勝川俊雄公式サイト
北海道沿岸漁業者とのミーティング
音響ミーティングの翌日に、道漁連幹部と北海道の組合長3人と会合をした。内容は、スケトウダラ太平洋系群の資源管理に関する事柄。先方からは、沿岸漁業の資源管理の取り組みに関する情報提供があり、こちらからは、資源評価の内容や、今後の管理の方向についての提案を行った。結果から言うと、非常に建設的で、有意義な会合でした。実際に会って、意見交換をするのは重要ですね。
バックグラウンド
一般読者にもわかるようにバックグラウンドを少し説明します(わかっている人は読み飛ばしてください)。スケトウダラは冬に産卵場にやってくる。その産卵群を待ち伏せして刺網で漁獲をするのが沿岸漁業。一方、広範囲で未成魚から漁獲するのが沖合底引きである。今年は、魚が産卵場に来るのが早かったので、沿岸は漁期前半に漁獲枠の大部分を消化してしまった。もともと、初回成熟の親が多いから、来遊が早いというのはわかっていたので、沿岸漁業者は自主規制で網の長さを短くしていた。それでも予想を上回るペースで獲れてしまったのである。
沿岸漁業者は、資源が豊富なので漁獲枠を増やすように11月にデモを行った。また、北海道水産試験所の音響調査で、魚群密度が高いという結果が得られたことから、そのデータを元に漁獲枠を増やすかどうかを検討する会議が、年を越して1月8日に緊急開催された。この会議には、俺は北海道外部委員として出席した。水産庁はその前の月にも、低水準なサバ類の漁獲枠をホイホイ増やしたばかり。今度も増やすのだろうと警戒しつつ、情報を収集したところ、広範囲でそれなりに獲れているし、値段も悪くないことがわかった。「資源量もそれなりに安定しているので、マサバ太平洋のような危機的状況ではない。TACがABCを超えている状態なので、期中改訂による増枠はしないにこしたことはないが、するにしても沿岸・沖底それぞれ3000トンが限度」、というような方針で会議に臨んだのです。ところが、予想に反して、国が毅然とした対応をして、「増枠はできません」ということになりました。増枠しないという結論に異論はないので、会議では特に発言をしませんでした。
結局、期中改訂は見送られ、沿岸は漁獲枠を消化したため、1月中頃に終漁となりました。漁期中にTAC満了で漁獲をやめるのは2007年以来です。
会議が終わった後、ブログに北海道漁業者の資源管理意識について厳しいことを書いたのです。それが北海道の沿岸漁業者の目にとまり「誤解を解きたい」ということで、今回のミーティングになったのです。いろいろと話を伺って、沿岸もTACを軽視していないというのは、良くわかりました。また、ブログでは書きすぎた部分もあったので、その点については、真摯に謝罪をしました。その上で、今後、北海道の沿岸漁業をどのように発展させいていくかという観点から、いくつか提案をしました。
勝川の主張
1) 漁獲枠は増やさない方が沿岸漁業の長期的利益が増える
2) 研究者は増枠に消極的な理由
3) スケトウダラ太平洋系群の資源管理の今後の方向性
私からの提案については、次回以降で、詳しく説明します。
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音響調査勉強会の雑感
- 2010-03-05 (金)
- 日記
3/2に北海道の音響調査の会議に出席した。
もともとは、スケトウダラの魚種別検討会議のおまけのような形でスタートしたものである。今年は期中改訂をするかどうかを検討するために、魚種別検討会議が1月に東京で開催されたので、音響の勉強会が単独で開催されることになった。この会議のみのために札幌まで行くのはどうかなぁと思ったのだが、ちょうど、道漁連から話をしたいという申し出があり、会議に参加をすることにした。
予想以上に人が多く、参加者は50人以上いた。いつもよりも広い会場で行われた。スケトウダラ資源評価の関係者はあまりいなくて、むしろ、船の人が多かったかな。
