魚の代金は誰の所に行くのか?

島根県漁連がイオンと直接取引をして話題になった。仲卸というと、バブル期の「魚転がし」、濡れ手に粟のつかみ取りというイメージを持っている人もいるだろう。水産流通における実際に金の流れは、どうなっているのだろう。まずは、次のサイトを確認して欲しい。
平成20年食品流通段階別価格形成調査(水産物経費調査)

この調査では流通段階毎の魚の値段を追跡している。この調査から、流通のどの段階で、いくら吸収されたかがわかる。
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消費者が、1000円の魚を買うと、247円が漁業者に、242円が産地出荷業者に、86円が仲卸に、385円が小売業者に入るという結果だ。

産地でセリを行う場合、売り上げの数%が手数料(口銭)として組合に徴収される。この経費は、組合人件費などに当てられ利益はでない。

産地市場で魚をセリ落とした産地出荷業者は、築地をはじめとする消費市場に出荷する。このとき、25%ほど値段が上がるのだが、輸送費などで相殺され、ここでも利益はでない。

消費市場では、仲卸が魚を購入し、小売りに販売する。この段階で魚の値段は10%ほど上がるが、ここでも利潤はでていないようだ。

最後に小売業者が、仕入れ値の1.5倍の値段で消費者に売る。ここでは、3.6%の利潤が発生する。

この調査を見た流通業者によると、漁業者は、もっと多くとっているということであるが、真相は不明。


あと、調査にはこんな図もあった。

卸売数量が着実に落ちている。これは、まあ、そうだろう。一方、卸売価格は、最近、上昇傾向にある。こっちは、俺が聴いていた話と全然違う。「値段がつかない」「荷が動かない」という景気が悪い話ばかりなんだけど、何でこういうことになるんだろう?

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平成20年食品流通段階別価格形成調査(水産物経費調査)

カテゴリー: 流通・消費, 研究 パーマリンク

魚の代金は誰の所に行くのか? への11件のフィードバック

  1. kato のコメント:

    この統計、母数はどうなのでしょうね。
    ざっと見ただけなのでハッキリは言えないのですが、
    「仕入金額は、販売できなかったものを除いた金額である」(ロスが考慮されていない?)
    という記述があったり、個人会社含めて単純平均を使っていたり(規模による違いは無視?)、
    お金の流れ全体が示された統計ではないような気がするのですが、どうでしょう?

  2. さかなやオヤジ のコメント:

    小売の38%は、粗利率のような数字です。
    実質はそれほど儲かっていないと思います。

    でも儲かっていないのは、流通の段階全てです。
    (配送事業者はどうだかわかりません。最近、トラックも新しくなっていますね)
    これでは漁業者の生活は良くなるはずが無いし、
    おいしい魚を適正な価格で食べられるはずが無い。

    産地仲買は運賃などの経費をかけ過ぎですね。
    助長しているのは荷受であり、それを指示しているのが仲卸ではあることは間違いないです。

    中央市場でのセリが無くなって久しい(一部の優良市場を除いて)ですが、
    全て中央市場の荷受、仲卸のエゴ(自分たちの都合の良いように)から生まれたものです。
    その辺りから市場流通を崩して行ってしまったように思います。

    実際、自分もその一人ではありますが。

  3. 沿岸漁業の一漁師 のコメント:

    昨年の今頃は全漁連の一斉休漁でしたねw。
    マスコミを中心に荷受・仲卸を批判した『中間業者悪玉論』が盛んでしたが、宮城県から『小売業者悪玉論』が出てますねw。

    魚の低価格問題で意見交換会 水産団体、消費側に理解訴え
    共同通信
    http://www.47news.jp/CN/200907/CN2009071501000944.html

     魚の小売価格は大手量販店などが低く抑えていて、漁業者の利益が確保できない流通面の問題があるとして、宮城県の水産業関係団体が15日、消費者団体側に理解を求める意見交換会を開いた。

