日本でも独自のエコラベルをつくる取り組みが始まっている。
すでに、口が悪い読者からは「泥棒が売る防犯グッズ」などと揶揄されているとおり、
かなり駄目っぽい。
資源管理更新国である日本では、MSCのエコラベル認証をとれそうな漁業はほとんど無い。
MSCのエコラベルが普及すれば、資源管理をしている国とますます差をつけられてしまう。
そこで考案されたのが日本独自のエコラベルだ。
エコラベルを貼れない日本の漁業者がかわいそうだから、
誰でも張れるエコラベルを自前で準備したのだろう。
(そもそも資源管理をまじめにやろうという発想は無いのだろうか?)
電車賃程度で認証可能という時点で、消費者をを小馬鹿にしてる。
担当者「資源管理やってる?」
漁業者「うちは、ちゃんとやってるよ」
担当者「このシールを張っておいてね。それじゃあ。」
というようなことが行われるのは目に見えている。
厳密に審査をされたMSCのエコラベルと、誰でも張れる日本のエコラベルはまったく別物である。
しかし、一般の消費者にはエコラベルの区別はつかないだろう。
まんまと騙されて、非持続的な漁業で獲られた魚を高く買わされてしまう。
これは、乱獲された魚を騙して売りつけられる日本の消費者にも、
まじめに管理に取り組んでいる一部の日本の漁業者にも不幸な事態である。
MSCのエコラベルの根底にあるのは差別化の思想である。
消費者の力で、持続的な漁業を勝ち組にすることで、
世界をより持続的な方向に導くという狙いがある。
一方、日本版エコラベルの本質は、みんな横並びの護送船団である。
みんなで足並みをそろえて、仲良くシールを張りましょうということだ。
似たようなシールを無差別に貼れば、消費者は判断基準を失ってしまうので、
非持続的な日本漁業が差別されるのを防ぐことができる。
世界のエコラベルが目指す差別化を台無しにする効果があるのだ。
同じような取り組みでも、運用次第でまったく逆の機能を持つのである。
本来は資源管理だったはずのTAC制度も、
水産庁が運用すれば乱獲を容認するための免罪符に早変わりする。
こういうところだけは、本当に知恵が回る。
その知恵を、漁業を良くするために使って欲しいものである。
護送船団方式は、産業を傾ける確実な方法である。
生産性が低い、非持続的な経営体を保護する代償として、業界全体が沈んでいく。
味噌もくそもごった混ぜにして、横並びでシールを貼ろうという計画は、
漁業にとって百害あって一利なしである。
こういった愚行を、食い止めるのが専門家の使命であろう。
TAC制度も、ABCとTACの乖離をネチネチと指摘し続けた結果、
徐々にではあるが風向きが変わってきつつある。
日本版エコラベルに関しても、非持続的な漁業に対してシールを貼っていたら
嫁をいびる姑のように、ネチネチと問題にしていきたい。
認証第1号は2008年度半ばになる見通しだ。
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200712070039a.nwc
ということで、どんな漁業がでてくるのか、わくわくしながら待つことにします。
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- 業界紙速報 08-01-28 (月) 17:42
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MSCに関する情報
これは、先週英語の情報を目にしたのですが、意味がわからなかったところ、氏が注目しているとのカキコがあったので、続報がないか注意していました。本日、とある業界紙がIntrafishの記事を伝えたもの(和訳してまとめたものと思います)を見つけました。その内容は;
WWFがMSC認証の魚を消費者が優先的に選択することを目的としたキャンペーンを開始。厳格な資源管理下外で水揚げされた魚や違法に漁獲された魚を胡散臭い・悪臭漂いという意味のマスコットStinkyで表現し、消費者のMSC商品の普及を図ったもの。WWFはホームページやユーチューブを通じてプロモーションビデオ(?)を流していた。
当初、WWFのキャンペーンに歩調を合わせていたMSCは、小売業者からの批判が強いため、MSCのロゴ使用の取り止めを含め、キャンペーンとの関係を絶つこととなった。MSCは、キャンペーンがユーモアや風刺に溢れ対象者に受け入れられると見込んだが、MSCのエコラベル商品と一般の水産物を販売する小売業者にネガティブな印象を与える結果となった、としている。厳格な資源管理下外で漁獲された魚をMSCエコラベル商品と差別しよう、というキャンペーンのどこに問題があるのでしょう。業界はMSC認証外の商品は「生臭い」印象を与えかねないと主張しているとのことですが、stinkyという言葉のニュアンスが適当でない、ということなのか、ここのところが了解できません。
WWFのH/Pを確認したところ、先週はTop PageにStinky Fishのビデオがセットされ、MSCのロゴマークも大々的に掲載してあったのですが、現在はどこにも見当たりません。H/Pでの取り扱いも、Stinkyとは別個にSustainable seafoodという項目があり、そこにMSCについての情報を掲載しています(これは、以前から掲載しているものと思われますが)。MSCは、認証にかかる経費や調査にあたって水産業界と先鋭に対立するのは好ましくないでしょうし、自らの認証を売り込むことは潔くないと判断したのでしょうか?
先進国でこの扱い、我が国独自のエコラベルというのもどうなることか、難しい問題を孕んでいるものと思われます。(因みに、Stinkyのサイトは以下でご覧になってみてください。http://www.panda.org/about_wwf/what_we_do/marine/index.cfm) - 勝川 08-02-01 (金) 16:19
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情報をありがとうございます。
Stinkyを日本語に直すと「悪臭ちゃん」でしょうか。
ネーミングから悪意に満ちています。
こういうネガティブキャンペーンをしているようでは、
営利目的と言われてもしょうがないでしょうね。
MSCがこのキャンペーンと手を切るのは正解でしょう。
このキャンペーンをWWFが勝手にやったことなのか、
MSCも共同で企画したことなのかは気になるところですね。ある漁業が非持続的かどうかに白黒つけるのは大変です。
だから、MSCの認証には、高額な費用が必要です。
これらを負担できない漁業も沢山あるわけですよ。
MSCはクリーンな漁業を認証できるけれど、
MSCに認証されていない漁業がクリーンではないと主張するのは誤りです。MSCが認証されたクリーンな漁業の価値を高める努力をするなら応援したいですが、
うちのシールが無い魚は「悪臭だ」とネガティブ・キャンペーンをするなら、
応援できないです。
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