を脅かすものではなく、また、その個体が適法に捕獲されたものであることを示すもの)が必要となる。

付属書Iになるか、付属書IIになるかで、日本の消費にとって、大きな違いがあります。タイセイヨウクロマグロが付属書Iに記載されると、海外から日本への輸出が出来なくなります。公開からの持ち込みも禁止されるので、日本船による漁獲もできなくなります。実質的に、タイセイヨウクロマグロは、日本市場からほとんど姿を消すことになるでしょう。

付属書IIに記載された場合には、先方が国際機関のルールに則って漁獲された証明書を準備すれば、日本にマグロを輸入することが出来ます。ICCATの加盟国が自国の漁獲枠の範囲で獲ったマグロであれば、それほど大きな問題は生じないでしょう。逆にICCATに参加していない国はマグロの輸出ができなくなるので、ICCAT未加盟国による、無秩序操業を牽制する効果が期待できます。

クロマグロをワシントン条約で規制をする運動の歴史

クロマグロをワシントン条約で規制しようという声は以前からありました。これまでは、一部の自然保護団体の孤立した主張であり、恒例行事のパフォーマンスのような印象でした。今回は、欧米の一般世論からも、規制を求める声が高まっている点が、これまでとは根本的に違います。

1992年

  • CITES締約国会議で大西洋クロマグロの掲載が提案される(米国が事前に提案→撤回、スウェーデンが提案→撤回)

1994年

  • IUCNレッドリストの基準の改訂
  • CITES締約国会議でクロマグロとミナミマグロの掲載が議論された(ケニアが提案を準備したが事前撤回)*1

1996年

  • IUCNで海洋生物に対する基準の議論
  • IUCNレッドリストに、マグロが条件付きで掲載される

2009年

  • 自然保護団体WWFがタイセイヨウクロマグロの地中海産卵群が5年以内に消滅すると警告(ソース
  • モナコが、タイセイヨウクロマグロを商業取引を禁止する付属書Iに記載するよう提案→EUで議論が燃え上がる。
  • 7/3 米国は国際管理団体ICCATが断固とした取り組みを行わない限り規制に賛成すると表明。
  • 8/25 石破農水大臣は「クロマグロは絶滅の恐れがある種に該当しない」と反論しました。 今後は、関係各国にモナコの提案に反対するよう働きかける考えを示した。
  • 09/09欧州委員会は、大西洋のクロマグロ(本マグロ)資源の現状についてモナコが表明している懸念の多くを共有しており、クロマグロをCITES(ワシントン条約)付属書1の対象に加えることを求める同国の提案について、EUが暫定的に共同提案者となることに合意した。ソース
  • 9/22 大西洋産のクロマグロ(本マグロ)の商取引を禁止するよう求めた提案がEU加盟27カ国の会合で否決されたと発表した。AFP通信によると、イタリアやスペインなどの漁業国が反対した。ソース
  • 11/15 大西洋マグロ類保存国際委員会(ICCAT)は15日、地中海と東大西洋でのクロマグロ(本マグロ)の来年の漁獲枠を今年の2万2000トンから1万3500トンに引き下げることで合意
  • 12/14 FAOの科学委員会の大多数が、クロマグロを付属書Iに記載するために十分な証拠が得られていることに合意したが、付属書Iへの記載のコンセンサスは得られなかった。付属書IIへの記載に関してのコンセンサスは得られた。
    The panel did not reach consensus regarding the proposed listing under CITES Appendix I of Atlantic bluefin tuna (Thunnus thynnus), however a majority of the panel agreed that the available evidence supports the proposal. There was consensus that the evidence available supports the inclusion of Atlantic bluefin tuna on Appendix II.(ソース

