ノルウェーに日本のサバ市場を奪われた理由

日本のサバ市場は、完全にノルウェーに奪われたのだが、これには理由がある。

ノルウェーは、石油などの豊富な資源を持っているけれど、
エネルギー資源が無くなるのは時間の問題である。
そこで、国を挙げて、持続的な産業を育てようと考えた。
その一つの柱が漁業だった。
先日、このプロジェクトに関わった人から話を聞く機会があったのだが、とても勉強になった。
プロジェクトの根底には、合理的かつ、大局的な戦略があるのだ。

限りある生物資源を持続的に有効利用するためには、
一番高く売れる場所に、一番高く売れるものを計画的に出荷すべきである。
ノルウェーは、(当時は)世界で最も魚を高く買う日本人をターゲットに、
欧州ではあまり消費されていなかったサバを輸出することにした。
ノルウェーのサバ漁業は、最初から日本のサバ市場に最適化されているのだ。
サバの漁獲が日本人が好んで食べるサイズに集中しているのは、そういう訳。
日本市場での価値を高めるために、ポンプで漁獲をし、良い品質で輸出をする体制を整えた。

ノルウェーは、国を挙げて、日本のサバ市場を取りに来た。
そして、日本のサバ市場は、完全にもっていかれてしまった。
日本のサバ市場を巡る競争は、グランドデザインの部分で勝負は決まっていた。
日本市場に最適化されたノルウェー漁業と、行き当たりばったりの日本漁業の差は、
漁業者個人の努力でどうこうというレベルではない。
日本漁業は、負けるべくして、負けたのだ。

日本の漁業関係者は、ノルウェーに自国市場を奪われた理由を真剣に考える必要がある。

日本も、限られた生物資源の生産力を持続的に有効利用するためのグランドデザインを持たなくてはならない。
サバだったら、サバ漁業全体を長期的,総合的に見わたした構想を練るべきである。
獲る前に「どの大きさで獲って、どこに売るのが一番儲かるのか?」という視点を持たないといけない。
とにかく獲れるものを早い者勝ちで獲って、その後で「どうやって売ろう?」と悩んでいる現状が続く限り、
日本漁業は衰退の一途だろう。

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ノルウェーに日本のサバ市場を奪われた理由 への2件のフィードバック

  1. 業界の一拗ね者 のコメント:

    漠然とした感想をひとつ。
    小生は、ノルウェーのサバは脂が濃過ぎるので、嫌いで食しません。ということで、この話には乗れないところですが、釈然としないのでいろいろ考えてみました。
    もともと、日本産のサバはどのように食べられていたのでしょうか?あるいは、ノルウェーのサバが入り込んだ市場とはどのようなものだったのでしょうか?
    その昔、どこの町中にも魚屋さんがあったころは、生鮮魚は丸のまま氷水に入れて店先で売っていて、一般家庭で内臓を出して調理していたものと思います。その時代にあっても、日本におけるサバ漁業は現在と変わらない姿をしていたのではないのか、生食用のサバは釣りを主とし、まき網で獲ったものは餌料向けとしていたのではないのか、とふっと考えたのです。もしこの推測が当っているとすれば、生食用のサバを獲るひとと小さいサバを獲るひとは経済的に棲み分けていたことになる、これは一筋縄ではいかないかなあ、と思った次第。
    ノルウェーのサバが入り込んだのは、そのような構造のサバ漁業(所謂、漁撈から消費に到るまでの構造)では欠落していたところに参入、そのうちに日本の一般家庭で魚をさばくことはなくなってきて、生鮮魚を丸のまま商売している魚屋さんが日本の町中から姿を消すという消費性向を追い風にしたのではないのかな、と考えています。欠落していたところとは具体的になんだ、といわれてもわからないのですが、いまでは「サバはノルウェー産に限る」なんていっている時代ですから、小生には理解できないところです。

  2. 勝川 のコメント:

    日本のサバ:
    ● つりや棒受けで漁獲して、生鮮で出荷
    ● 足が速い
    ● 明確な旬がある(9月から2月)
    ● 煮魚に適している

    ノルウェーのサバ:
    ● 巻き網・ポンプ漁法、船上冷凍で鮮度を維持したまま、計画的に出荷
    ● 冷凍なので保存が利く
    ● 一年中大トロ
    ● 焼き魚に適している

    かつては、魚屋さんで、頭としっぽがついたサバを買って、
    味噌煮など多様な調理法で食べるのが主流でした。
    一方、最近は開いた魚をスーパーで買ってきて、
    お手軽な調理法(焼くだけ)で食べるのが主流になっています。

    日本のサバには独自のおいしさがあり、そのおいしさを活かす知恵もあった。
    しかし、それは消費の変化によって、失われつつあります。
    現在は、1年中、安定した品質の塩焼きが食べられています。

    食生活の変化の背景には、消費者のライフスタイルの変化があります。
    昔は、一家に一人、主婦がいました。
    昼間に買い物をして、夕方から晩ご飯の準備ができたわけです。
    共働きが主体になってくると、そうはいきません。
    5時半に仕事がおわって、7時には食事の準備を終わらせたい。
    そうなると、帰りにスーパーで手早く調理をできる魚を買います。
    ライフスタイルの変化を無視して、昔の食べ方に戻そうとしても無理でしょう。
    新しい生活パターンの人間にも食べられるような形で、
    国産のサバを提供する必要があると思うのです。

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