読売新聞 9/30(日) 減る魚2

読売新聞 9/30(日)
サイエンス 学び 
減る魚(パート2)
産卵可能時まで保護必要~大衆魚 揺らぐ「周期的増減」説

「若齢魚の漁獲を控えて、資源回復を図ろう」という内容
論点が明確でわかりやすいと思います。

俺が登場するのは2カ所。
マサバについては、
「若い魚の乱獲が回復の芽を摘むからではないか」
マイワシについては、
「90年代半ばから、漁獲規制をかけていれば、ここまで減らなかった」
というコメントが掲載されました。

俺以外にも、川崎先生、西田さん、桜本先生が登場します。
これはシリーズ物で、パート1のマグロには平松さんが登場しました。
どちらも、海洋研の5階の廊下に貼ってあります。

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国交省やるなぁ

国土交通省ネガティブ情報等検索サイト
 (事業者の過去の行政処分歴を検索するサイトです)
http://www3.mlit.go.jp/

最初は誰かがネタで造ったのかと思ったら、本物みたいだ。
こうやって公開が進めば、消費者にとっても、まっとうな業者にも利益になる。
素晴らしい取り組みじゃないか。

国交省GJ

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DISK BOOT FAILURE

今日は朝からマシンが起動しない。

DISK BOOT FAILURE, INSERT SYSTEM DISK AND PRESS ENTER

とかいって、泣ける。
ハードディスクの物理障害か。
とりあえず電源を切って、再起動。
ハードディスクのアクセスランプが点灯したまま
今度はbios画面で固まってしまう。

ファイルのバックアップはあるし、FINAL DATAもあるので、データの損失はない。
しかし、予備のマシンとハードディスクが無いので、バックアップを復元できない。
こまった。途方に暮れまくり。
泣きながら新宿西口に走るしかないのか?

ダメ元でケースを明けて、SATAケーブルをグリグリしてみると、
なんと正常に起動するようになった。
「先生!原因が判明しました!」ということで、
ケーブルを交換したら再び快適になりました。
そういえば、前にもハードディスクを認識しなくなったが
お前のせいだったのかっ。

朝からあたふたしてしまったが、問題解決して良かった。
問題の発生したケーブルは忘れずに処分することにする。
うっかり捨て忘れると、そのまま再利用して同じトラブルに見舞われたりすんだよ。これが。

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乱獲は現場で起きているんだ!!

ということで、情報収集のため、銚子に行ってきました。
SANY0015.jpg

休漁なので、市場はお休み。
SANY0021.jpg

食べるのは資源状態が良好なサンマです。うまかったです。
みんなも、マグロやウナギは食べずに、サンマを食べよう。
SANY0026.jpg

やっぱり、現場に行かないとわからないことは多いですね。
とても勉強になりました。

銚子で実感したことは、
TACで漁獲が止まると思っている漁業者は居ないということです。
去年、TAC超過が判明した後も、ずるずると獲らせてしまった失態が今後も尾を引きそうです。
去年、TACを超過した後に水産庁から北まきに「操業停止願い」がでました。
(その当たりの詳しい事情は、ここを見てください)
その後も「まじり」とかいってサバをとり続けた漁業者がいるのです。
「操業停止願い」は初めてのことだったので、漁業者もびくびくしながら獲っていたらしい。
でも、結局はお咎め無しと言うことで、水産庁に取り締まる気がないことがバレバレです。
去年は通達のあとにサバを捕りひかえた漁業者も、今年は獲るでしょうね。
マサバの回復の芽を今回も摘みそうだな。

さらに、銚子では、サバの増加を当て込んで、冷蔵庫を拡大しているらしい。
まったく何を考えてるんだが・・・

マサバ回復計画とかいって、17億円も北まきにばらまいているが、
漁業者に乱獲するための油代を与えているだけじゃないの?