2010年

  • 1/29 イタリアが、方針を転換し、大西洋クロマグロを付属書Iに記載するモナコ提案を支持。ICCATが昨年、今年の漁獲枠を前年比4割減と決めたことで、イタリアは日本に輸出する余力がなくなり、国際取引禁止に強硬に反対する動機もなくなったとしている。(ソース
  • 2/3 フランス政府は3日、乱獲で個体数の減少が指摘される大西洋と地中海のクロマグロの国際取引を禁止する措置を支持すると発表した。フランスの支持で欧州連合(EU)が同条約による取引禁止方針で一致するとの見方が強まった。(ソース)
  • 2/10 欧州会議(european parliament)は、タイセイヨウクロマグロをワシントン条約の付属書Iに掲載するというモナコ提案を正式に支持することを表明。EU27ヶ国にモナコ提案の支持を要求した。(ソース)
  • 3/3 米国が付属書Iを正式に支持
  • 3/10 キプロス、マルタが反対を撤回。EU27カ国すべてが付属書Iを支持することが正式に決定(ソース
  • 3/13 ドーハにて締約国会議
  • 3/19 本会議にて、モナコ提案が否決される。

より詳細な年表がWWFによって公開されています。


現状分析

FAOの科学委員会の決定は、ワシントン条約の結果に大きな影響力を持つとされています。日本人1名以外は付属書Iに賛成したようです。

マグロの国別消費量

みなと新聞(平成22年1月1日号)の推定によると、主要なマグロ消費国の生鮮マグロ消費量は次のようになる。

日本 30
米国 7
韓国 2
台湾 1
欧州 0.8
中国 0.6

圧倒的に、日本の消費量が多い。全体の7割以上を消費している。キハダやメバチなど熱帯性の廉価なマグロは米国の割合が高く、ミナミマグロやクロマグロのような高級な魚種ほど日本で消費される割合が高くなっている。

私の主張

「漁業管理の枠組みが機能していない現状では、自然保護マターで規制をするしかない」という意見は理解できる。日本人には自覚がないかもしれないが、日本人のクロマグロの消費には、世界中から厳しい視線が注がれている。

では、日本のやっていることはどうだろう。自国沿岸での未成魚や産卵場での漁業は無規制。自国の漁獲統計は隠し、国際的な漁獲枠をごまかして水揚げし、挙げ句の果てに「マグロは絶滅危惧種ではない」と開き直っているのである。未だに、新しいマグロ運搬船を地中海に送り込んでいる企業もあるという。

日本の消費者には、世界中のマグロを食べ尽くしたことに対する反省の色はなく、値段が上がる心配ばかり。マグロの漁獲規制を求める国際世論に対して、「日本を狙い撃ちした差別だ」などと、被害者意識をあおるマスコミも存在します。そもそも、絶滅が危惧されるまで、マグロを乱消費したのはどこの国なのか。確かに、魚を捕った地中海の漁業者にも責任はあるけれど、乱獲状態にある魚を乱食している日本人も褒められたものではないでしょう。

なぜ、世界的な非難に晒されてまで、激減した大西洋のクロマグロを食べなくてはならないのでしょうか。クロマグロが日本の食文化に必要というなら、なぜ、日本沿岸のクロマグロ稚魚の乱獲を放置しておくのでしょうか。日本人は、今までのマグロ漁業・消費のあり方を考え直すべきだと私は思います。

世界中からひんしゅくを買ってまで、
激減した大西洋クロマグロを食べないといけないのですか?

*1 「掲載提案(ケニアが提案→撤回)」を「 掲載が議論された(ケニアが提案を準備したが事前撤回)」に訂正  10.05.24

クロマグロ ワシントン条約(CITES) まとめ への27件のフィードバック

  1. magoo のコメント:

    はじめまして。
    最近マグロとサステナビリティーに関する勉強を始めた者です。
    とても勉強になります。
    マグロに関しては日本人の責任が大きいと思います。
    食文化について外国からとやかく言われたくない、といった「鯨」の時の様な不毛な議論は聴きたくありません。

  2. 勝川 のコメント:

    水産庁の国際課は、クジラを盾にして、上手にマグロ漁業を守ったと思います。ただ、漁業を守った成果として、資源がいなくなってしまったので、元も子もないですが。

  3. ピンバック: 玄洋日誌

  4. 水産大国 のコメント:

