現在の水産業は税金に依存している。
例えば、18年度一般会計予算を見てみよう。
水産庁の予算は約1800億円で、漁業の生産額の12%を占める。
特別会計まで考慮すると、この数字はさらに膨らむことになる。
農林水産業以外の産業をサポートする経済産業省の予算は7828億円に過ぎない。
如何に漁業が優遇されているかがわかるだろう。
産業規模と比べると、べらぼうの税金が投入されているのだから、
国民の負担で漁業を支えていると言っても良いだろう。
納税者は、株式会社の株主の相当するのだ。
最大の違いは、株主は自分の意思で株を買うし、株で儲かることもある。
納税者は、一方的に、有無を言わさず、むしり取られるだけだ。
漁業(漁業者および水産庁)は、
株式会社が株主に対して果たす以上の責任を負うべきだろう。
税金で支えてもらっている以上、国益を果たす義務がある。
では、国益とはいったいなんだろうか?
日本の水産業の歴史を、国益という観点から振り返ってみよう。
戦後からオイルショックまでの国益は、食料の確保であった。
戦後の漁業生産の拡大は、主に漁場の拡大によるものだった。
とにかく、たくさん獲る。獲れなくなれば、もっと遠くに行けばよい。
そういう時代だった。
そして、水産庁は漁業者がより多く獲るためのサポートをした。
漁業者と水産庁の二人三脚で、とにかく多く獲る体制を作り上げた。
これは、国益にも適うものだった。
漁業者の関心と国益は食糧増産という点で一致しており、
水産庁はそのために協力をすれば良かった。
1970年代に入ると、日本の漁場は水産業の構造的な転換を迎えた。
世界中の漁場から徐々に閉め出され始めると同時に、
国内でも大きな変化が起こっていた。
1970年から、大規模チェーン店の外食産業が急速に広がっていた。
国民に一通り充分な量の食べ物が確保され、
食べるもの不足していた時代から、飽食の時代へと移行していたのだ。
食糧増産=国益とは言い切れない状況になったのだ。
消費者の高級志向に答えるために増殖事業を発展させることになる。
養殖の起こりは、瀬戸内海のクルマエビである。
どうみても、食糧確保と言うよりは、高級志向を満たすためだろう。
グルメ嗜好を満たすために、税金を使う必要があったかは疑問である。
旨いものを食べたいなら、その人が対価を払うべきだと俺は思う。
本来であれば、水産業と国のあり方をこの時点で問うべきだったと思う。
漁業から還元される税金で運営できる程度の小さな水産庁を目指すのか、
今まで同様に国民の税金を使って漁業をサポートし続けるか。
大きく分けて2つの方向性があったのだが、
何の議論もなく、後者が選ばれてしまった。
Comments:2
- 県職員 06-09-26 (火) 18:30
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それほどの税金が投入されているとは注意してみたことありませんでした。確かに我が県の水産の生産額と,水産関連予算の比率も5:1とかそんな感じだったですね。予算は我々の人件費は除いてですが。水産関連予算といっても,漁港や漁場整備関連予算の占める割合が大きくて,いわゆる公共事業ですよね。それは誰のための予算?
ABCを上回らないTACの設定には賛成です。しかしながら,広域回遊魚を対象とするまき網等の県知事許可の漁船にとっては,資源の多寡ももちろん大事ですが,自分が操業できる海域へ魚が回遊してくるかどうかの方がもっと重要です。そこは我々県水産担当者の頑張りどころでもあります。
また,資源評価の精度の高さも気になります。統計的にはそれほど問題ないと思われる誤差程度でも,ある県のTAC配分量を十分越えていたりしますし,また中国,韓国などとの競合もありますしね。
上記の話題と関係なくて済みません。 - 勝川 06-09-28 (木) 16:45
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>資源の多寡ももちろん大事ですが,
>自分が操業できる海域へ魚が回遊してくるかどうかの方がもっと重要です。
水産庁の言い分では、「魚の分布が変わって、獲れる海域で不具合が起きないように
TACをABCの2倍まで増やしても良い」ということらしいですね。
海外では、魚が来なかった海域の漁獲枠を再配分するとか、
いろいろと工夫をしています。
あれだけ簡単に期中改定ができるのだから、
日本だって、その気になればできるるはずなんだけど。>また,資源評価の精度の高さも気になります。
資源評価の精度は、非常に低いと言えます。
だからこそ、試験操業等の充実を図る必要があるのですが、
調査予算は削られる一方。まずいですねぇ。>また中国,韓国などとの競合もありますしね。
該当する海域は死活問題ですからね。
日本国として毅然とした対応をとってもらいたいものです。