学問の世界も縦割りです

現状では、漁業に明るい未来が無いことは明白だ。
しかし、どうすれば良いかを明確に示すのは困難だ。
俺は漁業という大きなシステムのごく一部しか知らないから。
経済のことは、あまり知らない。
漁業の現場のことも良く知らない。
水産庁の考えていることも良くわからない。

漁業という大きくて複雑なシステムは、至る所に致命的な問題を抱えている。
全体像と問題を把握している人間など一人も居ないだろう。
おのおのが、自分の知っている範囲の問題点を述べるのが限界だ。
水産経済学と水産資源学はきれいに別れていて、接点がほとんど無い。
水産学という狭い世界もまた縦割りであり、資源と経済が独立に論じられている。
経済学者は経済が問題だと言い、資源研究者は資源の枯渇が問題だと言う。
まさに、「群盲象をなでる」だろう。

「群盲象をなでる」ではダメだというのでは、そこで話は終わり。
誰も何も語れなくなってしまう。
逆に、「群盲象をなでる」という状態で何が出来るかを問うべきだろう。

ある人は尻尾を触って「象とはヘビのようなものだ」と言い、
ある人は足を触って象とは「柱のようなものだ」と言う。
みんながバラバラなことを言って、紛糾するのがこの故事の内容だ。
もし、この二人がお互いにコミュニケーションがとれていたなら、
象にはひも状の部分と、柱のような部分があるとわかっただろう。
「群盲象をなでる」の故事では、皆が自分のさわった部分が全てで、
それと違う情報を切り捨てたところに落とし穴があった。
自分が漁業の一部しか知らないと言うことを自覚した上で、
余所の部分を知っている人間と情報交換をすれば、
視覚に頼らずとも象の全体図を把握できるはずだ。
それ以外に、漁業の問題点を把握する方法は無いだろう。

そういう意味では、11月のシンポジウムにはいろいろと期待をしている。
経済系と資源系の研究者がほどよいバランスで混ざっている。
お互いに接点が無かっただけに、急には話がかみ合わないだろうけど、
今後も接点をもっていかないと、問題解決型の学問に発展しないだろう。

その前に要旨を書かないと。もうすぐ、締め切りなんだ。
何を聞きたい?

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学問の世界も縦割りです への6件のフィードバック

  1. ユウラ のコメント:

    僕が今、漁業者と行政の幅をなくそう、ということをテーマに漁業者に聞き取りにいっていますが・・・

    やはり経済的な話は出てきます。
    漁業者も資源管理をできることならしたい。
    けれど、明日の生活も危ういのにどうして漁を止めることができようか。

    最近は原油の高値もありますので、その問題までだされると、ほんとに様々な分野の人間が必要になってきますよね。

    シンポジウムは楽しみにしています。ぜひ参加したいです。
    お金の問題と卒論の中間発表の問題がありますが・・・ww

  2. 匿名で甘えさせてもらっているヒト のコメント:

    ノルウェーの例を見せられると,グゲッ!,って感じですね・・・まさに,氏の「総論」を推進すれば,可能性が見出せることが一目瞭然です。

    また,商業捕鯨再開についても,氏の発言は至極最も。

    しかし・・・
    「総論」に関して,一般の方々は大賛成することでしょうし,漁業者も異を唱えることはないでしょう・・・ただし,後者の場合は,「自分が生き残れる」という条件付き。
    つまり,総論賛成,各論反対というヤツで,誰しも,赤の他人のために自分が犠牲になるのは,願い下げでしょ。
    たとえ,近未来的に「絶望」が待っているとしても,それまでは,藁にすがっても生きていたいというのが人の性なのではないでしょうか。

    捕鯨についても同様のコトが言えます。
    ご承知の通り,IWCでの論議は,科学的ではなく,信教的とでもいうのでしょうか?・・・水産資源を有効に利用しようとするものではなく,「可愛い動物を殺すな」という,本質とはかけ離れた状態になっています。
    では,何故,日本がアイスランドのようになれないのか・・・それは,私が説明するまでもないでしょう。
    トロンやFSX開発に入った横槍に抵抗できなかったのと一緒で,捕鯨より優先すべき「守るモノ」が日本国にはあるわけなんですね,きっと。

    結局,やはり,長期的視点にたったビジョンが必要なんであって,それは,政治家先生の仕事なのかなぁ・・・責任ある政党自民党???・・・
    政治がはっきりとした道標を作らないと,水産庁だって,まともにうごけないでしょ,

    さてさて・・・できない話をしても詮無い事ですね。それぞれ,自分のできることをするしかないのが,現況ですもん。

    そーいった意味で,氏には,直球ストレート,ど真ん中を望みます。
    それぞれが,それぞれの立場で,マジメに漁業の将来を,良い方向に行くような,発言を,くどいほど繰り返して行く他,ないでしょ!
    少なくとも,数年で,「はい,サヨナラ」みたいな席に座ってはいないんですからね。