計量魚探の調査は非常に重要なんだけど、資源評価ではあまり活用されていない。魚探の画をみて、魚種を判別するのが職人芸なんだよね。実際に、網や釣りなどでサンプリングするのは大変な手間になる。個々の船でとれる魚探データは限られているのだから、みなでデータを出し合って、それぞれの魚種に固有のパターンを洗い出していく必要がある。日本海区水研で、魚種がわかった魚探画像を集めて、データベース化しているのですよ。計量魚探調査の未来を考えると非常に重要な仕事だ。残念ながら、データを提供してくれない組織も多いようです。何年も前のデータまで囲い込んで出さないんだよなぁ。
あと、TSの精度の問題を理由に、計量魚探の利用に消極的な人が多くて残念だった。数字を出せば、生くさい問題に巻き込まれる。技術的な問題を出して、数字を出さなければ、やっかいごとには巻き込まれない。そういう意味では、数字を出さない方が無難なんだけど、ソレでいいのかな。そもそも高価な計量魚探をほぼすべての調査船に税金で入れていながら、あまり有効活用できていないという問題がある。有効活用できるように情報提供するのは公務員として当然の義務だと思うんだけど。
今後、予算が限られていく中で、成果が出ないものは、遅かれ早かれ切られるだろう。「減点方式なら、何もやらなければ満点」と思って、のんきにしていたら、「加点方式で零点ですね」という評価しか得られないのである。今、船に計量魚探がデフォルトでついているのは、今後も保証された既得権ではない。きちんと成果を出していかなければ、すぐに切られるよ。事業仕分けとかそっちを気にした方が良い。
計量魚探なんて、所詮は道具なんだから、使われてなんぼ、役に立ってなんぼである。稼働率が低く、資源評価に役立っていない現状に、危機感をもって、積極的に資源評価に関与していくべきであり、今度2~3年というタイムスパンで、応用事例を出していけるかどうかが、勝負の分かれ目になると思うので、がんばろう。
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asahi.com(朝日新聞社):マグロ取引、EU一転「禁止」 乱獲懸念の世論に配慮 – 国際
- 2010-02-27 (土)
- 日記
asahi.com(朝日新聞社):マグロ取引、EU一転「禁止」 乱獲懸念の世論に配慮 – 国際.
最近になってクロマグロ漁業国フランス、イタリア、スペイン、ギリシャなどが相次いで禁止支持に回った。継続派はマルタ、キプロスなどにとどまる。
「スペインも同じ漁業国。どうか考え直してほしい」。EUが禁止支持へと傾き始めたことに危機感をもった農林水産省の佐々木隆博政務官は22日、ブリュッセルにEU議長国スペインのエスピノサ農相を訪ね、日本の立場に理解を求めたが、話はかみ合わなかったという。
フランス、イタリアに続き、スペイン、ギリシャも、白旗で、のこるは、マルタ・キプロスだけですか。欧州戦線は終戦ですね。日本が留保したところで、クロマグロを輸出する国は限られるだろう。
漁業国だからこそ、なんでもかんでも規制に反対するのではなく、持続性についても真剣に考えないといけないとおもう。日本市場に「日本産養殖マグロ」と称して、タイセイヨウクロマグロが流通しているような状況では説得は難しいだろうね。
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サーバの契約を更新した
- 2010-02-25 (木)
- 日記
ここのブログも開設してもうすぐ1年です。更新のお知らせが来たので、料金を支払いました。katukawa.comのドメイン登録料が980円、サーバの年間使用量が5000円の併せて、5980円です。ブログを書くことの影響力と比較すると、ただみたいに安いですね。年間数千円のコストより、むしろブログを書く時間の方が貴重です。
coreserverというレンタルサーバをつかってます。1年間使ったみて、得に不満はないですね。有料のブログサービスはいくらでもありますが、俺的にはwordpressのインストールぐらい手間だと思わないし、いつでも引っ越せるような形でデータを持っておきたいので、レンタルサーバを使っています。
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羅臼漁協14隻にデータ空白【全国・海外ニュース/ 社会】- 大分合同新聞
羅臼漁協14隻にデータ空白【全国・海外ニュース/ 社会】- 大分合同新聞.