     主催は宮城県産地魚市場協会と県水産物流通対策協議会。宮城県の担当者が流通の現状を説明し、水産団体側が「大手スーパーがいや応なしに価格決定してくる。(低価格を嫌がると)『ほかの業者に変えるぞ』と圧力をかけられたこともあり、やっていけない」と窮状を訴えた。

     ある幹部は「量販店に対抗する地元の小売店がなくなったことがある。消費者が小売店を育てれば、量販店のエゴがなくなる」と指摘した。

     宮城県消費者団体連絡協議会など消費者側の参加者からは「生産者ではなく小売業者が価格決定すると知ってびっくりした」と声が上がり、水産業について消費者と話し合う機会を増やすべきだとする提案や、消費者の魚離れ対策が重要との意見が相次いだ。
    2009/07/15 20:17 【共同通信】

  4. 勝川 のコメント:

    katoさん
    母数はレポートにあります。完全に市場を把握する統計など無理なことは少し考えればわかるでしょう。では、この調査に意味がないかというと、そうではない。具体的な数字で示すことは重要と考えて、ブログで紹介しました。
    katoさんは、どういう調査なら満足なのでしょうか。今後は、具体的な改善案を示してください。

    さかなやオヤジさん
    >小売の38%は、粗利率のような数字です。
    >実質はそれほど儲かっていないと思います。
    経費がほとんどで、利潤は3.6%ですね。
    1000円の魚をうって、10円の利益が出る計算です。厳しい数字ですね。

    >中央市場でのセリが無くなって久しい(一部の優良市場を除いて)ですが、
    >全て中央市場の荷受、仲卸のエゴ(自分たちの都合の良いように)から生まれたものです。
    >その辺りから市場流通を崩して行ってしまったように思います。

    セリが無くなると、荷受けの裁量が増えるというのはわかるのですが、
    仲卸にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
    教えていただけると幸いです。

    沿岸漁業の一漁師さん
    相変わらず「俺たちは善良な被害者で、悪いのはみんな外部」ですね。
    では、大手スーパーが利益を出しているかというと、鮮魚コーナーのほとんどが赤字なのです。
    本当に価値がある魚を価値が出るとりかたをしていれば、
    高く買う業者はでてくるとおもいます。

    >水産業について消費者と話し合う機会を増やすべきだとする提案や、
    >消費者の魚離れ対策が重要との意見が相次いだ。
    消費者はもっと生産の現場を知った方が良いのは、確かですね。
    情報公開が進んで一番困るのはだーれかな?
    消費者の魚離れ(笑)よりも、
    思わず食べたくなるような魚が少ないのが問題でしょう。
    金魚みたいなキチジを並べられても、購買意欲はわきません。

  5. 沿岸漁業の一漁師 のコメント:

    >相変わらず「俺たちは善良な被害者で、悪いのはみんな外部」ですね。

    共通する姿勢ではありますねw。

    >消費者はもっと生産の現場を知った方が良いのは、確かですね。

    真面目な地域もありますが、地域によっては衛生管理や関わってる方々を見てドン引きするでしょうねw。

    >情報公開が進んで一番困るのはだーれかな?

    漁民も関わっている行政機関も困るでしょうねw。
    『自主性に委ねる』という名の野放しがありますからねw。

  6. さかなやオヤジ のコメント:

    勝川さん

    > セリが無くなると、荷受けの裁量が増えるというのはわかるのですが、
    > 仲卸にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
    この調査でも公表されているとおり、仲卸の最大の経費は人件費です。
    経営が苦しくなる、またはもっと利益を出してやろうと思ったら、ココを削るのがまず一番目です。
    従来セリがあったとき、また現在でもセリがある市場では、
    どこの市場でも近海、青物など何ヶ所か同時に開始されますので、
    セリに参加できるような目利きが出来る「優秀な社員」が必要となります。
    セリが無ければこのような「優秀な社員」は必要なくなります。
    また最近は、量販店側から市場へ車を廻してくるので、配達をする仲卸も少なくなりましたね。
    トラックも必要なければ運転手役の社員や荷役も要らないですが、
    客や店舗とのコミュニケーションが少なくなってしまうので、
    これも間違った経費削減のひとつだと思っています。

