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小サバ輸出の言い分を検証する

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第7回太平洋広域漁業調整委員会議事録は、
業界と水産庁のマサバ太平洋系群に関する認識がわかって、とても面白い。
伊豆のたもすくいと北部巻き網の競合関係などが見て取れる。
是非、隅から隅まで目を通してもらいたい。

この文章から小サバの輸出に関連する部分をピックアップして、つっこみを入れてみよう

○香川管理課長 輸出の件については、輸出の実績を見ると確かにかなりふえていること
は事実でございます。例えば、2005 年には5万8,000tのサバ類の輸出がございます。
こういう中で、実は大臣の指導のもとで、農林水産物の輸出の振興を一生懸命やってお
ります。それは当然、例えば漁獲されたサバの場合で言えば、小さいサバは日本で市場に
ほとんど価値がつかないけども、輸出をすれば相手国で非常に高い価値がある
ということ
で、それは非常に漁業経営の改善に役に立つのではないかという観点でやっているわけで
ございます。
ただ、私も前任は貿易対策室長をやっていまして、そのときに随分言っていましたのは、
貿易を促進することによって、資源が一方において悪化する、非常に重大な要因になるこ
ともあるということで、貿易の輸入の拡大みたいなものには非常に反対してきたこともご
ざいます。
そういう中で、自然にとって、とられて小型のものが入った場合に、それを輸出すると
いうことは、恐らく皆さん何の問題もないと思います
が、例えば輸出をするために小型の
ものをねらって、多獲をして漁獲するということは、一方において資源管理上非常に好ま
しくないだろうと思っております。
どういうふうに漁獲しているのかというふうに調べなければいけないと思いますが、
在のところは輸出のために小型を特にターゲットにしてとっているというふうには、私ど
もも理解をしておりません

○鈴木委員 時間よろしいですか。私も一言。
決意表明という話がありましたが、その割にちょっと誤解を受けるといけませんので、
昨日外記さんが話されました。あと今日も話をしました、中国の輸出の話をちょっとだけ
させていただきます。
250g以下のサバは、日本人が余りにもぜいたくになっちゃったために、市場価値がない
と見向きもしてくれないわけでございます。それで、ノルウェーあたりを中心にどんどん
輸入しても、小さいサバは日本人は食べてくれない。そのサバがどうだったのかというと、
かつて大量にとられたときにはミールでした。そして、その次の段階では養殖のえさでし
た。
このサバの価値が、値段が高くなるからって全くそういうのを多くとろうということは
やっていませんし、実際に数量もトン数制限と休漁によって下がっていると思います。
ある時点の話で、養殖に行くのは30 円の価値だと。中国に行くのは現地で80 円で引き
取ってくれると。そうすると輸送費とか手間賃とか20 円かけても、日本で売るよりも30
円のもうけがあるという、全くの市場原理であります

そのために、養殖は衰退してきていると聞いております。ハマチを一番食べていたんで
すが、このハマチの養殖が打撃を受けまして、そのおかげで天然のイナダ、ブリの小さい
のがふえていると言われております。それは養殖が成り立たないから稚魚をとらないと。
そういう話が私の方に伝わっております。
そういうことで、小さいサバはとらないようにしていますが、今までにもとってないん
ですけど
、結果的に養殖なんかに回っていた部分が中国にどんどんいっているということ
で、それは我々にとっても経営上ありがたい
ことだなと思っております。これから中国へ
輸出がふえていくとしても、とるということはしないと思います

つっこみどころが多すぎるのだが、要約するとこうなる

  1. 小サバは日本市場では価値がないが、輸出をすれば相手国では非常に高い価値がある
  2. 小型を狙っているのではなく、自然に獲れてしまう
  3. 飼料になっているのを輸出しているだけだから、何の問題もない

1.については、すでに書いたように、
国内(鮮魚)>>中国(小サバ)>国内(小サバ)
という関係がある。
「非常に高い価値」とか言っても、飼料よりは若干高いという価格にすぎないわけで、
日本の生鮮市場とは文字通り桁が違う。
輸出するよりも何年か待って、国内に鮮魚として出した方が圧倒的に価値があり、合理的なのだ。