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農の戦犯

農の戦犯―誰が農業をダメにしたのか
シーザー前園
文芸社 (2007/04)
売り上げランキング: 354909

実に面白い本だった。現在の農業の全体図が俯瞰できる良書。

補助金漬けなはずなのに、米作は儲かっていないと言う。
儲けが出なくても田んぼをつづけるのは、どういうわけかというと、
結局は、農村オヤジのアイデンティティーなんだな。
それを支えるために、税金とセガレの給料がつぎ込まれる。
田んぼが空かないのだから、跡継ぎなど出来るはずがない。

農業をサポートするという役割を放棄して、
総合商社化した農協の実態も紹介されている。
スイシンとかって、まるで、ア○ウェイじゃないか。
にわかには信じがたいほど、悲惨すぎ・・・

ここに書かれている農業の惨状は、かなりの部分漁業にも当てはまる。
この本の著者には、是非、漁の戦犯についても書いて欲しいと思った。
漁村文化の研究者は山ほどいるけど、彼らの文章は読む気にならない。
「古き良き日本の漁村万歳!!」という結論が最初にありきなんだよな。

どんなに非効率な農業をしても、田んぼは残る。
作り手が変われば農業の立て直しは可能だろう。
非効率きわまりない漁業の結果として、資源が枯渇しつつある。
資源を減らしすぎると、元の水準まで戻らなくなることが知られている。
農業も悲惨だが、漁業の方がずっと厳しいな。

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地球の食卓

日本人の食生活の変化はすさまじいものがある。
魚離れのところでも書いたんだが、
魚の消費量はそれほど減っていないが、その中身の変化が大きいはずだ。
「中身の変化を無視して、毎年何キロ魚を食べるかだけ見てもなぁ」という感じがする。
では、食の中身の変化をどう表現したらよいのだろうか。

そんなことを考えていたときに、これをみてピンときた。
http://v.mercola.com/blogs/public_blog/What-the-World-Eats-21099.aspx
(java scriptを切った方が見やすい)
ここに様々な国の家庭が1週間に消費する食材の写真がある。
家族の写真もあって、食卓が目に浮かんでくるようだ。

実はこれらの写真はこの本の一部なのだ。 ズバリお薦め。おもろいよ。

地球の食卓―世界24か国の家族のごはん

写真で見ることの説得力は凄いね。
世界の食卓の多様性に驚かされるし、こういう多様性が文化なんだよな。
食生活をカロリーや重量などの数値で表現することで、
如何に重要な情報が失われているかと言うことだな。

年代別、世代別に、どういう形態の魚をどれだけ消費しているかをまとめたら、
日本人の魚食の変化について、かなりわかると思う。
とても、面白いと思うので、誰か企画をしてください。
水産白書もこういう側面から日本の魚食の変化に切り込んで欲しい。

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日本のTAC制度はオリンピック方式ではない。それどころか資源管理ですらない。

今まで見てきたように、ダービー方式(オリンピック方式)は問題が多い。
資源を守る代償として、漁業がぼろぼろになってしまうのである。
日本の漁業もぼろぼろだが、それはダービー方式の副作用ではない。
それ以前の問題なのだ。
資源管理には、乱獲を抑制して持続的に漁業をするというゴールがある。
ダービー方式でもきちんと運用をすれば、資源は守れる。
日本のTAC制度には、漁獲量を抑制する効果が全くないので、資源は減り続けている。
これを資源管理と呼ぶのは、まじめに資源管理をしている漁業に失礼だ。

正しい資源管理
生物の生産力を評価して、持続的な漁獲量の上限を推定する。
この持続的な漁獲量の上限が、ABC(Acceptable Biological Catch)である。
生物の持続性を守るためには、漁獲量をABC以下に抑える必要がある。
そのために全体の漁獲枠(TAC: Total Allowable Catch)を設定する。
TACはABCよりも低くないといけない。
乱獲を回避するために設定されたTACを配分する手段として、
ダービー、IQ、ITQなどがあるわけだ。
配分法によって、漁業の行く末や漁業者の痛みは全然違うが、
TAC<ABCであれば、生物の持続性は守られる。
ダービー制度、IQ,ITQはすべて、乱獲回避というゴールを達成できる。
そのいみで、これらの制度は全て資源管理なのである。