  3. いち のコメント:

    はじめまして。
    “東シナ海に棲む500種を超える底魚”の相互変動に果敢にチャレンジしている男です。
    いままで書き込まずに我慢していましたが、我慢している意味がよくわからなくなったので書き込ませていただきます。

    確かに、2年間ほど水産資源の研究に携わってきましたが、水産経済系の話を聞く機会はほとんどありませんでした(自分の勉強不足が最大の敗因ですが)。

    勝川さんは、
    「漁獲圧をどれだけ下げればマイワシ資源は回復に向うと考えられるのか?(あるいは絶滅を回避できるのか?)」
    ということをシミュレーションによって明らかにされていると思いますが、

    一方で、資源経済系の研究者は、
    「実際の漁業がそのレベルまで漁獲圧を下げた場合の経済的損失はどれくらいなのか?」
    というようなことを明らかにされているのでしょうか?

    また、
    「その損失を賄うような国の経済的支援は可能なのか?また支援としてはどのような方法が望ましいのか?」
    ということを研究されている方はいるのでしょうか?

    次のシンポではぜひ、いつものブログのノリでマイワシ資源の回復のためにやるべきことを片っ端から列挙していただき、その理想と現実の乖離度合いを面白いように示していただきたいです。

    応援(できれば参戦)しております。ぼくもがんばります。

  4. ユウラ のコメント:

    おっ、そうだ、聞きたいことをあげるのを忘れていた。

    そうですね・・・・これから持つようにしなければいけない危機感、それに対する解決策・・・ですかね??

    いちさんと同じくブログのようなわかりやすい例を期待しています♪

    頑張ってくださいね!!

  5. 勝川 のコメント:

    ユウラさん
    >やはり経済的な話は出てきます。
    >漁業者も資源管理をできることならしたい。
    >けれど、明日の生活も危ういのにどうして漁を止めることができようか。
    すでに乱獲スパイラルに巻き込まれているみたいですね。
    資源が減ったときほど管理が必要なんだけど、
    漁業者は管理どころじゃなくなってしまう。
    自主管理では、本当に必要なときにブレーキが掛からない。
    だから、強制力を持った管理がないと資源は守れない。

    匿名さん
    すでに国内市場ではノルウェーをはじめとする
    生産性の高い漁業との競争が始まっている。
    そこでどう生き残るかというビジョンがまるで無い。
    補助金を増やせとか、輸入を規制しろだとかいう意見しか出てこない。
    前者は論外として、
    日本は輸出で成り立っているような国なのに、
    水産物だけ輸入を規制するというのは、非現実的だろう。
    そんなことは通るわけがない。
    消去法的に言って、資源管理を真面目にやる以外の道は無い。
    でも、痛みはイヤだからやりたくないではお話にならない。
    今のままで、何とかなると思っているように見える。

    確かにトロンやFSXは寝技だったけど、捕鯨に関しては、
    アラスカでの漁業権と引き替えにIWCの留保を取り下げたわけで、
    取引と言えるんじゃないかな。
    まあ、留保を取り下げたらすぐに、アラスカからも速攻で閉め出されたわけだが。
    米国の胸先三寸でどうにでもなる既得権のために、
    IWCで国際的に認められた権利を手放したのは外交音痴と言うしかない。

    政治家だって選挙に負ければただの人。
    長期的ビジョンよりも短期的な人気でしょう。
    土木大国になってしまった背景には、ばらまきを望む地方の有権者がある。
    利権目当てに政治家を選んでいては、長期的ビジョンも糞も無いでしょう。

    いちさん、はじめまして。
    >一方で、資源経済系の研究者は、
    >「実際の漁業がそのレベルまで漁獲圧を下げた場合の経済的損失はどれくらいなのか?」
    >というようなことを明らかにされているのでしょうか?
    そういう話は聞いたことがない。

    >また、
    >「その損失を賄うような国の経済的支援は可能なのか?
    >また支援としてはどのような方法が望ましいのか?」
    >ということを研究されている方はいるのでしょうか?
    そういう話も聞いたことがない。

    それには理由があります。
    ① 資源研究者が、資源の生産力から漁獲可能量を決定し、
    ② 限られた漁獲可能量を最大限に利用する方法を経済学者が考えて、
    ③ それが実現できるように行政が動く。
    というのが理想ですが、現状では、全然そうなっていません。
    というのも、最初の部分が可能になったのはつい最近だからです。

    今でこそ、漁獲統計も自由に使えるようになったけど、
    その前はデータを水研か漁業者から貰うかしか方法が無かった。
    下手なことを言うと、データを提供しれた人が叩かれる。
    資源が減っているとか、現状では獲りすぎだとか、
    現存する漁業に都合が悪いことは非常に言いづらかった。
    実際にデータの利用を巡るトラブルは良く耳にします。
    資源評価票が公開されるようになって、
    ようやく今みたいにオープンな議論が可能になったわけ。
    数年前までは①で転けてたから、その先に進めなかった。

