放射性セシウムの汚染は、食物連鎖を通じて、高次捕食者に時間遅れで伝わることが世界中で観察されています。たとえば、チェルノブイリの事故の後、日本近海でも、スズキやマダラのような捕食魚の汚染のピークは半年から1年ほど遅れました。次の図は実測データから導かれたモデルです(海生研ニュース No.95 p7より引用)。

3月末から、4月にかけて、福島原発から超高濃度汚染水が漏れ出しました。福島周辺海域でも、チェルノブイリの時と同じことがおこるなら、今後も高次捕食者に汚染が蓄積されていき、半年~1年後にピークになると思われます。水産物の放射能検査から、茨城県のヒラメのセシウムの濃度を抜き出したのが下の図です。
http://www.jfa.maff.go.jp/j/kakou/Q_A/pdf/20110508_data_sheet_jp.pdf

| No | 魚種等 | 都道府県名等 | 採取地 | 公表日 | セシウム | ヨウ素 | 分析機関名 |
| 23 | ヒラメ | 茨城県 | 神栖市沖 | 4/2 | 0 | 0 | 茨城県環境放射線監視センター |
| 33 | ヒラメ | 茨城県 | 日立市沖 | 4/4 | 0 | 13 | 民間分析機関 |
| 43 | ヒラメ | 茨城県 | 鉾田市沖 | 4/5 | 4 | 0 | 茨城県環境放射線監視センター |
| 60 | ヒラメ | 茨城県 | ひたちなか市沖 | 4/8 | 2 | 2 | (独)水産総合研究センター |
| 80 | ヒラメ | 茨城県 | 鹿島市沖 | 4/12 | 0 | 0 | 茨城県環境放射線監視センター |
| 83 | ヒラメ | 茨城県 | ひたちなか市沖 | 4/12 | 2 | 2 | (独)水産総合研究センター |
| 110 | ヒラメ | 茨城県 | 北茨城市沖 | 4/16 | 19 | 0 | 茨城県環境放射線監視センター |
| 119 | ヒラメ | 茨城県 | 鹿島市沖 | 4/19 | 0 | 0 | 茨城県環境放射線監視センター |
| 142 | ヒラメ | 茨城県 | 日立市沖 | 4/23 | 23 | 0 | 茨城県環境放射線監視センター |
| 145 | ヒラメ | 茨城県 | ひたちなか市沖 | 4/23 | 7 | 0 | 茨城県環境放射線監視センター |
| 208 | ヒラメ | 茨城県 | ひたちなか市沖 | 4/30 | 10 | 0 | 茨城県環境放射線監視センター |
| 210 | ヒラメ | 茨城県 | 鹿嶋市沖 | 4/30 | 16 | 0 | 茨城県環境放射線監視センター |
| 226 | ヒラメ | 茨城県 | 日立市沖 | 5/8 | 15 | 0 | 茨城県環境放射線監視センター |
| 227 | ヒラメ | 茨城県 | ひたちなか市沖 | 5/8 | 26 | 0 | 茨城県環境放射線監視センター |
| 229 | ヒラメ | 茨城県 | 鹿嶋市沖 | 5/8 | 7 | 0 | 茨城県環境放射線監視センター |
注:上のグラフおよび表では、不検出の場合は、ゼロを代入しています。
4月中旬以降、徐々に上がりつつあるように見えます。今後はじわじわと汚染が進んでいく可能性がありますので、今後の推移を注意深く見守りたいとおもいます。
茨城のヒラメ・カレイをエリアべつに分けてみると次のようになります。全体的に上昇傾向ですが、北部(日立市以北)の方が傾きが大きいです。中部(ひたちなか周辺)と南部(鹿島市周辺)はそれほど変わらない感じですね。

5/9から、小型船の漁業が再開されたようです。
茨城県の鹿島灘漁港では、原発事故の影響で、コウナゴなどの漁を行っている小型船での漁を自粛していたが、コウナゴ漁の時期が終了したうえ、ヒラメやマコガレイからは放射性物資が検出されていないことなどから、小型船での漁を再開した。(05/09 12:41)
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00199028.html
鹿島灘のヒラメからも、暫定基準値以下の放射性物質は検出されているので、記事の表現は不正確だと思われます。
ピンバック: 3.11東日本大震災後の日本
貴重なデータと考察を提供いただきありがとうございます。「福島周辺海域でも、チェルノブイリの時と同じことがおこるなら、」と述べられている点について質問させていただきます。
チェルノブイリの際は、日本近海は、一様に(降雨量の差や陸水からの流入はありますが、概ね一様に)放射性物質の降下がありました。
今回は、発電所の1点からの流出と、大気からの降下との、2種類がありますが、定性的には、発電所近海では前者が、遠隔地では後者が支配的になるものと思われます。
前者の空間的な拡大傾向については、チェルノブイリの経験だけでは語れず、発電所近海では「半年~1年後にピーク」かもしれませんが、それ以外で拡散の及ぶ海域では、当然「ピークが遅くなる」と思われます。
遠くなれば拡散によりピークは低くなるので、2年後に米国まで到達するときまでの影響はないのでしょうが、どこまでの範囲でピークを考慮しないといけなくなるのか、の相場観はあるのでしょうか。
興味深い分析と思います。
ただ、5/8の日立市沖の40ベクレルの点は、データ番号225のヤナギムシガレイの値ではないでしょうか。
この点がないと少し印象が変わります。ご確認を。