日本のTAC制度は乱獲のお墨付き
日本のABC、TAC、実際の漁獲量の関係はこんなかんじ。
image07092501.png
青棒がABC。「これ以上獲ったら乱獲になります」という漁獲量を科学者が推定したものだ。
赤棒が日本国によって実際に設定されたTAC。
白棒が実際に漁獲された量。
本来はABC>TAC>TAC採捕数量となるべきなんだが、
まともなのはサンマぐらいで、軒並みABCを上回るTACが設定されている。
これでは、国として乱獲にお墨付きを与えて推奨しているようなものである。
ただ、日本国が幾ら獲って良いと言っても海に魚が居ないんだから、
漁獲量がTACまで到達することは極めて希である。
この希なことがおこると、漁獲を制限するどころか、TACの方を増やしてしまう。
これで資源が守れるなら、資源管理なんて必要ないだろう。

日本のTAC制度は、ダービー制度ですらない。
資源枠組みを輸入したが、運用の段階で完全に骨抜きになっているのだ。

まっとうな資源管理と日本のTAC制度の違い

image07092508.png

まっとうな資源管理では、道筋こそ違えども、乱獲回避というゴールにはたどり着く。
一方、日本のTAC制度は、乱獲状態を容認している時点で、資源管理とは言えない。
日本漁業は、実質的には無管理であり、
時代遅れのオリンピック制度ですらないのである。
日本の資源管理は、スタート地点にすら立てていないのだ。

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米国ですらITQに方向転換

自由競争を国是とする米国では、権利ベースのITQへのアレルギーはすさまじかった。
1990年に最初にITQが導入されたものの、
1996年にITQモラトリアムを決定した。
すでに実施中のものをのぞき新規のITQ導入を見合わせることにしたのだ。
過剰な漁獲能力の削減は、税金による減船で行うことになった。
世界の流れとは、全く逆の方向に進んだのである。
その結果として、米国の漁業管理は難航し、漁業者は苦しんだ。

ダービー制度でちゃんと資源を守ろうと思うと、漁期はどんどん短くなる。
漁期が1月とかは良くある話で、3日とかいうのも少なくない。
俺がカナダで聞いた話では、産卵親魚を対象としたある漁業は、
漁業開始から終漁まで、なんと15分しか無いと言う。
最初は冗談だろうと思ったら、本当の話らしい。
どうやって漁獲量を集計するのかわからないけど、凄い話だ。
よーいドンで、狭い漁場に漁船が一斉に向かうわけだ。
すさまじい場所合戦で、船が転覆したり、死傷者が出たりするらしい。
「今年は、死人が出なくて良かった」とか話してるんだから、呆れてしまったよ。
そんな競争を毎年やらされる側にとっては、溜まったもんじゃないだろう。

北米では、ダービー漁業による魚の奪い合いに明け暮れる中、
自由競争を捨てて権利ベースのIQ・ITQに移行した国々は、着実に漁業収益を伸ばした。
学習能力がある米国は、2002年にITQのモラトリアムを解除した。
そして2006年に、漁業資源保存管理法が改定され、
ITQが政策の中心として推進されることになった。
やると決めたら徹底的にやるお国柄だから、本気でITQに向けてひた走るだろう。

自由競争原理主義の米国ですら、権利ベースのITQへ移行している。
これは、キリスト教原理主義者がコーランを受け入れる様なものである。
ダービー制度の総本山が既に敗北宣言をしているのだから、
全ての資源管理は、権利ベースの配分制度に進んでいると言っても良いだろう。
残された問題は、漁獲枠の譲渡をどこまで許容するかであろう。 

日本は何も考えずに、米国の漁業制度の猿まねをしてきた。
現在の日本のTAC制度は、90年代の米国の管理システムを、
そのまま骨抜きししたようなものである。
そして、米国ですら諦めたダービー制度に、未だにしがみついている。
自由競争好きの米国と違って、日本は既得権大好きなんだから、
そもそもダービー制度に固執する理由など無いと思うのだが。