    勝川様、以前にこちらでお世話になった水産大国です。

    クロマグロの輸出規制について記事を書き、トラックバックを送らせていただきました。

    クジラを禁猟に追い込んだ背景には議会での孤立と200海里協定という漁業粋の確保があったのですが、今回のマグロの輸出規制について、EUはなにを日本に振りかざすのでしょうか?日本は年間生産される水産物の半分か計算方法によってはそれ以上を欧州を含む国外に依存している訳ですから、またあらゆる手段をつかって輸出入の大幅規制を成功させると私は見ていますが。

    また、クロマグロはブログの記事にも書きましたがマグロ1kg生産するのにサバなどの魚を15kgも必要としています。10kgは少なく見積もられた数字と見るべきと思いますが。

    どの道、日本人も輸出規制となる欧州の蓄養マグロが東京湾内湾の魚よりもはるかに汚いと広く知られるようになっても欧州のマグロを求めるのでしょうか?

    勝川様のブログは度々購読していますが、勝川様以上に日本の漁業の現状をネット上で指摘しているサイトは他に存在しません。今後とも私のブログ記事を書くときは度々参考にさせていただきますとともに、よろしければこちらにもコメントをよさせていただきますので、今後ともよろしくお願いします。

  5. 勝川 のコメント:

    今回の件は、純粋にマグロを獲り尽くしたのであり、欧米と日本の食糧争奪戦ではありません。日本では、クジラ・マグロというと、すぐに海外の陰謀論として論じられがちですが、クジラ・マグロを政治利用してきたのは、むしろ、日本の方です。

    「クジラを止めたら、保護団体の標的はマグロに移る。マグロ漁業を守るために、採算度外視で調査捕鯨をやらないといけない」ということを、内部の人間からたびたび聞きました。マグロを獲り尽くしたとたんに、調査捕鯨の撤退を示唆するのもあからさまですね。保護団体の目をクジラにそらしながら、絶滅寸前までマグロを食べ尽くしたのだから、水産庁のもくろみ通りと言えるでしょう。そこまで、マグロを減らして、いったい誰が得をしたのか不明ですが・・・

    >また、クロマグロはブログの記事にも書きましたがマグロ1kg生産するのに
    >サバなどの魚を15kgも必要としています。10kgは少なく見積もられた数字
    >と見るべきと思いますが。

    ご指摘のように、現状では15kgぐらいですね。
    各社とも、餌については改良をしていますから、歩留まりは良くなると思います。
    生餌は環境負荷が大きいので、配合餌料で飼育するノウハウが出来るまでは、
    国が、安易な生産増加は抑制すべきだと思います。

  6. 井田徹治 のコメント:

    共同通信の井田です。
    マグロとCITESの問題を92年からフォローしています。
    92年にするべきだったかどうかはともかくとして、早めに付属書2に上げておけば、もしかしたらこんなことにはならなかったかもしれないと思います。
    日本の水産ムラには、故意に作り出されたCITESアレルギーのようなものがあるのですが、貿易の管理策としてCITESのA2は、無力ではありません。

    長くこの問題を見てきたものとしては、ICCATの規制と日本のマグロ政策(ともにそんなものがあるのならの話ですが)は失敗の連続、悲しい歴史です。
    「うちは留保する。おまえも留保すれば、マグロを買ってやるぞ」という今の姿勢は、この悲しい歴史にさらに1ページを加えるものになりそうですね。

    鯨・マグロを政治的に利用したのは日本だ、というのは勝川さん、ご指摘の通りです。
    私は「鯨で頑張らないと次はマグロだ」という人に会うたびに、「鯨で頑張ろうが頑張るまいが、このままではマグロはいずれ駄目になる」と言ってきました。どうやらその日がだんだん見えてきたのかもしれませんね。

