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食料生産の過程への無関心とヨーロッパウナギ

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豪州人と同様に日本人も食料の生産過程についてもっと知るべきである。
食品の生産過程に対する無関心は、商業捕鯨よりもずっと深刻な問題だ。

例えば、日本への輸出でヨーロッパウナギが絶滅寸前に追い込まれている。
このことはニュースで大々的に取り上げられたので、知っている人も多いだろう。
よその国の野生生物を絶滅寸前まで追い込んでおきながら、
多くの日本人はウナギが食べられなくなる心配しかしていない。
ヨーロッパの人たちはどう思うだろう?
ウナギを食べていた地方では、ウナギを食べられなくなってしまった。
日本人の乱食による食文化の破壊である。
こういうことをやっていて、日本の食文化を尊重しろと言っても説得力がない。
他国の文化を尊重する心根こそが、文化の本質だろう。

他国の野生生物を絶滅寸前まで追い込んでおきながら、道義的な負い目は感じない。
それは、目の前にある食品と、その生産過程がつながっていないからだ。
確かにスーパに捨て値で山積みされていれば、絶滅寸前だとは思わないだろう。
しかし、それが現実なのだ。

金を持っているからと言って、何を買っても良いというわけではない。
道義的に買っても良いかどうかを判断する必要がある。
経済力がつけばつくほど、この手のモラルが要求されるのだが、
その経済力とは不釣り合いに日本の消費者のモラルは低い。
これに関しては消費者のみでなく、生産者や小売りにも責任はある。

Image200801151.png
生産者も小売りも、消費者の購買意欲をそぐような真似はしない。
経済活動にとって、都合が悪い情報は遮断して、
都合が良い情報のみを与えられた消費者は、
何も考えずに消費活動を続けることができる。
生産者、小売りの情報操作の結果としての、消費者の思考停止。
これが「日本の食の安心」の正体である。
一皮むけば、乱獲、乱売、乱食だ。

Comments:4

beachmollusc 08-01-16 (水) 19:41

ニホンウナギもヨーロッパウナギと同様にやばいのではないかと思っていますが、ただの懸念でしょうか。塚本さんたちがシンポをやってから数年経過しているようですが。

詳しい情報を知らないでコメントしてすみませんが、直感的に、シラスの乱獲と親に成長するべき河川環境の悪化が重なって、日本の周辺から産卵場所に向かう集団はすでに消えてしまっている(あるいは元々日本には死滅回遊?)かなと思います。

それでも日本の河川にまだ来ているシラスがあるのはどこから産卵に出たものの子供が来ているのだろう。台湾などでもシラスや稚魚の乱獲を続けてきただろうから、そのうちついにクラッシュでおしまいとならないか、という懸念を感じています。

勝川 08-01-24 (木) 3:17

ニホンウナギはやばいですね。
河口で根こそぎ獲っていて、よく絶滅しないなぁというレベルです。
塚本先生のグループは、
川にあがらずに海で成熟するウナギが再生産を支えているという
海ウナギ仮説を立てています。
そういう風にでも考えないと、説明できない漁獲圧です。

kkneko 08-07-26 (土) 17:20

捕鯨反対とはまた異なる立場とお見受けしますが、水産学者の方の大変参考になるご意見ということで、当方のブログリンク集にてご紹介させていただきました。
捕鯨推進派は「クジラの次はマグロだ、ウナギだ」と吹聴してきました。マグロはまさしく資源枯渇に陥り、ウナギについてもそうなりつつあると。水産行政は、厳格な資源管理と適正な利用を進める施策や、生産者と消費者への認知・啓蒙を怠った一方、文化と外交の問題へと矮小化された捕鯨推進政策にリソースを注ぎ込み、自らの無策から国民の目を逸らしたとも見受けられるのですが・・。

勝川 08-07-28 (月) 23:47

kknekoさん
捕鯨自体は賛成ですが、現在の日本の捕鯨推進派は、
調査捕鯨の延命しか頭にないようで残念です。
商業捕鯨への手段であったはずの調査捕鯨が目的にすり替わっている。
調査捕鯨の小さな小さな利権を守ることより、
大切なことがあると思うのですが・・・

資源管理に関して言うと、日本は何もやっていないに等しいです。
水産研究者の一人として、恥ずかしい限りです。

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