漁業国益論 (6)

国益という観点から、
水産行政のあり方を根本的に問い直す必要がある。

現在の国益は、食料の安定供給である。
そのためには生物資源の持続性を維持することが不可欠だ。
現在の漁業は、資源を持続的に利用しておらず、国益に反している。
にもかかわらず、大量の税金が漁業に投入されている
(漁業者のもとに届いていないという別の大問題もあるが、、、)。
対価は受け取るが、サービスは提供しないでは通用しない。
選択肢としては、対価を受け取るのを止めるか、
サービスをちゃんと提供するかの二者択一だろう。

産業と国益の関係を、根本的に問い直す必要がある。

漁業は、国益に答える義務を負う覚悟があるか?
国民は、漁業に国益の対価を払う合意があるか?

そのことを問い直す必要があるだろう。

現在の一般会計は、年間1800億円→国民一人あたり1500円
特別会計もいれると、その数倍にふくれあがるはずだが、詳細が不明。
3000円~6000円の範囲に収まるだろう。
俺の個人的意見をいうと、
魚をこれからも食べ続けることができるなら、
これぐらいの出費は全然惜しいと思わない。

1)漁業は国益に応えて、納税者はその対価を払う
国民全体で水産物安定供給のための費用を捻出する以上、
漁業者には資源を持続的に有効利用する義務が生じる。
「俺たちの生活がかかっているんだから、部外者はつべこべ言うな」とか、
「魚をどこまで減らしても漁業者の勝手でしょ?」という言い分は通用しない。
漁業者には乱獲をしたり、資源を枯渇させる権利が無くなるのだ。

現在の科学水準では、適切と思われる漁獲を行っていても、
資源が枯渇したり、経営が立ちゆかなくなったりする場合が必ず出てくる。
そういった場合に、漁業者が乱獲も首つりもしないで済むような仕組みが必要だ。
現在、公共事業に使っている予算の10%も回せば楽勝だろう。

2)漁業は国益には縛られず、納税者から対価を受け取らない
水産資源は、漁業者の私有物であり、
生かすも殺すも漁業者の勝手という考え方。
経営が厳しくなれば、勝手に乱獲をすればよく、
資源が枯渇すれば勝手に廃業すればよい。
現在の漁業はそんな感じだろう。
無秩序な自由競争の元では漁業という産業は確実に衰退する。
競争→過剰投資→資源枯渇→産業の荒廃
というコンボは共有地の悲劇として古くから知られている。
全体の利益を確保するためには、抜け駆けを防ぐ権力が必要になる。
その役をすべき水産庁が、全く機能していない。
だから、日本で資源管理がそれなりに上手くいくのは、
比較的小規模な浜で生産性の高い資源を占有している場合に限られる。
秋田のハタハタ、伊勢湾のイカナゴ、京都のズワイガニのような
一部の地域性の高い資源だけが残っても、日本の漁業に未来はないだろう。
この方向を選ぶなら、将来の水産物の供給は輸入に頼ることになるだろう。
また、EEZ内の生物資源を持続的に有効利用する義務が明記されている
国連海洋法条約を破棄するのが筋だろう。

日本漁業はどちらを選択するのだろう?
常識的に考えて、後者を公式に選ぶというのはあり得ないだろう。
国際社会に向けて、「日本は無責任な国内漁業を支持します!」
などというのは無理だ。
かといって、水産基本計画を見る限り、資源を管理する気はなさそうだ。
「食糧供給を安定させます」と外部には言っておいて、
実際の漁業は無秩序なままでもよいと思っているだろう。
その見通しはズバリ甘すぎる。今後の展開を予想してみよう。

水産庁が現状のままであれば、漁業はじり貧を続けるだろう。
国家財政が厳しい中で、縮小する産業への予算は削られ続けるだろう。

資源低迷→漁業生産低下→水産業衰退→予算削減→食料庁水産課

サプライズ人事&早速の不祥事などから、別の芽も出てきた。

トップが大失策→農水省不要論→農水省解体が行政改革の目玉に→水産庁消滅

現在のスタイルを維持したところで、現状は維持できない。
結果として、漁業に関係する全てのセクションが縮小の方向に進んでいくだろう。
漁業者にとっても、国民にとっても、役人にとっても、良い選択だとは思えない。

一方、資源管理を選んだ場合、最初は厳しいが、長期的にはバラ色の未来が待っている。

管理徹底→漁獲減→資源回復→漁獲増→漁業者ウハウハ→国民満足→海洋省誕生

日本の沿岸の生物生産力はまだまだ高い。
やりようによっては、持続的な漁獲量を倍増させることも可能なのだ。
長期的視野から、合理的に問題を整理していけば、
長い目で見て、みんなが幸せになる方向はある。

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漁業国益論 (6) への8件のフィードバック

  1. ユウラ のコメント:

    長い目で見ること・・・そうです。これが大事なんですよ。

    でも、目先の利益だけしか考えないから失敗することがある。

    これは水産界だけでなく、人の人生にもいえそうですねww

    ともかく
    >現在の科学水準では、適切と思われる漁獲を行っていても、
    資源が枯渇したり、経営が立ちゆかなくなったりする場合が必ず出てくる。
    そういった場合に、漁業者が乱獲も首つりもしないで済むような仕組みが必要だ。

    ここの部分にとても同意します。
    漁業者も生活できれば乱獲もしないでしょうから。

  2. 勝川 のコメント:

    乱獲について厳しいことを書いていますが、
    「意識が低い漁業者が悪い」と切り捨てるつもりはありません。
    乱獲になってしまうのは、漁業者個人の責任ではなくて、
    日本漁業がシステムとして破綻しているからです。
    現在の漁業のどこに問題があるかを整理した上で、
    乱獲になりづらい漁業システムに移行していく必要があります。

    罪を憎んで人を憎まず。
    乱獲を憎んで漁業者を憎まず。

  3. joe2 のコメント:

    前浜水産業従事者の生活が成り立つためには、どんな方法が必要だとお考えでしょう?

