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モナコの敗因を分析する

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敗因 その1 妥協を拒んだ結果、漁業国の反発を招いた

ワシントン条約の付属書Iは商取引全面禁止。付属書IIは書類があれば輸出可能となっている。モナコは、付属書Iでの規制を要求して、妥協を拒みつづけた。そのせいで、「保全は必要だけど、いきなり禁止はちょっと・・・」という漁業国が相次いで脱落した。

2009-09-25の記事ではこう書いた

フランスが「いきなり付属書Iはあれだから、付属書IIからでいいんじゃね?」という妥協案を出したのを、英独が「この軟弱者!」と切って捨てた時点で、 EUは分裂の可能性ありと見ていたが、否決されたようですね。

大西洋クロマグロは、西系群(メキシコ湾)と東系群(地中海)に別れている。付属書IIならまだしも、付属書Iが飛び火すると、自国の漁業がつぶれてしまうので、クロマグロ・ミナミマグロ漁業を抱えているカナダ、メキシコ、豪州も、今回のモナコ提案には、神経質になっていた。付属書IIでの合意を目指していれば、これらの国の賛同は得られただろう。また、付属書IIであれば、フランスの賛成は早期に得られていたはずで、EUは早い段階で一枚岩になり外向きに政治力を発揮できた。漁業国の国内事情への配慮が欠けたのが、大きな敗因である。

敗因 その2 漁業とは無関係な国の支持を得られなかった

漁業とは無関係の国を味方につけるノウハウを、日本はIWCを通じて持っている。今回はそのスキルが遺憾なく発揮された。IWCでは、欧米諸国も日本に負けじと激しく票とりをして、常に日本の動きを封じてきたのだが、今回は、欧州は内部分裂をして、その調整にエネルギーの大半を使うことになった。米国も、規制反対の商務省と規制賛成のNOAAが内部で激しく対立し、国として付属書Iの姿勢を打ち出したのが締約国会議の10日前。EUに至っては、付属書Iの合意を得られたのは締約国会議の3日前だ。欧米が内部調整に手間取る間に、日本は首尾一貫して外交工作を重ねてリードをした。
とはいえ、ここまで大きな差がつくことを事前に予想していた人間は、ほとんどいないだろう。水産庁自身も驚いているに違いない。これまでワシントン条約の締約国会議は、ほぼFAO専門委員会の決定通りになってきたという歴史がある。FAOの専門委員会は、大西洋クロマグロをワシントン条約で規制する必要性を認めたのだから、今回も普通に考えれば、規制になるはずだった。そう読んだからこそ、フランスもスペインも、自国の漁業者の反発を承知で、モナコ提案に同意したのである。減少は明らかだし、科学者(FAO)と当事者(EU)のコンセンサスも最終的には得られた。アラブ、アフリカなどの直接利害に絡まない国は、普通に考えれば規制に賛成するだろうと、多くの人間は思っていた。いくら日本がトロパーティーをやったところで、票の流れは限定的だと見られていた。ところが、そうではなかったんだね。アフリカの票を得るに当たって、中国の協力が大きかったと言われている。サメのリスティングを妨害したい中国と、マグロのリスティングを妨害したい日本の思惑が合致したと言うこと。マグロに関しては、畜養が地中海アフリカ側にも飛び火している。「おまえらが減らしておいて、勝手に取引停止にするな」というのが、アフリカサイドの言い分。これも、心情的には理解できる。

今回の結果は、科学的なコンセンサスを重視して、保全を優先するという風潮は、欧米の一部の国にとどまることを示した。大西洋クロマグロは、「今すぐ規制しなければ、いつ規制をするのか?」という感じなのだが、大差で規制は否決されてしまった。ワシントン条約という枠組みでは、高い経済価値をもつ、広域分布種の保全は難しいことを示したと言えるだろう。

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from 18 Mar. 2009

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