小サバを高く売る努力よりも、小サバで獲らない努力が必要なのだ。

2.についても、釈然としない。
未成魚の乱獲を10年以上続けていて、成魚がほとんど居ないことはわかっている。
その状況でガンガン網を巻けば、未成魚ばかりがとれるのが物の道理だ。
それで、小型を狙ってないからそれで良いというのは違うだろう。
定置に入ってしまうというなら、まあ、しょうがないかなとも思うけど、
魚探を使って魚群を巻いておきながら、「獲れちゃうものはしょうがない」は無いだろう。
中国に輸出する以外の使い道がないようなローソクサバを乱獲するような獲り方しかできないなら、
巻き網でサバを捕るのを禁止すべきだ。

3.についても今後はどうなるか不明。
中国への販路が出来たことで小サバへの漁獲圧が強まる可能性が高い。
というか、すでに高まっていると思う。
小サバの輸出のうち、どの程度がマサバ太平洋系群かがわからないが、
かなりの量が流れていると思われる。

役所にも、漁業者にも、サバ漁業全体の利益という視点がすっぽり抜け落ちている。
漁業者に関しては、情状酌量の余地があるというか、「しょうがないよなぁ」とも思う。
現在の青天井のオリンピック方式では、
他の漁業者よりも早く獲らないと獲る以外に、利益を確保する選択肢は無いわけだから。
漁業者が言うように、市場原理の行き着く果てが、小サバの中国輸出なのだろう。

市場競争原理のみに任せていたら、漁業の経済性はどこまでも失われる。
こうなることは、50年前からわかっていたことなのだ。
小サバ漁獲は、漁業の生産性と資源の持続性にとってマイナスでしかない。
特定の漁業者が短期的な利益を得る代償として、漁業をつぶしかねない。
こういう事態を防ぐのが、水産庁の本来の役目である。

Comments:3

業界の一拗ね者 07-07-03 (火) 12:52

先生には大変重要な文書を教えていただいて、本当にありがとうございました。このような重要・有用な文書が、水産庁のHPではなく農林水産省のHPにしか掲載されていないのは、どのような発想に基づくのか全く理解の外のことであります。また、議事録しかなくて、委員会で配布されている資料が付いていないので、話についていくのが難しいところがあります。
ここで教えていただいた「太平洋広域漁業調整委員会」の議事録は、第1回から第7回まで公開されています。文書が大量で全てを渉猟したわけではありませんが、非常に驚かされたことに、マサバの資源回復計画は2003年11月に始まっています。方法は断片的にしか補足できませんが、(まき網漁船の)減船によるのではなく休漁を中心に行っており、十分ではないにしろ財政的な手当てもしているようです(すなわち、税金を投入していると思われます)。
興味深いのは、2004年の年級群が発生する前に資源回復計画に着手していることです。この委員会でも、今年はまだだ、とかリアルタイムで資源状況について検討し、それに対応して資源管理の方法についても議論している様子がうかがえます。心底、興味津々です。
マサバについては、あちらこちらで話題になっておりますが、なにゆえこの委員会で議論している話が表に出てこないのでしょうか。小松博士も、この委員会についてはよく御存知のはずなのに、件の本においても「漁業者はしょうがない輩だ」と言わんばかりの論調で、残念なことです。しかし、ある業界紙に山陰のまき網組合長による広域漁業調整委員会は飾り物、というコメントが載っているのも悲しい現実といえましょうか。

業界の一拗ね者 07-07-03 (火) 13:22

大変失礼しました。
太平洋広域漁業調整委員会議事録については、水産庁HPの「資源管理の部屋」に載ってございました。
関係の方々に深くお詫びいたします。

勝川 07-07-05 (木) 16:35

有識者委員会の限界については、
http://smatsu.air-nifty.com/lbyd/2007/02/post_209a.html
の真ん中あたり、
Q:「有識者を集めて委員会を立ち上げ、委員会における議論をコントロールして都合の良い内容の提案を作る」なんてことが実際に可能なのでしょうか。有識者の意見をコントロールするなんてことができるとは思えません。
を読んでください。飾り物というのは、まさにその通りです。
委員になるより、マスコミ経由で問題点を指摘する方がよほど効果的です。

小松さんは、サバの乱獲に関してかなり精力的に取り組まれたという話を
複数のルートから聞いております。
言いたいことは山ほどあるだろうし、言う資格もあると思います。

サバの期中改定について読者からのコメントで教えてもらって、
水産庁のサイトを探したのですが、どこにも情報が見あたりませんでした。
情報公開に真剣に取り組んで欲しいものです。

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