    ただ、マグロブームや完全養殖幻想、「養殖」と言う名の「蓄養」の拡大やヨコワなどについてはわれわれメディアの責任も大きいと思います。
    マグロが高くなって困る、もうマグロは食べられいの?(20年後にはそうかもしれないけど)というようなプリミティブな報道もいいかげんにしたいものです。
    遠洋と沿岸の漁業の在り方、魚食の姿、漁業政策、持続可能性など幅広い問題を、CITESとクロマグロ問題から考える、という報道をしたいと思っています。

    勝川さん、一層のご活躍を

  7. 勝川 のコメント:

    井田さん、こんにちは。

    >マグロとCITESの問題を92年からフォローしています。
    >92年にするべきだったかどうかはともかくとして、
    >早めに付属書2に上げておけば、もしかしたらこんなことには
    >ならなかったかもしれないと思います。

    同感ですね。

    漁業管理団体の規制は、加盟国にしか適用できませんから、
    IUUを抑制するという観点からは、保全の枠組みは極めて有効です
    ミナミマグロも、IUUや管理団体以外の漁獲が増えていました。
    豪州NZは管理の観点から付属書2を主張していたんですよね。
    日本が反対した結果、流れてしまいましたが、
    早めに付属書2にしていたら、
    ここまでミナミマグロをへらすことは無かったでしょう。
    自国のIUUがばれてしまうから、反対したのでしょう。

    >長くこの問題を見てきたものとしては、ICCATの規制と
    >日本のマグロ政策(ともにそんなものがあるのならの話ですが)は
    >失敗の連続、悲しい歴史です。

    日本のマグロ政策は、「保護団体に口出しさせずに、獲りたいだけ、獲る」
    ですから、その観点からは、大成功ですよ。
    とりつくした先には、産業の崩壊しか無いということが、
    わからなかったとは言わせません。
    業界の目先の利益のために、産業をつぶしたのです。

    >「うちは留保する。おまえも留保すれば、マグロを買ってやるぞ」と
    >いう今の姿勢は、この悲しい歴史にさらに1ページを加えるものに
    >なりそうですね。
    >鯨・マグロを政治的に利用したのは日本だ、というのは勝川さん、ご指摘の通りです。

    クジラ・マグロを資源として有効利用していくのは当然ですが、
    国際社会の同意が得られるような方向を模索すべきでしょう。
    日本のやっていることは乱獲です。
    乱獲を文化論にすり替えて、正当化しようとしても、
    国際的には相手にされません。
    漁獲データは隠して、札束で頬を叩くようなまねをして、
    日本の国際イメージをどれほど損なっているか。
    もう少し、日本人は自覚をした方が良いと思います。

    >遠洋と沿岸の漁業の在り方、魚食の姿、漁業政策、
    >持続可能性など幅広い問題を、CITESとクロマグロ問題から考える、
    >という報道をしたいと思っています。

    CITESとクロマグロの問題は、日本の業界団体の声だけでなく、
    海外から、日本はどう思われているかを、
    国民に伝えるべきと思います。

    >勝川さん、一層のご活躍を

    やることが多すぎて、息切れ気味です。
    マグロも中途半端で、残念ですね。
    「私のような人間があと5人ぐらいいればなぁ」とは思いますが、
    やるべきことに優先順位をつけて、
    一つ一つできる範囲でやっていきます。

  8. Sakaguchi のコメント:

    前にフェロー諸島の漁業資源管理について書き込みさせていただいた阪口です。
    日本のメディアもまだまだ政府や業界よりの報道をされている中で、こういった記事が登場するのは大変有意義なことだと思います。

    私も、ワシントン条約を専門の1つとしている以上、これではいけないと思い最近立ち上げた自分のブログにクロマグロ関係の記事を書き込みました。よろしければ御笑覧いただければと思います。

    http://sakaguchi.blog.so-net.ne.jp/

  9. Sakaguchi のコメント:

    (うまくカキコできなかったみたいですのでもう一度トライします)

    以前フェロー諸島の漁業資源の管理について書き込みした阪口です。多くのメディアが政府や業者の話ばかり取り上げている中で、マグロについてストレートな記事では大変有意義だと思います。

