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漁業の生産性が上がらない構造的な理由


前回の記事で、「漁師が魚を捕って生計を立てられる」ことの重要性を指摘した。では、漁業の生産性を上げるにはどうすれば良いかを考えてみよう。

漁業の収益は次のように単純化できる。

漁業収益 = 売り上げ-経費
= 魚価 × 漁獲量 - 経費

漁業収益を増やすには、次の3つの方向性がある。

1)魚価を上げる
2)漁獲量を増やす
3)経費を減らす

では、どの方向を目指すかということを考えていくと、八方ふさがりの漁業の現実に直面する。

1)魚価をあげるのは難しい

週末のスーパーの特売のチラシを見れば、「アジ一尾100円」という具合に、まだ獲っていない魚の値段がすでに入っている。購買力をもつ大手小売りチェーンによって、末端の魚価は決められているのだ。スーパーは自分の利益が出るような価格で、どこかから魚を引っ張ってくる。流通業者は、さらに自分たちの経費を引いた値段でしか魚を買えない。出口の価格を決められた上に、複雑な日本の水産流通のすべての段階のコストをさっ引けば、漁師の取り分など残らないのである。

漁師の仕事は魚を海から捕ってきて市場に並べるところで終わり。魚の値段は、漁協が主催するセリで決まることになる。バブル期までならいざ知らず、現在、高い値段がつくことはまれである。良い魚が、高く売れるとは限らない。良い魚も、悪い魚も、一緒くたに安値で買いたたかれている。

日本の漁業者には、価格の決定権が無い。それどころか、価格形成にほとんど関与できない仕組みになっている。また、漁協のセリの運営は極めて排他的であり、魚を買いたたきやすい状況を作っている。川下主導の価格形成が行われている既存の流通システムの中で、漁師の努力で手取りを上げるのは至難の業である。

2)漁獲量を増やすのは難しい

漁獲量を増やすのは難しい。というのも、獲るべき魚が減少しているからだ。現状ですでに漁獲圧が過剰だからだ。農水省のアンケートでは、日本近海の水産資源が減少していると答えた漁業者が9割。資源が増えていると答えた漁業者は0.6%に過ぎなかった。日本の資源が減少している原因は、日本漁業者による乱獲である。日本国内では、漁獲規制が不十分であり、大型漁船が沖で未成魚を根こそぎ獲ってしまう事例が後を絶たない。

漁獲が過剰な現状で、いきなり漁獲量を増やすと、資源を減らしてしまう。長い目で見ると、漁獲量をむしろ減らすことになりかねない。漁獲量を増やすには、公的機関はしっかりとした漁獲規制をして、資源を回復させる必要がある。漁業者の自己努力で漁獲量を増やすのは難しいだろう。

3)経費を下げる余地は無い

もう何十年も、漁業の利益は減少傾向にある。日本の漁業者は、すでい簡単に削れるコストは、削減済みである。 コストの大部分を占める燃油については、漁業者の価格決定は難しいだろう。

結論

とてもネガティブな話になってしまったが、これが日本の沿岸漁業の現実だ。出口の見えない八方ふさがりの状況で、漁業者はもがいている。

被災地・非被災地を問わず、今の日本漁業には希望が無い。漁業が衰退するのは構造的な問題だから、未来につながる形に漁業のあり方を変えていかなればならない。

ミッション:未来につながる漁業のビジョンを示し、それを地元漁民と共有する

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