まあ、水産庁の米国好きは筋金入りだから、
米国のITQ移行が本格化したら、日本もすぐさまITQに移行するかもしれない。
いや、冗談抜きで、本当に。

米国の漁業制度に関しては、これが参考になります。

水産振興 473号
米国の漁業管理政策について
-マグナソン・スティーブンス漁業資源保存管理法改正からの示唆-
水産庁資源管理部管理課資源管理推進室 課長補佐 大橋 貴則

http://www.suisan-shinkou.or.jp/gekkann.htmから申し込むとタダでもらえるので、
興味がある人は是非。
442号の「本音で語る資源回復計画」とセットで読むと、味わい深いです。

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全国評価会議の音声を公開します

全国評価会議は、公開で、録画もOKな会議です。
ということで、録音した音声をそのままアップしますね。

平成19年度 全国資源評価会議 マサバの質疑応答(11.3MB)

マサバの07年級群を巡る攻防です。
威勢が良いのが北巻関係者で、
低い声で淡々と反論をしているのが水研の担当部長です。
TACを超過して不正漁獲をしておきながら、偉そうですねぇ。

ただ、残念なことに前後が切れて居ます。
「あっこれ、おもしろい」と思ってからレコーダーを取り出したので、前半部分がありません。
あと、電池が切れてしまったので、俺の発言が途中で切れてしまいました。
俺の発言についてはここに書いたとおりです。
完全版をお持ちの方がいらっしゃいましたら、提供してください。

ちゃちなカメラで録音したので、音質は良くありません。
来年は、ちゃんとしたマイクを持っていきます。

マサバの07年級群については、ここにまとめてあります。
http://kaiseki.ori.u-tokyo.ac.jp/~katukawa/blog/2007/08/post_175.html

サバ漁業の様々な課題については、
http://www.jfa.maff.go.jp/suisin/kouiki/t/giji/t_08.pdf
のP14以降を読むと、よくわかります。

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資源管理をすると漁業は滅びるか?

今まで見てきたように、TACの配分方式によって、漁業の方向性は変わってくる。
逆に言うと、現在の漁業の抱える問題点を明らかにした上で、
適切な方式を採用しなくてはならない。
不適切な配分方式を採用すれば、資源は守れても漁業は破綻する。
薬を間違えれば、治療どころか逆効果になるのと同じことだ。

資源管理をすると、魚を守る代償に漁業がつぶれてしまうと言う人がいる。
行政、漁業者、および、勉強不足の研究者だ。
確かにそういった実例はあるものの、そのほとんどが北米に集中している。
北米で用いられてきた資源管理こそが、フリーアクセスのダービー制度なのだ。

北米の資源管理の失敗原因は明白だ。
すでに過剰な努力量が存在する中で、ダービー制度に固執したからである。
すでにぱんぱんに空気が入った風船を小さくしたら、破裂するに決まっている。
空気を抜くための仕組みが必要なのだ。
米国に必要な管理制度は、ITQ(もしくはノルウェーのような譲渡付きIQ)である。

Vanishing Species: Saving The Fish, Sacrificing The Fisherman
Susan R. Playfair
Univ Pr of New England (2005/04)

この本は、ブログのコメント欄で教えてもらったのだけど読み応えがあった。
タイトル通り、資源管理の犠牲として苦しむ漁業者のルポです。
ダービー制度で漁獲枠を制限された米国の漁業者が、
なすすべもなく苦しんでいく様が、克明に示されている。
悲惨の一言に尽きる。

ただ、この本を読んで、「資源管理=漁業の崩壊」と結論づけないで欲しい。
資源管理は漁業に良くないという論調の多くは米国の失敗例に基づいているのだが、
米国の失敗の原因は、ダービー制度固有の悲劇なのだ。
適切な管理手法があるにもかかわらず、それを採用しなかったのが根本原因である。
医療ミスによって、患者が死んでしまったからといって、
医学には害しかないという結論にはならない。

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