羅臼漁協のほかの14隻も位置情報を把握するための衛星通信漁船管理システム(VMS)のデータに2時間以上の空白があることが22日、北海道の調査で分かった。
今度、米国にVMSの話を聞きに行くから、こういう空白が日常的に生じるものなのか質問してみようっと。
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アイスランドの漁業者はなぜ減ったのか?
資源管理反対派は、「資源管理を導入すると、弱小漁業者が淘汰されてしまう」として、ITQ制度の導入に反対している。では、資源管理をしなければ、弱小漁業者は安泰なのかというと、そんなことはない。日本の漁業はベテラン漁師が食っていくのが精一杯であり、とても若者が参入できるような状況ではない。新規加入が途絶え、消滅は時間の問題だろう。
世界に先駆けて、ITQを導入したのはアイスランドとニュージーランドであった。ともに、生活水準の高い、先進国である。ニュージーランドについては、ITQの導入によって、魚を獲る人は減ったが、加工する人が増えいる。ITQ導入後、漁業全体の雇用は増加しているのはデータからも明らかである。また、NZではITQによって、離島の小規模漁業者が生存しているという現実もある。本人たちが言うんだから、間違いない。
アイスランドの漁業就業者の人口をまとめると次のようになる。ITQ導入から、現在までをカバーする統計が見つからなかったので、2種類の異なるデータをまとめて表示した。数値自体は近いのである程度のトレンドはこれで追えるだろう。アイスランドの漁業者は、2000年までほぼ横ばいで、その後激減している。ITQを導入したのは80年代のことであり、ITQが原因であれば、もっと早く漁業者が減ってしかるべきだろう。2000年から近年まで、アイスランドは金融バブルにわいていた。漁業者の減少は、より利益が期待できる金融関係のサービス業に労働力が移動した結果である。
ITQ制度では、自らの漁獲枠を売却して、それを元手に事業を始めることが出来るから、労働力の移転のハードルを下げる効果はあるだろう。本人が望んで漁業を離れたのであり、それによって、過剰な漁獲能力が削減でき、社会の生産性が上がる。社会にとっても、漁業者にとっても、悪くない選択だ。日本の漁業者は、船の借金を抱えながら、生産性の低い漁業に縛り付けられて、最後は夜逃げや首つりを余儀なくされる。政府は、過剰な漁業者を維持するために、現金をばらまくようだが、そんな余力は日本の財政にあるんですか。そんな税金の使い方をして、納税者にいったい何のメリットがあるのかさっぱりわからない。
ITQの方が、漁業者にも納税者にも優しい、合理的な社会システムであると思う。
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日本漁業「責任」時代へ 35
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なるほドリ:海砂採取に漁業者は何を訴えているの? /佐賀 – 毎日jp(毎日新聞)
なるほドリ:海砂採取に漁業者は何を訴えているの? /佐賀 – 毎日jp(毎日新聞).
県は「許可にあたって地元漁協の同意を得ている」と釈明しています。ですが、常幸丸漁労長の一宮勝さん(83)は「漁協には業者から漁業補償金が入り、採取の影響がない組合員もいる。だから組合として反対しないでいる」との指摘もしています。 実際に利害関係のある漁業者の声を聞いた上で許可を出すという仕組みを考えることも、県など許可を出す側には必要と言えます。
瀬戸内海では、環境負荷が大きすぎると言うことで海砂採取は禁止になった。その結果、海砂採取は北九州へ移動した。瀬戸内海で環境への影響が大きいのだから、北九州だって、影響があるに決まっている。
全然、日本の漁業補償金とは関係ないんだけど、アフリカに先進国が援助をしても、警察の検問やらなんやらでピンハネされて、ほとんど末端に届かないらしい。金額を増やすより、末端に届くような枠組みをつくることが大切だよね。
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