日本の流通システム その5 産地市場と消費地市場

勝川さんが説明された「卸売市場」に関し、是非、「産地市場」と「消費地市場」に分けて整理されることをお勧めします。

このエントリーで言及された「卸売市場」とは、恐らく「消費地市場」についてであって、「市場外流通」の話も漁船が直に水揚げしている産地市場の現状とは別次元と思います。

産地市場で取引された水産物(主に鮮魚)は、そのまま小売店経由で消費者に流れるもの、消費地市場を通ってから小売店・消費者へと流れるもの、消費地市場から更に消費地市場に流れて同消費者へ流れるものなど、流通経路は想像以上に複雑です。また、養殖魚の流通は、一般の鮮魚とも経路が少し異なります

http://kaiseki.ori.u-tokyo.ac.jp/~katukawa/blog/2008/06/post_359.html#comments

 ある水産関係者さんから、アドバイスをいただいたので、少し整理してみた。

地方卸売市場(産地市場)というのは、水揚げする場所に市場があるような感じ。
産地市場では、セリが今でも主役である。
産地の小売りに卸すよりも、中央卸売市場(消費地市場)の方が値がつくものは、そちらに送られる。
地方卸売市場には、地域の台所としての役割と、他の地域へ送る魚を選別する機能がある。

中央卸売市場(消費地市場)は、大都市に設置されている。
日本各地から集めてきた魚を、その都市の消費者に流すのが目的だ。
日本を代表する消費地市場の築地には、日本中、世界中から、魚が集まってくる。
前述のように、中央卸売市場では、セリ以外の取引が主流になっている。

昨日、築地で飲んできたのだが、9時半頃には市場は動き出していた。
そのときに聞いた話では、築地では商品は毎日2回転するらしい。
1回転目はスーパー用の商材で、市場としても利益はでない。
スーパーの鮮魚コーナーの8割は赤字だから、利益が出るはずがない。
2回転目は、おそらく仲卸の相対が主体なのだろう。
そして、2回転目の終わりにセリがある。
セリは築地の中心行事ではなく、1日の終わりの合図なのである。

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日本の流通システム その5 産地市場と消費地市場 への10件のフィードバック

  1. ある水産関係者 のコメント:

    若干補足させていただきますと、中央卸売市場と地方卸売市場は「卸売市場法」上の区分で、前者は「2006年現在、56都市に86市場が存在する」そうです。後者については、前者以外の卸売市場と言うことで、必ずしも「産地市場(漁船が水揚げする)」とは限りません。漁船が水揚げした漁獲物を最初にセリにかける「地方卸売市場(産地市場)」は主に漁協が開設しているようです。
     
     漁業者に計画的な生産を要求してもそれが実現しないのは、漁業者が魚群を発見した際、「自分が獲らないと別の人に獲られる」、「今日獲らないと、明日獲れるとは限らない」と言った強迫観念におそわれるからだと思います。そうなるくらいだったら、大漁貧乏の方がマシ(もしかしたら高く売れるかも知れないし・・・)と言う思考の流れになるのでしょう。また、生産調整は公取委の問題もあります。これらについて、一つ一つ片付けていく必要があるでしょう。

  2. si のコメント:

    養殖魚は卸売市場を通るのでしょうか。価格の形成過程も漁獲モノとは違ってくるようなイメージがありますが。

  3. ユウラ のコメント:

    内容とは関係ないのですが、今度全国近海かつおまぐろ協会に聞き取りに行くことになりました。

    僕は、自主規制に至った要因と、反対の意見をどうやってまとめたか、行政に求める対応とリーダーの条件を中心に質問をしようと考えています。

    勝川さんをはじめ、このブログ参照の方に何か質問があればできる限り聞いてきますので、かつおの自主TACについての質問があるならばコメントください。

    電話の対応の方が、「話長くなるよ」と結構やる気だったので、期待できる聞き取りになりそうです♪

  4. 勝川 のコメント:

