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世界漁業は成長産業 その1

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「東京湾漁業は高度成長期以降の旺盛な湾域開発によって漁場環境は変貌し、湾内漁業は経済優位な産業に駆逐され衰退の一途を辿っている。加えて、漁業自身 の抱える問題-乱獲、魚価の低迷、魚病の発生等-も大きいが、資源の管理・環境保全(生態系サービス)を念頭に置いた漁業は今や高収益の成長産業であるこ とが明らかになってきている。」と記したところ、「高収益の成長産業であることが明らかになってきている」という具体的事例を示せ、という指摘を受けてい るところです。事例収集、解析等についてご教授くださると幸いです。

世界の漁獲統計をみれば、成長しているのがすぐにわかります。世界の漁獲量は90年代以降、極めて安定的に推移しています。その間に、世界の水産物の価格は急増しているので、産業規模として拡張傾向にあるのは明白です。SOFIAあたりを見ていただければ、一目瞭然です。高収益というのは、経費も含めた統計が必要になるので、示すのが難しいですね。ノルウェーはそういう統計を出していますが、NZは国としての統計はありません。一部の上場企業の業績をみれば利益は確実に上がっています。

世界の漁獲量のトレンドはこんな感じです。
Image2009081006
(FAO FishStatより引用)
逆V字で50年前に逆戻りの日本漁業とは異なり、世界の漁業生産は右肩上がりで増加している。

主要な漁業国の1977年と2007年の漁獲量を比較するとこんな感じになる。
Image2009081007
漁獲量を大幅に減らしているのは日本のみ。ノルウェーも漁獲量は減少しているが、日本とは全く異なる理由である。日本は世界の漁場から閉め出され、国内の資源も乱獲で減少し、捕る魚が無くなっている。それに対して、ノルウェーのEEZの資源は、1977年から、倍ぐらいに回復している。魚はたくさんいるが、厳しい管理によって、漁獲量を増やしていないのである。1977年には赤字であった漁業を改革し、高利益体質へと変貌している。ノルウェーの漁獲量の減少は、漁獲量を追求する漁業から、漁獲物の質と安定性を追求する漁業へと改革をした結果なのだ。魚を獲り尽くして、自滅をしている日本とは対照的である。

主要漁業国の過去50年以上の漁獲量のトレンドはこんな感じになる。
Image2009081008

中国、インドネシア、米国、チリ、は右肩上がりもしくは、高め安定傾向。ペルーは主力のアンチョビの変動に大きく左右される不安定な産業構造ながら、健闘している。そして、ノルウェーは高価格戦略で、順調に利益を伸ばしている。ここでも、日本のように漁獲量が減少している国は他に見あたらない。

Comments:5

same 09-08-10 (月) 9:52

中国漁獲量の伸びが際立っていますね。それほど資源が豊かな海がありましたか・・

さかなやオヤジ 09-08-10 (月) 19:43

こちらの資料から察するに、
まだまだ日本の漁業も「やりよう」によって復活(と言う単語の表現で良いのかどうか)の可能性はある、
と言う考え方で良いのでしょうか。

そうであることを祈ります。

沿岸漁業の一漁師 09-08-11 (火) 22:24

現状の日本の沿岸漁業の手堅いビジネスモデルは埋立事業の連投、電源誘致、防衛施設誘致ですかねw。

勝川 09-08-13 (木) 10:26

sameさん
中国の主力は淡水養殖です。藻を食べるコイのような魚を大量に生産しているらしいです。東シナ海は、日本が獲り尽くした後ですから、海産魚は今後も期待薄でしょうね。

さかなやオヤジさん
今の漁業は、あまりにもデタラメで非合理的なので、
やり方を変えれば、いくらでも伸びますよ。

沿岸漁業の一漁師
本業とは桁違いの金が入ってくれば、浜はガタガタになりますね。
漁業権は、漁場を切り売りする権利ではないと何度言ったら・・・
現在のシステムは、売る方にも、買う方にもメリットがあるから、
なかなか変わらないだろうな。

沿岸漁業の一漁師 09-08-15 (土) 11:10

>現在のシステムは、売る方にも、買う方にもメリットがあるから、
>なかなか変わらないだろうな。

『地方自治』と『自主性の尊重』という言葉の元に変わらないでしょうねw。

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