    私もワシントン条約を一応専門の1つとしていますので、ブログにクロマグロとワシントン条約について書き込みました。水産庁が援軍としてよく言及するFAO専門家パネルも付属書Ⅱ掲載についてはコンセンサスがあるようですね。

  10. 勝川 のコメント:

    FAO専門家パネルでは、出席者のほぼ全員が付属書Iに賛成したが、日本人研究者のみが強硬に反対したため、付属書Iでのコンセンサスが得られなかったという話を小耳に挟みました。

  11. Kaoru_N のコメント:

    はじめまして

    まぐろ食べ放題だとか、格安だとか、日本人は食をばかにしている なめている
    感謝して食する気持ちがまるでない

    さんざん獲って、感謝なく食べまくって、いずれ手に入らなくなるのは当たり前

    まぐろが絶滅する前に、手遅れになる前に、お願いします

  12. 沿岸漁業の一漁師 のコメント:

    >まぐろ食べ放題だとか、格安だとか、日本人は食をばかにしている なめている
    >感謝して食する気持ちがまるでない

    マグロに限らずですよ。
    『安全なもの』、『美味しいもの』よりは安全については立証はされていないけど、3個買ったら1個おまけするから良心的な業者というのが人気ですね。

    衛生等の要求水準がインドの中産階級より低下している地域が出ています。

  13. 海外水産開発 のコメント:

    >タイセイヨウクロマグロが付属書Iに記載されると、海外から日本への輸出が出来なくなります。大西洋クロマグロに関しては日本船が漁獲した魚のみが、日本市場に出回ることになります。

    上記の記述がありましたが、採択されれば「海からの持ち込み」に該当するため公海上での漁獲も規制されます。このため日本船もタイセイヨウクロマグを漁獲できなくなります(「留保」すれば漁獲は出来ますが、日本製品の世界的不買運につながるでしょう)。地中海沿岸国によるクロマグロ若魚捕獲(畜養用)を規制するのは当然ですが、厳しいTACとVMS管理下にある延縄船(中型、大型魚を対象)まで規制するのは横暴です。また今回採択されれば、2年後にはミナミマグロ、そしてメバチと続くでしょう。

  14. Sakaguchi のコメント:

    FAOの専門家部会のコンセンサスが成立しなかったのが日本の委員の反対のためとは知りませんでした。専門家部会が議事録か会議報告書のたぐいを公開していればよいのですが、ちょっとサーチしてみます。

    FAO専門家委員会の委員はIPCCの委員のように(専門家として)個人の資格で参加していればよいのですが、IWC科学委員会のように政府により指名され派遣されている場合は、その中立性に疑問が生じますね。

    私は国際機関や条約の分析が専門ですが、このFAOは古くからある割には、ほとんど研究されていません。なぜなのかよく分かりませんが、FAOの資源管理における役割も研究しないといけないなと思っています。

    また、水産庁がワシントン条約での規制にかたくなに反対する背景についても記事をアップしておきましたので、よろしければご笑覧ください。水産庁も問題ですが、ワシントン条約にもまだ問題があります。COP8のときはワシントン条約がIWCの様な状態になるかどうかの瀬戸際でしたので、とてもじゃないけど水産庁は支持できなかったと思います。正常化したCOP10後の早い時期に自ら付属書Ⅱ掲載提案を出していれば個々まで追い込まれることはなかったと思います。

    それにしてもサメ類を付属書Ⅱ掲載決定に日本は過去ことごとく留保をふしています。サメを管理する専門の国際機関がないにもかかわらず、ワシントン条約による規制は不要という理屈もよく分かりません。FAOの行動計画で十分だというのでしょうか。

  15. Sakaguchi のコメント:

    たびたびすいません。

    勝川さんのブログのアドレスを私のブログのリンク欄に入れてもかまわないでしょうか。非常に有益なので、ワシントン条約関係で私のところを訪れたまれな方にもよっていただきたいと思っております。