    今は①のめどが立ったのでようやく先に進めるようになった。
    ただ、資源研究者と経済学者の間には接点が少ないから、
    ②以降に進むにはまだ時間が掛かりそうですね。
    それを早めていくために、こちらからアプローチをしていく必要があるでしょう。

  6. 匿名で甘えさせてもらっているヒト のコメント:

    氏へ

    >消去法的に言って、資源管理を真面目にやる以外の道は無い。
    上記について,異論は全くありません。
    「総論」としては大賛成ですが,問題は「各論」の部分を具体的にどの様に実行していくかです。

    >でも、痛みはイヤだからやりたくないではお話にならない。
    「仕事を続けるためには,年収はこれまでの半分になるよ」という場合と「みんなのために,あなたには仕事を辞めてもらいます」という場合では,受け入れられ方が極端に違ってくるのではありませんか?
    前者の場合であれば,我慢するヒトも少なからず出てくるでしょうが,後者の場合,「分かりました。みんなのために,ボク,辞めます♪」なんてヒトは,そうはいないと思います。
    そんな素直な感情と自己犠牲を厭わない性癖を全ての人間が普通に持っているのならば,戦争だって起きないでしょ。
    これが,「各論を具体的にどの様に実行していくか?」という問題です。

    >ばらまきを望む地方の有権者がある。
    インフラは常に都会から整備されていきます。
    田舎に住んでいるヒトだって,病院や銀行や郵便局や買い物に,便利に行きたいのです。でも,現実には,病院には一日がかりで都会に出なければならないし,近くの金融機関は,あったとしても農協や漁協のしかないし,頼りだった郵便局は廃止されるしで,不安は募るばかりなのです。
    ボクも東京生まれの東京育ちだったので,田舎に住むようになって初めて気が付いた事ですが,とにかく,不便です。だからこそ,地域コミュニティーが田舎ではかろうじて残っているのでしょう。でなければ,生きていけません。
    常に,東京が一番先。次は県庁所在地。あとは・・・いつ?
    「ばらまき」に関しては,田舎でも批判はあります。「何故,必要なコトをしてくれないで,あんなコトをしてるんだろう?」みたいな・・・道路や橋や箱モノを作って欲しいわけではなく,安心して生活していけるようにしてもらいたいだけなんです。
    しかし,現実的には「ばらまき政策」の後遺症は重篤で,土建業者が地方に多く残っています。しかしながら,仕事は減り続ける。でも,彼らだって生き残りを模索します。黙って死を待つヤツなんざ,いませんょ。
    ただし,ここで言っておきたいのは,実は,田舎の「ばらまき」の多くは,都会の大手が吸い上げているってコトです。地元はあくまで下請け・・・業者らが地元の先生を応援して税金を回してもらっても,全てが地元に還元される訳ではないのです。

    こう書いてみたら,気付いたんですが,漁業も土建業も同じ様な問題を抱えていますね。
    負のスパイラルに陥っている・・・

    >今のままで、何とかなると思っているように見える。
    実は,何とかなる,とは思っていないかもしれませんょ。
    近未来に破綻が来ることが分かっていても,今は生きていたい・・・そういえば,とある土建屋さんと話をする機会があったのですが,子供には会社は継がせないって言ってましたっけ・・・もう,無理だって・・・(哀)

    >利権目当てに政治家を選んでいては、長期的ビジョンも糞も無いでしょう。
    では,テレビ等で著名になった方を市長とか知事とか国会議員とかにしちゃう都会の有権者の意識の「高尚さ」があれば,長期的ビジョンを作ってくれる政治家が生まれますか? (もっとも,田舎モノも有名人には弱いか・・・)

    「お前達だけを逝かせはしない。必ず,俺も後から逝く!」と,対戦末期に若者を死に送り込んでおきながら,自分はちゃっかり生き残っちゃう・・・なんて,無責任なヒトが,漁業でも生き残っちゃったりするんですかね???

    まぁ,冗談さておき,
    それでは,氏は,具体的に,どのような施策が「できる」と考えてますか?
    「資源管理を真面目にやる以外の道は無い。」
    このことに異論はありません。
    為すべきコトは,「漁業者に収入が減る事を我慢させる」のではなくて,「漁業者の総数を減らす」コトなのですよね。しかも,自然減は待っていられない。
    今回のシンポで,ここいらへん,具体的に切り込みますか?!

    ちなみに,ミナミマグロの漁獲枠が大幅に削減されましたね。先日,水産物をあつかっている商社の知人が「鮭鱒は儲かるんだよねぇ」と言っていましたが(魚価安で地元は泣いているっていうのに・・・ぶっ飛ばす!・・・した!),きっと,マグロでも,今頃,胸算用をしている事でしょう・・・カニだって,ほとんどは,資源ヤバイのに,どえらい安売りをしていたりして・・・消費者には,漁業や水産資源の実態が全く伝わらないシステムになっていると思うのは気のせいでしょうか?

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