- 2008-01-09 (水) 18:02
- ITQ
規制改革会議から出された今年の宿題に「TAC対象魚種の拡大の検討」というのがある。
水産庁もいろいろ忙しくて大変だろうから、宿題を手伝ってあげよう。
評価票に漁獲量の記載があった79系群の漁獲量をどんどん足していくと、次ような図になる。
最初の立ち上がりは急だが、20を超えた当たりからほぼ頭打ちになっている。
上位20系群で260万トンに対して、全79系群で280万トンである。
21位から79位までを足しても20万トンにしかならない。
確かに、日本沿岸の水産資源の種類は多いが、漁獲量として重要な種は限定的である。
日本沿岸が南北に長く、黒潮・親潮が混ざる複雑な海洋環境だから、地域によって魚が違う。
結果として、地域色豊かな海洋生態系がはぐくまれ、地域色豊かな多様な食文化が生まれたのである。
利用している魚の種類は多いけれど、漁獲量として重要なものは限られているのである。
2005年の漁獲量の上位20のランキングは、つぎのようになる。
魚種
|
系群
|
2005漁獲量
|
合計
|
|
1 | サンマ | 太平洋北西部系群 | 469479 | 469479 |
2 | カタクチイワシ | 太平洋系群 | 250974 | 720453 |
3 | マサバ | 太平洋系群 | 226493 | 946946 |
4 | スルメイカ | 秋季発生系群 | 223640 | 1170586 |
5 | マサバ | 対馬暖流系群 | 207000 | 1377586 |
6 | マアジ | 対馬暖流系群 | 183000 | 1560586 |
7 | スルメイカ | 冬季発生系群 | 178213 | 1738799 |
8 | ゴマサバ | 太平洋系群 | 160000 | 1898799 |
9 | スケトウダラ | 太平洋系群 | 159868 | 2058667 |
10 | ホッケ | 道北系群 | 121769 | 2180436 |
11 | ゴマサバ | 東シナ海系群 | 86000 | 2266436 |
12 | カタクチイワシ | 対馬暖流系群 | 74143 | 2340579 |
13 | カタクチイワシ | 瀬戸内海系群 | 57100 | 2397679 |
14 | ブリ | 55591 | 2453270 | |
15 | マアジ | 太平洋系群 | 48000 | 2501270 |
16 | マダラ | 太平洋北部系群 | 26604 | 2527874 |
17 | スケトウダラ | 日本海北部系群 | 25910 | 2553784 |
18 | マイワシ | 太平洋系群 | 24877 | 2578661 |
19 | ウルメイワシ | 対馬暖流系群 | 20240 | 2598901 |
20 | イカナゴ類 | 宗谷海峡 | 19777 | 2618678 |
上位20種の中でTAC対象資源を青で塗ってみた。
なんだかんだ言って、重要資源は既に資源管理の対象になっているのである。
誰が選んだか知らないが、TAC魚種というのはなかなかよく考えられている。
ただ、その管理の内容に問題が大ありだ。
TAC対象種の数を増やすよりも、現在のTAC制度をまともな資源管理に改良していくのが先決だろう。
TAC対象ではないのは、カタクチ、ホッケ、ブリ、マダラ、ウルメ、イカナゴがランキングした。
これらも将来的にはTACの対象にした方が良いとは思うが、難点も多い。
カタクチイワシは、単価がべらぼうにやすくて、漁業としての重要度は低い。
また、ホッケは親は岩場に入ってしまうので、まとまってとれるのは未成魚だけ。
親はつりでしかとれないので、資源量の推定が非常に難しい。
未成魚だけをみて資源全体を把握するのは至難の業である。
ただ、難しいからといって、放置しておいて良いわけではない。
カタクチイワシは最近減少が顕著であり、要注意資源になりつつある。
日本海のスケトウダラの崩壊が確実な北海道では、ホッケに崩壊フラグが立っており、
ホッケの管理体制を整えるのが急務である。
十分な情報が無いのはわかるけど、関係者で知恵を絞って何とかしないとまずい。
ランキングには入らなかった系群でも、漁獲枠で管理すべきものはいくつかある。
ロシアが大量に利用しているイトヒキダラ 太平洋系群は早急に管理を始めるべきである。
沿岸国の権利をしっかりと主張して、守るべきものは守らないといけない。
