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「信じて安心」から「安全性を検証」への移行が必要

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食の安全というものを突き詰めて考えると、日本人の「丸投げ気質」という壁に突き当たる。
日本の消費者は、リスク管理を丸投げしておいて、うまくいかないと文句を言うが、
そもそも、丸投げした時点で上手くいくはずがないのである。

日本の社会は、専門家への丸投げ&思考停止によって運営されている。
これは、専門家にとっても、消費者にとって、楽な選択だ。
専門家は、合意形成などせずに独善的に基準を決められる。
そして、消費者の方も、専門家に決めてもらえれば、自分は考える必要がない。
お互いに楽をしてきた代償として、消費者は思考停止した情報弱者になり、
専門家は消費者よりも生産者のために働くようになる。
こうして、手抜き丸投げシステムは、確実に破綻をするのである。

消費者とまじめな生産者の長期的な利益を確保するには、
サービス提供者がしっかりと情報を開示して、
消費者がそれを判断するような社会システムへ変えていくべきだろう。
実際に日本の社会も、徐々にその方向に向かっている。
このブログでも、医療を例に1年半前にこんなことを書いているので、引用しよう。

方法論の違いについては、医者を例にするとわかりやすいと思います。
昔の医者は患者にろくな説明をしませんでした。
なにか質問をすると、「素人は口出しをするな」という感じで嫌な顔をされました。
患者は、症状についての情報も無いまま、ただ与えられた薬を飲むしかない。
今の医者は、情報公開に積極的になり、
症状や薬の効果など、いろいろなことを話してくれます。
同じ薬を処方させるにしても、患者の安心感がまるで違います。

昔の医者と今の医者の違いは、
情報を制限することで余計な手間を省こうとするか、
情報を共有することで相手の理解を得ようとするか、
ということです。
それぞれのスタイルには、それぞれのメリットがあります。
昔のスタイルだと、診察は短時間で済むというメリットがありました。
また、患者が無知であれば、医者にボロが出る心配はほとんどありませんでした。
医者としては非常に楽だったはずです。
一方、今のスタイルだと、時間は掛かるし、いい加減なことは出来ない。
その代わり、患者に安心感をあたえて、信用を得ることが出来ます。
http://kaiseki.ori.u-tokyo.ac.jp/~katukawa/blog/2006/08/post_10.html

昔の医療は、患者の医者に対する根拠のない安心感によって、支えられていた。
医者が情報を流さなければ、患者は治療内容を検証することが出来なかった。
検証できないにもかかわらず、医者を信用して安心してきたのである。
相次ぐ医療事故などで、医療に対する安心が失われた。
そこで情報を開示して、患者に検証してもらうことで、
安心を得ようという戦略に変わったのである。

日本の医療の情報開示には目を見張るものがある。
医師が処方した薬に対して、薬局で効用や副作用の説明をしてくれるのがだ、
こちらとしてもダブルチェックができて安心だ。
また、主治医以外のより専門的な医者の意見を聞くという
「セカンドオピニオン」も広まりつつある。

医療の現場がここまで変われた理由は簡単だ。
治療内容が患者本人にとって重要だということだろう。
患者にとって、関心が高かったから、変わらざるを得なかったのである。
食の安全も消費者本人にとって重要なので、きっかけさえあれば変われるとおもう。
生産者サイドの疲弊状況を見れば、既に変わらなければならない状況だと思う。

専門家の意識改革が必要である。
専門家は「我々が決めてやるから黙って従え」というスタンスから、
「手助けはするが、最終的に決めるのはお前ら自身だ」というスタンスに変わるべきである。
「信じてください」から、「検証してください」へ変わるべきなのだ。
消費者も「考えるのめんどくさいから、そっちで決めといて」というスタンスから、
「俺たち自身で判断するから、情報を寄こせ」というスタンスに変わらないといけない。

専門家や行政の大多数は「消費者は無知だから、俺たちが決めてやらないとダメだ」と思っている。
情報を絶たれた消費者が無知なのは、当たり前の話だ。むしろ、そうし向けて来たのである。
きちんと情報を流し続けることで、消費者の判断力を鍛えて行かなくてはならない。
いきなりは無理でも、情報を開示し続ければ正しい判断を下すだけの知恵が、
多くの日本人にはあると思う。

ただ、最初の一歩を踏み出すのは並大抵のことではない。

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