- 2009-03-02 (月) 23:11
- ニュージーランド | 水産庁のNZレポート | 資源管理反対派
漁業者数、漁船数ともに減少
水産庁&御用学者は、「ITQをやると漁業者が激減する」と脅しをかけている。
でも、ITQで実際にどの程度漁業者が減ったという具体的なデータは示さない。
「漁業者の数はかなり減少したということでございます」とあたかも資源管理によって漁業者が減ったかのように説明しているが、
実際にITQの導入でNZの漁業者がどれぐらい減ったのかを見てみよう。
下の図は、NZがITQを導入した1986年から2000までの漁業者数を比較すると、
日本が4割減少でNZは1割減少。ITQを導入していない日本の方が明らかに減っているんですが・・・
もう一つ、おもしろいデータを示しておこう。
漁業に携わっているのは漁業者だけではない。
加工もまた、漁業による雇用である。
NZの漁業者と加工業者の合計はこんな感じ。
加工も含めれば、NZ漁業の雇用は増えているのだ。
人間の漁獲能力が自然の生産力を遙かに超えている現状では、
魚を捕る人間はそれほど必要ではない。
過剰な漁業者は、資源を持続的に利用していく際のリスクでしかないのだ。
漁業を成長させる鍵は、自然の生産力をいかに高く売るかである。
上の図からわかるように、NZの漁業は全体の雇用を増やすと同時に、
過剰な漁獲分野から、必要な加工分野へと労働者が移動することで、
「多く獲る漁業」から、「高く売る漁業」へと、産業構造が変化した。
資源管理は、単に魚を守るというレベルの話ではない。
ITQは漁業者のインセンティブ(動機付け)を変え、
持続的な産業構造への自己改変を可能にするのだ。
乱獲を放置している日本では、漁業生産は下り坂だから、
加工・流通も、漁業者と同じかそれ以上に減少している。
何もしなければ、10年後には流通業者は半分以下になりそうな勢いである。
日本の漁業者は60歳以上が大半で、50代が「若手」という浜もある。
沖合い漁船の乗組員は、インドネシア研修生に置き換わっている。
沿岸も沖合も、新規加入が途絶えて、縮小再生産にすらなっていないのである。
ITQを入れようが何をしようが今後も確実に漁業者は減る。
このまま何もしなければ、あっという間に半分以下になるだろう。
資源管理をしなければ、漁業は産業として成り立たず、雇用が減少する。
漁業者を減らすためにもっとも有効な手段は、資源管理をしないことだ。
逆に、漁業者の減少を食い止めるために必要なことは、
適切な資源管理による漁業生産額の安定である。
そのためにITQが有効な手段であると言うことはNZの事例からも明らかである。
「漁業者の数はかなり減少したということでございます」などと印象操作をせずに、
日本漁業の危機的状況を認めた上で、漁業の雇用を増加させたNZから謙虚に学ぶべきである。
- Newer: 水産庁のNZレポートを徹底検証する その5
- Older: 水産庁のNZレポートを徹底検証する その3
Comments:1
- かもしか 09-03-03 (火) 20:42
-
突然のコメント失礼します。
他のトピで、思いつきですが、発言した内容について専門家のご意見をお聞かせ下さい。
それは、人糞や、家畜糞尿の海洋投棄についてです。古くは、汚穢船で東京の糞尿を海洋投棄していましたが、考えてみると、糞尿は、重金属などの有害物を全く含まない、微生物にとって掛け替えのない栄養物になると考えます。近年山林の減少などによって河川からの栄養塩の供給が減少して、植物プランクトンを起点とする海洋生物の減少、が問題になっています。これは、昨今、下水道が普及して、本来、何らかの形で、河川を通って海洋に供給されていた栄養塩が、遮断されてしまったことの影響も大きいのではないでしょうか。
下水処理場では、膨大なエネルギーを使って有用な有機物を酸化分解しています。これは、栄養塩を分化して炭酸ガスを増やし、更にその分解エネルギーで更に炭酸ガスの放出を二重に加速しています。輸送手段として、中東からの原油タンカーはどうでしょうか。毎日100万トンクラスのタンカーが、からになった船腹に海水を入れて中東へ帰って行きます。此の海水の代わりに東京の下水を満杯にして出航し、途中で、海水と入れ替えながら投棄してゆけば、遙か遠洋の陸地とは遙かに離れた地帯に肥料を撒くのと同じ事が出来ます。
運搬のエネルギーも要らない二重三重効用が期待できると思います。専門家のお立場で意見を聞かせてください。
Trackbacks:0
- Trackback URL for this entry
- http://katukawa.com/wp-trackback.php?p=698
- Listed below are links to weblogs that reference
- 水産庁のNZレポートを徹底検証する その4 from 勝川俊雄公式サイト