    今回は本当はカタールに行く予定でチケットまで予約したのですが、大学の鎖国政策により国内にとどまることになってしまいました。代わりに釧路で湿地の保全に関する調査をしています。日本はラムサール条約の加盟国ですが、干潟の保全には相変わらずきわめて後ろ向きです。諫早湾にしてもそうですが、干潟を潰せば魚が捕れなくなるのは体感的にも自明の理だと思うのですが、お役人によると因果関係が科学的に証明されていないそうですね。

  16. ピンバック: 招き猫の集客ニャース

  17. niino のコメント:

    非常に役立つ情報をここまでまとめていただき本当に感謝しています。海外で暮らしていて思うのですが、勝川さんが出されているようなまともな意見や情報は、英語では見つけられても日本語ではなかなか見つけだせないことを非常に残念に思っています。特に、クジラやマグロに関しては感情的で稚拙な報道が多いように見受けられるため、感謝の言葉を書き残さずにはいられませんでした。
    政治の事は分かりませんが、日本の一般市民の教育水準やモラルの高さはまだまだ世界のトップクラスであることに間違いありません。まっとうな情報さえ手に入れば、日本の世論はかならず良識的な方に動くと信じています。世界でリスペクトされる日本であり続けられるよう、また、これ以上、無用に生物が絶滅しないよう、私も、出来る事を少しずつやっていこうと思っています。

  18. 勝川 のコメント:

    Kaoru_Nさん、はじめまして

    >まぐろ食べ放題だとか、格安だとか、日本人は食をばかにしている なめている
    >感謝して食する気持ちがまるでない

    考え直す点は多々ありますね。大西洋クロマグロが、そのきっかけになればと思います。

    >さんざん獲って、感謝なく食べまくって、いずれ手に入らなくなるのは当たり前
    >まぐろが絶滅する前に、手遅れになる前に、お願いします

    出来る限りのことはしますが、手遅れな感じがしますね。

    海外水産開発さん

    海からの持ち込み禁止は、ご指摘の通りですね。修正しました。
    タイセイヨウクロマグロは、死亡フラグが立ってしまいましたが、
    留保による日本製品不買運動という、最悪の事態は避けられて良かったです。

    海鳥の混獲などで、延縄ばかり締め上げて、巻き網は野放しですからね。
    おかしな話しです。

    Sakaguchiさん

    返事が遅れて申し訳ありません。
    当サイトは全てリンクはフリーですので、ビシビシ紹介してください。

    > FAOの専門家部会のコンセンサスが成立しなかったのが日本の委員の
    >反対のためとは知りませんでした。専門家部会が議事録か会議報告書の
    >たぐいを公開していればよいのですが、ちょっとサーチしてみます。

    1ヶ月後に、議事録が公開されるというような話しでしたから、
    ぼちぼちアップされているかもしれません。

    >私は国際機関や条約の分析が専門ですが、このFAOは古くからある割には、
    >ほとんど研究されていません。

    今回の決定では、FAOの科学委員会の決定が完膚無きまでに無視されて、
    獲りたいだけ獲るという国の理論が優先されたことに、驚きました。
    これから、ワシントン条約も、IWCのように、
    賛成国と反対国の政治ゲームになっていくのか。
    ちょっと目が離せない感じですね。

    >それにしてもサメ類を付属書Ⅱ掲載決定に日本は過去ことごとく留保をふしています。
    >サメを管理する専門の国際機関がないにもかかわらず、
    >ワシントン条約による規制は不要という理屈もよく分かりません。
    >FAOの行動計画で十分だというのでしょうか。

    ICCATの枠組みでは、非加盟国やリビアのようなの国への強制力が働かない。
    その意味では、付属書IIはとても有効だと思います。

    niinoさん

    日本人が、クロマグロ資源やICCATの現状を理解した上で、
    ワシントン条約に反対をするなら、仕方のないことだと思います。

    ただ、現状では、あまりに情報が偏っていますね。
    水産庁の言い分を垂れ流し、食文化の問題にすり替えようとする
    大手メディアの報道には、うんざりします。

