サイエンス以前の問題に対して、研究者は何をすべきか?

さて、サイエンス以前の問題を抱えている場合、研究者はどうすべきだろうか?

使われもしない資源管理手法を改良していれば十分か?
まあ、管理手法を改良すること自体は悪いことではないが、
それだけで社会的役割を果たしたとは言えないだろう。

資源評価が無視されていることに対して、社会の合意は得られていない。
多くの日本人は、日本の資源は科学的な根拠に基づいて、それなりに管理されていると考えている。
まさか、ひどい乱獲が放置・黙認されているとは思っていないのである。
科学的なアセスメントを無視して、水産庁が乱獲を公認していることを知らない。
自分たちの税金によって、乱獲が維持されているとは夢にも思ってないだろう。

以上の事柄を社会に知らしめることが専門家の役目である。
これらを理解した上で、世論が現状の漁業政策を認めたならば、
そこで我々の役目は終わりである。
この国には水産資源学など必要がないということだろう。
一般人の魚に対する関心の高さをみれば、そうはならないだろう。

RMPを無視する本会議に抗議して議長を辞めたハモンドの行動は、
研究者として正しい。真摯な態度である。
この状況に対して何も言わないというのは、納税者に対する裏切り行為であり、
漁業者・行政にへつらって、甘い数字を出すなど言語道断だ。
「行政や漁業者に無視されちゃったよぅ」と泣き言を言う前に、
社会に対して、現状を伝える努力をすること。

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サイエンス以前の問題に対して、研究者は何をすべきか? への5件のフィードバック

  1. 業界紙速報 のコメント:

    自壊するマサバ漁業

    きょうのみなとに載っています。期中改定について結構騒いでいたので、今年の締め括りとしてよいコラムを書いてもらったと嬉しく思います。

    ひとつだけ欲を言わせてもらえば、いつも主張しておられる「魚が獲れないからって、補助金を貰うんじゃなくて補償する身だろう」ということを書いて欲しかったな、と思います。わたくし自身、最初にこの論を見たときは、また暴走しよって、と思っていましたが、最近のゴネ得の報道を目にするたびに、魚を獲れなくした者に補償させるという発想はもっともなもの、と感心している今日この頃なのです。

  2. 匿名甘えヒト のコメント:

    漁業者だって、馬鹿ばっかぢゃないですょ・・・そぅ、思いたい・・・

    とりあえず、若い後継者のいるような浜の若手から、「洗脳」していきませう。やはり、「教育」は大事だと思います。

    消費者に憤りを感じてもらうのはもちろんのこと、漁業者自体にも、コトの重大さを認識してもらわねば・・・彼らは職人です。その技は一朝一夕には育まないのです・・・彼らを失ってはならない、と私は思っています。。。が、今のままで良いとも思っていません。

    持続的な資源管理が必須だと認識してもらって実施させて、漁家経営を安定させ、品質の良い水産物を消費者に供給させる。消費者だって、美味しい水産物をいつまでも安心して食べたいんだと思う。

    「資源のためは、自分のため、子供のため、消費者のため」って♪
    理解してもらおぅっと!♪

  3. 勝川 のコメント:

    業界紙速報さん:

    最初は別の原稿を準備していたのですが、
    締め切り直前になって「やっぱマサバの方が緊急かな」と思い原稿を差し替えました。
    ご指摘の点も含めて、自分でも「少し甘いな」と感じる箇所がいくつかあります。

    >魚を獲れなくした者に補償させるという発想はもっともなもの、
    >と感心している今日この頃なのです。

    自分のケツは自分で拭かせる。他人に迷惑をかけたら責任をとらせる。
    これは極めて当たり前のことです。
    乱獲のツケは乱獲をした人間が払うということを徹底すれば、乱獲の抑止力にもなります。

    ただ、実際の水産政策は全く逆ですね。
    声が大きい団体に優先的に魚を獲らせて、彼らばかりを保護しているわけです。
    これでは、資源も漁業も衰退して当然です。
    正直者が報われるようにしないと、ダメなのです。

    匿名甘えヒトさん:

    >漁業者だって、馬鹿ばっかぢゃないですょ・・・そぅ、思いたい・・・

    馬鹿だとは思いませんが、
    まともな情報もない、まともな規制もない状況では、
    資源管理をしろと言っても厳しいでしょう。
    それでも前浜の資源には可能性は残されていますが、
    国がこのままでは回遊性の資源は絶望的です。

    >持続的な資源管理が必須だと認識してもらって実施させて、
    >漁家経営を安定させ、品質の良い水産物を消費者に供給させる。
    >消費者だって、美味しい水産物をいつまでも安心して食べたいんだと思う。

    その通りなんだけど、個々の漁業者の努力では限界があるでしょう。
    まじめに管理に取り組んだ人間が、メリットを享受できるような制度と
    また、先のことを考えられるような状況を維持することが必要条件です。

  4. 倉片 備 のコメント:

    資源保護第一大賛成。漁獲努力量・漁業者の削減も賛成。これに税金を使うことも賛成。でも理論構成はできていません。ここまで漁業経営が衰退したのは、漁業者の自助努力の不足があります。加えて制度的に改革もできませんでしたし、違反も国益のため黙認されてきました。政官民は全てにおいて共犯者です。ですから私は、国は漁業者に人減らしのため退職金を払うべきだと主張しています。改革派は受入れますが、組織としてどうかというと、言葉を濁すばかりです。 
     科学者の使命ー自分の専門分野だけしか知らず、策が出ないのはいたし方ありません。ですから他の科学者も受け入れ、総合的・統合的知見を網羅した漁業再生策を編み出すことです。いやな科学者でも我慢してチームを組んで取り扱うことが必要です。高木委員会ー大いに評価していますが、全漁連を抜いたことが欠陥となっています。もっともここまで書けたのは、全漁連抜きだからと見る人もいます。勝川、黒倉、加瀬などの諸先生が集まってみたらどうでしょうか。少しは業界も、学界も進歩するかも取れません。

  5. 勝川 のコメント:

    >資源保護第一大賛成。漁獲努力量・漁業者の削減も賛成。
    >これに税金を使うことも賛成。でも理論構成はできていません。
    >ここまで漁業経営が衰退したのは、漁業者の自助努力の不足があります。
    >加えて制度的に改革もできませんでしたし、違反も国益のため黙認されてきました。
    >政官民は全てにおいて共犯者です。
    >ですから私は、国は漁業者に人減らしのため退職金を払うべきだと主張しています。
    >改革派は受入れますが、組織としてどうかというと、言葉を濁すばかりです。

    過剰努力量の削減が急務ですが、組織内部から変わることは期待できません。
    外圧が必要ですが、むしろ、世間は漁業者が減ったことを心配しているのが現状です。
    今の資源状態では、漁業者を支えられないと言うことを示していく必要がありますね。
    現在の補助金ばらまき行政が、過剰漁獲量と過剰努力量を温存する元凶である
    ということをもっと広めていかないと、漁業者を減らす方向には動かないでしょう。

    >全漁連を抜いたことが欠陥となっています。
    >もっともここまで書けたのは、全漁連抜きだからと見る人もいます。
    全漁連を排除したのではなく、彼らがテーブルに着かなかったのです。
    水産庁も全漁連も、自分たちが議論に参加しなければ、
    何も進まないとタカをくくっています。
    審議拒否は彼らのお家芸ですから、待つだけ時間の無駄です。
    彼らがテーブルに着かざるを得ない状況をつくる必要があります。
    まあ、最後まで引き籠もっているなら無視するまでですが、
    まともな対案が出てくるなら、それは尊重します。
    ただ、対案を出すと言いながら、何も出てこないのですよ。
    そもそも高木委員提言が出てからあわてて準備する時点でダメですが、
    緊急提言から1年がすぎようとしていますが、未だに音沙汰無し。
    建設的な対案が出せるような組織では無いのかもしれませんね。

    >勝川、黒倉、加瀬などの諸先生が集まってみたらどうでしょうか。
    加瀬先生ですか・・・
    先日、同じことを別の人からも言われました。
    ご指摘のように、何はともあれ、会って話を聞いてみるのが重要でしょうね。
    喧嘩別れになるとしても、その喧嘩別れに至るプロセスを公開することで、
    皆が考えるヒントになるとも思いますし。

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