    資源保護を考えていくと、自由競争社会で彼らのの生活はどんどん逼迫したものとなるでしょう。

    職業ということを考えると、生産者、流通、加工の垣根をはずしていかなくてはならないんでしょうか。

  4. 匿名で甘えさせてもらっているヒト のコメント:

    joe2さんへ

    >前浜水産業従事者の生活が成り立つためには、どんな方法が必要だとお考えでしょう?

    かかりつけのお医者さんと付き合うように,まず,都道府県の水産試験場等に,前浜の診断をしてもらってはどうでしょうか?

    漁獲対象となる魚種の再確認(地元ではあまり見向きもされてなくても,実は,商品価値のあるモノがあったりします)と,資源量の的確な把握をしてもらいます。
    そして,それらの水産資源の効率的な利用方法を一緒に考えることから始めたらどうでしょう?

    今,水試や指導所の職員の中には,流通,販売までも念頭においた資源利用をしようと考えているヒトが出てきていますし・・・

    ちょっと,もどかしいかも知れませんが,基本に戻ってから,改めて,方針を決めていくのが,もしかしたら,一番の近道かもしれません。

    利用してください,せっかくある公的機関を。
    自らが,全ての浜に入るだけの人的資源も,予算も,今,大変厳しくなっています。
    けれども,浜の人たちの声を無視したり,嫌がったりするトコロは,ドコもないと思います。
    むしろ,ありがたい話なのです。
    使ってください。

  5. 勝川 のコメント:

    joe2さん:
    >どんな方法が必要だとお考えでしょう?
    ある特定の浜をどうするかということであれば、
    ケースバイケースでしょうね。
    今のままで生き残れる浜もあると思います。
    各論はそちらの専門に譲ります。

    総論としては、今の漁業を続けると資源が保たない。
    漁師だって生活があるから、
    自由競争では資源をダメにして漁業も死ぬでしょう。
    厳しい管理で、非効率的な漁業を淘汰すれば
    効率的な漁業と資源を生き伸びさせることができるかもしれない。
    その二つしか選択肢は無いように思います。

    産業の土台である資源の持続性を守ること。
    その上で、より多くの漁業者が生き残れるように
    流通・加工・消費の関係者と知恵を絞るべきでしょうね。
    実は、我々資源系の研究者と、
    流通・加工・消費などの経済学者の間に接点がほとんどありません。
    困ったことに、研究の世界も縦割りなのです。

    匿名さん:
    確かに、ローカルなことは、
    そこに精通した人に任せるのが基本でしょう。
    水産基本計画を見ればわかるように、
    より大きな枠組みでの漁業政策が機能していない状態ですから、
    ローカルに頑張っても、限界があるように思います。

  6. 匿名で甘えさせてもらっているヒト のコメント:

    氏へ

    >より大きな枠組みでの漁業政策が機能していない状態ですから、
    >ローカルに頑張っても、限界があるように思います。

    そのことは百も承知しています。
    しかし,やらなきゃ,ならんのですよ。
    我々地下の者には「漁業政策」を直接変える力はありません。
    でも,対症療法的なコトくらいは,やってやれるわけで・・・まぁ,町医者チックですね・・・

    ただ,我々のところに来る人たちは,意識は比較的高いヒト達なわけで,彼らを守り,育てることも,もしかしたら,かなり重要なコトなのではないでしょうか?
    彼らには「淘汰」されずに生き残って欲しいものです。

  7. joe2 のコメント:

    匿名で甘えさせてもらっているヒトさん、勝川さんへ

    ご助言ありがとうございます

    今の状態では、特定の魚貝類、全国的に名が知れていて、大量に水揚げされる魚、貝、海藻を含む、をもつ浜は生きのこるでしょう。

    末端小売はそんな魚介類しか販売できないのが現状なのと
    加工業は、ある程度の量が無いと仕事にならないからです。

    また消費者は、自分の前浜の水産物がどう利用したらいいかかつての工夫をとりもどしていく必要があると思います。
    安ければいい、はまだ分かるんですが、食い方がわからないから安くてもいらない、はやめて欲しいところです。
    末端小売のシロート化を食い止めないとますます水産物消費は減ると思います。

  8. 勝川 のコメント:

    匿名さん:
    >しかし,やらなきゃ,ならんのですよ。
    >我々地下の者には「漁業政策」を直接変える力はありません。
    >でも,対症療法的なコトくらいは,やってやれるわけで・・・まぁ,町医者チックですね・・・
    もちろん、やれることはやってください。
    ただ、それで足りない部分をどうするかも考えないといけない。
    その際に、鍵になるのは、一般の消費者の啓蒙でしょうね。
    水産資源の保護に対する世論が高まれば、国も動かざるをえない。

    joe2さん:
    近所の魚屋に行くと、客層は高齢者主体ですね。
    スーパーの方が、明らかに年齢層が若いです。
    魚屋で旬のものを選べば、安くて鮮度も良いけれど、
    スーパーなら一度で何でもそろいますからね。

    このあたりはライフスタイルの変化とも関連しているので、
    大きな流れは変えようが無いように思います。
    そっちの専門の人の意見を聞いてみたいものですね。

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