  19. ピンバック: Sato log - Buzzaholic Meeting

  20. 赤尾 信敏 のコメント:

    私はかつて外務省職員で、1992年3月のCITES COP8では全体会議の議長を務めたものです。COP8でスエーデンが出した西大西洋クロマグロの付属書I掲載提案については、当時米国、カナダ、モロッコなどとも協議の上、ICCATでの科学的調査とこれに基づく資源管理を強化することをコミットする代わりに、スエーデンが提案を撤回することになりました。
    その後はこの問題には関わりませんでしたが、COP15でのモナコ提案を機に色々と調べてみたところ、ICCATでも、科学者・専門家が資源状況の厳しさを指摘してきているにも関わらず、主として欧州連合加盟の漁業国を中心にクォータの大幅削減が難航しているような印象を受けます。他方、日本政府はCOP8に先立つ91年当時もそうでしたが、漁獲高の大幅削減を提唱すると同時に、ICCAT決定内容の順守、違反取り締まりの強化を主張しているとの話を聞きましたが、これは事実ではないのでしょうか。
    なお、勝川様のHPに、94年末のCOP9にケニアがクロマグロとミナミマグロの付属書I掲載提案を出したと書いてありますが、CITES事務局のHPでかつての諸提案リストをみても、COP9の提案リストにはケニア提案は掲載されていません。(COP8のスエーデン提案は掲載されています。)ということは、ケニアはどこかのNGOの働き掛けで提案を検討したが、結局「COP開催6か月前までに提出」というルールに従って提案を提出しなかったということでしょうか。日本政府関係者に聞いても不明ですので、この点を教えて頂きたく、お願い申し上げます。

  21. 勝川 のコメント:

    赤尾さん、初めまして。コメントをありがとうございます。

    >日本政府はCOP8に先立つ91年当時もそうでしたが、
    >漁獲高の大幅削減を提唱すると同時に、ICCAT決定内容の順守、
    >違反取り締まりの強化を主張しているとの話を聞きましたが、
    >これは事実ではないのでしょうか。

    大西洋クロマグロにおいては、日本が、ラテン諸国に管理を働き
    かけてきたのは事実ですが、積極的に持続的な利用を目指した
    ものではないと理解しています。日本は、水産資源の保全には
    極めて後ろ向きなことは、自国の漁業規制を見れば解ります。
    自国のEEZの産卵場で、日本漁船が、地中海のような無秩序
    操業をしています。

    では、なぜ、日本がICCATに規制強化を訴えたかというと、
    次の2つの理由でしょう。

    1) 資源の奪い合い
    無規制の資源の奪い合いをしたら、日本の延縄は、欧州の巻き網
    に負けます。

    2) 保護団体の介入を阻止したい
    日本は、IWCなどで保護団体の恐ろしさを知っているので、介入を
    避けるためには譲歩もやむなしと考えた。一方、ラテン諸国は、
    保護団体に対するトラウマがないので、危機感は共有できません
    でした。日本は規制強化を訴えましたが、保護団体が矛を収めると
    そこで終わりです。

     日本が、本気で、不正漁獲を根絶しようとするのであれば、輸入の
    書類審査を厳しくしたはずです。90年代は日本市場は圧倒的でした
    から、日本が買わなければ、不正はほぼ根絶できたはずです。尻に
    火がついた水産庁が今年になって、書類審査を始めたところ、約5割
    が止まりました。もっと早く、日本が書類審査をやっていれば、資源が
    ここまで悪化することは無かったはずです。

    今年に入ってから、輸入審査も始めたし、日本のEEZの漁獲規制も開
    始するようですから、水産庁の姿勢も変わりつつあります。今後に期待
    をしたいです。

    >ということは、ケニアはどこかのNGOの働き掛けで提案を検討したが、
    >結局「COP開催6か月前までに提出」というルールに従って提案を
    >提出しなかったということでしょうか。
    >日本政府関係者に聞いても不明ですので、この点を教えて頂きたく、
    >お願い申し上げます。