ベニズワイやアカガレイなどの底もの重要種も管理をした方がよいだろう。
この辺を重点的に検討してください>中の人
過去の最大漁獲量をつかって、同じような図をかいてみた。
こちらも20系群で頭打ち傾向が顕著である。
歴史的にみても重要種は限られているのである。
こちらの上位20位は次の通り。
魚種
|
系群
|
Max
|
合計
|
|
1 | マイワシ | 太平洋系群 | 2915763 | 2915763 |
2 | マサバ | 太平洋系群 | 1474434 | 4390197 |
3 | マイワシ | 対馬暖流系群 | 1283914 | 5674111 |
4 | マサバ | 対馬暖流系群 | 821000 | 6495111 |
5 | サンマ | 太平洋北西部系群 | 469479 | 6964590 |
6 | カタクチイワシ | 太平洋系群 | 415437 | 7380027 |
7 | スルメイカ | 冬季発生系群 | 379422 | 7759449 |
8 | スルメイカ | 秋季発生系群 | 317385 | 8076834 |
9 | スケトウダラ | 太平洋系群 | 294765 | 8371599 |
10 | スケトウダラ | オホーツク海南部 | 279135 | 8650734 |
11 | マアジ | 対馬暖流系群 | 277000 | 8927734 |
12 | ホッケ | 道北系群 | 205086 | 9132820 |
13 | スケトウダラ | 日本海北部系群 | 162898 | 9295718 |
14 | ゴマサバ | 太平洋系群 | 160000 | 9455718 |
15 | カタクチイワシ | 瀬戸内海系群 | 149900 | 9605618 |
16 | カタクチイワシ | 対馬暖流系群 | 128250 | 9733868 |
17 | ゴマサバ | 東シナ海系群 | 116000 | 9849868 |
18 | スケトウダラ | 根室海峡 | 111406 | 9961274 |
19 | マアジ | 太平洋系群 | 83000 | 10044274 |
20 | ムロアジ類 | 東シナ海 | 80698 | 10124972 |
トップ4はマイワシとマサバが独占だが、どちらも巻き網に乱獲されて激減中。
巻き網はとても効率的に小さい魚からとれてしまう漁法だから、
日本のように補助金をばらまくだけで、まともな漁獲規制をしなければ必ずこうなる。
巻き網業界が困るのは自業自得なんだけど、
他の沿岸漁業者や加工や流通や消費者にとって、迷惑この上なしだ。
サンマは業界が強いので、巻き網に魚をとらせていない。
これがサンマ豊漁の秘訣だろう。
また、小型魚を投棄する選別機の使用を止めた英断も、資源に良い影響を与えたはずだ。
ただ、資源状態が良くなっても、それが収入につながっていない現状がある。
鮮魚にこだわらずに利益が出るような取り方を模索して欲しい。
工夫次第で、いろいろなやり方があると思う。
ここにかかれていないものとしては、ニシンの100万トンというものあるんだが、
完全に今は昔の夢物語になってしまった。
マサバ、マイワシをニシンの二の舞にしてはいけない。
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Comments:2
- 県職員 08-01-10 (木) 8:57
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今年も色々勉強させて頂きます。
私はTAC魚種増やすなら資源管理効果などを考えるとブリがよいのではないかと考えます。寿命は長いし,初期減耗期を除けば,死亡率も低そうだし,温暖レジームで資源水準が上がってきているようにも見受けられますし。
一方,まき網による漁獲が増えてきているようなので,早めに手を打っておいた方が末永く漁獲できるのではないかと。 - 勝川 08-01-12 (土) 2:32
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県職員さん
いつもお世話になっております。
たしかに、ブリは管理のための条件がそろっていますね。
前向きに検討してもらえるように働きかけます。
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