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ノルウェー漁業組合のインタビュー

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ノルウェーは伝統的に漁業者の力が強い。それを支えているのが、透明性が高く、効率的な漁業組合です。今回は、ノルウェーの浮魚組合のボス、Nakkenさんの独占インタビューをお届けします。

日本の漁業関係者にはかなり衝撃的ではないでしょうか。手数料はたったの0.65%です。それでも、効率的なインターネットオークションを運営し、高い値段で魚を売ってくれるのです。これは、漁業者は大助かりですね。

ノルウェーの最低価格制度にも触れています。最低価格制度というのもいろいろなやり方があります。EUの場合、クオリティーに関係なく最低の金額を設定しています。その金額に満たなかった場合は国から差額が補助されるようになっています。ゴミのような魚を獲ってきても、一定の額が税金から支払われる最低のシステムです。公的資金で、乱獲報奨金をあたえているようなものですから、薄利多売の乱獲漁師は泣いて喜ぶでしょうが、漁業は確実に衰退します。一方、ノルウェーの最低価格制度は、それ以下の値段では売れないのです。「その値段以上で売れる魚だけを獲ってこい」ということです。ノルウェーでは、薄利多売は許されないというわけです。船毎の個別漁獲枠と最低価格制度によって、ノルウェーの漁業者は目の色を変えて魚の値段を上げようとします。自然の生産力は限られているのだから、単価を高める方向に進むしかないという、良いお手本です。

組合のサイトはここ http://www.sildelaget.no/

右下のCATCH AREAをクリックすると、ノルウェーの漁場の地図が拡大される。どこで何が獲れたかが一目瞭然。そして、色がついたマス目をクリックすると、詳しい漁獲の情報が出てきます。何丸が何日の何時に、どの魚種を何トン獲ったか。体重組成と平均重量、ふねの装備などが解るわけですよ。この情報を元に、漁獲をしたらすぐにネットオークションをします。そして、落札者が決まると、落札者が指定した港に魚を水揚げします。たとえば、「スコットランドの加工業者が落札し、スコットランドで水揚げをする」というようなこともあります。組合は、漁業者のために出来るだけ高く魚を売りたい。そこで、ノルウェー以外の業者がより高い金を出すならそちらに売るのです。ノルウェーの魚は質が高く需要がある。さらに、自由度と透明性が高いオークションによって、買いたたけないようになっている。

水揚げ地図 http://www.sildelaget.no/Map.aspx

また、ノルウェーでは、遵法意識が非常に高い。「皆がルールを守ることが、全体の利益につながり、結局は、自分にも跳ね返ってくる」という価値観が社会の根底にあるようです。また、組合も不正には厳しいです。漁業者の生活を守るためには、不正は許してはならないという姿勢が言葉の端々から伝わってきます。

補助金については非常に厳しい意見です。組合のみならず、漁業関係者全てが、「補助金は良くなかった」という共通認識を持っています。1960年代に補助金漬けになり漁業をつぶしかけたノルウェーだけに説得力がありますね。

日本の漁業組合は方向性を見失っているように思います。生産的な漁業のあるべき姿はどういうものなのか。さらに、それを組合はどのように支えていけばよいのか。ノルウェーの漁業組合とまるっきり同じ事を日本でやるのは無理ですが、日本の組合が学ぶべき点、参考にすべき点は多いと思いますよ。

Comments:2

うおいちば 10-02-09 (火) 19:48

すごい!にわかには信じられないようなことですね。強力にコントロールする必要があるということか。日本の水産業でも、真剣に次の世代への資源の残し方を検討しなければ。

勝川 10-02-24 (水) 12:52

うおいちばさん

>強力にコントロールする必要がある

何をコントロールするかも重要です。

日本では、資源管理はまるでやる気が無く、獲りたい放題です。
その一方で、行政や団体が理不尽な規制をひいており、ビジネス上の自由度は低いです。

ノルウェー・NZなどの漁業先進国はやっていることが正反対。
資源管理はやるけれど、ビジネスには口を挟まない。
資源管理ルールの徹底については縛りが厳しい一方で、漁船の大きさだとか、
操業時期だとかは自由度が高く、おのおのが創意工夫をしています。
だから、これらの国は、資源を守りながら、持続的に利益が出せるわけです。

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