    調べたところ、ケニアは事前に撤回しており、正式には提案されてい
    ませんでした。ご指摘ありがとうございます。本ブログの記事も訂正
    しました。

    ケニアが事前に準備をしていたという情報ソースは、(社)自然保護協
    会が発行した「ワシントン条約付属書掲載基準と水産資源の持続可能
    な利用」というという冊子のP189です。「1994年には、ケニアがミナミ
    マグロ、クロマグロをワシントン条約附属書IIに掲載しようという動きが
    あったが、これも会議前に撤回されている。」という記述があります。
    著者は、遠洋水産研究センターの西田勤さんです。

  22. Fishery Manager のコメント:

    > FAO専門家パネルでは、出席者のほぼ全員が付属書Iに賛成したが、
    > 日本人研究者のみが強硬に反対したため、付属書Iでのコンセンサスが得られなかった
    > という話を小耳に挟みました。

    FAOの本部へ行けばよく分かりますが、日本人スタッフの多くが、実は農水省や他省庁からの出向だということ。こうしたことがFAOの”科学的な”発言に影響を与えていることは否めません。

    当該専門家パネルのメンバーがどうだったかは承知しておりませんが、専門家パネルに例えば政府出向者(若しくは御用学者)が当てられていたとすると、私の懸念は妥当だったということになります。

    名前を確認してみたいと思います。

  23. Fishery Manager のコメント:

    上記、名前を調べて見ました。

    既にご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、以下の方がコア・パネルとして関わっておられます。

    魚住 雄二
    独立行政法人 水産総合研究センター・遠洋水産研究所の所長さんですね。

    「マグロは絶滅しない!」という趣旨の本も出版されている様です。

  24. 勝川 のコメント:

    クロマグロやクジラのようなポリティカルな生物は、
    水産庁の許可がなければ研究発表できません。
    国がデータを抱え込んで、批判的な研究をする人間には、
    絶対にデータを出しません。

    日本では、国策に批判的な研究をするのは、難しいですね。

  25. yamamoto のコメント:

    勝川さん、はじめまして。私は都内某中学校に通う者です。
    前々から食文化の保全ばかり訴えるメディアに不信感を覚えており、情報を集めていたところ、新聞社に勤めている父から勝川さんの噂を聞きました。
    具体的に問題点が分からなかった私にとって、勝川さんの説明は分かりやすく、とても勉強になりました。ありがとうございました。

    今回、私は自分で情報を集め、判断する大切さを学びました。勝川さんが紹介していらしゃった本以外にも様々なメディアに触れ、いかに自分が偏った情報だけを耳にしてるか自覚しました。
    今後はもっと自分の視界を広げなければならないと強く感じました。

    個人的には、最近、食に対するモラルが下がっているように感じます。
    皆、食前、食後には「いただきます」と「ごちそうさまでした」を口にするのにも関わらず、命をいただいている意識が薄れている。変な話だと思います。
    「食べたい!」と思う前に、食べ物への感謝をする。その精神で世界はガラリと変わるのではと思います。

    未熟者が長い話失礼しました。
    それでは、勝川さんの今後の御活躍を期待しております。

  26. katukawa のコメント:

    yamamotoさん、初めまして。返事が遅れてしまって、ごめんなさい。

    英語を勉強して、海外のメディアの情報を直接読めるようになると良いと思います。
    反対するにせよ、同意するにせよ、相手の言っていることがわからないと、
    的外れの対応しかできませんから。

  27. ニンジャ のコメント:

    はじめまして。
    僕は2ちゃんねるのまとめブログを運営しています。

    2ちゃんねるでは欧米人が寿司を食べ始めたことが原因でマグロの数が減っている、
    というデマが流れ、それを全く疑いもせず欧米人をバッシングしています。
    早く正確な情報が流れ、そして彼らには日本に責任があるという事実を受け止めて欲しいですね。

niino へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です