    ご存知のように現在の消費地市場では、量販店への納品時間などの影響から先取りが横行し、
    セリが形骸化したためなくなってしまったわけですが、
    労働基準法などの影響で、「早朝から市場に買い物に行く」バイヤーが減ってしまったので、
    仲卸には「目利きして買える社員」は必要なくなり、
    「口がうまくて売れる社員」に置き換わっていますので、
    主な仕事は日中の営業活動、場合によっては夜のお付き合いに専念しています。
    大きい仲卸になるとある程度の社員がいますが、
    小さい仲卸では、これを経営陣、または経営者が替わってやれると言うわけです。

    仲卸が本来の存在意義である「目利き」の部分を捨ててしまい、
    量販店などのピッキングセンター替わりだけをやっていれば収入は勝手に入ってくるので、
    人件費としてはアルバイトで事足りてしまうわけです。

    となると目利きの部分は荷受に任せてしまいがちですが、荷受もセリ人が若くなり、
    産地の実情などを知らない人が多くなって来たため、判断基準が価格だけになっています。

    仲卸は本来、水産流通の主役であったはずなのに、量販店の台頭でその主役を彼らに譲ったことから、
    現在の流通の崩壊が始まったように思います。
    素人に目利きを任せてしまったんですから、業界はだめになりますよね。

    但し、これは消費地市場でのお話しですが、産地市場や極一部の消費地市場では、
    殆ど全品セリを開催しているところもあります。
    そういう市場で一番元気なのは、荷受や量販店ではなく、未だに仲卸、仲買です。

  7. 沿岸漁業の一漁師 のコメント:

    >素人に目利きを任せてしまったんですから、業界はだめになりますよね。

    素人には『漁獲方法』、『活かし込み』、『〆方』、『氷の使い方』、『衛生管理』というのはなかなか理解は得られないですからね・・・・・・・・・。

  8. kato のコメント:

    すみません。
    当方の誤解もありましたので少し疑問点を整理してみました(トラックバックします)。一番の問題は「経費調査」を無理矢理「価格形成」に結びつけている点にあるような気がします。たぶん両者はイコールではリンクしないはずです。

    さかなやオヤジさん

    ひとつ疑問なのですが、仲卸・小売段階での売れ残り率というのは一般にどの程度あるものなのでしょう?また食肉や青果と比較してそれらは高いものなのでしょうか?

  9. ピンバック: すいさんWatch

  10. さかなやオヤジ のコメント:

    katoさん こんにちは。

    おっしゃる「売れ残り率」を「廃棄」と考えてのコメント返しです。

    仲卸の売れ残りは、はっきり言って翌日にでも何とかしてしまいますので殆ど無いに等しいです。
    よほどのことがない限り、廃棄(100%のロス)にはなりません。
    また廃棄しなければならないほどの見込み仕入れをできる仲卸は、最近では少なくなりました。

    小売(量販店)は、廃棄率が従来仕入金額の5%程度と聞いていましたが、
    最近の大量出店による人材不足で担当者が素人になってしまったので各量販店ごとに決まりができ、
    日付などでしか判断できなくなっているのでもっと増えているはずです。

  11. 勝川 のコメント:

    さかなやオヤジさん

    情報をありがとうございます。
    おっしゃることの意味がわかりました。

    消費者の生活スタイルの変化に合わせて、
    流通が変化するのは自然なことだと思います。
    現在の枠組みの中で、仲卸の専門的な知識を活かすという方向性を
    模索していく必要があるでしょうね。

    質と価格が一致するのは重要ですね。
    奮発して高い魚を買ったらまずかった、というのでは、
    消費者は、次から安い魚しか買わなくなりますね。

    沿岸漁業の一漁師さん
    やっぱり、消費者に底までの理解を求めるのは無理でしょう。
    だからこそ、プロに、適正な価格をつけてほしいものです。

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