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来年はもう少し勉強してきてください

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水産庁には、業界とのしがらみがあり、
資源評価票に、これは書いて欲しくないとか、最低限これだけの漁獲枠は欲しいとか、
いろんな注文が来ているのだとは思う。

ただ、評価票に影響力を持ちたければ、もう少し勉強をしてから来て欲しい。
議論の場に最低限必要な知識が無い人間をいくら送り込んでも無駄なのだ。
例えば、班長はスケトウ日本海北部に関して、
「海洋環境が悪いんだから、この資源は獲らなくても減っていくに決まっている。
日本の出生率が2を下回っているのと同じような状況なんだから、
親を守れといっても漁業者は納得しない」という発言をした。
とても「スケトウダラ回復計画」を推進している部署の偉い人の発言とは思えない。

人間の出生率に近い考え方は、水産分野にもあり、それはSPRと呼ばれている。
出生率云々という発言から、班長はSPRの存在を知らないことがわかる。
SPRとは、漁獲開始サイズまで成長した個体が生涯に産む産卵量の期待値で、
漁獲がない場合のSPRを100%として相対値で示すのが一般的だ。
スケトウダラの場合は「資源を維持するために必要なSPRは60%」と明記してある。
漁獲がない場合の60%の産卵量で資源水準を維持できるということは、
漁獲がなければ資源量は1世代に1.7倍(=100/60)に増えるわけで、
獲らなくても減るような状況ではない。
SPRのことを知っていれば、これぐらいのことは瞬時にわかる。
重要魚種の評価票の多くは、SPR解析を基本に書かれている。
評価票に目を通しているなら、SPRを知らないと言うことはあり得ない。
SPRを知らないと言うことは、評価票に目を通していないのだろう。

資源評価票は何年も議論を重ねてきて、現在のスタイルに落ち着いている。
基本的な内容すら理解できていない人間が怒鳴り込んできて、
「つべこべ言わずに俺たちの言うとおりに書き換えろ」といっても、通るわけが無い。
それが通るほど、ABCを決める舞台は腐ってはいない。

評価票の質を落とさずに、管理課の意向にも配慮した書き方はあると思う。
そのためには、評価票の内容を理解している人を派遣してほしい。
その上で、きちんと議論をしながら、落としどころを探っていければ良いですね(^^

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