    ある水産関係者さん
    生産調整はグレーな部分がありますね。
    公取的には、自分から積極的に取り締まりはしないという方向みたいです。
    生産調整は長い目で見て、生産者のみならず、
    消費者にも利益があることを示して、社会的な合意を得る必要があるでしょう。

    siさん
    消費者市場は通るものがありますが、産地はどうだか知りません。
    出荷者によって品質は安定しているし、
    水揚げも計画的にできるので、
    大口の直接買い付けの割合が高いような印象があります。

    ユウラさん
    「あの人の話は長い」というのは聞いたことがあります。
    それだけ、いろいろ考えているのでしょう。
    俺的には、ITQに反対しているひとは、どういう事情で反対なのか。
    それに対して、どうやって説得していくかに興味があります。

  5. buriburi のコメント:

    養殖魚の産地での価格形成には、産地での買い手が大きく影響しています。県漁連や四国の問屋が主な買い手であり、彼らの仕事は養殖業者に稚魚や飼料を販売して、生産物を消費地市場などで販売するものです。販売は周年していないと売り場が守れないこともあり、県漁連とはいえ地元以外のものも多く扱っています。これら買い手に対して養殖業者は支払うものを抱えていますので立場としては弱いです。結果として消費地市場で売れた価格から経費を差し引かれて残ったものが産地での取り分、しかもそれが一部または全額債権と相殺されるという場面も出てきます。養殖魚の産地相場というは上場されて明示的に形成されているのでなく、業者間取り引きのなかで具体的な出荷量が価格によって調整されながら形成されていますが、特に出荷意欲が高い時期には買い手との力関係によって先に述べたような状況も多いのではないでしょうか。

  6. 業界紙速報 のコメント:

    ユウラ様
    間に合わなかったかもしれませんが、小子は既に書いたとおり、近海かつお釣りだけで自主規制することにより自らの経営を苦しくするようなことにならないように十分気をつけてもらいたいなあ、と思っております。そうならないための秘策はあるのか訊いてもらえればと思いますが、そんなことストレートに訊くのは汗顔の至りですよね。

  7. ユウラ のコメント:

    >業界紙速報様
    この書き込みに気づいたのが今で申し訳ございません。
    幸い、書き込みにある質問は私自身も興味ありましたので質問してきました。

    まず、結論を先にいうと、経営が苦しくなることはなさそうです。

    というのも、資源を始める理由にが「資源が減りすぎてから管理を始めてしまったら本当に経営が厳しくなってしまう。だったら、まだ資源がある段階から管理を始めよう。だったら、これ以上苦しくはならない」
    というものがあったからです。

    話によると「昔はイレグイ状態でとれたが、今は漁探の性能が上がったから水揚げ高が維持できている。データでは良好だが、資源は減っている」とのことでした。

    本当に壊滅状態になる前の段階から管理を始めて、そういう経営状態になれておこう、というのが狙いらしですね。

    将来の経営を考えるが故の管理開始、というのが答えでしょうか。

    とにかく、大変貴重な考えをお持ちの団体でしたね。
    この考えが全国的に広がってほしいものです。

    キーワードは「無くなる前に管理開始!!」

  8. 業界紙速報 のコメント:

    ユウラ様

    ありがとうございました。

    ただ、ちょこっと気になるのは、釣り船が操業自粛した後、近海でまき網船が「なんかいっぱいいるなあ」と根こそぎ巻いたりしないよね、と思いたい。

  9. 勝川 のコメント:

    巻き網との絡みもあるでしょうね。
    むしろ、個別漁獲枠を種として導入することで、
    共存を図る狙いがあるかもしれません。
    なんにせよ、行き詰まるまえに行動を起こすというのは、
    とても賢いやり方だと思います。

  10. ユウラ のコメント:

    質問で行政に対する要望というもので、「釣りだけではない全部のかつお対象業種が集まれる話し合いの場の提供」というものがありました。
    釣り漁業者も巻き網が獲ってしまうかもということは承知らしいですね。
    それでも、まずは、自分たちが行動しなければ、示しがつかない、とのことなのでしょう。

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